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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.04
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

開業初年度の税金スケジュール早見表|税理士が解説

9分で読めます
開業初年度の税金スケジュール早見表|税理士が解説

開業初年度の税金スケジュールは「時期ズレ」が最大の落とし穴

開業初年度の税金スケジュールは、売上が立ち始めた後に税金が後追いで来る一方、源泉や住民税(従業員分)は「毎月」出ていくため、資金繰りの設計が崩れやすいのが実務上の課題です。特に、源泉所得税と(課税事業者の場合の)消費税は「納付の締切」が読めないと延滞リスクに直結します。

税理士法人 辻総合会計では、クリニックを含む新規開業支援を継続的に行う中で、「税金そのもの」よりも「支払時期の見誤り」で資金が詰まるケースを多く見てきました。本記事では、予定納税・消費税・源泉・住民税を、初年度に必要な観点に絞って整理します。

ここがポイント
本記事は一般的な整理です。期限は土日祝により翌営業日となる場合があります。また、消費税の課税・免税判定や住民税の納期は個別事情・自治体で異なります。必ず最新の通知書・所轄官署の案内で確認してください。

年間の全体像:開業初年度に「発生しやすい」税金カレンダー

まずは、開業初年度に論点になりやすい税目を「誰が」「どの頻度で」「何を根拠に」払うかで俯瞰します。

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税目主な納税者初年度の発生頻度いつの取引・所得に対応つまずきポイント
予定納税(所得税)事業主(個人)原則:翌年から前年分の申告税額等を基準初年度は「多くの場合」発生しないが、翌年7月・11月に来る
消費税課税事業者(個人/法人)年1回(原則)課税期間の売上・仕入免税と思い込み、課税事業者選択・インボイス登録等でズレる
源泉所得税(給与・士業報酬など)事業者(源泉徴収義務者)毎月 or 年2回(特例)給与等を支払った月開業直後から発生。「払ったのに納め忘れ」が起こりやすい
住民税(本人分)事業主(個人)年4回が一般的前年所得「翌年6月以降」に請求が来る(生活費として重い)
住民税(従業員分:特別徴収)事業者毎月従業員の前年所得給与天引き分の納入管理が必要(自治体ごとに納入先も異なる)

ポイントは、「初年度に払う税金」と「初年度の稼ぎに対して後から来る税金」が混在することです。源泉は今すぐ、住民税(本人分)や予定納税は翌年以降、消費税は課税事業者なら翌年の申告時にまとまって、という時期ズレが起きます。

予定納税とは?初年度は「原則なし」だが翌年7月・11月が要注意

予定納税の基本:前年分ベースで前払い

予定納税は、前年分の所得税(復興特別所得税含む)を基準に算定され、一定額以上の場合に当年分を前払いする仕組みです。基準額が15万円以上の場合に対象となり、納期は原則として第1期が7月、第2期が11月です。

開業初年度に「予定納税がない」理由と、例外

開業した年は前年の事業所得が存在しないため、純粋な「開業初年度」だけを見ると予定納税が発生しないケースが多いです。一方で、次のような場合は例外になり得ます。

  • 開業前に別事業・副業等で前年の所得税額が大きかった(前年分が基準になる)
  • 開業が年初で、前年にも同種の事業をしていた(「新規」ではない)
  • 医師個人の給与・兼業・不動産所得などで前年税額が大きい

実務では「初年度は大丈夫」と油断し、翌年6月頃の通知→7月納付で資金が詰まる相談が典型です。開業年度の黒字見込みが強い場合、翌年の予定納税は高確率で来るため、利益が出た月から「税金積立」を始める運用が合理的です。

消費税:免税・課税の分岐と申告期限の読み方

初年度に「消費税が関係ない」と決めつけない

消費税は、原則として基準期間(一般には2年前)の課税売上高等で判定されます。開業直後は免税となることが多い一方、課税事業者を選択する届出や、適格請求書発行事業者(インボイス)としての登録等により、初年度から実質的に「消費税対応」が必要になるケースがあります。

個人事業者の申告・納付期限(原則):3月31日

個人事業者の消費税・地方消費税は、原則として翌年3月31日が申告・納付期限として運用されています。

法人の場合の目安

法人(課税事業者)の場合、課税期間(通常は事業年度)終了後、おおむね2か月以内の申告・納付が目安です。決算期をいつに設定するかで資金流出の月が変わるため、開業時点で「納税月」まで設計するのが安全です。

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源泉所得税:開業直後から始まる「毎月の税金」を落とさない

