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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック戸建てvsテナント|税理士が解説

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クリニック戸建てvsテナント|税理士が解説

クリニック開業で戸建て購入とテナント賃貸はどっちが有利か

クリニック開業で戸建て購入とテナント賃貸のどちらが有利かは、資金調達力、診療圏の確実性、そして将来の出口戦略で決まります。自己所有は資産形成に向きますが、土地は減価償却できず、立地変更もしにくいのが弱点です。反対にテナント賃貸は初期負担を抑えやすく、撤退や移転の柔軟性がありますが、賃料上昇や原状回復費用のリスクを抱えます。開業医にとって何が問題かというと、開業直後の資金繰りを優先するのか、長期で資産を残すのかで、選ぶべき不動産戦略が変わる点です。

当法人でも、開業前相談では「月々の支払いだけを見ると購入が安く見えるが、本当に得なのか」という質問をよく受けます。結論だけ先にいえば、患者数が読みやすい立地で長く診療する前提なら購入が有力です。一方、診療圏に不確実性がある、あるいは複数候補地を比較したい段階なら、まずは賃貸のほうが失敗コストを抑えやすい傾向があります。

クリニック 戸建て テナントの違いとは

戸建て購入の特徴

戸建て購入は、土地と建物を自院または院長個人で所有し、長期運営を前提に開業する形です。毎月の返済のうち元本部分は経費になりませんが、建物部分の減価償却費や借入利息、固定資産税、修繕費などは損益に反映されます。長く使うほど資産が残りやすく、将来の承継や売却の選択肢も持ちやすい点が魅力です。

一方で、購入時には頭金、登記費用、融資手数料、仲介手数料、建築費や内装費など、開業時の資金需要が大きくなります。診療圏が想定どおりに育たなかった場合でも簡単には移転できず、立地の読み違いが重い固定費リスクになりやすいのが難点です。

テナント賃貸の特徴

テナント賃貸は、保証金や内装工事費は必要でも、土地建物そのものの取得資金が不要なため、開業時の自己資金を抑えやすい方法です。医療モールや駅前立地など、集患力の高い場所を選びやすい点も大きな利点です。賃料は原則として毎月の費用処理がしやすく、損益計画を立てやすいのも特徴です。

ただし、内装や給排水、電気設備などに多額の投資をしても、その資産は自分のものになりません。さらに、契約満了時には原状回復やスケルトン返しの負担が発生することがあり、退去時の想定外コストで資金繰りが悪化する例もあります。

医院 賃貸 購入 どっちを選ぶべきか

判断軸は大きく4つです。

  • 初期投資を抑えたいか
  • 10年以上同じ場所で診療する見込みがあるか
  • 将来、承継や売却を考えるか
  • 退去・移転の可能性を残したいか

短中期の柔軟性を取るなら賃貸、長期の資産形成を取るなら購入が基本線です。ただし、医療機器導入額、スタッフ採用計画、診療科目による内装コストの差で最適解は変わります。

税理士が試算する損益比較

ここでは、わかりやすく単純化したモデルで比較します。前提は次のとおりです。

  • 必要面積: 約50坪
  • 診療科: 一般的な外来系クリニック
  • 比較期間: 開業後10年間
  • 戸建て購入: 土地4,000万円、建物5,000万円、自己資金1,000万円、借入8,000万円、金利1.8%、返済20年
  • テナント賃貸: 月額賃料55万円、保証金330万円、内装・設備造作3,000万円

年間損益の見え方

購入と賃貸では、会計上の費用の出方が異なります。購入は返済額の全額が経費になるわけではなく、建物の減価償却費や利息部分が中心です。賃貸は賃料がそのまま費用になりやすいため、損益計算書だけ見ると賃貸のほうが費用が大きく見えることもあります。

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項目戸建て購入テナント賃貸
初期投資の大きさ大きい比較的小さい
毎月の現金支出返済+税金+修繕賃料+共益費
損益上の費用減価償却・利息中心賃料・造作償却中心
資産の残り方土地・建物が残る原則残りにくい
移転のしやすさ低い高い
退去時負担売却・解体等の検討原状回復が発生しやすい

10年間の概算比較

上記前提で概算すると、購入は10年間の総支出が大きく見えても、その一部は資産の蓄積です。賃貸は支出が費用として流れやすく、資産形成にはつながりにくい構造です。

  • 戸建て購入

    • 頭金等の初期資金: 約1,200万円
    • 年間返済額: 約490万円
    • 固定資産税・修繕等: 年100万〜150万円想定
    • 10年後の借入残高は残るが、土地建物という資産が手元に残る
  • テナント賃貸

    • 保証金等の初期資金: 約330万円
    • 内装・造作等: 約3,000万円
    • 年間賃料: 約660万円
    • 契約終了時に原状回復費が数百万円単位になることがある

このモデルでは、10年間のキャッシュアウトだけ見ると大差がない、あるいは立地によっては賃貸がやや高くなることもあります。ただし、購入は出口で売却可能性があり、賃貸は退去費用が残るため、最終的な手残りは購入が優位になるケースがあります。

ここがポイント
購入が常に有利という意味ではありません。診療圏が未確立の段階で戸建てを取得すると、想定患者数に届かなかった場合に固定費負担が重くなります。開業初期は「利益」より「資金繰り」で判断する視点が重要です。

