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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニックのワンオペ診療は可能?限界と対策|税理士が解説

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クリニックのワンオペ診療は可能?限界と対策|税理士が解説

クリニックのワンオペとは何か

クリニックのワンオペ診療とは、院長ひとりで診療と院内運営の大半を回す状態を指します。結論からいうと、無床診療所で短時間・低処置・予約制に絞れば一時的な運営は可能です。しかし、受付、会計、電話対応、医療安全、資格確認、レセプト、清掃、緊急時対応まで含めると、恒常的なワンオペには明確な限界があります。

とくに「スタッフが急に辞めた」「採用しても定着しない」という局面では、院長が診療に集中できず、患者満足と収益の両方が崩れやすくなります。人手不足の問題は単なる人件費の話ではなく、診療の安全性と継続性の問題として捉える必要があります。

厚生労働省の資料では、医療法上の人員配置標準は病院や療養病床を有する診療所を中心に整理されており、適正な医療には一定水準以上の人員確保が必要という考え方が示されています。あわせて、全ての医療機関に医療安全管理体制の整備が求められています。

院長ひとり診療はどこまで可能か

ワンオペが成り立ちやすい診療所

院長ひとり診療が比較的成り立ちやすいのは、次の条件がそろうケースです。

  • 無床診療所である
  • 完全予約制または予約中心で来院数を絞れている
  • 採血、点滴、画像検査などスタッフ依存業務が少ない
  • 自費診療や再診中心で会計フローが単純
  • 電話対応を外部委託している

反対に、初診比率が高い、発熱外来がある、処置が多い、小児や高齢者の介助が必要、レントゲンや採血が多いといった診療所では、院長単独運営の負荷が急増します。「法律上すぐ違法ではない」ことと「現場で安全に回る」ことは別問題です。

ここがポイント
厚生労働省の人員配置資料では、病院や療養病床を有する診療所に人員配置標準が整理されており、医師が常時3人以上いる診療所では専属薬剤師が必要とされています。無床診療所は病床基準の読み方と実務運営を切り分けて考えることが重要です。

院長ひとり診療の限界

ワンオペの限界は、診察能力よりも周辺業務で先に来ます。たとえば、オンライン資格確認は厚生労働省が導入準備の流れを明示しており、新規指定医療機関でも運用準備が必要です。受付不在だと、資格確認や案内、同意取得、トラブル時の初期対応が院長に集中します。

また、医療安全管理体制は全ての医療機関に求められており、事故報告や再発防止、院内ルール整備を「忙しいから後回し」にしにくい領域です。つまり、ワンオペで削りやすいのは単純作業だけで、削ってはいけない業務はむしろ残り続けます。

クリニックスタッフが急に辞めたときの対応

休診せずに優先順位を切り替える

スタッフが急に辞めたときに最初にやるべきことは、「全部を維持する」発想を捨てることです。人手不足時は、診療所の機能を3つに分けて考えると整理しやすくなります。

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業務区分維持すべき水準例
最優先止めない診察、緊急対応、医療安全、資格確認
縮小件数制限で維持初診枠、電話応対、健診、処置
一時停止後回し可任意の物販、院内掲示更新、非急性の案内業務

この切り分けをせずに通常運転を続けると、待ち時間増加、会計ミス、電話不通、クレーム増加が同時発生しやすくなります。結果として既存患者の離脱が進み、採用難に加えて売上まで落ちるのが典型パターンです。

まず1週間でやること

Step 1: 診療枠を絞る

初診枠や高負荷処置枠を減らし、再診中心に切り替えます。午前のみ診療や曜日別の診療メニュー整理も有効です。

Step 2: 受付業務を外出しする

電話代行、予約システム、WEB問診、事前決済などを導入し、院長に集まる雑務を減らします。

Step 3: 応援人材を確保する

派遣、スポット勤務、近隣医療機関との応援、レセプトのみ外注など、常勤採用以外の手段も検討します。

Step 4: 患者への告知を先に行う

「人手不足のため診療時間を一部変更します」と先に伝えたほうが、現場で謝り続けるより傷が浅くなります。

当法人でも、急な退職時に「採用が決まるまで我慢する」より、診療メニューの絞り込みと外注化を先に行った医院のほうが資金流出を抑えやすい傾向があります。人件費を節約しても、院長の診療時間が受付業務で埋まれば本末転倒です。

