
執筆者:辻 勝
会長税理士
医師の不動産投資失敗5選|税理士が解説

医師が不動産投資で失敗しやすい理由
医師の不動産投資で多い失敗は、高収入で与信が出やすいことと、忙しさから契約内容の精査が後回しになりやすいことが重なる点にあります。特に勤務医や開業準備中の医師にとっては、節税や資産形成のつもりで始めた投資が、実際には手残りの少ない長期負債になることが問題です。
当法人でも、医師の先生から「節税になると聞いて買ったが、毎月の持ち出しが続いている」「家賃保証があると聞いたのに減額された」といった相談を受けることがあります。不動産投資そのものが悪いのではなく、営業トークをうのみにして判断した案件ほど失敗しやすいのが実務上の特徴です。
この記事では、医師 不動産投資 失敗という検索意図に正面から答えるため、営業現場でよく使われる説明を踏まえつつ、税理士の立場から典型的な失敗パターンを5つに整理します。
医師が不動産投資で失敗するパターン5選
1. 「節税になります」を主目的に買ってしまう
最も多い失敗は、投資判断の軸が収益性ではなく節税になっているケースです。不動産所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。必要経費には固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などがありますが、だからといって「赤字であるほど得」という意味ではありません。
税金が減っても、実際の資金流出がそれ以上に大きければ家計や医院経営にとっては逆効果です。特に営業では「給与所得と損益通算できるので実質負担が軽い」と強調されがちですが、損失の内容によっては通算できないものもあります。たとえば、土地取得のための借入金利子に相当する部分は、不動産所得の赤字であっても損益通算の対象外です。
2. ワンルーム投資の空室・家賃下落を甘く見る
医師 ワンルーム 失敗で多いのは、「都心だから空室になりにくい」「家賃はほぼ下がらない」という説明を前提に収支を組んでしまうことです。新築時は見栄えが良く、当初賃料も高めに設定されますが、数年後には中古競争に入り、募集家賃や礼金条件が変わることは珍しくありません。
営業資料では、購入時の満室想定や数年分の表面利回りが目立ちます。しかし実務で重要なのは、空室期間、広告料、原状回復費、設備交換、管理変更後のコストまで含めた実質利回りです。とくに単身向けワンルームは、入退去回転が速い一方で、1戸しかないため空室時の収入がゼロになりやすいという弱点があります。
匿名化した相談事例でも、年収の高さから複数戸を一度に勧められ、1室ずつは小さな赤字でも、合計すると年間数十万円から百万円単位の持ち出しになるケースがあります。1戸ごとの損益ではなく、借入全体の資金繰りで見る必要があります。
3. サブリースを「家賃保証」と誤解する
不動産投資 営業 医師という文脈で、最も注意したいのがサブリースです。国土交通省は、サブリースについて誇大広告の禁止や不当な勧誘の禁止を明示しており、将来の家賃減額リスク、契約期間中の解除可能性、原状回復や大規模修繕の費用負担を伝えずにメリットだけを説明する勧誘行為を問題として挙げています。
つまり、「30年一括借上げなので安心」「空室でも家賃固定」といった説明は、そのまま信じてよいものではありません。サブリースは空室リスクを一定程度平準化する仕組みではあっても、賃料減額や免責期間があり得る契約です。しかも、オーナーからの解約が容易でない場合もあり、出口戦略が想定より狭くなることがあります。
| 営業トークで見えやすい点 | 実際に確認すべき点 |
|---|---|
| 家賃保証がある | 何年目に見直し条項があるか |
| 手間がかからない | 原状回復・大規模修繕の負担者は誰か |
| 空室でも安心 | 免責期間や保証対象外の条件は何か |
| 長期契約で安定 | 中途解約・更新拒絶の条件はどうか |
4. 借入条件を「今の返済額」だけで判断する
医師は属性が高く見られやすく、金融機関から借入提案を受けやすい立場です。そのため、自己資金が少なくても複数件の購入を勧められることがあります。しかし、返済比率が表面上回ることと、投資として健全であることは別問題です。
失敗するケースでは、営業担当者が「今の家賃なら返済に回せます」「団信付きなので保険代わりです」と説明し、借入期間の長さや金利上昇時の余裕を十分に検討しないまま契約が進みます。けれども、空室・修繕・賃下げが重なると、返済額が一定でも手残りは大きく減ります。
