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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.22
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

決算書の読み方:BS・PLで経営改善する方法|税理士が解説

8分で読めます
決算書の読み方:BS・PLで経営改善する方法|税理士が解説

決算書(BS・PL)の読み方は「3つの問い」で十分です

税理士から決算書をもらっても読み方がわからない原因は、「全部理解しよう」としてしまうことです。社長が最初に押さえるべきは、会計の細かいルールではなく、会社の状態を判断するための問いです。

結論として、決算書は次の3つの問いで読めます。

  • 会社は今、倒れにくい体質か(BS:安全性)
  • 会社は稼ぐ力があるか(PL:収益性)
  • 利益は出ているのに、なぜお金が残らないのか(BS×PL:資金繰り)

税理士法人 辻総合会計でも、決算説明の場で最初にこの3つに絞ってお伝えすることが多いです。数字が苦手でも、経営判断に必要な情報は十分に取り出せます。

ここがポイント
決算書は「会社の健康診断書」と言われますが、社長が見るべきは検査値の全項目ではありません。最初は「危険信号の有無」と「改善の方向性」だけ掴めば十分です。

決算書とは?BS・PLの役割と「見る順番」

決算書は、一定期間の経営成績と、期末時点の財政状態を示す書類です。中小企業庁でも、決算(決算書)が経営成績と財政状態を確認するためのものだと整理されています。株式会社の場合、計算書類としてBS・PL等が位置づけられます。

まず「見る順番」を固定すると、読み方がブレません。

  1. BSで「会社の体力(安全性)」を確認
  2. PLで「稼ぐ力(収益性)」を確認
  3. BS×PLで「資金繰りの詰まりどころ」を特定

BSとPLの違い(比較表)

←横にスクロールできます→
項目BS(貸借対照表)PL(損益計算書)
何を示す?期末時点の財政状態(資産・負債・純資産)一定期間の成績(売上・費用・利益)
たとえると会社の「体力」会社の「稼ぐ力」
社長が最初に見る箇所現預金、借入、買掛・未払、純資産粗利、販管費、人件費、営業利益
改善の方向性借入依存・運転資金・在庫/売掛の滞留利益率・固定費・価格/原価の見直し

BS(貸借対照表)の読み方:倒れにくさは「運転資金」と「純資産」で見る

BSは、期末時点の「会社の財布と借金の一覧」です。ここで重要なのは、資産の合計が大きいかではなく、すぐ払えるか、借金に頼りすぎていないかです。

まず見るべきBSの3点セット

  • 現預金:今すぐ使える資金は十分か
  • 買掛金・未払金・短期借入金:近々出ていく支払いがどれだけあるか
  • 純資産:赤字を吸収できるクッションがあるか(債務超過に近いか)

「運転資金(必要資金)」を一言で把握する

資金繰りが苦しい会社の多くは、利益の大小よりも、運転資金が過大です。概念としては次の通りです。

  • 運転資金 = 売掛金+棚卸資産(在庫)-買掛金

売上が伸びても、売掛の回収が遅い・在庫が増えると、資金はむしろ減ります。ここがBSで最初に見るべきポイントです。

ここがポイント
黒字でも資金ショートする典型は「売上増→売掛増・在庫増→現金減」です。BSは黒字倒産の兆候を最も早く示します。

目安となる安全性チェック(ざっくりでよい)

  • 債務超過(純資産がマイナス)に近づいていないか
  • 借入の返済原資(利益・キャッシュ)が見合っているか
  • 流動資産(現預金・売掛等)で短期の支払いを回せるか

厳密な比率計算より、「去年より悪化していないか」の前年差分を見るだけでも効果があります。

PL(損益計算書)の読み方:儲けの正体は「粗利」と「固定費」で決まる

PLは、一定期間の「儲かった/儲からなかった」の成績表です。社長が押さえるべきは、細かな科目ではなく、利益がどこで消えているかです。

PLはこの順で見れば迷いません

  • 売上総利益(粗利):値付けと原価の勝負
  • 販売費及び一般管理費(販管費):固定費(人件費・家賃等)の勝負
  • 営業利益:本業の実力
  • 経常利益:借入利息等も含めた通常の成績

