
執筆者:辻 勝
会長税理士
クリニック変動金利vs固定金利|開業融資の選び方

変動金利と固定金利の結論|どちらを選ぶべきか
クリニック開業融資における金利選択は、「金利上昇リスクを取るか、コストを固定するか」の判断です。
特に開業医にとっては、返済負担の安定性と総支払額のバランスが経営の成否を左右します。
開業初期は患者数が不安定であるため、「返済額の見通しが立つかどうか」が重要な論点です。一方で、金利差による総返済額の違いも無視できません。
本記事では、変動金利と固定金利の違い、リスク、具体的な選び方を実務目線で解説します。
変動金利とは|仕組みと特徴
変動金利とは、市場金利(主に短期プライムレート)に連動して金利が見直されるタイプの融資です。
変動金利の特徴
- 初期金利が低い(2025年時点で0.8%〜1.2%程度)
- 半年ごとに金利見直し
- 返済額は5年ごとに変更(元利均等の場合)
変動金利のメリット
- 総返済額が少なくなりやすい
- 開業初期のキャッシュフローが楽
変動金利のリスク
最大のポイントは金利上昇リスクです。
例えば、金利が1%上昇すると、以下のような影響が出ます。
| 借入額 | 期間 | 金利+1%時の増加額 |
|---|---|---|
| 5,000万円 | 15年 | 約400万円増加 |
| 1億円 | 20年 | 約1,000万円増加 |
固定金利とは|仕組みと特徴
固定金利とは、借入時に決めた金利が返済終了まで変わらない融資です。
固定金利の特徴
- 金利は1.5%〜2.5%程度(期間により変動)
- 返済額が一定
- 金利上昇の影響を受けない
固定金利のメリット
- 返済額が完全に固定される
- 経営計画が立てやすい
- 金利上昇局面でも安心
固定金利のデメリット
- 初期金利が高い
- 総返済額は増えやすい
変動金利vs固定金利の違い比較
両者の違いを整理すると以下の通りです。
| 項目 | 変動金利 | 固定金利 |
|---|---|---|
| 初期金利 | 低い | 高い |
| 返済額 | 変動する | 一定 |
| リスク | 金利上昇 | 機会損失 |
| 向いている人 | 攻め型 | 安定型 |
重要なのは、「金利がどう動くか」ではなく「自院がどのリスクを取れるか」です。
変動金利のリスク|2026年の金利環境
2025年以降、日本は長期的な利上げ局面に入りつつあります。
金利上昇がクリニックに与える影響
- 返済額の増加
- 設備投資余力の減少
- 利益率の圧迫
特に、開業直後のクリニックでは収益が安定していないため、金利上昇の影響が大きくなります。
実務上の注意点
- 変動金利は「低金利が続く前提」で選ばない
- 借入期間が長いほどリスク増大
- 複数借入(設備・運転資金)で影響が累積
固定金利のメリット|クリニック経営との相性
固定金利は、クリニック経営と非常に相性が良い特徴があります。
なぜ固定金利が向いているのか
- 医療収益は急増しにくい
- 人件費は上昇傾向
- 診療報酬は制度依存
つまり、収益が安定的な業種ほど固定費も安定させるべきという考え方です。
ケーススタディ
当法人で支援した事例では、以下のような違いがありました。
- 変動金利選択 → 金利上昇で年間返済+80万円
- 固定金利選択 → 安定した資金繰り維持
この差は、スタッフ採用や設備更新に影響します。
開業融資の金利選び方|実務的な判断基準
実務では、以下のステップで判断するのが有効です。
判断ステップ
Step 1: 借入額と期間を確認
- 1億円以上・20年以上 → 固定寄り
- 5,000万円未満 → 変動も検討可
Step 2: 収益の安定性を評価
- 開業初期 → 固定推奨
- 既存患者あり → 変動も可
Step 3: リスク許容度を整理
- 安定志向 → 固定
- 余裕資金あり → 変動
Step 4: ミックス戦略検討
- 50%固定+50%変動など分散
よくある質問
Q: 変動金利は今後も上がり続けますか?
Q: 固定金利は損になりませんか?
Q: ミックス(固定+変動)は可能ですか?
まとめ
- 変動金利は低コストだが金利上昇リスクあり
- 固定金利は安心だが総返済額は増えやすい
- 開業初期は固定金利が安全性高い
- 借入額・期間・収益安定性で判断する
- ミックス戦略も有効な選択肢
参照ソース
- 日本銀行「金融政策」: https://www.boj.or.jp/mopo/
- 金融庁「貸出金利の考え方」: https://www.fsa.go.jp/
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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