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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック閉院時の患者引き継ぎ|カルテ保管義務を解説

9分で読めます
クリニック閉院時の患者引き継ぎ|カルテ保管義務を解説

クリニック閉院時の患者引き継ぎで最初に押さえるべきこと

クリニック閉院時の患者引き継ぎとは、閉院後も患者が治療を継続できるよう、紹介先の確保と診療情報の整理を行うことです。閉院を予定している院長にとっての核心は、単に廃止届を出すことではなく、患者の継続受診とカルテの適切な保存を両立させる点にあります。

特に慢性疾患の患者、高齢者、在宅医療の利用者が多い診療所では、閉院告知が遅れると通院中断や投薬切れが起こりやすくなります。当法人でも、閉院手続きそのものより「どこに患者をつなぐか」「カルテを何年、どう保管するか」で相談が集中します。閉院は経営判断ですが、患者対応は医療提供体制の一部として丁寧に進める必要があります。

閉院時の患者対応の流れと紹介先の確保

閉院時の患者対応は、受付での口頭案内だけでは不十分です。閉院日、最終診療日、紹介先の候補、問い合わせ窓口を早めに整理し、患者ごとに必要な対応を分けることが重要です。

閉院患者への周知はいつから始めるべきか

一般には、閉院日から逆算して2〜3か月前には院内掲示、配布文書、ホームページで告知を始めるのが実務的です。特に定期受診患者には、次回来院時に個別説明を加えると混乱を抑えやすくなります。

告知文には、少なくとも次の事項を記載します。

  • 最終診療日
  • 閉院日
  • 紹介状発行の受付方法
  • カルテ開示や証明書発行の窓口
  • 閉院後の連絡先

紹介先は1か所ではなく複数候補で準備する

患者紹介は「近くの医療機関を案内する」だけでは足りません。診療科、通院距離、検査体制、在宅対応の有無、患者数の受入余力を踏まえ、複数候補を用意しておく方が安全です。特に糖尿病、高血圧、精神科、整形外科の継続患者は、通院中断リスクが高いため優先順位を付けて引き継ぎます。

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患者区分優先対応紹介時のポイント
慢性疾患の定期通院患者最優先投薬継続、検査履歴、次回受診時期を明記
検査経過観察中の患者高い画像・検査値の推移を整理
在宅医療・高齢患者最優先家族・ケアマネ・訪問看護との連携確認
軽症で受診間隔が長い患者通常近隣候補を複数案内
ここがポイント
閉院直前に患者説明を集中させると、紹介状作成と問い合わせ対応が一気に増えます。紹介先候補の打診は、患者周知より前に進めておくと実務が安定します。

閉院患者の紹介状はどう作るか

閉院時の紹介状は、通常の診療情報提供書よりも「継続診療に必要な要点」を明確にすることが重要です。単なる挨拶文ではなく、次の医療機関が診療を再開しやすい内容にまとめる必要があります。

閉院 患者 紹介状に入れるべき項目

紹介状には、最低限次の項目を記載します。

  • 傷病名と現在の病状
  • これまでの治療経過
  • 処方内容と薬剤変更歴
  • 直近の検査結果
  • アレルギー歴、副作用歴
  • 今後必要と思われるフォロー

紹介先が複数あり得る場合でも、患者の選択を前提に汎用性のある内容で作成しておくと効率的です。画像や検査データを別途添付する場合は、媒体の閲覧可否も確認しておきます。

診療情報の提供は本人同意を前提に進める

患者情報は要配慮個人情報に当たるため、紹介先へ診療情報を提供する場面では、本人の意思確認を前提に進めるのが基本です。閉院が決まったからといって、一律に全患者の情報を第三者へ渡してよいわけではありません。受付で申込書を整備し、紹介状交付、カルテ開示、検査データ提供の区分を整理しておくと管理しやすくなります。

カルテ保管期間は何年か

カルテ保管期間は何年か、という質問には、まず法定保存期間は5年と答えるのが基本です。ただし、実務では「5年たてば必ず廃棄してよい」とまでは言い切れません。継続治療や後日の証明対応を考えると、5年超の保存を検討する場面があります。

閉院 カルテ 保管期間の基本

医師法では、診療録は5年間保存しなければならないとされています。また、保険診療に関する記録も、患者の診療録については完結の日から5年間保存する整理です。したがって、閉院後も最低5年間の保存体制を確保する前提で動く必要があります。