特に、粗利率と販管費の増え方が、経営改善の打ち手をほぼ決めます。

よくある誤解:売上が増えれば儲かる

売上が増えても、次のどちらかが起きていると利益は残りません。

  • 値引きや原価上昇で粗利率が落ちている
  • 人件費・外注費・広告費など販管費が膨らんでいる

PLは「何に手を打てば改善するか」を教えてくれる資料です。

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BS×PLで経営改善に落とす:数字が苦手でもできる実務手順

BSとPLを読むだけで終わると、経営は変わりません。経営改善に使うには、「課題→原因→打ち手」を3ステップで固定化します。

Step 1: 会社の問題を1行で言語化する

例:

  • 「黒字だが現金が増えない」
  • 「売上は伸びたが利益が落ちた」
  • 「借入返済が重く、資金繰りが常に不安」

Step 2: BS・PLで原因を特定する(見る場所を決める)

  • 黒字だが現金が増えない
    → BS:売掛金・在庫・未収入金、短期負債の増減を確認
  • 売上は伸びたが利益が落ちた
    → PL:粗利率の低下か、販管費増かを分解
  • 返済が重い
    → PL:営業利益の水準、BS:借入金残高と返済予定を確認

Step 3: 打ち手を数字に直す(改善KPIを1〜2個に絞る)

例:

  • 売掛金回収サイトを10日短縮(資金繰り改善)
  • 粗利率を1.0pt改善(値付け・原価)
  • 固定費(販管費)を月○万円圧縮(家賃・外注・広告)

ここまでできると、決算書が「過去の記録」から「未来の意思決定ツール」に変わります。

匿名ケース:黒字なのに資金が残らない会社の改善

あるサービス業(年商1億円規模)で、「黒字なのに通帳残高が増えない」という相談がありました。

PLでは営業利益が出ていましたが、BSを見ると売掛金が増加し、回収が遅れていました。請求タイミングの遅れと、入金条件の曖昧さが原因です。

  • 請求の締日・発行日を前倒し
  • 入金条件を契約書に明記
  • 未入金の自動リマインド運用を導入

結果として、利益を大きく変えずに、資金繰りのストレスが減りました。改善は「売上を伸ばす」だけではありません。BS側の運転資金を圧縮するのも立派な経営改善です。

よくある質問

Q: BSとPL、どっちから見ればいいですか? ▼
結論はBS→PLの順です。まず「倒れにくさ(支払い能力)」をBSで確認し、その上で「稼ぐ力」をPLで見ます。資金繰り不安がある場合ほどBSが優先です。
Q: 利益が出ているのに、なぜお金が増えないのですか? ▼
代表的な理由は、売掛金の増加、在庫の増加、借入返済、設備投資です。PLは利益を示しますが、現金の増減はBSや資金繰りの動きで変わります。まずBSの売掛金・棚卸資産・借入の増減を確認してください。
Q: 数字が苦手で、決算書の科目が難しいです。最低限どこだけ見ればいいですか? ▼
BSは「現預金・短期の支払い・純資産」、PLは「粗利・販管費・営業利益」のみで十分スタートできます。細かな科目より、前年差分(去年より増えた/減った)を見る方が実務的です。

まとめ

  • 決算書は「安全性(BS)」「収益性(PL)」「資金繰り(BS×PL)」の3点で読める
  • BSは運転資金(売掛+在庫-買掛)と純資産で倒れにくさを確認する
  • PLは粗利と販管費で儲けの正体を掴む
  • 経営改善は「課題→原因→打ち手」をStepで固定し、KPIを1〜2個に絞る
  • 黒字でも資金ショートは起こるため、BSの変化を見る習慣が重要

参照ソース

  • 中小企業庁「中小企業の会計 31問31答(決算書の位置づけ等)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/tools/2008/03.html
  • 日本政策金融公庫「ここは押さえておきたい決算書の見方」: https://www.jfc.go.jp/n/finance/keiei/support-plus/detail/column.html?id=c55_392
  • 国税庁「貸借対照表作成の手引き(PDF)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2019/pdf/046.pdf

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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