
執筆者:辻 勝
会長税理士
外来医師多数区域の開業判断|2026年の機能要請と資金計画

クリニック開業の個別相談
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開業費用、融資、物件、届出、収支計画を、診療科目や地域に合わせて整理します。
外来医師多数区域の開業判断とは
外来医師多数区域での開業判断は、「開業できるか、できないか」だけで決めるものではありません。都道府県の外来医療計画、地域で不足する外来医療機能、医師偏在対策、協議の場への対応、資金計画を一体で確認する必要があります。
この記事は、都市部で新規開業、承継開業、分院展開を検討する勤務医・医療法人理事長に向けて、2026年5月11日時点の公式情報に基づき、外来医師多数区域での機能要請と事業計画の考え方を整理します。候補地の集患力だけでなく、地域に説明できる診療機能が重要になります。

外来医療計画で確認すること
厚生労働省は、外来医療計画について、地域の外来医療機能の偏在・不足等への対応に向けた施策内容を都道府県が医療計画に定めるものと説明しています。開業希望者は、商圏人口や競合数だけでなく、都道府県の外来医療計画を確認する必要があります。
外来医師多数区域の意味
外来医師多数区域は、地域の外来医療提供体制を考えるための重要な指標です。開業を直ちに禁止する言葉として理解するのではなく、地域で不足する機能をどう担うか、協議の場で何を説明するかという観点で見る必要があります。
事業計画に入れる確認項目
| 確認項目 | 見る資料 | 事業計画への反映 |
|---|---|---|
| 区域情報 | 都道府県の外来医療計画 | 候補地の制度リスクを整理する |
| 機能要請 | 初期救急、在宅、学校医、公衆衛生等 | 診療時間・人員・設備を設計する |
| 協議対応 | 協議の場、説明資料、行政窓口 | 開業前スケジュールに入れる |
| 資金計画 | 家賃、人件費、設備、運転資金 | 融資資料の前提を明確にする |
「駅前で患者数が見込める」だけでは、2026年以降の開業説明としては弱くなります。地域機能と採算の両方を示すことが必要です。
医師偏在対策パッケージの見方
厚生労働省の医師偏在対策パッケージでは、地域で必要な医療提供体制の確保、医師確保計画、経済的インセンティブ、外来医師過多区域での新規開業希望者への医療機能要請等が論点として示されています。
開業希望者に関係する論点
外来医師過多区域での新規開業希望者に対し、提供予定の医療機能の届出、協議の場への参加、地域で不足する医療や医師不足地域での医療提供の要請を可能とする方向性が示されています。制度の詳細は今後の実装確認が必要ですが、開業計画では早めに想定しておくべき論点です。
承継開業でも確認が必要
承継開業は既存患者やスタッフを引き継げる利点があります。一方で、診療時間、在宅対応、休日対応、地域連携、医療DX対応などは見直し対象になります。買収価格や内装費だけでなく、地域機能を維持・拡張するコストを資金計画に入れます。
機能要請を事業計画へ落とす手順
Step 1: 候補地の医療計画を確認する
都道府県の外来医療計画、外来医師多数区域、地域で不足する外来機能を確認します。診療圏分析と制度確認を別々にせず、同じ候補地評価表に入れます。
Step 2: 担える機能を選ぶ
初期救急、在宅医療、学校医、予防接種、生活習慣病管理、地域連携など、自院が現実的に担える機能を整理します。すべてを掲げるのではなく、人員と診療時間に合うものを選びます。
Step 3: コストと収入を試算する
在宅対応なら移動時間、車両、オンコール、事務連携が必要です。休日対応なら人件費と代休設計が必要です。機能ごとに、追加収入、固定費、変動費、院長の稼働を分けて試算します。
Step 4: 協議用の説明資料を作る
地域で必要な機能、診療体制、開業後の連携先、資金計画をA4数枚で説明できるようにします。税理士法人 辻総合会計グループでは、開業候補地、融資資料、採用計画、月次損益を一体で整理します。
