
執筆者:辻 勝
会長税理士
オンライン診療の向精神薬処方|税理士が整理

診療報酬改定の個別相談
この記事の内容を、自院の算定・収支に落とし込む相談をする
疑義解釈、届出期限、レセプト運用、収入見込みへの反映を税務・経営面から整理します。
オンライン診療の向精神薬処方で押さえる結論
オンライン診療の疑義解釈では、初診を情報通信機器で実施し、再診もオンラインで行った患者に向精神薬を処方できるかが明確に整理されました。令和8年度診療報酬改定の疑義解釈は、単に「算定できるか」を確認する資料ではありません。院内の受付、医師、看護師、医事、会計処理が同じ前提で動けるように、オンライン診療の向精神薬処方の判断基準を先にそろえるための実務資料です。
税理士法人 辻総合会計では、クリニックの収益管理、届出、月次試算、スタッフ運用を一体で確認する相談が増えています。この記事では、オンライン診療を導入している内科、心療内科、精神科、自由診療併用クリニックが迷いやすい点を、疑義解釈の内容と経営管理の目線で整理します。

対面診療の有無が判断軸になる
疑義解釈では、初診をオンラインで実施し、再診もオンラインで行った場合、向精神薬の処方は不可とされています。ポイントは、初診か再診かだけではなく、その症状等について対面診療を経ているかどうかです。
今回の確認で重要なのは、制度名だけを覚えることではありません。どの患者、どの診療場面、どの書類、どの時点の実績を根拠にするのかを分けておくことです。特に月またぎ、同一月内の受診、包括評価に含まれる項目、他機関との連携が関係すると、医事入力だけでは判断しにくくなります。
疑義解釈で確認したい事実関係は、次のように整理できます。
- オンライン初診後にオンライン再診を行うだけでは、向精神薬の処方はできないと示されています。
- 医療法施行規則上、初診でない場合でも、症状等について対面診療を経ている場合を除き、対象処方は行えないとされています。
- 麻薬及び向精神薬取締法上の麻薬・向精神薬が対象処方として示されています。
- オンライン診療指針の遵守確認チェックリストの整備も実務上の確認点になります。
オンライン診療の向精神薬処方は、診療報酬上の点数だけでなく、患者説明、職員配置、外部連携、レセプト点検の順序にも影響します。院長と医事担当者だけでなく、実際に説明や記録を担うスタッフまで同じ表現で共有しておくことが大切です。
算定判断で分けるべきポイント
「初診ではないから処方できる」と単純化すると危険です。オンライン診療の予約経路、本人確認、対面診療の履歴、処方薬の分類、診療録の記載を一連で確認する必要があります。
| 確認項目 | 疑義解釈で確認したい点 | 院内アクション |
|---|---|---|
| 診療形態 | 初診・再診だけでなく対面歴を確認 | 予約画面に対面歴チェックを追加 |
| 処方薬 | 麻薬・向精神薬に該当するか | 薬剤マスタと確認者を設定 |
| 指針対応 | オンライン診療指針チェックリスト | 院内規程と掲示を更新 |
| 患者説明 | オンラインでは処方不可となる場合 | 事前案内文を整備 |
表のように、まず「制度要件」「患者単位の状態」「当日の診療行為」「記録・説明」の4層に分解すると、算定漏れと過大算定の両方を防ぎやすくなります。医事担当者が迷う場面は、要件そのものよりも、複数の要件が同じ日に重なる場面です。
また、返戻や査定の予防では、レセプト摘要欄に何を書くかだけでなく、診療録や説明文書に同じ前提が残っているかが重要です。会計上は、増収見込みだけを見込むのではなく、運用コスト、教育時間、届出作業、システム改修費も合わせて評価する必要があります。
クリニック経営への影響
オンライン診療は利便性が高い一方、処方制限を誤ると患者対応とレセプト対応の両面で負担が増えます。受付段階で対象外を判定できる仕組みにすると、医師の診療時間を守りやすくなります。
診療報酬改定の影響は、単価の変化よりも「確認作業がどこに増えるか」に表れます。例えば、対象患者の抽出、同一月の算定履歴、他院受診状況、オンライン診療の前提、紹介先との連携記録などは、院内の誰かが毎月確認しなければなりません。
税理士の視点では、オンライン診療予約数、対面切替件数、処方不可による再予約件数、オンライン診療に伴うシステム費を月次で追うことが重要です。診療行為別の収入だけでなく、算定できなかった件数、問い合わせ対応時間、レセプト修正件数を見ておくと、制度対応が利益に結びついているかを判断しやすくなります。
疑義解釈は「現場の例外処理」を減らすための材料として使うのが実務的です。院内で判断が割れる項目は、Q&Aの該当箇所をそのまま保存するのではなく、自院のフローに置き換えたチェック表として管理すると運用に落とし込みやすくなります。
実務対応の手順
Step 1: 対象患者と対象行為を分ける
