税理士法人 辻総合会計グループ
無料相談
経営ブログに戻る
中小企業向けコラム
作成日:2026.02.22
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

銀行融資審査の財務指標|中小企業の決算書改善を税理士が解説

11分で読めます
銀行融資審査の財務指標|中小企業の決算書改善を税理士が解説

銀行融資の審査で見られる財務指標とは

銀行融資の審査は、「返せるか(返済能力)」と「返し続けられるか(持続性)」を、決算書から定量評価する作業です。中小企業の場合、担保・保証だけでなく、資金繰りと利益体質の説明が弱いと、金利条件や融資額に跳ね返りやすくなります。

結論としては、審査で重視されるのは「利益が出ている」だけではなく、キャッシュが残る構造と、貸借対照表の健全性です。赤字でも通るケース、黒字でも落ちるケースの差は、指標そのものより「指標の背景を言語化できるか」にあります。

税理士法人 辻総合会計では、金融機関面談を前提に、決算書の見せ方(科目・注記・別表・補足資料)まで含めて融資設計を支援してきました。以下では、銀行が見ている代表指標と、通過率を上げる決算書の作り方を体系的に整理します。


銀行融資審査の定番「6つの財務指標」

金融機関は、企業の状況を短時間で把握するために、一定のセット指標でスクリーニングします。実務で使いやすい枠組みとして、経済産業省の「ローカルベンチマーク(ロカベン)」の財務6指標が参考になります。

  • 売上増加率(成長性)
  • 営業利益率(収益性)
  • 労働生産性(生産性)
  • EBITDA有利子負債倍率(健全性・返済余力)
  • 営業運転資本回転期間(効率性・資金繰り)
  • 自己資本比率(安全性)

ここで重要なのは、「良い数字に見せる」ことではなく、前年差・3期推移で語れる状態に整えることです。単年度で良くても、翌期に崩れる構造だと審査は厳しくなります。


財務指標ごとの見られ方と「決算書での改善ポイント」

自己資本比率(安全性)—「借入依存の度合い」を見る

自己資本比率が低いと、外部ショック(売上減・原価高騰)で資金繰りが崩れる懸念が強まります。中小企業では極端な水準を求められないこともありますが、債務超過(純資産マイナス)は大きな減点要素です。

改善の基本は次の3つです。

  • 役員借入金(会社→役員への貸付、役員→会社への借入)の整理と注記
  • 不要資産・遊休在庫の圧縮(資産の質の改善)
  • 利益の社内留保(役員報酬の最適化、節税と自己資本のバランス)
ここがポイント
「節税=融資に不利」ではありません。問題は、節税の結果として利益が薄くなり、返済能力の説明ができない状態です。税務最適と金融最適は一致しないため、融資期は見せる利益の設計が必要です。

EBITDA有利子負債倍率(返済余力)—「何年で返せるか」の直感指標

銀行は「借入を何年分の稼ぐ力で返せるか」を見ます。EBITDA(概念的には営業利益+減価償却費)を基準に、有利子負債が過大だと、追加融資に慎重になります。

決算書で効く改善は次の通りです。

  • 減価償却の方針(設備投資のタイミングと耐用年数の妥当性)
  • 特別損失・一過性費用(移転費、立上げ費)の分離と説明資料化
  • 借入の一本化・返済年数の見直し(短期偏重の是正)

営業運転資本回転期間(資金繰り)—「売上はあるのに苦しい」の原因特定

売上債権(売掛金)+棚卸資産−仕入債務(買掛金)で構成される運転資本は、資金繰りの詰まりを可視化します。ここが悪化していると、黒字でも資金ショートリスクが高いと評価されます。

改善の打ち手はシンプルです。

  • 売掛金の回収条件の見直し(締日・回収サイト短縮)
  • 在庫の滞留削減(廃棄・値下げ・発注ロット見直し)
  • 支払条件の交渉(買掛サイト延長、分割条件)

営業利益率(収益性)—「値付けと原価管理ができているか」

営業利益率は、金融機関にとって「経営管理の基本ができているか」の確認です。特に人件費比率が高い業種では、粗利構造と固定費の説明が求められます。

決算書上の工夫としては、次が効きます。

  • 原価と販管費の科目整理(外注費・支払手数料・雑費の雑多化を解消)
  • 部門別損益(主力商品・顧客層別)の補足資料
  • 値上げ・価格改定の履歴と効果(売上総利益の改善根拠)

