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相続・事業承継コラム
作成日:2025.07.26
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

遺留分とは?請求できる人と計算方法・期限の要点|税理士が解説

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遺留分とは?請求できる人と計算方法・期限の要点|税理士が解説

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された「最低限の取り分」です。遺言で特定の人に全財産を遺贈する内容でも、遺留分を侵害された相続人は金銭で取り戻せる可能性があります。相続人間の対立が深刻化しやすく、相続税申告や分割協議にも波及するため、範囲・割合・計算・期限を一度整理しておくことが重要です。

遺留分とは何か(制度の目的と2025年時点の要点)

遺留分は、被相続人の意思(遺言)を尊重しつつも、近しい家族の生活保障や公平を確保するための制度です。相続で「0」にされることを一定範囲で防ぐ仕組み、と捉えると理解しやすいでしょう。

また、実務上の最大のポイントは、2019年(令和元年)7月1日施行の改正により、従来の「物の返還」を中心とした遺留分減殺の発想から、「侵害額に相当する金銭の請求」へと整理された点です。これにより、共有不動産化などの二次トラブルを抑えやすくなった一方、資金繰りや支払方法の調整が争点になりやすくなりました。

ここがポイント
遺留分の請求は「相続争いを起こすための制度」ではなく、家族内の最低限の公平を担保する制度です。とはいえ、感情とお金が直結しやすい領域のため、早い段階で事実関係(財産・贈与・遺言)を整理することがトラブル予防になります。

遺留分を請求できる相続人の範囲(誰が対象?)

遺留分を請求できるのは「遺留分権利者」と呼ばれる一定の相続人です。結論としては、配偶者・子(代襲相続を含む)・直系尊属(父母等)が対象になり、兄弟姉妹には遺留分がありません。

遺留分権利者の基本ルール

  • 配偶者:常に遺留分あり
  • 子(孫など代襲者を含む):遺留分あり
  • 直系尊属(父母・祖父母):子がいない場合に相続人となり、遺留分あり
  • 兄弟姉妹:相続人になっても遺留分なし

「相続人だけど遺留分がない」典型例

たとえば「配偶者なし・子なし」で相続人が兄弟姉妹だけのケースでは、遺言で第三者に全財産を遺贈しても、兄弟姉妹は遺留分侵害額請求ができません。遺留分を前提にした対策を考える際は、まず家族構成(相続関係)を確定させる必要があります。

遺留分の割合(全体の遺留分と各人の遺留分)

遺留分は、相続財産のうち一定割合が「全体として確保される枠」として定められ、そこから各人の法定相続分に応じて按分します。まずは全体の遺留分割合を押さえましょう。

遺留分割合の早見表(全体の遺留分)

←横にスクロールできます→
相続人の構成全体の遺留分割合ポイント
配偶者または子(直系尊属がいない)1/2もっとも一般的
直系尊属のみ(子・配偶者がいない)1/3親だけが相続人のとき等
兄弟姉妹が相続人に含まれる兄弟姉妹は0兄弟姉妹に遺留分なし

各人の遺留分の考え方(全体×法定相続分)

各人の遺留分は、概ね次の式で把握できます。

  • 各人の遺留分 =(遺留分の基礎となる財産)×(全体の遺留分割合)×(各人の法定相続分)

例:相続人が「配偶者と子2人」の場合
全体の遺留分は1/2、法定相続分は配偶者1/2・子は各1/4です。
したがって、配偶者の遺留分は 1/2(全体遺留分)×1/2(法定相続分)=1/4、子は各1/2×1/4=1/8(基礎財産に対する割合)となります。

遺留分の計算方法(基礎財産の算定から侵害額まで)

遺留分計算で最もつまずきやすいのが、分母となる「遺留分の基礎となる財産(基礎財産)」の範囲です。相続開始時点の遺産だけでなく、生前贈与の一部が加算され、債務は控除されます。ここを誤ると、請求額も交渉方針も崩れます。

基礎財産の基本式

  • 基礎財産 = 相続開始時の積極財産(遺産)+ 一定の生前贈与等 - 債務

この「一定の生前贈与等」に、どこまで含めるかが実務の争点になりがちです。特に不動産の贈与、相続人への生前贈与、保険金の扱い、事業用資産の移転などは個別判断が必要です。

侵害額(請求できる金額)を出す流れ

Step 1: 相続関係を確定する
戸籍で相続人を確定し、遺言書の有無と内容を確認します(公正証書・自筆・法務局保管など)。

Step 2: 基礎財産を算定する
預貯金・有価証券・不動産・事業用資産等の評価と、債務(借入金等)の整理を行います。生前贈与がある場合は、対象期間・趣旨(特別受益か等)を含めて検討します。

Step 3: 各人の遺留分額を計算する
(基礎財産)×(全体遺留分割合)×(法定相続分)で「各人の遺留分額」を算定します。

Step 4: 実際にもらった額との差額を整理する
遺言や遺産分割で取得した額(または取得予定額)を差し引き、差額が「遺留分侵害額」として請求対象になります。

ここがポイント
税理士法人 辻総合会計の実務でも、計算そのものより「基礎財産に入る/入らない」「評価はどうする」「誰が何を取得したと扱うか」で対立が顕在化するケースが目立ちます。財産目録と評価根拠の整備が、交渉コストを大きく左右します。

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遺留分侵害額請求の方法(手順・期限・注意点)

遺留分を取り戻す手続は、一般に「話し合い→内容証明等→調停・訴訟」という順で進みます。ポイントは、権利行使の意思表示と期限管理です。

請求の実務フロー(まず何をする?)

