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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

地域包括診療加算2026開業設計|税理士が解説

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地域包括診療加算2026開業設計|税理士が解説

地域包括診療加算2026開業の結論

地域包括診療加算を見据えた開業で重要なのは、あとから算定体制を作るのではなく、開業時点で「かかりつけ医機能」を施設と運営に埋め込むことです。特に2026年改定では、地域包括診療加算と認知症地域包括診療加算が統合され、対象患者も拡大しました。開業予定の医師にとっての問題は、診療報酬の点数だけでなく、どの立地・どの人員体制・どの動線なら継続して算定できるかにあります。

2026年改定後は、地域包括診療加算1が認知症を有する患者等で38点、その他の慢性疾患等で28点、地域包括診療加算2がそれぞれ31点、21点という整理になります。つまり、単なる再診の積み上げではなく、慢性疾患管理・介護連携・認知症支援・薬剤管理を回せる診療所設計が、月額収益の差を生みます。税理士法人 辻総合会計でも、開業相談では「坪数」より先に「算定したい機能」を確認することが増えています。

地域包括診療加算点数2026改定のポイント

2026年改定では、評価体系が整理され、認知症のある患者等を高い評価で扱う形に再編されました。これにより、従来の認知症地域包括診療加算を別建てで考える必要は薄れ、地域包括診療加算の中で対象患者をどう組み立てるかが実務の中心になります。

点数再編の整理

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区分2026年改定後の評価収益インパクトの見方
地域包括診療加算1認知症を有する患者等 38点 / その他の慢性疾患等 28点高齢者比率が高い地域ほど有利
地域包括診療加算2認知症を有する患者等 31点 / その他の慢性疾患等 21点単独開業でも狙いやすいが差は出る
外来データ提出加算10点体制整備後の上乗せ余地
薬剤適正使用連携加算別途算定機会あり退院後・他院通院患者の連携で差がつく

対象患者には、認知症のある患者だけでなく、介護給付または予防給付を受けている要介護被保険者等も含まれる整理となり、慢性疾患を持つ高齢者を日常的に診る診療所では算定対象が広がります。開業立地を考える際は、駅前立地の利便性だけでなく、高齢者世帯比率、介護事業所、地域包括支援センターとの距離まで見ておくべきです。

ここがポイント
点数は2026年改定資料に基づく整理ですが、実際の算定可否は患者要件、投薬内容、届出状況、地方厚生局への届出受理の有無で決まります。個別の算定判断は開業前に必ず確認が必要です。

地域包括診療加算の施設基準を満たす開業設計とは

地域包括診療加算は、単に再診患者が多いだけでは算定できません。施設基準の実務では、時間外対応、医師体制、連携薬局、認知症支援、データ提出対応など、日々の運営がそのまま算定要件になります。ここを後回しにすると、開業後に内装や人員配置をやり直すことになり、コストが膨らみます。

かかりつけ医機能開業設計で押さえるべき項目

  • 時間外対応加算1〜4の届出、または必要な医師配置の検討
  • 院外処方を基本とする場合の連携薬局体制の確保
  • 緊急時の解熱鎮痛剤等について院内処方できる体制の検討
  • 認知症患者や家族への案内ができる相談導線の整備
  • 介護事業所、訪問看護、地域包括支援センターとの連携ルートの確保
  • データ提出を見据えたレセコン・電子カルテ選定

施設レイアウトの考え方

開業設計で見落とされやすいのが、診察室の数よりも相談機能です。地域包括診療加算を継続して算定するなら、以下のような構成が実務的です。

  • 診察室2室体制または診察室1室+相談スペース1室
  • 看護師または医療事務が介護・服薬確認を行える半個室
  • 家族同席の説明や認知症支援案内ができる面談スペース
  • 院内処方の最低限運用が可能な保管スペース
  • 連携先一覧、地域資源案内、緊急連絡体制を掲示・共有できるバックヤード

特に認知症や要介護高齢者を主対象にする場合、一般外来中心の「回転率重視レイアウト」では運営が詰まりやすくなります。診療効率と相談機能の両立を前提に、受付から会計までの滞留ポイントを減らす設計が必要です。

地域包括診療加算施設基準の満たし方

施設基準を満たすには、開業前から届出と運用手順を逆算することが重要です。実務では、内装工事より先に「誰が何を毎月回すか」を決めておくと失敗しにくくなります。

Step 1: 対象患者像を決める

まず、高血圧症・糖尿病・脂質異常症だけでなく、慢性心不全、慢性腎臓病、認知症、要介護高齢者をどこまで主対象にするかを決めます。ここが曖昧だと、必要な立地も人員も定まりません。

Step 2: 加算1を狙うか加算2で始めるか決める

単独開業では加算2から始め、運営が安定してから体制強化を図る設計も現実的です。一方で、共同開業や複数医師体制が見込めるなら、開業当初から加算1を狙う余地があります。