5年を超えて保存を検討したいケース

法定保存は5年でも、次のような場合は長めの保存が実務上有力です。

  • 継続的な治療が想定される
  • 医療訴訟や説明請求の可能性がある
  • 労災、障害年金、生命保険などの証明請求が見込まれる
  • 長期経過観察が重要な疾患を多く扱う

紙カルテか電子カルテかで管理方法は異なりますが、閉院後の保管責任者、保管場所、問い合わせ窓口を明確にしておかないと、後日対応できなくなります。

ここがポイント
「保存義務5年」と「実務上5年超保存が望ましいこと」は別論点です。法定年限だけで判断せず、診療内容と閉院後の問い合わせリスクを踏まえて決めることが重要です。
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クリニック閉院時の進め方をStepで確認

患者引き継ぎとカルテ保存は、閉院届の提出と並行して準備します。以下の順で進めると抜け漏れを減らせます。

Step 1: 閉院日と最終診療日を確定する

賃貸借契約、スタッフ退職、医療機器撤去、レセプト請求の締め日を踏まえて日程を固めます。

Step 2: 紹介先候補を確保する

近隣医療機関へ事前相談し、受入可能な患者層を確認します。在宅患者や紹介頻度の高い患者は先行して調整します。

Step 3: 患者への周知を開始する

院内掲示、個別案内、ホームページ掲載、電話問い合わせ対応の文面を統一します。必要に応じて郵送も検討します。

Step 4: 紹介状と診療情報の整理を進める

直近受診者から順に、傷病名、処方、検査結果を整理し、紹介状発行申込の導線を作ります。

Step 5: カルテ保管体制を決める

閉院後5年間以上を見据えて、保管場所、管理責任者、開示請求への対応方法を文書化します。電子カルテは閲覧環境の維持費も確認が必要です。

Step 6: 廃止届等の行政手続きを進める

診療所の廃止手続きに加え、保険医療機関の廃止届、各種指定の返上、労務・税務・社会保険の整理を並行して行います。

閉院時に見落としやすい注意点

閉院対応で多い失敗は、患者案内をした時点で実務が終わったと考えてしまうことです。実際には、閉院後に証明書発行、診療録開示、紹介先からの照会が発生します。

紙カルテ・電子カルテのどちらも保管方法を明文化する

紙カルテは保管場所の確保、電子カルテは閲覧環境やデータ抽出手段の維持が必要です。ベンダー解約を急ぎすぎると、閉院後に必要なデータが取り出せないことがあります。

スタッフ任せにせず院長名義の窓口を残す

閉院後は元スタッフがすでに退職していることも多く、問い合わせ先が消えやすくなります。少なくとも保存期間中は、院長または法人として連絡先を残す設計が安全です。

個別事情で保存年限や対応方法が変わる

産科、小児科、在宅、自由診療中心など、診療内容によってリスクは変わります。一律のテンプレート処理ではなく、患者構成に応じた設計が必要です。

よくある質問

Q: カルテ保管は何年必要ですか? ▼
法定上の基本は5年です。ただし、継続治療の必要性や後日の証明請求、紛争対応の可能性を考えると、5年超の保存を検討することがあります。
Q: 閉院時は全員に紹介状を作る必要がありますか? ▼
一律ではありません。ただし、慢性疾患の継続患者、検査継続が必要な患者、在宅患者などは優先して紹介状を準備した方が安全です。
Q: 患者情報を紹介先へ送るときに同意は必要ですか? ▼
原則として本人の意思確認を前提に進めるべきです。閉院を理由に包括的に第三者提供するのではなく、紹介状交付や情報提供の手続きを整備しておくことが重要です。
Q: 閉院後のカルテ問い合わせ窓口は必要ですか? ▼
必要です。閉院後も診療録開示、証明書発行、紹介先からの照会が起こり得るため、保存期間中の連絡先と対応責任者を明確にしておくべきです。

まとめ

  • クリニック閉院時は、廃止届より先に患者の継続受診体制を設計することが重要
  • 紹介先は複数候補を確保し、慢性疾患や在宅患者を優先して引き継ぐ
  • カルテの法定保存期間は5年だが、実務上は5年超保存を検討することがある
  • 紹介状や診療情報の提供は、本人同意を前提に整理する
  • 閉院後も問い合わせ窓口、保管責任者、データ閲覧環境を残しておく必要がある

参照ソース

  • 厚生労働省「診療録の保存年限に係る現行法令上の規定について」: https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/001230827.pdf
  • 厚生労働省「保険医療機関・保険薬局の廃止・休止・再開の届出」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/ichiran_haishi.html
  • 個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」: https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
  • 厚生労働省「診療情報の提供等に関する指針」: https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0623-15m.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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