
執筆者:辻 勝
会長・公認会計士・税理士・相続事業承継コンサルタント
相続税が心配な人の初動チェック|申告要否と10か月期限の見方

結論:相続税は「財産の総額」ではなく、基礎控除と申告要否から確認する
相続税が心配になったら、最初にやることは税額を細かく計算することではありません。財産・債務・法定相続人を大まかに整理し、基礎控除を超えそうか、10か月以内に申告が必要かを判断することです。
相続税申告の個別相談
この記事の内容を、ご家族の相続税申告と必要資料に落とし込む相談をする
財産一覧、相続人、期限、不動産評価、申告要否を、状況に合わせて整理します。
2026年5月18日時点で確認できる国税庁情報では、相続税の申告は、原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行います。遺産に係る基礎控除額は、3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数で計算します。
まず確認するポイント
| 確認すること | 見る内容 | 初動での判断 |
|---|---|---|
| 相続人 | 配偶者、子、親、兄弟姉妹など | 基礎控除の人数を確認する |
| 財産 | 預貯金、不動産、有価証券、生命保険、貸付金など | 概算で基礎控除を超えそうか見る |
| 債務・葬式費用 | 借入金、未払医療費、葬儀費用など | 正味財産から差し引く候補を整理する |
| 期限 | 死亡を知った日の翌日から10か月 | 逆算して資料収集を始める |
| 特例 | 配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例など | 申告が必要になる可能性を確認する |
基礎控除以下なら申告も納税も不要なケースがありますが、特例を使って税額を下げる場合は申告が必要になることがあります。
初動チェックリスト
相続開始後、まず次の順番で情報を集めます。完璧な評価額でなくても、早い段階で概算を作ることが重要です。
| 時期 | やること | 具体例 |
|---|---|---|
| 1週間以内 | 重要書類の保管場所を確認 | 通帳、証券会社の書類、固定資産税通知書、保険証券 |
| 1か月以内 | 相続人と主な財産を一覧化 | 家族構成、預貯金、不動産、借入金、未払金 |
| 2〜3か月以内 | 不動産・証券・保険の資料を集める | 名寄帳、登記事項証明書、残高証明書、保険金通知 |
| 4〜6か月以内 | 申告要否と遺産分割の方向性を確認 | 基礎控除超過、特例適用、納税資金 |
| 期限前 | 申告書提出・納税 | 10か月期限に間に合うよう逆算する |
相続税は、資料収集に時間がかかります。特に不動産、名義預金の疑いがある預金移動、生命保険、過去の贈与がある場合は、早めに整理します。
基礎控除の計算方法
相続税の申告要否を考えるときは、まず基礎控除額を計算します。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
計算式は、3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数です。たとえば配偶者と子2人の合計3人なら、基礎控除額は4,800万円です。
ただし、財産の評価額は単純な時価と一致しないことがあります。不動産、貸家、土地、非上場株式、生前贈与がある場合は、概算だけで判断しない方が安全です。
申告が必要になりやすいケース
| ケース | なぜ注意が必要か |
|---|---|
| 自宅以外に土地・賃貸物件がある | 土地評価、貸家建付地、小規模宅地等の特例の検討が必要になる |
| 預貯金の移動が多い | 名義預金や生前贈与の確認が必要になることがある |
| 生命保険金を受け取った | 非課税枠の計算と受取人ごとの整理が必要になる |
| 相続人同士で分割が決まらない | 特例適用や期限内申告に影響することがある |
| 相続人の中に未成年者・海外居住者がいる | 手続きや税務判断が複雑になりやすい |
「税額が出なさそう」でも、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使うには申告が必要になる場合があります。申告要否は、税額だけでなく特例の使い方まで含めて確認します。
税理士へ相談する前に準備するもの
相談前に次の資料を用意すると、初回相談で申告要否を判断しやすくなります。
| 資料 | 目的 |
|---|---|
| 家族関係が分かるメモ | 法定相続人と基礎控除の確認 |
| 預貯金の通帳・残高メモ | 財産総額と過去の資金移動の確認 |
| 固定資産税通知書 | 不動産の有無と概算評価の確認 |
| 証券会社・保険会社の通知 | 有価証券、生命保険、死亡保険金の確認 |
| 借入金・未払金の資料 | 債務控除候補の確認 |
| 遺言書・遺産分割の話し合い状況 | 手続きと申告方針の確認 |
税理士法人 辻総合会計グループでは、相続税の申告要否、財産評価、不動産評価、遺産分割前の進め方を、初動段階から整理しています。基礎控除を超えそうか分からない段階でも、資料の集め方から確認できます。
よくある質問
Q: 基礎控除以下なら何もしなくてよいですか?
Q: 10か月の期限に間に合わない場合はどうなりますか?
Q: 配偶者が全部相続すれば相続税はかかりませんか?
Q: 不動産があると必ず税理士へ依頼すべきですか?
Q: 相続税シミュレーションだけで申告要否を判断できますか?
まとめ
相続税が心配なときは、まず財産・債務・法定相続人を整理し、基礎控除を超えそうかを確認します。申告期限は原則10か月なので、資料収集、遺産分割、財産評価、納税資金を逆算して進めます。
基礎控除以下に見えても、特例適用、不動産評価、名義預金、生前贈与、遺産分割未了がある場合は判断が変わります。早めに初動チェックを行い、必要に応じて相続税申告の専門家へ相談してください。
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この記事を書いた人

辻 勝
会長・公認会計士・税理士・相続事業承継コンサルタント
公認会計士 / 税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
ご注意事項
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