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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック内装の耐用年数と償却方法|税理士が解説

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クリニック内装の耐用年数と償却方法|税理士が解説

クリニックの内装工事は何年で償却するのか

クリニックの内装工事は、「内装だから一律で○年」ではありません。 院長や開業準備中の方にとって本当の問題は、支出した工事費が「建物」「建物附属設備」「修繕費」のどれに当たるかで、損金算入のタイミングが大きく変わる点です。とくに賃貸テナントで開業する場合、壁・床・天井の造作と、電気・給排水・空調などの設備が混在しやすく、誤って一括処理すると税務調査で説明が難しくなります。

税務上の結論を先にいうと、クリニックの内装工事は、建物本体に近い造作は建物または内部造作、配線・給排水・空調などは建物附属設備として判定するのが基本です。さらに、通常の原状回復や維持管理にすぎないものは修繕費として当期費用にできる余地があります。税理士法人 辻総合会計でも、開業時の見積書を工事項目ごとに分解して判定する実務が非常に重要だと考えています。

クリニック内装工事の減価償却は3つに分けて考える

クリニックの内装工事は、まず次の3区分で整理すると判断しやすくなります。

建物としてみるもの

壁、床、天井の下地や仕上げ、固定された間仕切りなど、建物の構造や使用価値を形成する部分は、原則として建物に近い資産として扱います。自己所有物件なら建物本体に含めて耐用年数を考え、賃貸物件なら「他人の建物に対する造作」として合理的な見積耐用年数で処理する場面が出てきます。

建物附属設備としてみるもの

電気配線、照明、受配電設備、給排水設備、衛生設備、ガス設備、一定の空調設備などは、建物附属設備として建物本体と区分して耐用年数を適用するのが原則です。クリニックでは、手洗い増設、レントゲン室周辺の電気工事、給湯・給排水、待合室と診察室の空調更新などが典型です。

修繕費としてみるもの

壊れた部分の補修、クロスの張替え、部分的な補修工事などで、資産の価値を高めたり使用可能期間を延長したりしないものは修繕費になる可能性があります。逆に、機能向上やレイアウト変更を伴う大規模改装は資本的支出となり、減価償却が必要です。

ここがポイント
内装工事の税務判断は、工事名ではなく実質で決まります。「内装一式」「改装工事一式」とだけ書かれた請求書では判定が難しいため、見積書・請求書は電気、給排水、空調、造作、仕上げごとに分けてもらうのが安全です。

建物附属設備の償却年数はどう決まるか

国税庁の耐用年数表では、建物附属設備のうち代表的なものとして、電気設備(蓄電池電源設備を除く)は15年、給排水・衛生設備およびガス設備は15年と整理されています。したがって、クリニックの開業工事でも、設備系の工事は15年償却になるケースが多くなります。

クリニックでよく出る設備の考え方

以下は、実務上よく出る論点を整理したものです。

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工事項目の例主な税務区分耐用年数の考え方
照明配線、分電盤、電気配線工事建物附属設備原則15年
手洗い、給湯、排水、トイレ配管建物附属設備原則15年
ガス配管工事建物附属設備原則15年
固定間仕切り、床・壁・天井の造作建物または内部造作所有形態と実態で判定
単なる補修、原状回復修繕費の可能性当期費用の可能性

ここで重要なのは、同じ「内装工事」でも設備部分と造作部分を分けることです。たとえば受付カウンターの造作と、その内部の配線工事では税務区分が異なることがあります。見積書を一式処理すると、本来15年で償却すべき設備まで建物扱いにしてしまう、あるいは逆に短く見積もりすぎるリスクがあります。

償却方法は定額法が基本

平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備は、税務上、定額法で償却するのが基本です。したがって、2026年に取得するクリニックの建物附属設備については、原則として定額法で毎期均等に費用化していくイメージになります。開業初年度の利益計画を作る際は、支払総額ではなく、年間の償却費ベースで収支を見ないと資金繰りを誤りやすくなります。

賃貸テナントの内装は「内部造作」の考え方が重要

テナント開業のクリニックでは、自己所有の建物への支出とは別に、他人の建物に対する造作という論点が出ます。国税庁の取扱いでは、賃借した建物に造作した場合、その造作は一の資産として、建物の耐用年数や造作の種類、用途、使用材質などを勘案して合理的に見積もるのが原則です。

内装 耐用年数 賃貸で見落としやすい点

賃貸物件では、壁や床、固定カウンターなど建物附属設備に当たらない内部造作は、法定耐用年数を機械的に当てるのではなく、合理的な見積りが必要になります。一方で、電気・給排水など建物附属設備に対する造作なら、その設備の耐用年数で償却する考え方になります。

また、賃借期間が定められており、更新できず、有益費請求や買取請求もできない契約であれば、賃借期間を耐用年数として償却できる取扱いがあります。賃貸借契約書の原状回復条項や買取請求権の有無は、税務処理にも影響するため、開業前に確認しておくべきです。

