
執筆者:辻 勝
会長税理士
クリニック休憩時間と中抜け勤務|労務管理の注意点

クリニック経営・労務の個別相談
この記事の内容を、自院の人件費・労務設計に落とし込む相談をする
給与設計、社会保険、採用コスト、月次損益への影響を、税務・経営面から整理します。
休憩時間と中抜け勤務は「自由に使える時間」かで判断する
クリニックの休憩時間管理で重要なのは、午前診と午後診の間が本当に休憩になっているかです。2026年5月11日時点で、労働基準法上の休憩は、労働時間が6時間を超え8時間以下なら少なくとも45分、8時間を超えるなら少なくとも1時間が必要とされます。
ただし、診療所の昼休みがそのままスタッフの休憩時間とは限りません。電話番、業者対応、急患対応、レセプト作業、清掃、午後診準備をしているなら、労働時間として扱うべき場面があります。休憩と待機を混ぜたまま給与計算をすると、未払い賃金やスタッフ不満の原因になります。
税理士法人 辻総合会計グループでは、給与計算の数字だけでなく、午前診・午後診の運用、休憩控除、残業代、人件費率をあわせて確認します。労務判断は社労士と連携し、会計上は月次で見える形に整えることが大切です。

午前診と午後診の間に起きやすい誤解
少人数のクリニックでは、昼の時間にスタッフが院内に残っていることがよくあります。外出していないから休憩、患者がいないから休憩、と考えるのは危険です。スタッフが自由に離席できず、電話や来客対応を求められているなら、休憩とは言い切れません。
特に、受付スタッフだけが電話番をしている、看護師だけが検査準備をしている、医療事務だけがレセプト作業をしている場合、職種ごとに休憩取得状況が違います。全員一律で1時間控除していると、実態とずれる可能性があります。
| 時間帯 | よくある処理 | 注意点 |
|---|---|---|
| 午前診後 | 会計、カルテ整理、清掃 | 終業後作業として労働時間になる可能性 |
| 昼休み中 | 電話番、業者対応 | 自由利用できなければ休憩になりにくい |
| 午後診前 | 検査準備、予約確認 | 始業前業務として集計が必要 |
| 土曜半日 | 片付け、翌週準備 | 半日勤務でも残業が出る場合がある |
中抜け勤務を設計するときの確認点
午前診と午後診の間が長いクリニックでは、中抜け勤務を設けることがあります。たとえば午前勤務、長い休憩、午後勤務という形です。この場合、休憩時間なのか、労働から完全に離れた中抜けなのか、勤怠記録と雇用契約で整合させる必要があります。
中抜け時間を休憩として扱うなら、スタッフが自由に使えることが前提です。外出不可、電話対応必須、急患があれば戻る、という運用であれば、単純な休憩控除では説明が難しくなります。
また、中抜けが長すぎると拘束感が強くなり、採用や定着にも影響します。診療時間の都合だけで勤務表を作らず、スタッフの生活時間と給与納得感も含めて設計することが必要です。
休憩・中抜け管理の実務手順
Step 1: 実際の昼時間を記録する
1週間だけでも、午前診後から午後診前までに誰が何をしているかを記録します。電話、清掃、レセプト、検査準備、院内待機を分けます。
Step 2: 休憩控除と実態を照合する
勤怠システムで自動的に60分控除している場合、実際に60分休めているかを確認します。特定職種だけ休めていないなら、運用の見直しが必要です。
Step 3: 電話番や急患対応のルールを決める
昼の電話を留守電にする、当番制にする、当番手当や勤務時間として扱うなど、院内ルールを明確にします。
Step 4: 給与計算と人件費率に反映する
休憩控除を見直すと給与が増えることがあります。辻総合会計グループでは、労務面の確認とあわせて、月次損益、人件費率、診療時間の採算を確認します。
変形労働時間制を使う前に確認したいこと
診療時間に波があるクリニックでは、1か月単位の変形労働時間制を検討することがあります。ただし、制度名を入れれば自動的に残業が消えるわけではありません。就業規則や労使協定、勤務予定の特定、法定労働時間の枠内管理など、事前の設計が必要です。
実務上は、まず現行の勤務パターンを見える化し、どの曜日に長く、どの曜日に短く働いているかを確認します。そのうえで、変形労働時間制が本当に必要か、単に予約枠や締め作業を見直せば足りるかを判断します。
会計面では、制度導入後も残業代、深夜、休日、固定手当の扱いを確認します。労務制度と給与計算ソフトの設定がずれると、制度を入れたのにミスが増えることがあります。
よくある質問
Q: 昼休みに電話番をしている時間は休憩ですか?
