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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

個別指導の結果別対応|経過観察・再指導・要監査を解説

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個別指導の結果別対応|経過観察・再指導・要監査を解説

個別指導の結果とは

個別指導の結果は、単なる「良い・悪い」の評価ではありません。保険診療の内容や診療報酬請求の妥当性を踏まえ、今後の改善確認をどこまで求めるかで区分されます。クリニックにとって本当に重要なのは、通知書の文言そのものよりも、結果区分ごとに次に何をするかを誤らないことです。

とくに院長や事務長にとっての問題は、「経過観察だから軽い」「再指導でもまだ様子見」と受け止めてしまい、初動が遅れることです。実務上は、結果区分に応じて改善報告、自主点検、自主返還、再発防止策、関係者ヒアリングの深さが変わります。当法人でも個別指導後の相談では、通知の読み違いがその後の再指導や監査対応の負担を大きくしているケースをよく見ます。

まず押さえたいのは、個別指導後の措置は大きく次の4つに整理されることです。

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結果区分状態のイメージ直後の実務対応
概ね妥当おおむね適切指摘事項の是正と院内共有
経過観察軽微な不備あり改善実行と継続確認
再指導不適切部分があり再確認必要重点的な是正と証拠整備
要監査監査要件に該当すると判断監査前提で資料・事実整理
ここがポイント
個別指導の通知では、当日の口頭説明と後日の文書通知の両方が重要です。口頭で軽く聞こえても、文書上の措置区分が重ければ対応水準は引き上げるべきです。

個別指導の結果種類|「概ね妥当」から「要監査」まで

概ね妥当とは

「概ね妥当」は、診療内容や診療報酬請求がおおむね妥当適切と評価された状態です。完全に指摘がゼロとは限りませんが、重大な是正確認や再度の指導を前提とする段階ではありません。

もっとも、概ね妥当であっても安心し切るのは危険です。算定根拠の記載不足、カルテとレセプトの整合性、院内ルールの曖昧さなど、放置すると次回の集団的個別指導や個別指導で不利に働く論点が残ることがあります。高点数で対象になりやすい診療所ほど、概ね妥当の後に体制整備を進めておく意味があります。

個別指導の経過観察とは

個別指導 経過観察は、適正を欠く部分があるものの、その程度が軽微で、理解も得られており、改善が期待できる場合に付される区分です。実務上は「今回は監査相当ではないが、改善が本当に進むかを見られている状態」と理解するのが正確です。

ここで重要なのは、「軽微」という言葉に引っ張られないことです。軽微でも、同種の算定誤りが複数月・複数患者に及ぶ場合、返還や再指導に発展する余地があります。経過観察の段階で院長だけが理解して終わるのではなく、事務長、請求担当、看護師長など関係者まで落とし込む必要があります。

個別指導 再指導とは

個別指導 再指導は、診療内容または診療報酬請求に適正を欠く部分があり、再度の指導を受けなければ改善状況を判断できない場合の区分です。つまり、「改善が必要」というだけでなく、「本当に改善したかを後日確認する」段階に入ったと考えるべきです。

再指導になるケースでは、単発の記載漏れよりも、算定ルールの理解不足、算定基準の院内周知不足、レセプトチェック体制の不備など、構造的な問題が背景にあることが少なくありません。現場では、特定の担当者のミスとして処理してしまい、仕組みの見直しまで至らないことが再指導長期化の原因になります。

要監査とは

「要監査」は、指導の結果として監査要件に該当すると判断された場合の区分です。ここまで来ると、通常の改善報告だけでは足りず、監査対応を前提とした事実確認が必要になります。

また、個別指導の途中でも、明らかに不正または著しい不当が疑われる場合は、指導を中止して直ちに監査へ移ることがあります。つまり、要監査は「次に厳しく注意される」というレベルではなく、不正又は著しい不当の疑いを前提に行政対応が進む可能性がある状態です。

結果別フォローアップ|通知後に何をするべきか

概ね妥当の対応

概ね妥当の後は、油断せずに指摘事項の棚卸しを行うことが重要です。通知文書の指摘事項を一覧化し、カルテ記載、算定要件確認、レセプトチェックの運用を見直します。

特におすすめなのは、指摘事項を「人の問題」ではなく「仕組みの問題」に置き換えることです。たとえば「記載漏れがあった」で終わらせず、「初診時・再診時・検査時の記載チェック項目が標準化されていない」と再定義すると、次回以降の再発防止につながります。

経過観察の対応

経過観察では、改善したことを院内で証明できる状態を作ることが最優先です。単に「気を付けます」と回答するだけでは弱く、改善後の運用ルール、チェック表、研修記録、サンプルカルテなどを残す方が安全です。

当法人での支援実務でも、経過観察後に再評価されるのは「理解したか」より「継続できる仕組みになったか」です。改善策は、担当者の注意力に依存しない設計にする必要があります。

再指導の対応

再指導では、対象となった指摘事項ごとに原因分析を行います。請求事務の誤りなのか、医師の記載不足なのか、院内マニュアルの不備なのかで打ち手は異なります。

再指導前に最低限そろえたいのは、次の3点です。

  • 指摘事項ごとの発生原因メモ
  • 改善後の運用ルール
  • 改善後の実例資料(匿名化カルテ、チェック記録など)

