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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニックスタッフが辞める理由5選|離職防止の仕組み

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クリニックスタッフが辞める理由5選|離職防止の仕組み

クリニックのスタッフが辞める理由とは

クリニックのスタッフが辞める主な理由は、給与水準そのものだけでなく、評価の不透明さ、人間関係、業務負荷、将来像の見えにくさが重なることにあります。特に院長にとっては、採用難の時代に離職が続くと診療体制が不安定になり、患者対応や売上にも影響します。小規模な医院ほど一人の退職インパクトが大きいため、「辞める人の問題」として片づけず、仕組みで防ぐ視点が重要です。

厚生労働省は令和5年10月26日告示の「看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」で、離職防止と定着促進を重要課題として位置づけています。つまり、いま必要なのは気合いや我慢ではなく、定着しやすい職場設計です。

クリニックスタッフが辞める理由5選

1. 給与への不満が強い

「忙しさに見合っていない」「昇給の基準が分からない」という不満は、退職理由として非常に多いものです。単に月給が低いかどうかではなく、近隣相場との比較、賞与の決め方、昇給の納得感まで含めて判断されます。

厚生労働省の看護職員処遇改善では、一定の役割を担う医療機関を対象に、収入を1%程度、月額4,000円相当引き上げる考え方が示されました。これは裏を返せば、医療現場で処遇改善がなお課題であることを示しています。クリニックでも、相場より少し低い水準そのものより、説明できない給与の決め方が離職につながります。

2. 評価制度が曖昧で不公平感がある

院長の主観だけで「頑張っている人」と「そうでない人」が決まる職場では、不満が蓄積しやすくなります。特に看護師や医療事務は、患者対応、正確性、協調性、改善提案など成果が見えにくい業務が多く、評価項目の言語化がないと不公平感が生まれます。

たとえば「よく気が利く」という評価は抽象的ですが、「予約変更時の患者説明を自力で完結できる」「返戻や算定漏れを月◯件以下に抑える」といった行動基準に置き換えると、納得度は大きく変わります。

3. 人間関係と院内コミュニケーションに疲れる

クリニックは少人数運営のため、1人との相性の悪さが職場全体のストレスになりやすい構造です。院長、看護師長、ベテラン事務の発言力が強すぎると、新人や中堅が萎縮し、相談できずに辞めてしまいます。

ここがポイント
小規模医院では「人間関係の問題」と「業務ルール未整備」が混在しがちです。感情のもつれに見えても、実際には役割分担や指示系統が曖昧なことが原因のケースも少なくありません。

4. 業務量・シフト負担が偏っている

休憩が取りにくい、急な残業が多い、特定の人に雑務が集中する、といった状態は離職を招きます。厚生労働省も医療従事者の勤務環境改善を支援しており、PDCAで職場環境を見直す仕組みを示しています。つまり、忙しいこと自体よりも、忙しさが放置されていることが問題です。

特に発熱外来、ワクチン、健診、訪問診療などを兼ねる医院では、繁忙期と通常期で負荷が大きく変動します。人員配置や予約枠の設計を見直さないままでは、現場にしわ寄せが出ます。

5. キャリアの見通しが立たない

「この先も同じ仕事を続けるだけ」「成長しても待遇が変わらない」と感じると、スタッフは転職市場に目を向けます。看護師は病院、訪問看護、企業、健診など選択肢が広く、医療事務も他院へ移りやすい職種です。

小さなクリニックでも、教育担当、レセプト責任者、後輩指導、患者満足向上の担当など役割設計は可能です。役割の昇格が見えるだけでも、定着率は変わります。

クリニックスタッフ定着のために必要な給与・評価の仕組み

離職防止で重要なのは、「高い給与」だけではなく「説明できる給与」と「再現性のある評価」です。実務では次の3点をそろえると効果が出やすくなります。

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項目離職しやすい医院定着しやすい医院
給与院長判断で都度決定テーブルと昇給基準がある
評価印象評価が中心行動基準が明文化されている
面談問題発生時だけ実施定期面談で不満を早期把握

給与テーブルは「相場」と「役割」で決める

給与テーブルは、地域相場、職種、経験年数、担当業務を基準に作るのが基本です。看護師、准看護師、医療事務、管理職候補を分け、等級ごとに下限・上限を設定すると運用しやすくなります。