Q: 自動で1時間休憩控除してもよいですか?
Q: 中抜け時間は給与を払わなくてもよいですか?
まとめ
- クリニックの昼休みは、診療がない時間とスタッフの休憩時間を分けて考えます。
- 電話番、急患対応、午後診準備がある場合、休憩控除と実態がずれやすくなります。
- 中抜け勤務は、雇用契約、勤怠記録、給与計算をそろえて設計します。
- 税理士法人 辻総合会計グループでは、休憩控除の見直しが人件費率と診療時間の採算に与える影響を整理します。
給与計算で起きやすい休憩控除ミス
休憩時間の扱いは、給与計算ミスにつながりやすい項目です。勤怠システムで自動的に1時間控除していても、実際には45分しか休めていない、電話番で中断している、午後診準備で早く戻っている、ということがあります。この差が積み重なると、未払い賃金の論点になります。
少人数クリニックでは、誰か1人だけが昼に残る運用になりがちです。受付だけ電話対応、医療事務だけレセプト確認、看護師だけ検査準備という状態では、職種ごとの休憩取得状況を分けて見る必要があります。全員に同じ休憩控除を入れる前に、実態を確認することが大切です。
| ミスの例 | 起きる原因 | 見直し方法 |
|---|---|---|
| 自動1時間控除 | 実際の休憩を確認していない | 1週間の実態調査を行う |
| 電話番の無給扱い | 待機と休憩を混同 | 当番制、勤務時間扱いを検討 |
| 午後診準備の未集計 | 始業前作業を記録していない | 準備開始時刻を打刻 |
| 中抜けの説明不足 | 雇用契約とシフトが不一致 | 契約書・就業規則を確認 |
辻総合会計グループでは、休憩控除を見直した場合の給与増加額、人件費率、診療時間の採算を試算します。労務上の扱いを社労士と確認したうえで、会計数字に反映することで、院長が判断しやすくなります。
診療時間の見直しと休憩設計
休憩が取れない原因は、スタッフの段取りだけではないことがあります。午前診の受付終了時刻が遅い、検査が最後に集中する、会計が診療後に残る、午後診準備が早すぎるなど、診療時間設計そのものが原因の場合があります。
この場合、休憩時間を確保するには、受付終了時刻、予約枠、検査枠、電話対応時間を見直す必要があります。患者利便性だけを優先しすぎると、スタッフの休憩と残業にしわ寄せが出ます。逆に、休憩を確保できる設計にすると、午後診の集中力や患者対応の質が安定します。
休憩設計は、労務リスクを避けるだけでなく、診療品質と定着率を守るための経営判断です。月次の人件費と患者数を見ながら、診療時間を微調整する視点が必要です。
公開前に院長が確認したいチェックリスト
休憩時間の記事を読んだあとに、院長が確認すべきなのは「昼に患者がいないか」ではなく「スタッフが自由に使える時間になっているか」です。電話番、業者対応、急患対応、レセプト作業、午後診準備が入っていれば、休憩控除と実態がずれている可能性があります。
1週間だけでも、昼時間に誰が何をしているかを記録すると、問題点が見えます。受付だけ電話を取っている、看護師だけ検査準備をしている、医療事務だけレセプトを見ている場合は、職種ごとに休憩取得の差があります。
- 昼時間に電話番が必要か
- 休憩中の外出や離席が可能か
- 自動休憩控除と実態が一致しているか
- 午後診準備の開始時刻を打刻しているか
- 中抜け勤務の説明が雇用契約と合っているか
この確認を行うと、給与計算ミスを防ぐだけでなく、診療時間の見直しやスタッフ定着にもつながります。
専門家へ相談する前に準備する資料
休憩時間と中抜け勤務を相談する前には、1週間分の実際の昼時間の過ごし方、電話番の有無、午後診準備の開始時刻、勤怠システムの自動控除設定、雇用契約書の勤務時間欄をそろえます。特定職種だけ休憩を取れていない場合は、その記録も残します。
税理士へは、休憩控除を見直した場合の給与増加、人件費率、診療時間変更の採算を相談します。辻総合会計グループでは、社労士が休憩・手待ち時間を判断しやすいよう、現場記録と給与・月次損益をつなげて整理します。
参照ソース
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」: https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「時間外労働の上限規制」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
ご注意事項
本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。
税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。
記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