具体例で考える

たとえば、10年の定期借家契約で入居し、更新なし、退去時に原状回復義務があり、造作買取請求もできないケースでは、内部造作部分を賃借期間10年で償却できる可能性があります。これに対して、給排水や電気設備部分は、別途建物附属設備として15年償却になることがあります。つまり、同じ工事でも契約条件と工事項目で処理が分かれるのです。

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修繕費と資本的支出の違いをどう見るか

開業後の改装では、「これは修繕費ですか、それとも減価償却ですか」という相談が多くあります。判断基準は、通常の維持管理か、価値増加・耐用年数延長かです。

修繕費になりやすいもの

  • 既存クロスの張替え
  • 壊れた設備の同等品交換
  • 小規模な塗装補修
  • 既存機能を維持する範囲の補修

資本的支出になりやすいもの

  • 診察室を増設する間仕切り工事
  • 手洗い場や配管の新設
  • レイアウト変更を伴う全面改装
  • 性能向上を伴う空調更新

Step 1: 工事の目的を確認する

壊れたものを元に戻すのか、機能を追加・強化するのかを見ます。

Step 2: 見積書を工事項目別に分解する

電気、給排水、造作、仕上げ、設備機器で区分します。

Step 3: 資産計上部分と修繕費部分を分ける

一つの請求書でも、全額を同じ処理にしないことが重要です。

Step 4: 賃貸借契約書も確認する

賃借期間、更新可否、原状回復、有益費請求権の有無を確認します。

税務調査では、工事後に診療能力が上がったか、部屋数が増えたか、設備機能が上がったかが見られます。形式的に「修繕」と書いてあっても、実質が改良なら資本的支出です。

ここがポイント
少額の資産については、取得価額10万円未満なら即時費用、10万円以上20万円未満なら一括償却資産、一定の青色申告者は30万円未満の少額減価償却資産の特例が使える場合があります。ただし適用期限や対象外資産の確認が必要です。

クリニック開業時に失敗しない実務ポイント

内装工事の税務で失敗しやすいのは、工事完了後にまとめて相談するケースです。支払後だと請求書の分解が難しく、税務上の有利不利以前に、説明資料が不足しがちです。

実務で押さえたいポイント

  • 契約前に、見積書を工種別に分けてもらう
  • 医療機器、什器備品、内装、建物附属設備を混在させない
  • 賃貸借契約書の更新条項と原状回復条項を確認する
  • 開業年度の利益予測に償却費を反映する
  • 消費税の税込経理・税抜経理で取得価額判定が変わる点に注意する

よくある相談として、「開業時に数千万円かけたのに、思ったほど初年度の経費にならなかった」というものがあります。これは現金支出と損金算入額のズレが原因です。とくに自己資金だけでなく借入金もある場合、返済額と償却費は一致しないため、税額だけでなく資金繰り表まで含めて確認する必要があります。

よくある質問

Q: クリニックの内装工事は全部15年で償却できますか? ▼
いいえ。一律ではありません。電気設備、給排水・衛生設備、ガス設備などは15年となることが多い一方、壁・床・天井などの内部造作は建物または賃借建物への造作として別の考え方になります。修繕費になる部分が混ざることもあります。
Q: 賃貸テナントの内装は法定耐用年数ではなく賃貸借契約の年数で償却できますか? ▼
一定の場合には可能です。賃借期間の定めがあり更新できず、有益費請求や買取請求ができない契約であれば、その賃借期間を耐用年数として償却できる取扱いがあります。契約書確認が必須です。
Q: 空調工事は建物附属設備ですか、それとも備品ですか? ▼
方式によります。建物全体や相当広範囲にダクト等で機能するものは建物附属設備と判断されやすく、個別の機器として独立性が高いものは器具備品になることがあります。機種や施工内容で判定が分かれるため、見積書と仕様書を確認してください。

まとめ

  • クリニックの内装工事は、建物、建物附属設備、修繕費に分けて判定するのが基本
  • 電気設備、給排水・衛生設備、ガス設備は建物附属設備として15年償却になることが多い
  • 2016年4月1日以後取得の建物附属設備は、原則として定額法で償却する
  • 賃貸テナントの内部造作は、契約条件によって賃借期間償却が認められることがある
  • 見積書の分解と賃貸借契約書の確認が、適正な税務処理の出発点になる

個別の工事内容や契約条件により結論は変わります。実際の申告では、見積書、請求書、工事内訳、契約書をそろえたうえで、顧問税理士に個別判定を依頼するのが安全です。


参照ソース

  • 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
  • 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf
  • 国税庁「第2節 建物附属設備」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/700525/02/02_02.htm
  • 国税庁「No.5406 他人の建物に対する造作の耐用年数」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5406.htm
  • 国税庁「第8節 資本的支出と修繕費」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_08.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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