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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック閉院時のスタッフ対応|実務を税理士が解説

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クリニック閉院時のスタッフ対応|実務を税理士が解説

クリニック閉院時のスタッフ対応とは

クリニック閉院時のスタッフ対応とは、閉院日から逆算して、雇用終了の伝え方、賃金・退職金の精算、離職票などの退職書類交付を漏れなく進める実務です。とくに院長や事務長にとっては、診療の終了準備と並行して労務対応を進めなければならない点が難所ではないでしょうか。閉院だから自動的に問題なく解雇できるわけではなく、手順を誤ると未払賃金や離職理由を巡る紛争につながります。厚生労働省の案内でも、解雇には30日前予告または平均賃金30日分以上の解雇予告手当が必要とされています。

閉院時にまず押さえたいのは、スタッフごとに「解雇」「合意退職」「有期契約満了」が混在し得ることです。実務では一律処理を避け、雇用形態、就業規則、退職金規程、雇用保険加入状況を一覧化してから進めるのが安全です。

クリニック閉院で従業員を解雇するときの基本ルール

閉院に伴い従業員を辞めてもらう場合、最初に確認すべきなのは解雇予告です。労働基準法20条では、使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告するか、30日に不足する日数分以上の平均賃金を支払う必要があります。即時解雇にするなら、原則として解雇の申渡しと同時に解雇予告手当を支払う実務が基本です。

閉院だから即時解雇できるとは限らない

閉院予定であっても、解雇は常に有効とは限りません。厚生労働省のQ&Aでも、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない場合は無効とされています。院長としては、閉院の事実、診療終了日、事業継続が困難な事情、スタッフへの説明経過を文書で残すことが重要です。

ここがポイント
スタッフとの話し合いで合意退職にできる場合でも、退職届の提出日、最終出勤日、未消化有休の扱い、離職理由の整理は書面で残しましょう。後日の「自己都合か、退職勧奨か、解雇か」の争いを避けやすくなります。

解雇予告手当はいくら必要か

解雇予告手当は、30日に足りない日数分以上の平均賃金です。たとえば閉院日まで20日しか猶予がないなら、10日分以上の平均賃金が必要です。閉院直前は資金繰りが逼迫しやすいため、人件費の最終支払資金を先に確保することが実務上の優先事項です。

クリニック閉院時の退職金と未払賃金の考え方

「閉院するなら退職金は必ず必要ですか」と聞かれることがありますが、退職金制度は法律上必須ではありません。厚生労働省の資料でも、退職金制度は必ず設けなければならないものではない一方、制度を設けた場合は、適用範囲、支給要件、計算方法、支払時期などを就業規則に記載する必要があるとされています。つまり、退職金の有無は就業規則や退職金規程で決まるということです。

退職金がある場合のチェックポイント

退職金規程がある場合は、次の点を確認します。

  • 閉院時の自己都合・会社都合の区分
  • 勤続年数の計算基準日
  • 支給率や功労加算の有無
  • 支払日と源泉徴収の要否

よくある相談として、規程上は支給義務があるのに、資金不足で後回しにしてしまうケースがあります。しかし、閉院後は連絡や説明が難しくなり、未払トラブルに発展しやすくなります。院長個人と法人・個人事業の資金を混同せず、閉院前に支払計画を作ることが重要です。

未払賃金は退職時にどう扱うか

退職した労働者から請求があった場合、使用者は7日以内に賃金を支払い、労働者の権利に属する金品を返還しなければならないとされています。最終給与、残業代、通勤費精算、預り金の返還などは後送りにせず、退職日基準で整理しておく必要があります。

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項目法律上の基本実務上の確認点
解雇予告30日前予告または不足日数分の平均賃金閉院日から逆算して通知日を決定
退職金制度がある場合に支給就業規則・退職金規程を確認
最終給与退職者の請求があれば7日以内支払残業代・有休精算を含める
離職票離職票希望者には離職証明書提出が必要離職理由の記載を本人確認

離職票と退職証明書の手順

閉院時に見落とされやすいのが、離職票と退職証明書は別物だという点です。離職票は雇用保険の失業給付手続に使う書類で、事業主は資格喪失届を原則として離職日の翌々日から10日以内に提出し、離職票の交付希望者については離職証明書を添えて手続します。

一方、退職証明書は労働基準法22条に基づく書類で、労働者が請求した場合、使用者は遅滞なく交付しなければなりません。しかも、離職票を交付しただけでは退職証明書の交付義務を果たしたことにはなりません。

