税理士法人 辻総合会計グループ
無料相談
経営ブログに戻る
中小企業向けコラム
作成日:2026.02.22
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

資金繰り表の作り方|3か月先を見通す方法を税理士が解説

8分で読めます
資金繰り表の作り方|3か月先を見通す方法を税理士が解説

資金繰り表とは?倒産を防ぐための「現金の予定表」

資金繰り表とは、将来の入金と支払を時系列で並べ、月末(または週末)に現預金がいくら残るかを見通す表です。利益が出ていても、入金より支払が先に来れば資金ショートは起こります。資金繰りが不安で先が読めない経営者にとって、資金繰り表は「倒産を防ぐための財務管理の基礎ツール」です。
結論として、3か月先を見通すコツは「当月は日次〜週次で実績管理、翌月〜3か月は月次で予測、毎月ローリング更新(先送り)する」運用にあります。

資金繰り表が必要な中小企業の典型パターン

資金繰り表が真価を発揮するのは、次のような「利益と現金がズレる」局面です。

  • 売上は伸びているのに、売掛金の回収が遅い(入金サイトが長い)
  • 仕入・外注・人件費の支払が先行する(支払サイトが短い)
  • 納税(法人税・消費税)や賞与が年数回に集中する
  • 借入返済が固定で毎月発生し、繁閑差が大きい
  • 追加融資の可否が読めず、金融機関への説明材料が必要
ここがポイント
「黒字倒産」は、利益の不足というよりも、資金繰りの予測と手当てが遅れることで発生します。資金繰り表の目的は、資金不足を当日ではなく数か月前に発見することです。

資金繰り表の作り方(3か月版)|テンプレートで最短作成

資金繰り表は「難しいモデル」を作るより、まずは3か月先までの実務運用に耐える形で作るのが近道です。基本構造は次の3つです。

  • 期首現預金(当月のスタート残高)
  • 収入(入金予定)
  • 支出(支払予定)
    → これらから「翌月繰越(期末残高)」を計算します。

Step 1: 期首残高(現金・預金)を確定する

最初に、当月初の現金・普通預金・当座預金の残高を記入します。会計帳簿の残高ではなく、通帳・ネットバンクで実残高を合わせるのが基本です。
ここがズレると、資金繰り表全体が信用できなくなります。

Step 2: 入金予定(売上回収)を「請求書ベース」で積み上げる

入金の柱は売掛金回収です。推奨は次の順序です。

  • すでに発行済みの請求書:入金予定日で計上
  • 未請求だが受注済み・継続課金:過去実績から予測
  • それ以外:保守的に見積もる(希望的観測を排除)

ポイントは、売上高ではなく入金日で置くことです(資金繰り表は「発生」ではなく「着金」を管理します)。

Step 3: 支払予定を「固定費→変動費→臨時支出」の順に埋める

支出は漏れが命取りです。次の順で入力すると漏れにくくなります。

  • 固定費:家賃、人件費、社保、リース、通信費、顧問料
  • 変動費:仕入、外注、販売手数料、広告費(発注・請求書ベース)
  • 財務支出:借入返済、利息
  • 税金・賞与:納付月を必ず固定して入力
  • 臨時支出:設備投資、更新費、修繕、退職金など

Step 4: 3か月先の「最低必要現金(安全残高)」を決める

資金繰り表は、月末残高がプラスでも安心ではありません。運転資金として「下回りたくない残高(安全残高)」を設定します。目安は業種で異なりますが、まずは次のいずれかで設定すると運用しやすいです。

  • 毎月固定費の1〜2か月分(人件費+家賃+主要固定費)
  • 直近3か月の最大支払月の7〜10割

Step 5: 不足が出る月に「手当て(資金調達・支払調整)」を入れる

翌月繰越が安全残高を割る月が見えたら、その時点で手当てを入れます。代表例は次の通りです。

  • 早期回収:請求前倒し、分割請求、入金条件の見直し
  • 支払調整:支払サイト交渉、分割、発注時期の調整
  • 資金調達:当座貸越、短期借入、追加融資、補助金・助成金の入金時期確認
  • 固定費削減:サブスク、外注、広告の費用対効果見直し
ここがポイント
資金繰りの改善は「節税」よりも優先順位が高い局面があります。資金ショートは一度起きると選択肢が急減するため、表で不足が見えた時点で先手を打つのが原則です。

3か月先を見通す運用ルール|「ローリング」と「粒度」が9割

資金繰り表は作った瞬間より、運用で価値が決まります。3か月先を見通すための定番運用は次のセットです。

  • 当月:日次〜週次で実績反映(入出金のズレを吸収)
  • 翌月:請求書・支払予定確定分を中心に精度高く
  • 2〜3か月先:保守的な予測(受注確度と季節性で調整)
  • 毎月更新:常に「当月+3か月」の窓を維持(ローリング)

よくある失敗:売上予測だけ精緻で、支払・税金が抜ける

資金不足の主因は「支払の見落とし」に寄りがちです。特に抜けやすいのは以下です。

  • 消費税・法人税・予定納税
  • 社会保険料(改定月)
  • 賞与・退職給付
  • 期中の設備更新(PC、車両、医療機器、厨房設備など)
  • 借入の元本返済(利息だけ入力している)

資金繰り表と試算表(損益)の違いを整理する

損益(利益)と現金(資金繰り)は別物です。混同すると判断を誤ります。

←横にスクロールできます→
項目試算表(損益)資金繰り表
管理対象売上・費用・利益入金・支払・現預金
基準発生主義(計上)現金主義(着金・支払)
強み収益性の把握、原価・販管費の分析資金ショートの予防、調達判断
弱み現金の不足が見えにくい収益性改善の原因分析は弱い
使いどころ値付け・採算管理・予算借入・納税・投資タイミング