Step 3: 時間外対応と連携薬局を先に固める

連携薬局の24時間対応や、院内処方の代替体制は、開業直前では調整が難しい項目です。テナント契約前から候補薬局と協議しておく方が安全です。

Step 4: 介護連携の導線を作る

地域包括支援センター、ケアマネジャー、訪問看護ステーション、介護施設との紹介・逆紹介の流れを作ります。開業初月から連携先がゼロだと、対象患者が思うように積み上がりません。

Step 5: データ提出を前提にシステムを選ぶ

2026年改定では外来データ提出加算10点も新設されています。レセコンや電子カルテを安さだけで決めると、後から乗り換えコストが発生しやすくなります。

ここがポイント
医療資源の少ない地域では、医師配置要件の緩和も示されています。一方、外来医師過多区域で地域に不足する医療機能の要請に応じず、保険医療機関の指定期間が3年以内とされた診療所は、地域包括診療加算等の算定が不可とされています。立地選定の段階で区域指定の確認は必須です。
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かかりつけ医機能を軸にした月額収益試算

ここでは、再診中心の内科系診療所を想定し、地域包括診療加算の月額収益を試算します。あくまでモデルケースですが、開業時の事業計画には十分使える考え方です。1点=10円で計算します。

モデルケースA 加算2中心で始める場合

前提条件は以下のとおりです。

  • 月間再診患者数:900人
  • うち算定対象患者比率:25%
  • 算定対象患者数:225人
  • 患者内訳:認知症等 40人、その他慢性疾患等 185人
  • 地域包括診療加算2を算定

試算は次のとおりです。

  • 認知症等 40人 × 31点 × 10円 = 12,400円
  • その他慢性疾患等 185人 × 21点 × 10円 = 38,850円

月額合計は 51,250円 です。これだけを見ると小さく見えますが、機能強化加算、生活習慣病管理料、外来データ提出加算、薬剤適正使用連携加算などと組み合わさると、継続的な底上げになります。

モデルケースB 加算1を安定運用できる場合

  • 月間再診患者数:1,200人
  • うち算定対象患者比率:35%
  • 算定対象患者数:420人
  • 患者内訳:認知症等 120人、その他慢性疾患等 300人
  • 地域包括診療加算1を算定
  • 外来データ提出加算の対象患者も一定数あり

試算は次のとおりです。

  • 認知症等 120人 × 38点 × 10円 = 45,600円
  • その他慢性疾患等 300人 × 28点 × 10円 = 84,000円

月額合計は 129,600円 です。これに月1回の外来データ提出加算や、退院後連携患者の加算機会が上乗せされるため、年間では100万円を超える差になり得ます。さらに、介護連携から在宅医療へつながる導線まで作れれば、実際の収益差は「数十万円/月」規模で開くことがあります。

外来医師過多区域と開業2026の注意点

2026年開業では、診療報酬だけ見て立地を決めるのは危険です。外来医師過多区域で、地域で不足する医療機能の要請に応じない場合、保険医療機関の指定期間が短縮され、その結果として地域包括診療加算等の算定ができないリスクがあります。つまり、立地選定と診療コンセプトが診療報酬に直結する時代になったということです。

開業前には、少なくとも次の3点を確認すべきです。

  • 候補地が外来医師過多区域または関連区域に該当しないか
  • 地域で求められる不足機能が、総合内科・高齢者医療・在宅連携のどれか
  • 自院の計画が、地域包括診療加算の施設基準と矛盾しないか

「駅前の新築テナントで一般内科を始める」だけでは、今後は差別化が難しくなります。むしろ、介護連携や認知症支援を前提にした設計の方が、収益の安定性は高くなりやすいと考えられます。

よくある質問

Q: 地域包括診療加算1と2は、どちらを目指すべきですか? ▼
単独開業であれば、まず加算2から安定運用を始める設計が現実的です。複数医師体制や時間外対応、連携体制を十分に確保できる場合は加算1が有力です。点数差だけでなく、継続運用できるかで判断すべきです。
Q: 認知症地域包括診療加算は2026年以降どうなりますか? ▼
2026年改定では、認知症地域包括診療加算は地域包括診療加算の中に統合される整理です。認知症を有する患者等は高い点数区分で評価されるため、別制度としてではなく、対象患者管理の一部として設計するのが実務的です。
Q: 開業時に最優先で整えるべきものは何ですか? ▼
物件より先に、対象患者像、時間外対応、連携薬局、介護連携、システム要件を決めることです。後から改装やシステム変更を行うと、想定以上に資金がかかります。

まとめ

  • 2026年改定では地域包括診療加算が再編され、認知症を有する患者等は38点または31点で評価される
  • 対象患者に要介護被保険者等が加わり、開業時の患者設計がより重要になった
  • 施設基準は時間外対応、医師配置、連携薬局、認知症支援、データ提出対応まで含めて考える必要がある
  • 月額収益は単体では小さく見えても、他の加算や在宅連携と組み合わせると年間で大きな差になる
  • 外来医師過多区域では、立地選定そのものが地域包括診療加算の算定可否に影響する

参照ソース

  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681336.pdf
  • 厚生労働省「医療法等改正」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001620461.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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