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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

パート看護師の社会保険2026|税理士が整理

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パート看護師の社会保険2026|税理士が整理

パート看護師の社会保険2026で何が変わるのか

2026年10月の制度見直しで、クリニックのパート看護師にとって重要なのは、月額8.8万円以上という賃金要件、いわゆる106万円の壁が撤廃予定である点です。看護師のパート雇用が多いクリニックでは、「扶養内で働きたい」という希望と、人手不足に対応したい現場運営の両立が課題になりやすいのではないでしょうか。

特に現在、従業員51人以上の法人等で働く短時間労働者は、週20時間以上・学生でないことなどの要件を満たすと社会保険の加入対象です。2026年10月以降は賃金要件が外れる予定であるため、週20時間前後のシフト設計が、これまで以上に重要になります。クリニック側では保険料の事業主負担が増える一方、看護師側では将来の年金や傷病手当金などの保障が厚くなる面もあります。

看護師パートが社会保険に入る基準とは

社会保険の判断でまず押さえたいのは、「4分の3基準」と「短時間労働者の基準」は別ルートだという点です。

4分の3基準と短時間労働者の基準の違い

正社員に比べて所定労働時間・所定労働日数が4分の3以上であれば、事業所規模にかかわらず原則として社会保険の対象になります。これに対して、4分の3未満でも、特定適用事業所等で一定要件を満たせば短時間労働者として加入対象になります。

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判定ルート主な基準事業所規模の影響
4分の3基準正社員の所定労働時間・日数の4分の3以上原則として影響しにくい
短時間労働者の基準週20時間以上、学生でない等現在は51人以上、2027年10月から36~50人にも拡大

2026年10月に変わるポイント

2026年10月に予定されているのは、短時間労働者のうち賃金要件の撤廃です。したがって、今後は「時給を抑えれば106万円の壁を避けられる」という考え方が通用しにくくなります。週20時間以上で雇う設計そのものが、加入判定に直結しやすくなるためです。

ここがポイント
2026年10月時点で、短時間労働者の加入判定で重要なのは「週20時間以上」「学生でない」「2か月を超える雇用見込み」などです。賃金額だけを見て管理すると、実務判断を誤るおそれがあります。

クリニック看護師の扶養内勤務はどう変わるか

パート看護師の実務では、「年収を106万円以内に抑えたい」という相談が多く見られました。しかし2026年10月以降は、その調整軸が変わります。

106万円の壁がなくなると何を見直すべきか

今後は、扶養内勤務を希望するスタッフについて、月額賃金よりも週の所定労働時間の管理が重要になります。たとえば、繁忙日に長時間勤務を積み上げた結果、雇用契約や実態として週20時間を超える運用になると、加入対象となる可能性があります。

また、扶養認定には130万円基準も残るため、「106万円の壁がなくなる=扶養の考え方がすべてなくなる」わけではありません。社会保険加入の判定と、被扶養者として残れるかどうかの判定は、分けて考える必要があります。

パート看護師との説明で注意したい点

現場では、看護師本人が「手取りが減るなら勤務時間を減らしたい」と考える一方で、クリニック側は採用難から勤務時間を確保したい場面が増えます。そのため、制度説明を曖昧にすると不信感につながります。

説明では、次の3点を整理して伝えることが重要です。

  • 社会保険加入の判定は、年収だけでなく週20時間などで決まる
  • 加入すると手取りは一時的に減ることがある
  • その代わり、将来の年金額や傷病手当金、出産手当金などの保障が厚くなる

クリニックの人件費と社会保険負担はどの程度増えるか

クリニック側の最大の関心は、事業主負担がどの程度増えるかでしょう。社会保険料は健康保険・厚生年金保険を中心に、報酬額に応じて発生します。

事業主負担の考え方

実務上は、加入したパート看護師1人につき、年間で数十万円規模の事業主負担増になるケースが珍しくありません。時給、月額賃金、加入する健康保険、40歳以上かどうかなどで差が出るため、一律に「必ずいくら」とは言えませんが、雇用人数が複数いるクリニックでは無視できない水準です。

