
執筆者:辻 勝
会長税理士
糖尿病内科開業2026|生活習慣病管理料の収益設計|税理士が解説

2026年の糖尿病内科開業で収益の核は「生活習慣病管理の設計」です
糖尿病内科・内分泌代謝科での開業は、検査や薬物療法だけでなく、継続管理(フォロー体制)をどう制度設計に落とし込むかが収益の分岐点になります。特に生活習慣病管理料は、月次の収益を安定させる中核です。
一方で、2026年(令和8年度)改定では、外来医療におけるデータ提出・体制整備の方向性がより明確になっています。開業準備の段階で「算定できる形」を逆算して、電子カルテ・検査運用・連携フローを設計しておかないと、オペレーション負荷が跳ねやすい点に注意が必要です(答申・個別改定項目の公表が進行)。
(当法人「税理士法人 辻総合会計」では、医科の顧問支援の中で、月次試算表とレセプト運用をつないだ収益設計の相談が増えています。)
生活習慣病管理料とは(Ⅰ・Ⅱの違い)|2026で押さえる前提
生活習慣病管理料の対象疾患と位置づけ
生活習慣病(脂質異常症・高血圧症・糖尿病)の増加に対応する観点から、疾病管理・重症化予防の枠組みとして整理されています。疾患別の管理点数や、治療計画(療養計画書)を用いた説明、多職種連携、医療DX活用等の方向性が示されています。
参考:生活習慣病に係る疾病管理のイメージ(令和6年度改定資料)では、生活習慣病管理料の趣旨や運用イメージが整理されています。
生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い(実務上の要点)
制度上は、(Ⅰ)と(Ⅱ)で包括範囲・運用が異なります。さらに、個別改定項目(令和8年度)では、生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括範囲に関する記載や、(Ⅰ)・(Ⅱ)に関わる要件(データ提出体制等)に関する整理が進んでいます。
| 観点 | 生活習慣病管理料(Ⅰ) | 生活習慣病管理料(Ⅱ) |
|---|---|---|
| 収益の作り方 | 「管理料+包括」を前提に、検査や指導を運用に埋め込む | 管理料を軸に、出来高算定と組み合わせた設計に寄せやすい |
| 設計の難しさ | 検査・指導のやり方を標準化しないと利益がブレやすい | 算定ルールとオーダー漏れ管理が重要(過不足が出やすい) |
| 2026で論点になりやすい領域 | データ提出を含む体制整備の方向 | 併算定・包括範囲の整理(個別改定項目で明示) |
2026年改定で「簡素化」と言われるポイントと、実務で増える負荷
検索意図として「要件が簡素化された」と表現されることがありますが、開業実務では次の2つが同時に起きやすい点に注意が必要です。
- 書式・手順が整理され、現場の手間が減る方向(療養計画書の扱いを含め、標準様式が整備されている領域)
- 一方で、データ提出・体制整備の比重が上がり、「作業の種類」が変わる(算定・届出・試行データ等)
実際、個別改定項目(令和8年度)では、生活習慣病管理料(Ⅱ)に関する算定要件・包括範囲の考え方、外来のデータ提出に係る評価(外来データ提出加算等)の記載が確認できます。
また、厚労省は令和8年度診療報酬改定のプロセス(諮問・答申)を公開しており、改定作業が進んでいること自体が「準備を前倒しすべき根拠」になります。
糖尿病・内分泌代謝科の収益モデル|生活習慣病管理料を中心に組み立てる
糖尿病内科の収益は、ざっくり言えば「継続患者×月次管理の単価」で安定し、そこに検査・合併症管理・連携が積み上がります。開業時に設計すべき収益レイヤーは次の3層です。
層1:月次のベース(管理料の安定運用)
- 生活習慣病管理料(Ⅰ/Ⅱ)を、対象患者に継続して算定できる運用にする
- 服薬継続・検査周期・目標設定(HbA1c等)を診療フローに組み込む
- 療養計画書(標準様式)を「患者説明の品質管理ツール」として使う
療養計画書は厚労省サイトに様式例が公開されており、運用標準化に活用できます(初回用・継続用)。
参考様式:生活習慣病 療養計画書(初回用・継続用)
層2:出来高・指導での上積み(オペの標準化が鍵)
- 採血・尿・合併症スクリーニング等を「漏れなく、過剰なく」回す
- 栄養食事指導等を、対象者に適切に組み合わせる(人員配置・予約枠が前提)
- 多職種連携(管理栄養士等)の実装度で差が出やすい
