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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

離婚の財産分与と税金|譲渡所得・贈与税を解説

9分で読めます
離婚の財産分与と税金|譲渡所得・贈与税を解説

開業医の離婚と税金で最初に押さえるべき結論

開業医の離婚で問題になりやすい税金は、財産を受け取る側の贈与税よりも、不動産などを渡す側の譲渡所得です。特に、自宅兼クリニックの土地建物、投資用不動産、含み益のある資産を財産分与する場合は、現金を渡していないのに税負担が発生することがあります。

開業医にとって何が問題かというと、離婚協議では「いくら分けるか」に意識が向きやすい一方で、「どの資産を渡すと誰にどの税金が出るか」が見落とされやすい点です。現場でも、分与割合だけ先に決めてしまい、あとから譲渡所得税や住民税の負担に驚くケースは少なくありません。

ここがポイント
離婚に伴う財産分与は、通常は贈与ではなく「夫婦の財産関係の清算」として扱われます。ただし、分与額が過大な場合や、税逃れ目的の離婚と認定される場合は例外があります。

財産分与とは何か|離婚 財産分与 税金の基本

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産を、離婚時に清算・分配することです。預金、証券、不動産、保険解約返戻金、事業用資産などが対象になりえます。開業医の場合は、生活用資産と事業用資産が混在しやすく、論点が複雑になりやすいのが特徴です。

税務上の基本は、次の整理で考えると分かりやすくなります。

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資産の動き主に問題になる税目実務上の注意点
預金を渡す通常は大きな課税問題は生じにくい分与額が過大でないか確認
土地・建物を渡す譲渡所得、住民税時価で譲渡したものとして計算
相手が財産を受け取る通常は贈与税なしただし過大分与は贈与税の可能性
将来、受け取った不動産を売る受け取った側の譲渡所得取得時期・取得価額の考え方を確認

開業医では、クリニック建物そのものよりも、院長個人名義の自宅、賃貸用不動産、駐車場用地などが財産分与の対象になる場面が多いでしょう。「財産分与=税金なし」ではないという点が重要です。

財産分与で譲渡所得が出るケース|財産分与 譲渡所得の考え方

国税庁は、離婚により土地建物などを渡した場合、分与した側に譲渡所得課税が生じると示しています。つまり、夫から妻へ、あるいは妻から夫へ不動産を移すとき、税務上は「時価で譲渡した」とみなされる考え方です。

たとえば、取得費3,000万円、時価6,000万円の不動産を財産分与した場合、分与した側は原則として差額3,000万円をベースに譲渡所得を計算します。現金収入がないのに課税関係が生じるため、資金繰りの見落としが起きやすい論点です。

離婚で不動産を渡すときの税金

不動産の財産分与で特に注意したいのは、次の3点です。

  • 収入金額は売買代金ではなく、分与時の時価で判定される
  • 建物は減価償却後の取得費で計算するため、想定より譲渡益が出やすい
  • 所有期間により長期譲渡所得か短期譲渡所得かで税率が変わる

長期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年超の場合で、税率は所得税15%・住民税5%です。短期譲渡所得は5年以下で、所得税30%・住民税9%です。復興特別所得税も別途かかるため、短期保有の不動産を財産分与する場合は税負担が重くなります。

自宅兼クリニックは特に整理が必要

開業医に多いのが、自宅と診療所が同一建物または同一敷地にあるケースです。この場合、居住用部分と事業用部分が混在しており、税務上の特例判定や評価の整理が難しくなります。

居住用財産に該当する部分には、一定要件のもとで3,000万円特別控除の検討余地があります。一方で、事業用部分はそのまま同じ扱いにならないことがあるため、面積割合、使用実態、帳簿計上の内容まで確認して進める必要があります。

財産分与で贈与税はかかるのか|財産分与 贈与税の注意点

結論からいうと、離婚によって財産を受け取った場合、通常は贈与税はかかりません。これは、贈与ではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障としての給付と考えられるためです。