原則は「支払月の翌月10日まで」に納付

給与、士業等への報酬などから源泉徴収した所得税(復興特別所得税含む)は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。

納期の特例:常時10人未満なら年2回にできる

給与支給人員が常時10人未満の場合、申請により、源泉所得税を半年分まとめて納める「納期の特例」が使えることがあります。特例適用後は、1〜6月分が7月10日、7〜12月分が翌年1月20日が納期限です。

ここがポイント
納期の特例は資金繰りに見えるメリットがある一方、半年分を一括納付するため「積立をしていないと納付月に資金が足りない」事故が起きます。導入する場合は、毎月の源泉額を別口座に移す運用が有効です。

源泉まわりの実務を固める手順

Step 1: 「源泉が発生する支払」を棚卸しする

給与、賞与、退職金、外注先(士業報酬等)の支払を一覧化します。クリニックでは、非常勤医師・検査技師等の報酬形態によって源泉要否が変わるため、契約形態まで含めて整理します。

Step 2: 納付サイクル(毎月 or 特例)を決める

給与支給人数が少ない開業直後は特例を選ぶことが多いですが、半年分の納付資金が確保できる体制(積立)が前提です。

Step 3: 納付手段を固定する

e-Tax、ダイレクト納付、口座振替等、担当者が交代しても迷わない手段に統一し、締切日から逆算した社内締め(例:翌月5日集計→7日承認→10日納付)を決めます。

住民税:本人分と従業員分で「納め方」が別物

本人(院長・事業主)の住民税は「翌年から重くなる」

個人住民税は前年所得をもとに翌年度課税となるため、開業初年度の利益が出ると、翌年6月頃から住民税の負担が本格化します。多くの自治体では年4回(または一括)で納める設計ですが、納期は自治体条例で異なるため、納税通知書で必ず確認してください。

実務上は「所得税より住民税が重い」と感じるタイミングが翌年に来ます。開業初年度の資金繰り表に、翌年の住民税を概算で織り込むことが重要です。

従業員分(特別徴収)は「毎月の預り金」になる

従業員がいる場合、住民税は給与天引き(特別徴収)となり、事業者が預かった税額を自治体へ納入します。源泉所得税と同様、「預かったものを納める」性質のため、運転資金と混ぜない管理(別口座・別科目)が事故防止になります。

よくある質問

Q: 開業初年度は予定納税が絶対にありませんか? ▼
多くの場合はありませんが、「前年分の所得税額」が基準になるため、開業前に給与・副業・不動産等で前年税額が大きいと、開業年でも予定納税の対象になり得ます。予定納税の納期は原則7月・11月のため、6月頃の通知を見落とさない運用が重要です。
Q: 源泉所得税の納期の特例は、開業してすぐ使えますか? ▼
要件(常時10人未満等)を満たせば申請により利用可能です。特例を使うと、半年分をまとめて納めるため、毎月の源泉額を積み立てる運用が前提になります。納期限は7月10日・翌年1月20日です。
Q: 消費税は開業初年度でも申告が必要ですか? ▼
免税事業者であれば通常は不要ですが、課税事業者を選択した場合や、取引要請により適格請求書発行事業者として登録する場合など、初年度から実務対応が必要になることがあります。課税事業者の場合、個人は原則として翌年3月31日が申告・納付期限の目安です。
Q: 住民税(本人分)の支払いは、開業年にすぐ来ますか? ▼
住民税は前年所得に基づき翌年度に課税されるため、開業初年度の利益に対応する住民税は翌年以降に請求されるのが一般的です。納期は自治体の通知書で確認してください。

まとめ

  • 開業初年度は「今すぐ払う(源泉)」と「翌年に来る(予定納税・住民税)」が混在し、時期ズレが資金繰りリスクになる
  • 予定納税は前年税額が基準で、原則7月・11月が納期。初年度でも前年状況次第で対象になり得る
  • 消費税は免税と思い込みやすいが、課税事業者選択・登録等で初年度から対応が必要になることがある
  • 源泉所得税は原則「翌月10日」納付。常時10人未満なら「納期の特例」で年2回納付も選択肢
  • 住民税は本人分と従業員分で納め方が別。預り金(従業員分)は運転資金と混ぜない管理が重要

参照ソース

  • 国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm
  • 国税庁「No.2040 予定納税」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2040.htm
  • 国税庁「消費税・地方消費税(個人事業者)の確定申告と納税は正しくお早めに」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/campaign/r7/Mar/01.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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