再指導は「前回の反省発表会」ではなく、「改善が本当に機能しているか」を見られる場です。したがって、説明資料は改善前と改善後の差が分かる形にすると効果的です。

要監査の対応

要監査では、まず事実関係を曖昧にしないことが重要です。感覚的な説明や、その場しのぎの弁明は避け、対象期間、対象患者、対象算定、関与者、根拠資料を整理します。

この段階では、返還の有無や金額だけに意識が向きがちですが、本質は請求の適法性と意図性の評価です。診療録、レセプト、勤務実績、届出内容、院内指示系統など、説明の前提となる資料を早期にそろえる必要があります。

ここがポイント
要監査や監査移行が見込まれる場面では、院内だけで方針を決めず、保険診療実務に詳しい専門家へ早めに相談した方が安全です。初動の説明や資料提出の設計で、その後の負担が大きく変わります。

個別指導後の手順|改善報告・自主返還・再発防止

個別指導の後は、結果区分を問わず、指摘事項への対応を文書と運用の両面で進めます。一般的な流れは次のとおりです。

Step 1: 通知書と口頭説明を整理する

当日の説明内容と、後日届く文書通知の内容を照合します。認識のズレがあれば、院内メモを残しておきます。

Step 2: 指摘事項を論点別に分解する

カルテ記載、算定要件、施設基準、届出、請求事務などに分類し、誰が何を直すかを明確にします。

Step 3: 自主点検の範囲を決める

同種の誤りが他の患者や他月にもないかを確認します。個別指導で不当事項が確認された場合、自主点検の結果に応じて自主返還が求められることがあります。

Step 4: 改善報告書を作る

改善策を抽象的に書くのではなく、「誰が」「いつから」「何を」「どう確認するか」を明示します。

Step 5: 再発防止策を固定化する

マニュアル改訂、定例チェック、職員研修、月次監査など、継続できる仕組みに落とし込みます。

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個別指導の結果で注意したいポイント|再指導・監査を避けるために

結果区分より「同種指摘の反復」が危険

実務上、最も警戒すべきなのは、同じ論点での繰り返しです。初回は経過観察でも、改善が見えなければ再指導に進み、度重なる個別指導でも改善が見られない場合は監査対象となり得ます。

自主返還は金額より範囲の設計が重要

自主返還は、単に返還額を計算する作業ではありません。どの算定が、いつから、どの患者に、どの根拠で影響するかを丁寧に切り分ける必要があります。範囲設定を誤ると、後から説明が崩れやすくなります。

院長だけで抱え込まない

個別指導対応では、院長、事務長、請求担当、現場責任者の認識統一が欠かせません。医師は診療面、事務は請求面だけを見ていると、原因分析が分断されます。結果区分が重いほど、院内横断で対応した方が安全です。

よくある質問

Q: 個別指導で経過観察なら安心してよいですか? ▼
安心し切るのは危険です。経過観察は軽微な不備にとどまる場合の区分ですが、改善が認められなければ再指導に進むことがあります。通知後は、指摘事項の是正と、その後も継続できる仕組み作りが必要です。
Q: 個別指導で再指導になると自主返還は必ず発生しますか? ▼
必ずではありません。ただし、個別指導で診療内容または診療報酬請求に関する不当事項が確認され、自主点検で同様の事項が見つかれば、自主返還を求められる可能性があります。返還の有無は事実関係と点検結果で決まります。
Q: 要監査になったらすぐ取消処分ですか? ▼
直ちに取消処分が決まるわけではありません。要監査は監査要件に該当すると判断された段階であり、その後の監査で事実関係が確認されます。ただし、不正や著しい不当が疑われる局面なので、通常の改善対応より慎重な資料整理と説明が必要です。
Q: 個別指導の結果通知が来た後、まず何から着手すべきですか? ▼
まずは通知文書と当日の口頭説明を整理し、指摘事項を論点別に分解することです。その上で、自主点検の範囲、改善報告書の作成、院内ルールの見直しへ進めると対応がぶれにくくなります。

まとめ

  • 個別指導の結果は「概ね妥当」「経過観察」「再指導」「要監査」の4区分で理解すると整理しやすい
  • 経過観察は軽く見ず、改善を証明できる仕組みまで作ることが重要
  • 再指導は単発ミスではなく、院内体制の不備が疑われる段階と考えるべき
  • 要監査では返還額だけでなく、不正・著しい不当の疑いへの説明準備が必要
  • 個別の事情で対応は変わるため、通知後は早めに専門家と方針を確認した方が安全

参照ソース

  • 厚生労働省「保険診療における指導・監査」: https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shidou_kansa.html
  • 厚生労働省「指導大綱・監査要綱(最終改正:令和8年3月30日)」: https://www.mhlw.go.jp/content/001685596.pdf
  • 厚生労働省「指導大綱における保険医療機関等に対する指導の取扱いについて」: https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb0366&dataType=1&pageNo=1

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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