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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

タワマン節税と医師への影響|2024年改正後を税理士が解説

9分で読めます
タワマン節税と医師への影響|2024年改正後を税理士が解説

タワマン節税は2024年改正後も有効なのか

タワマン節税とは、時価に比べて相続税評価額が低く出やすい区分マンションを使い、相続税負担を抑える考え方です。とくに高所得で金融資産を持ちやすい医師は営業対象になりやすい一方、2024年からの評価見直しで、以前ほど単純な節税商品ではなくなりました。医師にとっての問題は、「節税になると聞いて買ったのに、改正後は効果が薄く、借入や空室、出口価格のリスクだけが残る」点にあります。

当法人でも、勤務医・開業医の先生から「タワーマンションを使えば相続税対策になりますか」と相談を受けることがあります。結論からいうと、2024年改正後のタワマン節税は全面否定ではないものの、従来ほど大きな評価差を前提に設計するのは危険です。相続対策は不動産単体で判断せず、相続税評価、借入、賃料収支、売却可能性まで一体で見る必要があります。

タワマン節税とは何か

タワマン節税の基本構造

従来の区分マンションは、相続税評価額が市場価格より低くなりやすい傾向がありました。相続税や贈与税では、売れる価格そのものではなく、固定資産税評価額や路線価などを基礎に評価するためです。高層階で眺望が良く市場価格が高い住戸でも、相続税評価額にはそのプレミアムが十分反映されにくい場面がありました。

この差を利用して、現金をマンションに変えると相続税評価額が下がる、というのが従来の「タワマン節税」です。特に医師は、現預金が多い、都市部で購入しやすい、金融機関から融資を受けやすい、という事情から提案を受けやすい属性でした。

なぜ医師に勧められやすいのか

医師にタワマン投資が勧められやすい理由は、年収や信用力だけではありません。相続対策の必要性を自覚し始める年代では、預金・有価証券・自宅とは別に、相続税評価を圧縮できる可能性のある資産を持ちたいというニーズが出やすいからです。

ただし、営業現場では「相続税が下がる」という効果だけが強調され、家賃下落、修繕積立金の上昇、管理費負担、金利上昇、売却時の価格変動といった不動産固有のリスクが軽く扱われることがあります。税務だけでなく、投資商品として妥当かを切り分けて考える必要があります。

タワーマンション節税の改正内容

2024年改正で何が変わったか

2024年1月1日以後に相続や贈与で取得した居住用の区分所有財産については、新しい通達に基づく評価が適用されています。対象は、いわゆる分譲マンションの一室であり、事業用テナント物件や一棟所有の賃貸マンションなどは原則として対象外です。

見直しのポイントは、市場価格との乖離が大きいマンションほど評価額を補正する仕組みが導入されたことです。築年数、総階数、所在階、敷地持分の狭小度という4要素を使って「評価乖離率」を計算し、その結果に応じて区分所有補正率をかけます。高層・高額・持分の小さい住戸ほど、従来より評価額が上がりやすい設計です。

タワマン評価改正の考え方

改正の背景には、相続税評価額と市場価格に大きな乖離があるケースが確認されていたことがあります。高層階プレミアムや立地の良さが十分に評価へ反映されず、現金よりも著しく低い評価額になっていたため、制度の均衡を取る方向で見直しが入りました。

ここがポイント
改正後も、区分マンションの評価が常に市場価格そのものになるわけではありません。あくまで「乖離が大きすぎるものを補正する」制度であり、物件ごとの差は残ります。

改正前後の違いを比較

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項目改正前改正後
評価の考え方固定資産税評価額・路線価等を基礎に評価従来評価に加え、乖離率に応じて補正
高層階プレミアム反映が弱い場面があった所在階や総階数が補正要素に入る
節税効果物件によって大きく出やすい大きすぎる乖離は圧縮されやすい
実務上の注意取得時点の評価差に注目しがち出口・収益・借入を含めた総合判断が必要

医師マンション相続で本当に節税になるケース

まだ効果が残るケース

改正後も、タワマン節税が完全に消えたわけではありません。評価水準が市場価格よりなお低い範囲に収まる物件や、賃貸化による貸家・貸家建付地の評価、借入金控除との組み合わせなどで、一定の相続税圧縮効果が残るケースはあります。

ただし、ここで重要なのは「節税額」ではなく、「最終手取り」が増えるかです。たとえば、評価差で相続税が下がっても、購入諸費用、空室損、金利、修繕積立金の増加、売却損が重なれば、家族全体のキャッシュは減ります。税額だけを見て意思決定すると失敗しやすいのが不動産相続対策の難しさです。

