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クリニック向けコラム
作成日:2026.05.10
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

36協定と残業管理|クリニック院長の実務

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36協定と残業管理は「診療時間の延長」から逆算する

クリニックの36協定とは、法定労働時間を超えてスタッフに時間外労働を依頼するために必要となる労使協定です。2026年5月11日時点で、一般のスタッフは原則として1日8時間・1週40時間を超える勤務をさせる場合、36協定の締結と届出が前提になります。ただし、常時10人未満の診療所など保健衛生業では、週44時間の特例対象事業場に該当する場合があるため、自院の人数・事業場単位で確認が必要です。

院長にとっての問題は、協定書を出すことだけではありません。受付終了後の会計、レセプト点検、清掃、電話対応、急な検査追加が積み重なると、月次の人件費とスタッフの疲弊が同時に増えます。36協定は書類ではなく、診療時間と人員配置を見直すための経営資料として扱う必要があります。

税理士法人 辻総合会計グループでは、残業代の計算だけでなく、診療時間、予約枠、人件費率、月次損益への影響をあわせて確認します。社労士の領域である協定書作成や労務判断と連携しつつ、院長が数字で判断できる形に落とし込むことが重要です。

ここがポイント
この記事は2026年5月11日時点の厚生労働省資料をもとに、クリニック経営者向けに整理しています。実際の協定届、労使代表の選出、労働時間該当性は、個別の勤務実態により確認が必要です。
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36協定が必要になるクリニックの場面

36協定が問題になりやすいのは、明らかな残業だけではありません。午前診が長引き午後診の準備に食い込む、受付終了後に患者対応が続く、月末月初のレセプト確認で医療事務だけが残る、といった場面でも時間外労働が発生します。

労働時間かどうかは、院長や管理者の指揮命令下にあるかで考えます。スタッフが自主的に残っているように見えても、実際には閉院処理や翌日の準備が業務上必要であれば、労働時間として集計すべき可能性があります。

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場面見落としやすい時間経営上の確認点
受付終了後会計、電話、カルテ整理診療終了時刻と退勤時刻の差
レセプト時期点検、返戻確認、再請求準備月末月初だけ残業が集中していないか
検査日準備、片付け、説明補助予約枠と人員配置の整合
スタッフ欠勤時代替勤務、早出、居残り固定残業的な運用になっていないか

時間外労働の上限と院長が見るべき数字

厚生労働省は時間外労働の上限規制について、原則として月45時間・年360時間を上限とし、臨時的な特別の事情がある場合でも一定の制限があると説明しています。クリニックの一般スタッフにも、こうした上限を前提に勤務実態を管理する必要があります。

ここで大切なのは、上限に近づいてから慌てるのではなく、月中で早めに兆候を見ることです。特に受付、医療事務、看護師で残業の偏りが出ると、給与計算、賞与評価、採用計画にも影響します。残業時間は労務リスクであると同時に、診療オペレーションの詰まりを示す経営指標です。

院長が月次で確認したい指標は、職種別残業時間、患者数あたり残業時間、残業代を含む人件費率、受付終了後30分超の退勤回数です。数字を並べると、診療枠の詰め込みすぎ、会計導線の遅れ、レセプト教育不足など、改善点が見えやすくなります。

クリニックで残業を減らす実務手順

Step 1: 退勤時刻と診療終了時刻を分けて集計する

診療が終わった時刻と、スタッフが実際に退勤した時刻を分けます。差が大きい日を確認すると、片付け、会計、電話、レセプト、院内清掃のどこに時間が残っているかが分かります。

Step 2: 職種別に残業の山を見つける

看護師だけ、受付だけ、月末だけなど偏りを見ます。全体平均だけでは、特定スタッフへの負担集中を見逃します。

Step 3: 予約枠と人員配置を調整する

診療終了直前に検査や説明が集中するなら、予約枠や締め時間を見直します。単に「早く帰るように」と伝えるだけでは、未処理業務が翌日に移るだけです。

Step 4: 月次試算に人件費率として反映する

残業代は単月の給与だけでなく、賞与原資、採用追加、診療時間変更の判断にも関係します。税理士法人 辻総合会計グループでは、残業時間と人件費率を月次試算の中で確認し、社労士と連携しやすい資料に整理します。

36協定を出していても安心できない注意点

36協定は、無制限に残業を認める書類ではありません。労働者代表の選び方、協定の有効期間、届出内容、実際の勤怠記録がずれていると、後から説明が難しくなります。

固定残業代や手当で処理している場合でも、実労働時間の把握は必要です。クリニックは中抜け、土曜半日、繁忙期対応など勤務パターンが複雑になりがちです。

税務・会計面では、残業代の未払いや過少計上があると、決算時の人件費、資金繰り、採用予算にも影響します。労務書類と会計数字を別々に管理しないことが、院長の判断負担を減らします。

