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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

医師の不動産投資確定申告|損益通算と減価償却を解説

11分で読めます
医師の不動産投資確定申告|損益通算と減価償却を解説

医師の不動産投資と確定申告の基本

医師の不動産投資の確定申告で重要なのは、不動産所得は「家賃収入-必要経費」で計算すること、そして赤字が出ても何でも給与と相殺できるわけではないことです。勤務医や開業医にとって問題になるのは、節税目的で購入した物件でも、損益通算の対象外となる費用や、減価償却の計算誤りがあると想定した効果が出ない点ではないでしょうか。

不動産所得は、土地や建物の貸付けなどから生じる所得で、賃料だけでなく更新料や返還不要の敷金、共益費なども収入に含めて計算します。必要経費には固定資産税、損害保険料、修繕費、減価償却費などが含まれます。

当法人でも、医師の先生から「家賃収入があるから確定申告は必要だと思うが、どこまで経費にできるのか分からない」「ワンルーム投資で出た赤字は給与と通算できるのか」といった相談を数多く受けます。実務では、土地は減価償却できない一方、建物は耐用年数に応じて費用化するという基本を押さえるだけでも、申告の精度は大きく変わります。

ここがポイント
不動産投資の税務は、物件の所在地、建物の構造、借入条件、青色申告の有無で結果が変わります。この記事は一般論であり、個別の申告判断は税理士への確認が必要です。

不動産所得とは何か|医師の申告でまず押さえるべき点

不動産所得の申告対象

不動産所得とは、土地や建物の貸付け、借地権など不動産の上に存する権利の設定・貸付け、船舶や航空機の貸付けから生じる所得をいいます。計算式はシンプルで、総収入金額から必要経費を差し引いて算定します。

医師の方は本業の給与所得や事業所得が大きいため、不動産所得の数字が全体の税負担に与える影響も大きくなります。特に勤務医は年末調整で本業の税額が概ね整理されているため、不動産投資を始めた年から確定申告が必要になるケースが多くあります。

収入になるもの・経費になるもの

不動産所得の収入には、毎月の家賃のほか、礼金、更新料、返還不要の敷金・保証金、共益費などが含まれます。必要経費には、固定資産税、管理委託費、火災保険料、修繕費、ローン利息のうち建物取得部分に対応するもの、そして減価償却費があります。

一方で、元本返済そのものは経費になりません。毎月の返済額をそのまま経費と思い込むのは、医師の不動産投資で非常に多い誤解です。会計上・税務上は、返済額のうち利息部分と元本部分を切り分ける必要があります。

不動産所得の損益通算|医師の給与と相殺できる範囲

損益通算できるケース

損益通算とは、一定の所得で生じた損失を他の所得から差し引く仕組みです。不動産所得は損益通算の対象に含まれるため、賃貸経営で赤字が出た場合、一定の条件を満たせば給与所得や事業所得など他の黒字所得から差し引くことができます。

医師にとっては、給与水準が高いほど税率も高くなりやすいため、不動産所得の赤字が税額に与える影響は小さくありません。ただし、ここで重要なのは「赤字の全額が通算できるとは限らない」という点です。

損益通算できない代表例

国税庁は、不動産所得の赤字であっても損益通算できない代表例を示しています。実務上、特に注意したいのは次の2点です。

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項目損益通算の扱い実務上の注意点
土地取得借入の利子相当額対象外土地部分の借入利息は赤字を増やしても給与と通算できない
別荘等の貸付け対象外趣味・保養目的の資産は投資用でも制限あり
国外中古建物の簡便法償却部分対象外令和3年分以後は節税スキームとして使いにくい
特定組合員等の損失対象外匿名組合等の案件は契約形態の確認が必要

特に医師向けの不動産営業で見かけるのが、「減価償却で赤字を作れば高所得でも節税できる」という単純な説明です。しかし、土地取得のための借入利息は損益通算から除外されますし、国外中古建物の損失についても令和3年分以後は制限があります。節税効果を判断するには、赤字の中身まで分解して見ることが欠かせません。

不動産の減価償却とは|節税の仕組みと誤解

減価償却の基本

減価償却とは、建物や建物附属設備など、時間の経過で価値が減る資産の取得価額を、取得年に全額経費にするのではなく、法定耐用年数に応じて各年に配分して必要経費化する仕組みです。土地や骨とう品のように価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません。

つまり、不動産投資で購入した金額の全額がすぐ経費になるわけではなく、建物部分だけを毎年少しずつ費用化します。医師の先生が節税効果を試算するときは、売買契約書や固定資産税評価明細などを基に、土地と建物の按分が適切かを確認する必要があります。

土地と建物の違い

不動産投資の申告では、土地は減価償却できず、建物のみが減価償却の対象です。さらに、建物附属設備や構築物は定額法が基本となるため、物件の構造や取得時期によって償却額が変わります。