ここは「やれば増える」一方で、人的コスト・予約枠・算定管理のコストも増えます。税務面では、開業後に人件費比率が急上昇しやすいので、損益分岐点を先に置いておくのが安全です。
層3:連携・データ対応(2026で重要度が上がる領域)
- 外来患者の診療内容データを継続的に提出する体制(要件・評価は資料に記載)
- 届出・試行データ等の運用(事務局チェックプログラム等の要素が出ている)
- 眼科・歯科等の連携フローを、紹介状テンプレ・同意取得・記録まで含めて統一
この層は、院長の診療時間を直接増やすより、院内標準化(テンプレ・セット・役割分担)で取りこぼしを減らすほうが効きます。
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算定戦略の作り方(内分泌代謝科開業の実務手順)
開業準備でやるべきことを、算定戦略の観点からステップ化します。
Step 1: 患者ポートフォリオを仮置きする(収益の前提条件)
- 2型糖尿病中心か、甲状腺・副腎等の比率が高いか
- 紹介比率(病院→クリニック)と、初診の波
- 合併症(腎症・網膜症等)の比率と連携先
Step 2: 生活習慣病管理の標準診療プロトコルを作る
- 初回:検査セット、生活指導、療養計画書(初回用)運用
- 継続:検査周期、目標更新、療養計画書(継続用)運用
- 予約枠:医師診察+指導枠(栄養等)の配置
ここで重要なのは、医師の裁量を残しつつ、漏れやすい項目(採血、指導、連携)をテンプレ化することです。算定漏れは、開業初年度の利益を静かに削ります。
Step 3: 2026のデータ提出・届出を前提にシステムを選ぶ
- 電子カルテ/レセコンが、必要データの抽出・提出運用に耐えるか
- 事務担当が回せる手順書(誰が、いつ、何を、どこに提出)を作れるか
- 監査・個別指導を想定した記録(説明・同意・計画)の保存設計
Step 4: 収益シミュレーション(ざっくり→精緻化)
例として、月間の継続患者数をN人、管理料の月次算定率をr、上積み(検査・指導等)の平均をa円/人、追加コスト(人件費・外注等)の増分をc円/人と置くと、月次の粗い見立ては次で表現できます。
- 月次売上 ≒ N ×(管理の基本単価×r + a)
- 月次粗利 ≒ 月次売上 −(固定費 + N×c)
この時、院長の診療枠を増やすより「r(算定継続率)」と「a(上積みの標準化)」の改善が効くケースが多いのが糖尿病内科の特徴です。
よくある質問
Q: 糖尿病内科の開業で、生活習慣病管理料は必ず算定した方が良いですか?
Q: 2026年改定で、開業準備として最優先に確認すべきことは何ですか?
Q: 療養計画書の運用が負担です。簡素化の方向はありますか?
Q: 内分泌代謝科(甲状腺など)中心でも、収益設計は同じですか?
まとめ
- 糖尿病内科・内分泌代謝科の開業は、生活習慣病管理の設計が収益安定の核
- 2026年(令和8年度)改定は、データ提出・体制整備の方向性が強まり、準備の前倒しが有利
- (Ⅰ)(Ⅱ)の優劣ではなく、患者構成と院内オペ(検査・指導・連携)の実装度で最適解が変わる
- 開業準備は「標準プロトコル→システム要件→手順書→3シナリオ損益」の順で固める
- 個別の算定可否・届出は告示・通知、施設基準、地域運用で変動するため、最新資料で確認する
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会(総会)資料公開ページ」: https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html
- 厚生労働省「個別改定項目について(PDF)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001220531.pdf
- 厚生労働省「生活習慣病 療養計画書(様式例)(PDF)」: https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken15/dl/2-22-3.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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