効果が薄くなりやすいケース

特に注意したいのは、営業トークが改正前のままになっているケースです。「現金1億円をタワマンに変えれば評価が半分近くになる」といった説明は、2024年以後はそのまま当てはまらない可能性があります。高層階・築浅・都心部・敷地持分が小さい住戸ほど、補正で評価額が上がる余地があります。

また、医師の相続対策では、マンション1戸だけで完結することはほぼありません。自宅、医療法人関係資産、保険、金融資産、事業承継対策との整合が取れていないと、全体最適を崩します。

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タワマン評価改正後に医師が確認すべきリスク

税務リスク

改正後は、従来の単純な「現金を区分マンションに置き換えるだけ」の節税設計は通用しにくくなりました。不動産鑑定評価や個別事情が論点になる余地もあり、形式だけ整えても安全とはいえません。相続開始の時期、保有目的、賃貸実態、取得価格の妥当性なども総合的に見られます。

投資リスク

タワーマンションはブランド性がある一方、価格が高値圏にあると利回りは低くなりがちです。相続税対策で持ったものの、収益性が弱く、維持コストが想定以上にかかることがあります。医師は本業が忙しいため、物件管理や出口判断を後回しにしやすく、その点も見落としやすい部分です。

家族・承継リスク

区分マンションは分けやすいと思われがちですが、実際には共有化すると運用が難しく、1戸あたりの金額も大きいため、遺産分割で調整しづらいことがあります。相続人が複数いるなら、「誰が保有し、誰が現金を受け取るか」まで踏み込んで設計する必要があります。

ここがポイント
相続対策として不動産を取得する場合、購入前に「相続税の試算」「保有中の年間収支」「売却時の想定手取り」を同時に確認してください。どれか1つだけでは判断を誤ります。

医師がタワマン節税を検討するときの判断手順

Step 1: 現状の相続税額を把握する

まず、預金、有価証券、自宅、事業用資産、保険、医療法人関係の持分や貸付金などを整理し、現状の相続税を概算します。対策前の税額がわからないまま商品から入ると、必要のない投資をしがちです。

Step 2: 物件ごとの評価額を改正後ルールで確認する

候補物件について、改正後の区分所有補正率を前提に、相続税評価額がどの程度になるかを確認します。営業資料ではなく、税理士や評価実務に明るい専門家が再計算するのが安全です。

Step 3: 年間収支と借入条件を精査する

家賃、管理費、修繕積立金、固定資産税、借入返済、金利上昇リスクを織り込んで、年間の手残りを見ます。赤字前提で相続税だけを下げる設計は、長期保有では脆弱です。

Step 4: 出口戦略を決める

相続発生前に売るのか、相続後に保有するのか、誰が取得するのかを決めます。都心タワマンは流動性がある一方、市況変動の影響も受けやすいため、出口を曖昧にしたまま買うべきではありません。

よくある質問

Q: タワマン節税は2024年改正で完全に使えなくなりましたか? ▼
完全に使えなくなったわけではありません。ただし、令和6年1月1日以後の相続・贈与では、居住用区分所有財産に補正ルールが入ったため、従来より大きな評価差を前提にした節税設計は難しくなりました。物件ごとの再計算が必要です。
Q: 医師ならタワマンを持つべきでしょうか? ▼
相続対策だけを理由に一律で持つべきとはいえません。医師は融資が付きやすく提案も受けやすいですが、税効果、収益性、流動性、家族への承継しやすさを総合判断する必要があります。
Q: 一棟マンションなら同じように節税できますか? ▼
一棟所有の賃貸マンションは、今回の居住用区分所有財産の補正ルールの対象外です。ただし、だから有利という単純な話ではなく、空室・修繕・管理・売却の難易度など別の論点があります。
Q: タワマン評価改正後でも相続税対策として使う余地はありますか? ▼
あります。ただし、以前のような「高層階ほど有利」という単純な発想ではなく、改正後評価、借入、賃貸条件、保有期間、相続人構成まで含めた設計が前提です。個別事情により結論は大きく変わります。

まとめ

  • タワマン節税は、相続税評価額が市場価格より低く出やすい差を使う考え方
  • 2024年改正後は、高層階・築浅・都心部などの乖離が大きい物件ほど補正されやすい
  • 医師は営業対象になりやすいが、税額だけでなく収益性と出口まで見ないと危険
  • 改正後も一定の効果が残る可能性はあるが、物件ごとの再計算が必須
  • 不動産単体ではなく、金融資産や事業承継を含めた相続全体で判断するべき

参照ソース

  • 国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4667.htm
  • 国税庁「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hyoka/231004/index.htm
  • 国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」: https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023006-018.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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