クリニック 不動産 購入のメリットと注意点

開業 戸建て メリット

戸建て購入の代表的なメリットは次のとおりです。

  • 長期的には賃料支払いを資産取得に振り替えられる
  • 土地を保有できるため、将来売却や相続対策の検討余地がある
  • 建物仕様を診療科目に合わせやすい
  • 更新拒絶や賃料改定の影響を受けにくい

特に、駐車場が必要な整形外科、耳鼻科、小児科などでは、敷地計画まで含めて自由度の高い戸建てが向くことがあります。郊外型クリニックでは、建物と駐車場を一体で計画できることが集患に直結します。

購入の注意点

一方で、注意点も明確です。土地は減価償却できず、建物だけが償却対象です。そのため、購入額が大きくても、税務上すぐに費用化できるわけではありません。また、建物の用途や構造で耐用年数が異なるため、節税目的だけで購入判断をすると誤ります。

さらに、将来の承継局面では「不動産を誰が持つか」が論点になります。院長個人所有にするか、医療法人や関連会社で保有するかで、相続・所得分散・賃料設定の考え方も変わります。ここは開業時点で整理しておくべきです。

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テナント賃貸の方法とリスク

テナント契約で見るべきポイント

テナント賃貸では、賃料水準より契約条件の確認が重要です。特に医療テナントでは、給排水、電気容量、空調、看板、駐車場、競業避止、診療時間、更新条件を丁寧に確認する必要があります。

Step 1: 賃料総額を確認する

表示賃料だけでなく、共益費、駐車場代、看板使用料、保証金、礼金、更新料を含めて実質負担を把握します。

Step 2: 原状回復条項を確認する

スケルトン返しなのか、現状回復で足りるのか、医療設備の撤去範囲はどこまでかを確認します。ここが曖昧だと、退去時に大きな紛争になります。

Step 3: 造作の償却期間を確認する

借地借家契約の期間や更新可否によっては、造作の償却期間の考え方が変わります。税務だけでなく契約書との整合が必要です。

Step 4: 出口を決めてから契約する

3年後、5年後に増床や移転の可能性があるなら、更新条件や中途解約条項まで見ておく必要があります。

テナント賃貸のリスク

賃貸の最大のリスクは、退去時まで含めた総コストが見えにくいことです。月額賃料は比較しやすくても、原状回復、設備撤去、解約違約金、保証金償却まで入れると負担は大きくなります。特に医療用の内装は特殊設備が多く、一般オフィスより復旧費用が高くなりやすい点に注意が必要です。

ここがポイント
テナント契約では、開業前に不動産会社だけでなく、内装業者と税理士も交えて確認するのが実務的です。契約書の一文で、退去費用や減価償却の見通しが大きく変わることがあります。

戸建て購入とテナント賃貸の結論

結論として、次のように整理できます。

  • 10年以上その地域で診療する見込みが強い
  • 駐車場や動線を自由設計したい
  • 将来の資産形成や承継も重視したい

この3点がそろうなら、戸建て購入は有力です。反対に、

  • 開業初期の自己資金を温存したい
  • 駅前や医療モールの立地を優先したい
  • 診療圏の検証をしながら拡大したい

この条件なら、テナント賃貸が適しています。

現場感覚としては、開業初年度から十分な患者数が見込める自費率の高い診療科や、郊外で駐車場需要が大きい診療科は購入が合いやすく、都心駅前の競争が激しい立地では賃貸のほうが安全に始めやすい傾向があります。大切なのは「家賃の安さ」や「返済額の安さ」だけで決めず、税務・資金繰り・退出コスト・承継まで通して比較することです。

よくある質問

Q: クリニック開業は購入と賃貸のどちらが節税になりますか? ▼
一概にはいえません。購入は建物の減価償却や利息計上が中心で、土地は償却できません。賃貸は賃料を費用化しやすい一方、造作費は一時費用にならず償却になる場合があります。節税額だけでなく資金繰りと資産形成を合わせて判断すべきです。
Q: テナントの内装費は全額その年の経費になりますか? ▼
必ずしもなりません。内装や設備の内容によっては減価償却資産となり、複数年で費用化します。賃借物件の造作は契約期間や買取請求権の有無で耐用年数の考え方も変わるため、契約前確認が重要です。
Q: 戸建て購入なら毎月の返済額は全部経費ですか? ▼
いいえ。返済額のうち元本部分は経費ではありません。経費になるのは、主として建物の減価償却費、借入利息、固定資産税、修繕費などです。この点を誤ると、購入後の資金繰り予測を外しやすくなります。
Q: 開業時点で判断できない場合はどうすればよいですか? ▼
迷う場合は、まず賃貸で開業し、診療圏が固まってから購入を検討する方法もあります。特に新規開業では、立地の検証コストを小さくできる点が賃貸の強みです。個別事情により最適解は異なるため、事業計画と税務を一緒に見て判断するのが安全です。

まとめ

  • クリニック開業で戸建て購入とテナント賃貸の優劣は、資金繰りと出口戦略で決まる
  • 戸建て購入は資産形成に強いが、土地は減価償却できず、移転の柔軟性は低い
  • テナント賃貸は初期負担を抑えやすいが、原状回復や造作費の回収不能リスクがある
  • 購入は長期運営向き、賃貸は診療圏を見極めたい開業初期に向きやすい
  • 税務だけでなく、契約条件、融資条件、承継まで含めて比較することが重要

参照ソース

  • 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
  • 国税庁「No.5406 他人の建物に対する造作の耐用年数」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5406.htm
  • 厚生労働省「医療法(抜粋)」: https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/shikarinsyo/gaiyou/kanren/iryo.html
  • 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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