開業資金と採用計画への影響
外来医師多数区域での開業は、競合が多いため広告費や人件費が高くなりやすい一方、地域機能を担うための追加コストも出やすくなります。事業計画では、単価と患者数だけでなく、機能要請への対応費用を明確にします。
資金繰りに入れる項目
開業前の相談・協議対応、追加設備、在宅用の車両やICT、採用広告費、看護師・医療事務の増員、地域連携の事務工数を入れます。これらを見落とすと、融資後に運転資金が不足する可能性があります。
採用計画を早めに作る
機能要請に応じるには、人員が必要です。院長一人で夜間・休日・在宅・学校医をすべて担う計画は、開業後に破綻しやすくなります。診療機能と採用計画を同じ表に置くことで、現実的な開業モデルに近づきます。
よくある失敗
「規制エリアだから無理」と決めつける
外来医師多数区域は、開業を一律に禁止するものとして短絡的に理解しない方がよいです。地域で不足する医療機能を確認し、自院が担える範囲を説明することが重要です。
競合分析だけで候補地を選ぶ
競合数、駅距離、家賃、人口だけで判断すると、行政協議や地域連携の論点が抜けます。医療計画、医師偏在対策、地域機能の確認を候補地選定の初期に入れてください。
機能を掲げるだけでコスト化しない
在宅医療や休日対応を掲げても、人員、車両、システム、事務連携、オンコール負担を資金計画に入れていなければ実行できません。開業前の収支計画に反映する必要があります。
候補地比較表で見るべき数字
候補地比較では、人口、競合数、駅距離、賃料だけでは不十分です。外来医師多数区域に該当するか、地域で不足する機能を担えるか、協議対応が必要か、採用できる人員がいるかを同じ表に入れます。
具体的には、候補地ごとに、想定患者数、初期投資、月額固定費、人件費、広告費、機能要請対応コスト、開業前協議の確認状況、資金ショート月を並べます。機能要請対応コストには、在宅用車両、ICT、看護師増員、休日対応の人件費、地域連携の事務工数を含めます。
融資審査では、なぜその地域で開業するのか、どの患者層に対応するのか、初年度の赤字をどう乗り切るのかを説明する必要があります。外来医師多数区域では、競合が多い分だけ集患コストも上がりやすいため、保守的な患者数シナリオを用意しておくことが重要です。
承継開業の場合も、既存売上をそのまま将来売上に置くのは危険です。承継後に診療時間を変える、在宅対応を増やす、スタッフを入れ替える、設備を更新する場合、既存患者数と固定費は変わります。地域機能を担う計画と、院長自身の稼働時間が矛盾していないかを確認してください。
候補地比較表は、開業後も見直せる資料にします。開業前の想定患者数、採用単価、診療時間、在宅対応件数、広告費を残しておくと、開業後3か月・6か月・12か月の実績比較ができます。想定との差が大きい場合、診療時間、広告、採用、連携先開拓のどこを修正するか判断しやすくなります。
また、外来医師多数区域での開業は、地域連携の説明が重要になります。病院、訪問看護、介護事業者、薬局、学校、自治体との連携予定を事業計画に書けるかどうかで、開業後の紹介導線や信頼形成も変わります。制度対応を単なるリスクではなく、地域で選ばれる診療所づくりの材料として扱う視点が必要です。
よくある質問
Q: 外来医師多数区域では開業できないのですか?
Q: どの段階で確認すべきですか?
Q: 承継開業なら外来医師多数区域の影響は小さいですか?
まとめ
- 外来医師多数区域は、開業禁止ではなく地域で必要な外来医療機能を説明する視点で見る
- 都道府県の外来医療計画、医師偏在対策パッケージ、候補地の商圏分析を同時に確認する
- 機能要請は、診療時間、人員、設備、資金繰り、採用計画に反映する
- 辻総合会計グループでは、開業候補地、融資資料、採用計画、月次損益を一体で整理する
参照ソース
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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