労働生産性(生産性)—「人を増やしても儲かるか」

採用難の時代、銀行は「人員増で売上が伸びても、利益が残るか」を見ています。労働生産性の改善は、採用計画と設備投資計画の説得力につながります。

  • 1人当たり付加価値(概念)を意識したKPI(稼働率、単価、回転数)
  • 残業・外注の最適化(固定費化のリスク説明)
  • IT投資の投資対効果(削減工数、処理件数の増加)

売上増加率(成長性)—「伸び方の質」をチェック

成長していても、粗利が落ちている・運転資本が膨らんでいる成長は、資金繰り悪化と紙一重です。銀行は「成長に必要な資金の手当ができているか」を見ます。

  • 増収の要因分解(単価×数量×顧客数)
  • 伸びた取引先の与信・回収条件の整理
  • 成長資金(運転+設備)の資金計画表

指標別の「目安」と審査での読み替え(比較表)

指標には業種差が大きいため、絶対値だけで判断されるわけではありません。ただし、面談で説明の起点になる目安を持つことは有効です。

←横にスクロールできます→
財務指標何を示すか銀行の見方(読み替え)決算書で効く改善
自己資本比率安全性債務超過は強い懸念、低いほど条件悪化利益留保、資産の質改善、役員勘定整理
EBITDA有利子負債倍率返済余力「何年で返せるか」の直感評価一過性費用の分離、投資計画の整合、返済設計
営業運転資本回転期間資金繰り黒字倒産リスクの有無回収・在庫・支払条件の改善、サイト管理
営業利益率収益性管理体制の成熟度科目の整理、原価管理、部門別損益
労働生産性生産性採用・拡大の持続性KPI設計、IT投資の根拠化
売上増加率成長性成長資金の必要額と回収可能性要因分解、資金計画、取引条件の整備

ポイント:銀行は「数字」よりも「数字が示す経営の癖(資金が残らない原因)」を知りたがります。説明できる資料があるほど、審査は前に進みます。


中小企業の税務・経営相談

創業から成長期まで、企業のフェーズに合わせた税務・経営サポートを提供しています。

無料相談を申込む 📞 050-1808-9643

平日 9:15〜18:15(土日祝休業)

銀行融資の通過率を上げる「決算書の作り方」5ステップ

ここからは、融資審査で評価が上がりやすい決算書の整え方を、実務手順に落とします。単なる会計処理ではなく、金融機関が読みやすい形にする作業です。

Step 1: 3期比較できる形に「科目を固定」する

毎期、雑費・支払手数料・外注費などの振替が多いと、銀行側で前年差分析ができず、保守的評価になりがちです。

  • 科目体系を固定し、前年差の説明が必要な項目だけ注記する
  • 特別損失・一過性費用は可能な範囲で分離し、補足資料を付ける

Step 2: 役員勘定と関連当事者取引を透明化する

中小企業の審査で頻出の論点が、役員借入金・役員貸付金・私的流用疑義です。ここが曖昧だと、数字が良くても不信要因になります。

  • 役員借入金の発生理由(資金繰り補填、立替等)を整理
  • 返済・相殺方針を明示し、資金移動の証憑を揃える

Step 3: 運転資本(売掛・在庫)を圧縮して資金繰りを良くする

銀行は「返済原資=キャッシュ」を見ます。運転資本が膨らむほど、追加融資が必要になり、審査も厳しくなります。

  • 売掛金年齢表(滞留の可視化)を作る
  • 在庫回転の目標を置き、滞留在庫の処分方針を決める

Step 4: 見せる利益と税務の最適化を両立させる

融資局面では、利益を落とし過ぎる節税が逆効果になることがあります。特に、返済能力評価(利益+減価償却)を下げてしまうと、融資枠が縮みます。

  • 役員報酬は「生活+税務+金融」の3点で設計する
  • 減価償却は投資計画と一体で説明する(なぜ今、なぜこの規模か)
ここがポイント
「利益を出す=納税が増える」という単純化が、融資では損になります。融資期は調達コスト(金利・保証料)も含めた総コストで最適化するのが合理的です。

Step 5: 決算書に面談用の別紙を添える(これが最後の差になる)

通過率を上げる決め手は、決算書そのものより、補足資料で「不安を先回りして潰す」ことです。

  • 資金繰り表(12か月)と返済計画表
  • 設備投資の見積・稟議(投資対効果)
  • 売上の内訳(主要取引先、単価×数量)
  • 借入一覧(金融機関別、返済条件、担保・保証)