Step 1: 離職票の希望有無を退職前に確認する

スタッフ全員について、雇用保険の加入有無と離職票希望の有無を確認します。短時間勤務者や扶養内スタッフは、そもそも雇用保険に入っていないこともあります。

Step 2: 離職理由の記載内容を本人と確認する

閉院に伴う離職は、失業給付の取扱いにも影響するため、離職理由の記載は慎重に行います。本人の認識と食い違うと、後でハローワーク照会が入ることがあります。

Step 3: 退職証明書の請求に備える

再就職先から提出を求められる場合があります。使用期間、業務内容、地位、賃金、退職事由など、請求された事項だけを記載するのが原則です。

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クリニック閉院の退職手続きはいつから始めるべきか

実務では、閉院日直前では遅いことが少なくありません。少なくとも閉院予定日の1〜2か月前には、スタッフ一覧、雇用契約、就業規則、退職金規程、社会保険・雇用保険の加入状況を整理しておくのが現実的です。

閉院前に進めたい実務チェック

  • 閉院日と最終診療日を確定する
  • 解雇予告日または合意退職日を決める
  • 最終給与、解雇予告手当、退職金の見込額を試算する
  • 離職票の希望確認を取る
  • 貸与品、制服、カルテ以外の私物返還ルールを決める
  • 保険医療機関の廃止届など対外手続も並行管理する

保険医療機関の廃止については、地方厚生局への届出が必要です。閉院対応は労務だけで完結しないため、医療法・保険診療・税務・社会保険を横断して日程表を作るのが有効です。

ここがポイント
個人経営の診療所か、医療法人かで、閉院時の税務・残余財産・役員退職金の論点は変わります。スタッフ対応は共通部分が多い一方、最終的な資金計画は事業形態別に確認が必要です。

閉院時のスタッフ対応で起こりやすいトラブル

離職理由の認識違い

「自己都合退職で処理されたが、実際は閉院による退職ではないか」という争いは起こりがちです。面談記録、通知書、本人確認欄を残しておくことが重要です。

退職金が慣行で曖昧になっている

規程がなく、過去に何となく支給していた場合、期待権の問題が出やすくなります。閉院時だけ不支給にする前に、過去運用を必ず確認しましょう。

最終支払が遅れる

診療報酬の入金待ちで支払いを先送りすると、最後のトラブルになりやすい論点です。閉院の意思決定段階で、給与・手当・退職金の原資確保を先に行うべきです。

よくある質問

Q: クリニック閉院なら、全スタッフを同日に即時解雇できますか? ▼
原則として、30日前予告または不足日数分の解雇予告手当が必要です。さらに、解雇は客観的合理性と社会通念上の相当性も問題になるため、閉院だから自動的に即時解雇できるわけではありません。
Q: 退職金は必ず払わなければなりませんか? ▼
法律上、退職金制度は必須ではありません。ただし、就業規則や退職金規程で定めている場合は、その定めに従う必要があります。
Q: 離職票は全員に必要ですか? ▼
雇用保険の被保険者で、離職票の交付を希望する人には必要です。希望しない場合は、資格喪失届に離職証明書を添えない扱いもあります。
Q: 離職票を出せば、退職証明書は不要ですか? ▼
いいえ、別物です。労働者から退職証明書の請求があれば、離職票とは別に遅滞なく交付する必要があります。

まとめ

  • クリニック閉院時は、解雇予告、最終給与、退職金、離職票を閉院日から逆算して管理する
  • 解雇は30日前予告または解雇予告手当が原則で、閉院でも手順省略はできない
  • 退職金は法律上必須ではなく、就業規則や退職金規程の確認が前提
  • 離職票と退職証明書は別物で、どちらも実務上の見落としが多い
  • 個別事情により最適対応は異なるため、閉院決定時点で税理士・社労士と日程を共有するのが安全

参照ソース

  • 厚生労働省「解雇予告の期間&手当の計算方法と支払時期」: https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/kaiko/q4.html
  • 厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」: https://www.mhlw.go.jp/content/000763185.pdf
  • 厚生労働省「雇用保険の具体的な手続き」: https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_procedure.html
  • 厚生労働省「第8章 退職」: https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000118971.pdf
  • 厚生労働省「保険医療機関・保険薬局の廃止・休止・再開の届出」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/ichiran_haishi.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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