たとえば、同じ購入価格の物件でも、建物割合が高い中古RC物件と、土地割合が高い新築区分マンションでは、当初の減価償却費は大きく異なることがあります。営業資料の「想定節税額」だけで判断せず、税務上の償却可能額で試算し直すことが重要です。

減価償却が節税になる理由と限界

減価償却費は実際の現金支出を伴わずに計上できる費用であるため、帳簿上の赤字を作りやすいという特徴があります。このため、高所得の医師にとっては税率差のある局面で一定の節税効果が見込めます。もっとも、減価償却はあくまで費用計上のタイミングを前倒ししている面があり、将来の売却時には譲渡所得の増加につながることもあります。

ここがポイント
「減価償却=得をする」とは限りません。保有中の所得税・住民税の軽減と、将来売却時の譲渡課税、手取りキャッシュフローをセットで見ることが重要です。
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医師が不動産所得を確定申告する手順

Step 1: 1年分の収入と経費を整理する

家賃、礼金、更新料、共益費などの収入を集計し、管理費、修繕費、保険料、固定資産税、借入利息などの経費を整理します。通帳だけで判断せず、請求書や返済予定表、管理会社の送金明細をそろえることが基本です。

Step 2: 減価償却費を計算する

建物、建物附属設備、器具備品などの取得価額と耐用年数を確認し、その年の必要経費となる減価償却費を算定します。取得価額10万円未満のものは原則その年の必要経費、10万円以上20万円未満には一括償却資産の取扱いがあり、一定の青色申告者には30万円未満資産の特例もあります。ただし、貸付けの形態によっては適用できない場合があります。

Step 3: 損益通算の可否を確認する

不動産所得が赤字になった場合、その全額が給与等と通算できるかを確認します。土地取得借入の利息相当額や、国外中古建物の一部損失などは除外されるため、税額試算ではここを分けて計算する必要があります。

Step 4: 青色申告の適用を検討する

青色申告は不動産所得がある方も利用でき、一定の帳簿要件を満たせば青色申告特別控除の適用があります。正規の簿記で記帳し、期限内申告を行う場合は原則55万円、e-Taxまたは一定の電子帳簿保存要件を満たすと65万円の控除が可能です。簡易な記帳の場合は最高10万円です。

Step 5: 本業との合算で最終税額を確認する

勤務医であれば給与所得、開業医であれば事業所得と合算して、所得税・住民税への影響を確認します。医師は本業の所得が大きいため、不動産所得の処理ひとつで税額差が出やすく、誤った申告は修正申告や追徴の原因にもなります。

青色申告を使うべきか|不動産所得申告の実務ポイント

青色申告制度は、不動産所得のある人も利用できる制度です。帳簿付けや書類保存の手間は増えますが、青色申告特別控除のほか、継続的な賃貸経営を行う方にとっては税務管理の精度を上げやすいメリットがあります。

医師の不動産投資では、本業が多忙なため記帳が後回しになりがちです。しかし、年末にまとめて処理すると、土地と建物の区分、資本的支出と修繕費の判定、未払経費の計上漏れなどが起きやすくなります。節税以前に、正しい帳簿で申告できる体制を作ることが結果的に有利です。

当法人でも、物件取得時から会計処理の方針を決めておくことで、確定申告期の混乱が大きく減るケースを多く見ています。特に、医師は本業の収入構造が複雑になりやすいため、不動産投資だけを切り離して考えず、給与・事業・配当・保険・ふるさと納税なども含めた年間の税務設計として見ることが重要です。

よくある質問

Q: 医師の不動産投資で出た赤字は、必ず給与所得と損益通算できますか? ▼
いいえ、必ずではありません。不動産所得は原則として損益通算の対象ですが、土地取得のための借入利息相当額、別荘等の貸付けに係る損失、国外中古建物の一定の減価償却部分などは対象外です。
Q: ワンルームマンション投資でも減価償却は使えますか? ▼
はい、建物部分については使えます。ただし、土地部分は減価償却できません。売買価格のうち建物割合が低いと、想定より償却費が少なくなることがあります。
Q: 不動産所得がある医師は青色申告にした方がよいですか? ▼
一概には言えませんが、継続して賃貸経営を行うなら検討価値は高いです。一定要件を満たせば55万円、さらにe-Tax等の要件を満たせば65万円の青色申告特別控除があります。帳簿管理を継続できるかが判断ポイントです。

まとめ

  • 不動産所得は「総収入金額-必要経費」で計算し、家賃以外の更新料や共益費も収入に含まれる
  • 不動産所得の赤字は原則損益通算できるが、土地取得借入の利子など対象外となる項目がある
  • 減価償却は建物等を年数配分で経費化する仕組みで、土地は対象外
  • 医師の不動産投資は本業所得が大きいため、申告誤りによる税額差も大きくなりやすい
  • 個別の節税効果は物件条件や借入内容で変わるため、購入前後で税理士に試算を依頼するのが安全

参照ソース

  • 国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
  • 国税庁「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm
  • 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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