ただし、次のような場合は例外です。

贈与税がかかる可能性がある例外

  • 分与額が、婚姻中の協力で形成した財産や諸事情に照らして明らかに多すぎる場合
  • 離婚自体が、贈与税や相続税を免れる目的と認定される場合

たとえば、夫婦共有財産の清算として説明できないほど多額の資産を一方に移転した場合、その過大部分に贈与税が課される可能性があります。相続対策として形式的に離婚し、資産移転だけを行ったような事案もリスクがあります。

ここがポイント
「離婚したから必ず贈与税がかからない」という理解は危険です。税務署は、財産の形成経緯、夫婦それぞれの寄与、生活保障の必要性、離婚の実態などを総合的に見ます。
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離婚 不動産 税金で迷ったときの進め方

財産分与で不動産を動かす前に、次の順序で整理すると失敗が減ります。

Step 1: 分ける対象財産を一覧化する

預金、不動産、保険、証券、医療機器、車両、貸付金などを洗い出し、名義と取得時期を確認します。開業医は事業資産と家計資産が混ざりやすいため、台帳ベースで整理するのが安全です。

Step 2: 含み益の有無を確認する

不動産や有価証券は、時価と取得費の差を把握します。含み益が大きい資産を渡すほど、分与した側の譲渡所得税リスクが高まります。

Step 3: 現金で分けるか、現物で分けるか比較する

同じ3,000万円相当の分与でも、現金で渡すのか、不動産を渡すのかで税務コストは大きく変わります。「分与額」ではなく「分与手段」で税金が変わる点が実務の核心です。

Step 4: 特例や申告要否を確認する

居住用財産の3,000万円特別控除の適用可能性、所有期間の判定、取得費資料の有無、確定申告の要否を確認します。特例は自動適用ではなく、申告が前提です。

開業医が見落としやすい税務リスク

開業医の離婚では、次の見落としが特に多くみられます。

クリニック関連資産を私的財産と同じ感覚で扱うこと

医療機器、内装、事業用車両、敷金、事業口座などは、単純に「夫婦の生活財産」と同列に扱うと整理を誤ります。名義だけでなく、取得原資や事業関連性を確認する必要があります。

ローン付き不動産の扱いを軽く見ること

住宅ローンや事業性借入が付いた不動産は、名義変更、金融機関同意、担保設定、返済負担まで含めて検討が必要です。税務だけでなく、法務・融資実務も絡みます。

協議書に税務前提が反映されていないこと

離婚協議書や公正証書に、対象資産、評価の前提、引渡日、負担者、税務上の整理が曖昧なまま進むと、後で争いになりやすくなります。特に不動産は、誰が譲渡所得税や登記費用を見込むのかを事前に確認したいところです。

よくある質問

Q: 離婚で自宅を相手に渡しただけでも、譲渡所得の申告は必要ですか? ▼
はい、必要になる可能性があります。離婚に伴う財産分与で土地建物を渡す場合、分与した側に譲渡所得課税が生じるのが原則です。居住用財産の3,000万円特別控除が使える余地はありますが、適用には要件確認と確定申告が必要です。
Q: 財産分与で受け取った側に贈与税はかかりますか? ▼
通常はかかりません。財産分与は贈与ではなく、夫婦の財産関係の清算等として扱われるためです。ただし、分与額が過大な場合や、税負担回避目的の離婚と認定される場合は例外があります。
Q: 開業医の事業用不動産も財産分与の対象になりますか? ▼
民事上は対象になりえますが、税務上は事業用か居住用かで扱いが変わることがあります。特に自宅兼診療所は按分や特例判定が必要になりやすいため、個別検討が不可欠です。

まとめ

  • 離婚の財産分与では、受け取る側の贈与税より、渡す側の譲渡所得が問題になりやすい
  • 不動産の財産分与は、時価で譲渡したものとして課税関係を検討する
  • 贈与税は通常かからないが、過大分与や税逃れ目的の離婚は例外となる
  • 開業医は自宅兼クリニックや事業資産が絡み、一般家庭より税務判断が難しい
  • 協議前に資産一覧、含み益、特例適用、申告要否を確認することが重要

参照ソース

  • 国税庁「No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3114.htm
  • 国税庁「No.4414 離婚して財産をもらったとき」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4414.htm
  • 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
  • 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
  • 国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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