昇給も「毎年なんとなく5,000円」ではなく、評価結果、勤続、役割拡大を反映する設計にすべきです。賞与についても、固定色が強いのか、業績連動を入れるのかを明示しておくと不信感を防げます。

評価制度はシンプルな3区分から始める

最初から複雑な人事制度を作る必要はありません。クリニックでは、次の3軸だけでも十分機能します。

  • 業務遂行力:正確性、スピード、ミス防止
  • 協働姿勢:報連相、他職種連携、患者対応
  • 成長行動:学習、改善提案、後輩支援

各項目を5段階評価にし、「何をすれば1段階上がるか」を文章で定義すると、属人的な評価から抜け出しやすくなります。

人事評価の作り方|医院で実行しやすい手順

Step 1: 退職者の共通点を洗い出す

過去2〜3年の退職者について、職種、勤続年数、退職理由、繁忙期との関係を整理します。感覚ではなく、実際の傾向を見ることが出発点です。

Step 2: 職種ごとの期待役割を明文化する

看護師、医療事務、リーダー候補ごとに「できていてほしいこと」を3〜5個ずつ定義します。抽象語ではなく行動で書くことが重要です。

Step 3: 給与テーブルと昇給ルールを決める

最低賃金や地域相場だけでなく、採用競争力も踏まえて水準を決めます。昇給のタイミング、評価反映幅、賞与の考え方を一枚で説明できる形にします。

Step 4: 半年ごとの面談を仕組み化する

面談は査定の場ではなく、離職予防の場です。業務量、人間関係、希望する働き方を確認し、改善策を記録します。

Step 5: 毎年見直す

制度は作って終わりではありません。採用市場や医院の成長段階に応じて毎年修正します。厚生労働省が示す勤務環境改善も、継続的な見直しを前提としています。

ここがポイント
評価制度を導入しても、院長だけが内容を理解し、現場に説明されていないと逆効果です。制度そのものより、運用の透明性が定着率を左右します。
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看護師が辞める理由とクリニック特有の注意点

看護師が辞める理由としては、給与だけでなく、業務範囲の広さ、患者対応ストレス、院長との距離感、休みの取りにくさが挙げられます。病院より夜勤がない点はクリニックの強みですが、その一方で少人数ゆえの代替要員不足があります。

また、厚生労働省は医療現場の暴力・ハラスメント対策を離職防止の観点から重視しています。患者や家族からの暴言対応を個人任せにせず、院内ルールとして整備することが必要です。安心して働ける職場は、給与と同じくらい強い定着要因になります。

よくある質問

Q: クリニックの離職率はどのくらいなら高いと考えるべきですか? ▼
クリニックは人数が少ないため、1人退職しただけでも率が大きく見えます。そのため単純な率だけでなく、同職種が続けて辞めていないか、入職1年未満で退職していないかを見ることが重要です。
Q: 給与を上げれば離職は防げますか? ▼
一定の効果はありますが、給与だけでは不十分です。評価の透明性、人間関係、シフト負担、面談の有無が整っていないと、賃上げしても離職は止まりにくい傾向があります。
Q: 小規模医院でも人事評価制度は必要ですか? ▼
はい。むしろ少人数の医院ほど必要です。人数が少ない職場では、不公平感やコミュニケーション不全の影響が大きいため、簡易でも基準を作る価値があります。

まとめ

  • クリニックスタッフが辞める理由は、給与だけでなく評価、人間関係、業務負荷、将来不安が重なって起こる
  • 離職防止には、説明できる給与テーブルと行動基準に基づく評価制度が有効
  • 小規模医院ほど一人の退職影響が大きく、属人的運営から仕組み運営への転換が重要
  • 看護師の定着には、処遇改善だけでなく、勤務環境やハラスメント対策も欠かせない
  • 個別の制度設計は医院の規模や診療科により異なるため、実態に合わせた見直しが必要

参照ソース

  • 厚生労働省「看護職員確保対策」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000095525.html
  • 厚生労働省「医療従事者の勤務環境の改善について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/quality/index.html
  • 厚生労働省「看護職員等処遇改善事業」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000095525_00005.html
  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」: https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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