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ケース月額報酬の目安年間の事業主負担イメージ
週20時間前後の看護師10万〜13万円程度年間20万〜30万円前後
週24〜30時間程度の看護師13万〜18万円程度年間30万〜50万円前後
複数名が加入上記の積み上げ採用計画全体に影響

人件費増をそのまま受け止めない視点

もっとも、社会保険負担は単なるコストではありません。加入により離職率が下がり、採用競争で有利になることがあります。特に看護師採用は売り手市場になりやすく、社会保険完備は採用条件の最低ラインとして見られる場面もあります。短期的な負担だけでなく、定着率改善による採用コスト抑制もあわせて評価したいところです。

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パート看護師の勤務時間調整と実務対応

制度改正への対応は、単に契約書を書き換えるだけでは足りません。シフト、賃金、説明、採用方針を一体で見直す必要があります。

勤務時間調整の進め方

Step 1: 現在のパート看護師を棚卸しする

週の所定労働時間、月額賃金、扶養希望の有無、雇用見込み期間を一覧化します。まずは「誰が2026年10月以降に加入対象になりうるか」を見える化することが出発点です。

Step 2: 20時間ラインのスタッフを抽出する

週18〜22時間程度のスタッフは、制度変更の影響を受けやすい層です。勤務実態が契約より長い場合もあるため、タイムカードやシフト表も確認します。

Step 3: 本人意向を確認する

扶養内継続を望むのか、社会保険加入を前提に収入を増やしたいのかで設計は変わります。制度説明なしに一方的に時間調整すると、離職の原因になります。

Step 4: 雇用区分を再設計する

短時間パートのまま維持するのか、準常勤や正社員へ移行するのかを検討します。人手不足が強いクリニックでは、加入を前提に勤務時間を増やすほうが安定運営につながることもあります。

ベースアップ評価料の活用も検討

2026年度診療報酬改定ではベースアップ評価料の詳細が順次示される見込みです。人件費対応を考えるクリニックでは、既存の賃上げ原資や処遇改善との関係も含めて、報酬改定の情報を早めに確認することが重要です。

ここがポイント
社会保険負担への対応として「全員の時間を19時間台に落とす」設計は、現場運営を不安定にしやすい方法です。採用難の診療科では、加入を前提に処遇を整える方が中長期では合理的な場合があります。

よくある質問

Q: パート看護師は2026年10月から全員が社会保険に入るのですか? ▼
いいえ、全員ではありません。4分の3基準に該当する人は従来どおり対象ですし、短時間労働者としては週20時間以上、学生でないこと、2か月を超える雇用見込みなどの要件を確認する必要があります。さらに、現時点では事業所規模要件も残っています。
Q: 106万円の壁がなくなると、130万円の壁もなくなりますか? ▼
なくなりません。2026年10月に予定されているのは短時間労働者の賃金要件の撤廃です。被扶養者認定では130万円基準が引き続き実務上の論点になりますので、混同しないことが重要です。
Q: クリニックが今すぐやるべきことは何ですか? ▼
まず、パート看護師ごとの週労働時間と契約条件を一覧化し、20時間ラインの人を抽出してください。そのうえで、本人意向の確認、2026年10月以降の加入見込み試算、シフト再設計まで進めるのが実務的です。

まとめ

  • 2026年10月は、短時間労働者の106万円の壁撤廃が予定されている
  • 今後の実務では、月額賃金よりも週20時間基準の管理が重要になる
  • 扶養内勤務の相談では、社会保険加入判定と130万円基準を分けて説明する必要がある
  • クリニックの事業主負担は、1人あたり年間数十万円規模になることがある
  • 対応策は、勤務時間調整だけでなく、雇用区分見直しや定着率向上まで含めて考えるべきである

参照ソース

  • 厚生労働省「『年収の壁』への対応」: https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html
  • 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト 適用拡大Q&A」: https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/qa/
  • 日本年金機構「適用事業所と被保険者」: https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html
  • 厚生労働省「ベースアップ評価料等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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