よくある質問

Q: 36協定を出していれば残業代を払わなくてもよいですか? ▼
いいえ。36協定は法定労働時間を超える労働を可能にする手続きであり、割増賃金の支払い義務とは別です。実際の勤怠に基づいて給与計算する必要があります。
Q: レセプト時期だけ残業が多い場合も問題になりますか? ▼
はい。月末月初だけでも時間外労働として管理します。上限規制、36協定の範囲、特定スタッフへの偏り、人件費率への影響を確認します。
Q: 院長が何から確認すればよいですか? ▼
まず直近3か月の退勤時刻、診療終了時刻、職種別残業時間、残業代を確認します。そこから予約枠、人員配置、会計導線の見直しに進むと実務的です。
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クリニック労務管理の基本|就業規則と残業対策を税理士が解説

クリニックの労務管理は、就業規則の整備と残業の抑制が要点です。本記事では、就業規則が必要となる条件、36協定と時間外労働の上限規制、医療機関の働き方改革(医師の上限)を踏まえ、現場で実行できる残業対策を具体的に整理します。スタッフが適切な条件で働けるように、労働時間・賃金・休日休暇・服務規律・評価や懲戒などのルールを。

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まとめ

  • 36協定は、残業を増やすためではなく残業を見える化するための基礎資料です。
  • 受付終了後、レセプト時期、検査日、欠勤時の残業を職種別に確認します。
  • 残業時間は人件費率、採用予算、診療時間変更の判断に直結します。
  • 辻総合会計グループでは、勤怠データと月次損益を並べ、社労士と連携しやすい経営資料として整理します。

月次試算に落とすと見える改善ポイント

残業管理を労務担当だけの仕事にすると、院長の判断が遅れます。月次試算では、売上、患者数、人件費、残業代、法定福利費を並べ、残業が利益をどれだけ圧迫しているかを確認します。たとえば、患者数は増えているのに利益が伸びない月は、受付終了後の残業、検査準備、レセプト点検の追加時間が隠れていることがあります。

数字を見るときは、単月の残業代だけでなく、常態化しているかを確認します。3か月連続で同じスタッフに残業が集中しているなら、人員不足、教育不足、予約枠の詰め込み、特定業務の属人化が疑われます。院長が見るべきなのは「誰が頑張ったか」ではなく、「どの工程が詰まっているか」です。

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月次で見る数字確認する意味改善の方向性
残業代総額利益を圧迫していないか予約枠、締め作業、分担の見直し
職種別残業時間特定職種に偏っていないか教育、採用、業務移管
患者数あたり残業忙しさに対する効率動線、会計、検査枠の改善
人件費率売上とのバランス診療単価、勤務時間、給与設計

辻総合会計グループでは、残業削減を単なるコストカットではなく、診療品質と定着率を守る経営改善として確認します。

社労士・税理士・院長の役割分担

36協定の作成、労使代表の選出、就業規則、割増賃金の法的判断は、社労士と確認する領域です。一方で、残業代が資金繰りに与える影響、採用した場合との比較、診療時間変更の採算、ベースアップ評価料や賃上げ原資との整合は、税理士が整理しやすい領域です。

院長は、どちらか一方に丸投げするのではなく、社労士には制度・手続き、税理士には数字・資金繰りを確認する形にすると実務が進みます。特に、診療時間を延ばす、土曜午後を始める、夜診を追加する、といった判断では、売上増だけでなく残業代、法定福利費、採用費、離職リスクを同時に見ます。

36協定の更新時期を、診療時間と人員計画を見直す年1回の経営点検日にすると、書類対応で終わらず、現場改善につながります。

公開前に院長が確認したいチェックリスト

36協定の記事を読んだあとに、院長が最初に行うべきことは書類探しではなく、直近の勤怠データを確認することです。協定届があるか、協定の有効期間内か、労働者代表の選出に無理がないか、自院が週40時間原則か週44時間特例の対象になり得るか、実際の残業が協定範囲に収まっているかを順に見ます。

次に、給与明細と月次試算を照合します。残業時間が増えているのに残業代が増えていない、残業代は増えているのに患者数や売上が伸びていない、特定スタッフだけ残業が多い、という状態は要注意です。社労士へは労務手続き、税理士へは人件費率と資金繰りを相談すると、論点が整理しやすくなります。

  • 36協定の有効期間と届出状況
  • 常時使用労働者数と週44時間特例の該当可能性
  • 職種別・スタッフ別の残業時間
  • 受付終了後30分以上の退勤回数
  • 残業代と法定福利費を含む人件費率
  • 診療時間延長や予約枠変更の採算

この確認により、残業管理は後追い処理ではなく診療体制の改善材料になります。

専門家へ相談する前に準備する資料

36協定と残業管理を相談する前には、直近3か月の勤怠一覧、残業代を含む給与明細、診療時間表、受付終了後の退勤時刻、既存の36協定届をそろえます。常時使用労働者数も確認し、週40時間原則か週44時間特例の対象になり得るかを社労士に確認できる状態にします。

税理士へは、残業代と法定福利費を含めた人件費率、診療時間延長時の採算、追加採用した場合との比較を相談します。辻総合会計グループでは、労務判断そのものを代替せず、社労士が判断しやすい勤怠・給与・月次損益資料に整えます。


参照ソース

  • 厚生労働省「時間外労働の上限規制」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html
  • 厚生労働省「36協定届の作成支援ツール」: https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/saburoku/
  • 愛媛労働局「法定労働時間 よくある質問と答え」: https://jsite.mhlw.go.jp/ehime-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/jigyounushi/2040201.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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