銀行融資 審査 決算書 通過 コツは、「説明資料の精度」と言い換えてもよいでしょう。


ケーススタディ:黒字なのに否決→翌期で通過した中小企業の共通点

よくある相談として、「黒字決算なのに融資が通らない」というケースがあります。原因は黒字赤字ではなく、次のどれかに集約されることが多いです。

  • 売掛金が増え続け、営業CFがマイナス(資金繰り悪化)
  • 在庫が増え、実質的に資金が寝ている(資産の質が悪い)
  • 役員貸付金が膨らみ、私的流用疑義がある(信頼性低下)
  • 利益が特殊要因で出ている(継続性が弱い)

改善した企業は、決算書の数字を動かす前に、運転資本と説明資料の整備から着手しました。結果として、金利条件が改善し、必要資金を一括で調達できた、という流れです。


よくある質問

Q: 赤字でも銀行融資は通りますか? ▼
可能性はあります。ポイントは「赤字の理由が一過性か」「改善計画が数字で説明できるか」「資金繰りが回るか」です。赤字でも、資金繰り表と改善計画(いつ、何で、いくら改善)が整っていると、条件付きで進むケースがあります。
Q: 自己資本比率が低いと必ず不利ですか? ▼
不利になりやすいですが、必ず否決ではありません。中小企業では、成長局面で借入が先行し自己資本比率が下がることもあります。その場合は、EBITDA有利子負債倍率や資金繰りの改善見込みをセットで示し、返済余力を説明することが重要です。
Q: 節税で利益を落としている場合、どうすべきですか? ▼
融資が必要な期は、税務最適だけでなく、融資条件(融資額・金利・保証料)まで含めて総合最適を検討します。役員報酬、減価償却、引当計上などは、金融機関への説明資料と一体で設計するのが現実的です。
Q: ローカルベンチマーク(ロカベン)は融資に使えますか? ▼
使えます。少なくとも、財務の6指標を銀行と同じ言語で会話できるようになります。加えて、非財務情報(商流・業務フロー、4つの視点)を補うことで、「なぜこの数字なのか」を説明しやすくなります。

まとめ

  • 銀行融資審査は「利益」だけでなく、キャッシュが残る構造と貸借対照表の健全性を見ている
  • 実務で有効な枠組みとして、ロカベンの6指標(自己資本比率、EBITDA倍率、運転資本回転期間など)を押さえる
  • 通過率を上げるには、科目の固定、役員勘定の透明化、運転資本の圧縮が効く
  • 節税と融資は最適解がズレることがあるため、融資期は見せる利益の設計が必要
  • 決算書に資金繰り表・返済計画・投資根拠を添付し、面談で説明できる状態にする

参照ソース

  • 経済産業省「ローカルベンチマーク(ロカベン)シート」: https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/sheet.html
  • 経済産業省「財務指標の評価付与方法について(PDF)」: https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/pdf/hyotei2022r.pdf
  • 金融庁「中小企業等に対する金融円滑化対策について」: https://www.fsa.go.jp/policy/chusho/enkatu.html

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

シェア:
経営ブログに戻る

お電話でのご相談

050-1808-9643

受付時間 9:15〜18:15(土日祝休業)

Webお問い合わせ

おすすめコラム

税金のクレジットカード払いは得?ポイントと手数料の損益分岐点|税理士が解説

税金のクレジットカード払いは得?ポイントと手数料の損益分岐点|税理士が解説

メルカリ税金いくらから?申告ライン|税理士が解説

メルカリ税金いくらから?申告ライン|税理士が解説

ふるさと納税限度額シミュレーション2026|年収・家族別早見表

ふるさと納税限度額シミュレーション2026|年収・家族別早見表

人気コラムランキング

1
経理効率化ツール5選|中小企業の導入手順まで税理士が解説

経理効率化ツール5選|中小企業の導入手順まで税理士が解説

2
顧問税理士の選び方|料金相場と失敗回避5つ

顧問税理士の選び方|料金相場と失敗回避5つ

3
創業融資の自己資金はいくら必要?|税理士が解説

創業融資の自己資金はいくら必要?|税理士が解説

4
決算だけ税理士に依頼は可能?費用と注意点|税理士が解説

決算だけ税理士に依頼は可能?費用と注意点|税理士が解説

5
freeeとマネーフォワード比較|どっちを選ぶ?税理士が解説

freeeとマネーフォワード比較|どっちを選ぶ?税理士が解説

CONTACT

無料相談のご案内

税務顧問・会社設立・創業融資・クラウド会計など、お気軽にご相談ください。初回相談は無料です。

ご相談だけでも歓迎です。お気軽にお問い合わせください。

050-1808-9643
平日 9:15〜18:15

© 2026 税理士法人 辻総合会計グループ. All rights reserved.

プライバシーポリシー

お電話はこちら

050-1808-9643

050-1808-9643

無料相談する

平日 9:15〜18:15