オンライン診療患者を、対面診療歴あり、対面診療歴なし、初診オンラインのみの3区分に分けます。
Step 2: 記録と説明の担当を決める
受付が事前確認し、医師が診療録に対面歴と処方判断を残す流れを決めます。
Step 3: 月次で件数とエラーを確認する
向精神薬に関するオンライン診療の問い合わせ、予約変更、対面切替を月次で集計します。
Step 4: 収益予測に反映する
オンライン枠の収益性を、診療単価だけでなくキャンセル率や切替率も含めて評価します。
この手順を作っておくと、疑義解釈が追加されたときも、毎回ゼロから議論する必要がなくなります。特に令和8年度改定は、医療DX、在宅、オンライン、連携、賃上げなど複数の領域が同時に動いています。ひとつの加算だけを見るよりも、受付から会計までの流れとして確認する方が実務に合います。
院内で作るべき管理表
オンライン診療の向精神薬処方を継続運用する場合は、記事を読んだ担当者だけが理解している状態では足りません。最低限、対象患者、対象行為、算定可否、確認者、根拠資料、次回確認日を1つの管理表にまとめてください。電子カルテ、レセコン、表計算ソフトのどれで管理するかは医院の規模によりますが、月次で同じ切り口で見返せることが重要です。
管理表には「算定できた件数」だけでなく「算定しなかった件数」も残します。算定しなかった理由が、要件不足なのか、記録不足なのか、患者説明が未了だったのかで、次に取るべき対応が変わるためです。ここを残しておくと、翌月以降のスタッフ教育や、レセプトチェックの優先順位を決めやすくなります。
また、疑義解釈は追加や訂正が入り得るため、参照した資料名と確認日も管理表に入れておきます。院内ルールを更新した場合は、更新前後でどの患者に影響するかも確認してください。特に令和8年度改定では、在宅、オンライン、連携、薬剤、検査が複数の記事でつながっているため、単独の項目だけを見て判断しないことが実務上のポイントです。
税務・会計と接続する視点
診療報酬改定対応は医事だけの仕事に見えますが、最終的には月次試算と資金繰りに反映されます。オンライン診療の向精神薬処方で増収が見込める場合でも、届出準備、スタッフ教育、システム設定、連携先との調整に時間がかかるなら、利益への反映は遅れます。逆に算定不可の整理が進むことで返戻や再請求が減れば、入金サイトの安定にもつながります。
税理士法人 辻総合会計では、診療報酬の算定件数をそのまま売上予測に置くのではなく、実算定率、返戻率、スタッフ工数、導入コストを合わせて確認します。院長が見るべき数字は、点数表上の単価だけではありません。制度対応によって、どの診療行為が増え、どの作業が減り、どの部門の負担が増えたかまで見ることで、改定対応を経営改善につなげやすくなります。
追加疑義解釈が出たときの更新ルール
オンライン診療の向精神薬処方に関する疑義解釈が追加された場合は、まず既存の院内ルールと矛盾する箇所がないかを確認します。次に、影響する患者群、算定月、届出、レセプト摘要、患者説明文を洗い出し、変更日を明記して管理表を更新してください。公開資料の更新を見つけても、すぐに過去月を修正するのではなく、どの診療日から適用する判断なのかを確認してから運用に反映するのが安全です。
よくある質問
Q: オンライン初診後のオンライン再診で向精神薬は処方できますか?
Q: 対面診療を一度行えばオンライン処方は可能ですか?
Q: 院内では何を整備すべきですか?
まとめ
- オンライン診療の向精神薬処方は、疑義解釈の該当Q&Aだけでなく、自院の診療フローに落とし込んで確認する必要があります。
- 算定判断は、患者要件、診療行為、記録、届出、同一月内の関係を分けて整理すると誤りを減らせます。
- 収益予測では、増収額だけでなく、確認作業やスタッフ教育のコストも一緒に見ておくことが重要です。
- 公開資料は追加・訂正されるため、2026年5月10日時点の情報として管理し、更新時には該当記事を再確認してください。
- 判断が難しい場合は、税理士法人 辻総合会計へご相談ください。クリニックの診療報酬改定対応と経営管理を一体で確認します。
参照ソース
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 疑義解釈資料の送付について(その4): https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001694332.pdf
- 令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001698334.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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