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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.27
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

相続不動産売却の税金2026|取得費加算と3000万控除

8分で読めます
相続不動産売却の税金2026|取得費加算と3000万控除

相続した不動産を売却したときの税金は、基本的に「売却益(譲渡所得)」に対して課税されます。2026年に検討すべき核心は、相続税を取得費に上乗せできる「取得費加算」と、条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特別控除を、どちら(またはどの枠組み)で狙うかです。
相続直後は「急いで売るべきか」「住む・貸すと不利か」など判断が難しく、特例の期限を逃す相談が目立ちます。

相続不動産を売却したときの税金の基本(譲渡所得)

相続不動産の売却では、まず譲渡所得を計算します。

  • 譲渡所得 = 売却価額 −(取得費+譲渡費用)
  • 税率は「長期(所有期間5年超)」「短期(5年以下)」で異なり、相続の場合は原則として被相続人の取得時点から通算して判定します。

ここでつまずきやすいのが取得費です。古い不動産ほど取得費資料が残っておらず、概算取得費(売却価額の5%)になると譲渡所得が大きくなりやすい傾向があります。そこで検討したいのが次の2つの特例です。

相続不動産売却の特例1:取得費加算の特例(相続税を上乗せ)

取得費加算の特例は、一定の要件を満たすと、相続税の一部をその不動産の取得費に加算できる制度です。結果として譲渡所得が減り、税負担が下がります。国税庁の案内では、相続税が課税されていること、そして売却期限があることがポイントです。

要件の整理(押さえるべき3点)

  • 相続または遺贈で取得した財産を売ること
  • その取得者に相続税が課税されていること
  • 相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること(期限管理が重要)
ここがポイント
取得費加算は「相続税を払っている人」向けの特例です。相続税が0円(基礎控除内等)なら、この特例は使えません。

実務での勘どころ

  • 相続税が高額で、売却益も大きい案件ほど効きやすい
  • 共有相続の場合、誰がいくら相続税を負担しているか(按分)で計算が変わる
  • 売却資産ごとに計算するため、「土地だけ先に売る」「建物だけ」などの切り分けは注意が必要です

相続不動産売却の特例2:3,000万円控除(空き家・マイホーム)

「3,000万円控除」と一口に言っても、相続不動産の文脈では主に次の2系統があります。

A. 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特別控除

相続した「被相続人の自宅(一定の要件あり)」を売る場合に、譲渡所得から最大3,000万円(一定の場合2,000万円)を控除できる制度です。適用期間は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象とされています。

また、令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上の場合は控除額が2,000万円となる点が明示されています。

B. 相続人自身のマイホームを売ったときの3,000万円特別控除

相続後に相続人が居住用として住み始め、その「自分のマイホーム」として売却する局面では、居住用財産の3,000万円特別控除の枠組みが検討対象になります(住まなくなってからの期限等の細かな要件あり)。

ここがポイント
同じ「3,000万円控除」でも、空き家特例とマイホーム特例では要件(建物の状態、居住実態、期限、必要書類の考え方)が違います。どちらで狙うかを最初に決めると手戻りが減ります。

取得費加算と3,000万円控除の使い分け(結論:先に控除の型を確定)

結論としては、次の順番で当てはめると判断が早いです。

  1. 売る物件は「被相続人の自宅(空き家)」の要件に乗るか
  2. 乗らない場合、相続人が居住して「マイホーム特例」を狙う余地があるか
  3. いずれも難しい場合、相続税を払っているなら「取得費加算」で譲渡所得を圧縮できるか

比較表:どちらが有利になりやすいか(実務目線)

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観点取得費加算の特例3,000万円控除(空き家・マイホーム)
効き方取得費を増やして譲渡所得を減らす譲渡所得から一定額を直接控除
向いているケース相続税を負担している/相続税が高い譲渡所得が大きい/要件を満たせる
注意点売却期限がある/相続税0円だと不可要件が細かい/書類整備が重要
期限管理相続税申告期限の翌日以後3年まで制度ごとに期間・期限が異なる

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手続きの進め方(2026年に間に合わせる実務ステップ)

Step 1: 相続関係と課税関係を棚卸しする
遺産分割、共有持分、相続税申告の有無(相続税が課税されているか)を整理します。ここが曖昧だと、取得費加算の計算が崩れます。

Step 2: 物件の型を判定する(空き家特例 or マイホーム特例 or どちらも不可)
被相続人の居住実態、建物の状態、相続後の使用状況(住む・貸す・空き家のまま)を時系列で確認します。

Step 3: 譲渡所得の概算を2〜3パターンで試算する

  • 特例なし
  • 取得費加算
  • 3,000万円控除(該当する型)
    税理士法人 辻総合会計の実務では、ここで初めて「売却時期を早める/遅らせる」「更地化する/しない」などの意思決定が合理化されます。

Step 4: 必要書類を先に集め、確定申告で適用する
いずれの特例も、原則として確定申告での手続きが必要です。売買契約書だけでなく、相続税申告書控え、登記事項、計算明細書などが論点になります。

よくある質問

Q: 取得費加算の特例は、相続してすぐ売らないと間に合いませんか? ▼
「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」に売れば対象になり得ます。相続開始日と申告期限から逆算して、売却可能な期限を必ずカレンダーに落とし込むのが実務上の第一歩です。
Q: 相続した実家(空き家)を売る3,000万円控除は、2026年でも使えますか? ▼
国税庁の案内上、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡が対象です。2026年の譲渡は期間内ですが、建物要件や相続後の利用状況など細かな条件を満たす必要があります。
Q: 相続人が3人以上だと控除が減るのは本当ですか? ▼
国税庁の案内では、令和6年1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上の場合は(空き家特例の)控除額が2,000万円までとなる取扱いが示されています。相続人の人数で結論が変わるため、早めの判定が重要です。
Q: 取得費加算と3,000万円控除は同時に使えますか? ▼
どの「3,000万円控除」を適用するか、また譲渡の状況によって検討が分かれます。実務では併用できるかより先に、どの特例が要件に乗るか、どちらが税額をより下げるかを試算で比較して決めます(個別事情で結論が変わるため、申告前の確認を推奨します)。

まとめ

  • 相続不動産の売却税金は「譲渡所得」が起点で、取得費の有無が税額を大きく左右する
  • 相続税を負担しているなら取得費加算の特例で譲渡所得を圧縮できる可能性がある
  • 相続した実家の売却は、空き家の3,000万円控除や、状況によりマイホーム特例も検討対象
  • 期限(取得費加算は相続税申告期限ベース、空き家特例は制度期間)を先に確定し、試算→書類→申告の順で進める
  • 個別要件の詰めで結論が変わるため、売却前に税理士へ相談すると手戻りが少ない

参照ソース

  • 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
  • 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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