中小企業の税務・経営相談

創業から成長期まで、企業のフェーズに合わせた税務・経営サポートを提供しています。

無料相談を申込む 📞 050-1808-9643

平日 9:15〜18:15(土日祝休業)

ケーススタディ:黒字でも資金不足が出る3つの典型

ここでは実務で多いパターンを匿名化して整理します。

1) 売上急増で回収が遅れ、仕入支払が先行

月商が伸びた一方、回収が翌々月で、仕入は翌月払い。表にすると、売上増加局面ほど資金が減る「成長痛」が見えます。
対策は、入金条件の見直し(前受・中間金)、仕入条件交渉、短期資金の確保(当座貸越など)です。

2) 納税月・賞与月に安全残高を割り込む

普段は回っているが、年1〜2回の支出で一気に不足するパターンです。資金繰り表で「山(大口支出)」を先に置くと、普段の運用が整います。
対策は、納税・賞与の積立(別口座管理)と、支払の分散設計です。

3) 借入返済が固定で、閑散期に赤字転落

繁忙期の利益で返済を回していたが、閑散期に入金が細り返済が重くなるケースです。
対策は、返済条件の見直し(期間延長等)を含め、金融機関へ「資金繰り表+改善策」で説明できる状態を作ることです。

よくある質問

Q: 資金繰り表は月次で十分ですか?週次も必要ですか? ▼
目安として、月末残高が安全残高ギリギリの会社、売上の入金が月内に集中する会社、支払が週単位で大きい会社は週次管理が有効です。一方、資金に余裕があり入出金が平準化している場合は月次でも運用できます。重要なのは「当月は実績でズレを吸収できる頻度」にすることです。
Q: 3か月先の予測精度が上がりません。何から直すべきですか? ▼
精度は「売上予測」よりも「回収予定(請求書ベース)」と「支払予定(請求書・契約ベース)」で上がります。まずは、請求書一覧・支払予定一覧を作り、入金日・支払日を固定して入力してください。税金・返済・社保の固定支出を先に入れるのも効果的です。
Q: 資金繰り表のテンプレートはどこから入手できますか? ▼
公的機関が提供するExcel様式があります。まずは簡易版で「当月+3か月」の運用を開始し、慣れてきたら科目や部門別に拡張するのが現実的です。自社の入金・支払サイトに合わせたカスタマイズが重要になります。
Q: 資金不足が見えたら、最初に打つべき手は何ですか? ▼
優先順位は、(1)入金の前倒し(請求・回収条件)、(2)支払の平準化(交渉・分割)、(3)資金調達(当座貸越・短期借入)の順で検討することが多いです。状況により最適解は変わるため、資金繰り表で不足月と不足額を具体化した上で、金融機関や税理士に相談すると判断が早まります。

まとめ

  • 資金繰り表は、入金と支払の時系列で現預金残高を見通し、資金ショートを防ぐ表
  • 3か月先の見通しは「当月は実績管理、翌月〜3か月は予測、毎月ローリング更新」が基本
  • 支払(税金・返済・賞与・社保)の漏れが最大リスク。固定支出を先に入れる
  • 安全残高(最低必要現金)を決め、割り込む月は早期回収・支払調整・資金調達で手当て
  • 試算表(損益)と資金繰り表(現金)は別物。両輪で管理して倒産予防につなげる

参照ソース

  • 日本政策金融公庫「資金繰り表(簡易版)様式」: https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/data1_170501.xls
  • 日本政策金融公庫「資金繰り表(簡易版)作成手順及び記載例」: https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/data3_170501.xls
  • 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」: https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/04.html

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

シェア:
経営ブログに戻る

お電話でのご相談

050-1808-9643

受付時間 9:15〜18:15(土日祝休業)

Webお問い合わせ

おすすめコラム

税金のクレジットカード払いは得?ポイントと手数料の損益分岐点|税理士が解説

税金のクレジットカード払いは得?ポイントと手数料の損益分岐点|税理士が解説

メルカリ税金いくらから?申告ライン|税理士が解説

メルカリ税金いくらから?申告ライン|税理士が解説

ふるさと納税限度額シミュレーション2026|年収・家族別早見表

ふるさと納税限度額シミュレーション2026|年収・家族別早見表

人気コラムランキング

1
経理効率化ツール5選|中小企業の導入手順まで税理士が解説

経理効率化ツール5選|中小企業の導入手順まで税理士が解説

2
顧問税理士の選び方|料金相場と失敗回避5つ

顧問税理士の選び方|料金相場と失敗回避5つ

3
創業融資の自己資金はいくら必要?|税理士が解説

創業融資の自己資金はいくら必要?|税理士が解説

4
決算だけ税理士に依頼は可能?費用と注意点|税理士が解説

決算だけ税理士に依頼は可能?費用と注意点|税理士が解説

5
freeeとマネーフォワード比較|どっちを選ぶ?税理士が解説

freeeとマネーフォワード比較|どっちを選ぶ?税理士が解説

CONTACT

無料相談のご案内

税務顧問・会社設立・創業融資・クラウド会計など、お気軽にご相談ください。初回相談は無料です。

ご相談だけでも歓迎です。お気軽にお問い合わせください。

050-1808-9643
平日 9:15〜18:15

© 2026 税理士法人 辻総合会計グループ. All rights reserved.

プライバシーポリシー

お電話はこちら

050-1808-9643

050-1808-9643

無料相談する

平日 9:15〜18:15