Step 1: 証拠と数字を固める
遺言書、財産資料(通帳・残高証明・登記簿・評価証明等)、贈与の資料を収集し、概算の侵害額を算出します。

Step 2: 相手方へ意思表示(内容証明郵便など)
遺留分侵害額請求をする旨を、相手方に明確に伝えます。調停申立て「だけ」では意思表示にならない点に注意が必要です。

Step 3: 協議(任意交渉)
一括払いが難しい場合は、分割払い・期限の猶予・代物弁済(不動産の持分移転等)など、現実的な支払設計を検討します。

Step 4: まとまらなければ家庭裁判所の調停・訴訟へ
話し合いが難しい場合、家庭裁判所の調停を利用することが一般的です。最終的には訴訟手続に移行することもあります。

期限(時効)—「1年」と「10年」を必ず押さえる

遺留分侵害額請求権は、原則として次のいずれかで消滅します。

  • 相続の開始および侵害を知った時から1年
  • 相続開始の時から10年

実務では「知った時」の認定(いつ知ったか)が争点になり得ます。早期に専門家へ相談し、期限を逆算して意思表示まで完了させるのが安全です。

生前にできる遺留分対策(トラブルを減らす設計)

遺留分は「なくす」ことが難しい一方で、争いを減らす設計は可能です。特に資産が不動産に偏る家庭や、事業承継(自社株・事業用資産)を伴う家庭では、早期の見立てが重要になります。

よく使われる対策パターン

  • 遺言の設計:付言事項で意図を説明し、感情面の火種を減らす
  • 分割しやすい財産構成:現預金の確保、保険の活用、資産の組換え
  • 生前贈与の運用:遺留分に影響する贈与の扱いを前提に、時期・相手・目的を整理
  • 合意形成:推定相続人への説明、家族会議、専門家同席での合意形成
  • (例外的)遺留分放棄:家庭裁判所の許可が必要で、対価や合理性の設計が不可欠

匿名ケース(よくある相談の構図)

たとえば「長男が同居して介護・事業を支え、遺言で不動産を長男へ集中。次男は現預金が少なく遺留分侵害を主張」という構図は頻出です。この場合、遺言の有効性よりも、基礎財産と評価、支払原資(分割払い等)の設計で決着が変わることが多く、相続税申告期限(10か月)も踏まえた段取りが重要になります。

よくある質問

Q: 兄弟姉妹が相続人の場合、遺留分を請求できますか? ▼

A:

できません。兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、遺言で取り分がゼロでも遺留分侵害額請求の対象外です。
Q: 遺留分の請求期限はいつまでですか? ▼

A:

原則として「相続開始と侵害を知った時から1年」または「相続開始から10年」で消滅します。実務では「いつ知ったか」が争点になり得るため、早めに意思表示(内容証明等)まで行うことが重要です。
Q: 調停を申し立てれば、請求したことになりますか? ▼

A:

調停申立て自体が相手方への意思表示と扱われない点に注意が必要です。調停とは別に、内容証明郵便等で遺留分侵害額請求の意思表示を行うのが安全です。
Q: 不動産しか相続財産がない場合でも、遺留分は金銭で請求するのですか? ▼

A:

原則として金銭請求です。相手に資金がない場合は、分割払い、期限の猶予、代物弁済など現実的な支払方法の調整が論点になります。個別事情により最適解が異なるため、専門家の関与が望まれます。

まとめ

  • 遺留分は一定の相続人に保障された最低限の取り分で、侵害された場合は金銭請求が基本
  • 請求できるのは配偶者・子・直系尊属で、兄弟姉妹には遺留分がない
  • 遺留分は「基礎財産×全体割合×法定相続分」で算定し、基礎財産の範囲が実務上の争点になりやすい
  • 期限は原則「1年」または「10年」で、意思表示(内容証明等)まで含めた期限管理が重要
  • 生前対策は遺言設計・資産の組換え・支払原資の確保・合意形成が鍵(個別事情で最適解は変動)

参照ソース

  • e-Gov法令検索「民法」: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=505M60000100167
  • 裁判所「遺留分侵害額の請求調停」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/lkazi_07_26/index.html
  • 法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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