
執筆者:辻 勝
会長税理士
眼科の診療報酬改定2026|白内障手術戦略を解説

眼科クリニックの2026年改定で何が変わるのか
2026年改定で眼科クリニックが最も注視すべき点は、白内障手術を中心とした短期滞在手術等基本料の見直しです。とくに白内障手術を数多く行う眼科では、従来どおり「入院で回す」運営のままだと、手術収益と病床稼働の両面で不利になりやすくなりました。眼科開業医にとっての問題は、単なる点数表の読み替えではなく、どの症例を外来へ移し、どの症例だけを入院適応として残すかという経営判断にあります。
令和8年度の医科点数表では、短期滞在手術等基本料1は日帰り、短期滞在手術等基本料3は4泊5日までの入院を前提に整理されています。加えて、中医協の議論では、白内障手術は諸外国と比べて日本の外来実施率が低く、外来移行を促す方向性が明確に示されました。このため、2026年は「白内障は原則外来、入院は例外」という運営へ近づけるほど、制度との整合性が高くなります。
白内障手術の点数変更と短期滞在手術等基本料とは
短期滞在手術等基本料1と3の違い
短期滞在手術等基本料1は日帰り手術を包括評価する仕組みで、短期滞在手術等基本料3は4泊5日までの入院を包括評価する仕組みです。2026年点数表では、短期滞在手術等基本料1は「主として入院で実施されている手術」と「それ以外」で区分され、後者は麻酔あり795点、麻酔なし680点となりました。ここが、日帰り白内障を主力とする眼科の基本的な評価軸になります。
一方、短期滞在手術等基本料3では、K282水晶体再建術1・眼内レンズを挿入する場合・その他のものは、片側18,001点、両側33,812点で包括評価されます。つまり、入院で回す場合は依然として一定の評価があるものの、政策の方向は「入院でなければならない症例に絞る」ことです。
なぜ白内障が改定の焦点になったのか
中医協資料では、白内障手術の外来実施割合について、日本は54%で、OECD諸外国と比べて外来移行の余地が大きいと整理されました。また、短期滞在手術等基本料1の対象手術のうち、水晶体再建術は件数が特に多く、外来実施率も65.1%とされています。制度設計側から見れば、白内障は外来へ寄せやすい代表的な手術として扱われているわけです。
このため、2026年改定を「白内障の手術点数が下がったかどうか」だけで見ると本質を外します。実際には、入院実施と外来実施の点数差を縮小し、病床を使う合理性が乏しい症例は外来へ移すというメッセージが制度に織り込まれています。
短期滞在手術基本料 白内障 2026見直しの影響
有床診療所はなぜ影響が大きいのか
有床診療所は、これまで白内障手術を短期入院で回しやすく、手術収益と病床稼働を組み合わせたモデルを作りやすい立場でした。しかし2026年改定では、入院で行う必要性が乏しい短期滞在手術の外来移行を促す方向が明確です。したがって、「病床を持っているから入院で実施する」だけでは説明しにくい時代になりました。
特に、病床を白内障中心に埋めていた診療所では、入院患者数の減少がそのまま病床収益の低下につながります。病床稼働率が落ちるのに、看護配置や夜間体制などの固定費は残るため、減収幅以上に利益が圧迫されるケースもあります。
無床クリニックにも追い風と注意点がある
無床クリニックにとっては、制度の方向が外来化と整合的であるため、日帰り白内障のオペ導線をすでに確立している施設には追い風です。ただし、単純に件数を増やせばよいわけではありません。術前評価、家族説明、帰宅後連絡、翌日再診、合併症時の後送先確保まで含めて体制を整えないと、事故リスクや口コミ悪化につながります。
つまり、2026年は「有床は逆風、無床は追い風」と単純化するより、外来化を安全に運営できる体制を持つ施設が有利と考えるほうが実務的です。
眼科 クリニック 手術 減収 対策の考え方
入院適応を明確に絞る
中医協資料では、白内障を入院で行う理由として、全身麻酔が必要な症例、認知症で安静保持が困難な症例、チン小帯が脆弱で追加手術の可能性が高い症例、全身状態不良、術後合併症リスクなどが挙げられています。今後は、こうした症例を入院適応として整理し、通常症例は外来へ寄せる設計が重要です。
比較すると次のようになります。
| 項目 | 外来日帰り中心 | 入院中心 |
|---|---|---|
| 制度との整合性 | 高い | 低下しやすい |
| 病床固定費 | 低い | 高い |
| 標準症例の回転率 | 高い | 低くなりやすい |
| ハイリスク症例対応 | 制限あり | 対応しやすい |
| 2026年の基本戦略 | 主流 | 選別実施 |
手術単価ではなく症例構成を見直す
白内障手術だけで売上を維持しようとすると、件数依存になり、医師・スタッフともに疲弊しやすくなります。そこで重要なのが、症例構成の見直しです。たとえば、白内障単独症例を日帰りで標準化しつつ、緑内障との併用症例、紹介率の高い難症例、術後管理の厚い患者層に注力すると、収益と専門性の両立が図りやすくなります。
また、保険診療だけでなく、多焦点眼内レンズの選定療養、術前精査の説明体制、ドライアイや眼瞼関連の周辺診療を組み合わせることで、1人の患者から生まれる売上を面で設計できます。白内障の制度改定局面では、単価維持よりも周辺収益を含めたLTVの再設計が有効です。
眼科 開業 2026 経営戦略と実務対応
Step 1: 手術実績を外来・入院で分解する
まず直近12か月の白内障手術を、外来、短期滞在手術等基本料3、通常入院の3区分で集計します。件数だけでなく、1件当たり売上、病床使用日数、再診回数、術後トラブル率まで見える化することが重要です。
Step 2: 入院症例の基準を文書化する
次に、どの症例を入院とするかを院内ルールとして明文化します。認知機能低下、全身麻酔必要、両眼同日、独居で帰宅後不安が強い、全身合併症あり、術中追加対応リスクあり、などを基準化しておくと、査定・説明・院内共有に役立ちます。
Step 3: 日帰りオペ導線を再設計する
予約枠、術前検査、説明同意、術後観察、帰宅基準、緊急連絡体制を見直します。ここで重要なのは、医師の手技よりも、看護師・医療事務を含むオペレーション設計です。白内障件数が多い院ほど、説明や術後案内の標準化が利益率を左右します。
Step 4: 病床の役割を再定義する
有床診療所は、白内障のための病床から、ハイリスク症例対応、他科連携、術後一時管理、将来的な機能転換まで含めた再定義が必要です。病床を持つこと自体が強みになるのではなく、何のための病床かを説明できる施設が残ります。
よくある質問
Q: 白内障手術の点数は2026年に大きく下がったのですか?
Q: 2026年以降、有床眼科は不利になりますか?
Q: 無床の眼科クリニックでも白内障件数を増やしてよいですか?
まとめ
- 2026年改定の眼科の核心は、白内障手術の外来移行を促す制度設計にある
- 白内障手術は、日本の外来実施率がなお低く、制度上の見直し対象として扱われた
- 有床診療所は、標準症例まで入院で回すモデルの見直しが必要
- 無床クリニックは追い風だが、安全な日帰りオペ体制の整備が前提
- 今後の経営戦略は、点数の読み替えよりも症例選別、病床再定義、周辺収益の再設計が重要
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定説明資料等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71068.html
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「個別事項について(その6)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001591981.pdf
- 厚生労働省「医科診療報酬点数表」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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