特に開業を予定している医師は要注意です。勤務医時代は給与が安定していても、開業後は設備投資や運転資金が必要になります。不動産投資のローン返済が、将来の本業投資の柔軟性を奪うこともあります。医師 不動産 騙されたと感じる案件の多くは、商品が違法というより、借入余力を投資適性と誤認したことに原因があります。
5. 出口戦略を決めずに買う
購入時の話ばかりで、売却時・相続時・保有継続時のシナリオを決めないまま進めるのも典型的な失敗です。ワンルーム区分は流動性がゼロではありませんが、売却時には購入時の諸費用を取り戻せないことも多く、残債との関係で身動きが取りづらくなることがあります。
また、保有中の赤字を「いつか売ればよい」と先送りしても、築年数の進行で価格が弱含み、想定ほど出口が良くないこともあります。相続対策として勧められた案件でも、相続税評価だけでなく、相続後に家族が管理・売却しやすいかまで見ておかなければ、かえって扱いにくい資産を残すことになります。
医師向け不動産投資営業の裏側とは
なぜ医師が営業対象になりやすいのか
医師は高収入で信用力が高く、融資審査が通りやすいと見られます。さらに多忙で面談時間が限られるため、短時間で意思決定を迫る営業との相性が悪くなりがちです。国土交通省も、オーナーとなろうとする者は賃貸住宅事業の経験や専門知識に乏しい場合が多く、契約前の十分な説明が必要だとしています。
よくある営業文句の見抜き方
営業トークを聞いたときは、次の順で確認すると実務的です。
Step 1: 税引後キャッシュフローを確認する
減価償却や損益通算ではなく、年間の持ち出し・手残りを確認します。
Step 2: 借入前提を崩して試算する
空室1か月、家賃5%下落、修繕発生の3条件を加えても回るか見ます。
Step 3: 契約書の不利条項を洗う
サブリースなら賃料改定、免責期間、修繕負担、解除条項を確認します。
Step 4: 売却出口を確認する
5年後・10年後の残債と想定売値を並べ、撤退可能性を見ます。
医師が不動産投資で失敗しないための判断基準
判断基準はシンプルです。第一に、本業に悪影響を与えない資金繰りか。第二に、税金ではなく収益性で説明できる案件か。第三に、契約書を読んだときに自分で不利条件を言語化できるか、です。
税理士の立場からは、購入前に次の資料を必ずそろえることを勧めます。
- 返済予定表
- 家賃推移を保守的に置いた収支表
- 管理委託契約書またはサブリース契約書
- 固定資産税、修繕、原状回復を含む年間コスト一覧
- 売却時の想定残債一覧
「節税」「保険」「年金代わり」という言葉は、完全に誤りとは限りません。ただし、それは物件と借入条件が適切な場合に限られます。個別の事情により最適解は異なるため、購入前に税務・資金繰り・契約の3点を独立して確認することが重要です。
よくある質問
Q: 医師は不動産投資に向いていますか?
Q: ワンルーム投資はすべて危険ですか?
Q: サブリースなら空室リスクはなくなりますか?
まとめ
- 医師の不動産投資失敗は、節税目的が先行することで起こりやすい
- ワンルーム投資は表面利回りより、空室と修繕を含む実質収支で判断する
- サブリースは家賃保証ではなく、減額や負担条項を伴う契約である
- 借入余力があることと、投資として安全であることは別問題
- 購入前に税務、契約、出口戦略を分けて確認することが重要
参照ソース
- 国土交通省「サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!」: https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000180.html
- 国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト(適正化のための措置)」: https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/pm_portal/sublease.html
- 国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 国税庁「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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