人手不足時の診療体制はどう組むべきか

ワンオペ前提ではなく「1.5人運営」を目指す

実務上おすすめなのは、完全ワンオペではなく「院長+非常勤1名」または「院長+外注受付」の1.5人運営です。最低1人の補助者がいるだけで、患者導線、電話、会計、物品補充、誘導、締め作業の滞りが大きく減ります。

とくに次の業務は、院長ひとりで抱えない設計が重要です。

  • 受付と会計
  • 電話と予約変更
  • 採血、注射、処置介助
  • レセプト確認
  • 物品在庫と発注
  • 清掃、締め作業、苦情一次対応

デジタル化で削れる業務と削れない業務

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項目デジタル化しやすい人が必要になりやすい
受付予約、WEB問診、事前決済高齢者対応、保険証トラブル
会計自動精算、キャッシュレス返金、説明、例外処理
事務電話代行、レセ外注査定対応、個別確認
診療補助一部の案内文書採血、介助、急変対応

ここで重要なのは、システム導入は人員ゼロを可能にするものではなく、少人数でも事故なく回すための補助手段だという点です。厚生労働省もオンライン資格確認の導入フローや運用を示していますが、実際の院内運用は現場で回す必要があります。

ここがポイント
レントゲン、内視鏡、点滴、発熱外来などを行う診療所は、機器管理や介助、患者導線の観点から、一般内科の軽症再診中心クリニックよりワンオペの難易度が高くなります。診療科ごとに「できる・できない」を分けて設計してください。
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クリニックのワンオペで注意すべきリスク

医療安全と収益の二重悪化

ワンオペの最大リスクは、事故が起きること自体だけではありません。待ち時間増、取りこぼし、キャンセル増、口コミ低下により、患者数がじわじわ減ることです。固定費の大きいクリニックでは、月商が5%から10%落ちるだけでも利益への影響は大きくなります。

よくある相談として、「今月だけ院長ひとりで乗り切りたい」という声があります。しかし、1か月を超えると、院長の疲弊、残業増、判断ミス、レセプト遅延が表面化しやすく、経営面では短期の人件費節約より損失のほうが大きくなりがちです。

判断基準は「患者数」より「業務の種類」

ワンオペの可否を1日患者数だけで判断するのは危険です。1日20人でも、初診が多い、電話が多い、処置が多い、書類作成が多い診療所は厳しくなります。逆に、再診中心で処方主体、予約制が機能している診療所なら、短期間なら院長中心でも回る余地があります。

よくある質問

Q: クリニックは院長ひとりでも開けられますか? ▼
無床で診療内容が軽く、短期間なら可能な場面はあります。ただし、医療安全、受付、会計、資格確認、緊急時対応まで含めると恒常運営は難しいことが多いです。法令上の整理と現場の安全運営は分けて判断する必要があります。
Q: スタッフが急に辞めたら、まず何をすべきですか? ▼
まず診療枠を絞り、初診や高負荷処置を制限し、電話代行やWEB予約へ切り替えることです。そのうえで、非常勤・派遣・外注を組み合わせ、院長が診療以外に奪われる時間を減らします。
Q: ワンオペに向く診療科はありますか? ▼
一般に、予約制で再診比率が高く、採血や処置が少ない業態ほど向きやすいです。一方で、小児、高齢者介助、発熱外来、画像検査、点滴が多い診療所は難易度が上がります。

まとめ

  • クリニックのワンオペは、無床・予約制・低処置なら短期的に可能な場合がある
  • ただし、医療安全、資格確認、会計、電話対応まで含めると恒常運営の負荷は大きい
  • スタッフが急に辞めたら、通常運転を守るより診療枠の縮小と外注化を優先する
  • 人手不足時は完全ワンオペより「院長+非常勤1名」「院長+外注受付」の体制が現実的
  • 個別の診療科、患者層、設備構成によって最適解は異なるため、就業設計と収支の両面から見直すことが重要

参照ソース

  • 厚生労働省「病院・診療所病床に関する主な人員の標準」: https://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/r03_jigyou05a_day1.pdf
  • 厚生労働省「医療機関における医療安全管理体制」: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001554201.pdf
  • 厚生労働省「オンライン資格確認について(医療機関・施術所等、システムベンダ向け)」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08280.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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