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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.22
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

予実管理と事業計画書の作り方|税理士が解説

8分で読めます
予実管理と事業計画書の作り方|税理士が解説

予実管理とは?事業計画書を「経営改善」に変える仕組み

予実管理とは、予算(計画)と実績を定期的に比較し、ズレ(差異)の原因を特定して次の打ち手に落とし込む管理手法です。中小企業にとっての核心は、「当期黒字かどうか」より先に「ズレを早期発見して手を打てるか」にあります。

一方で「事業計画書は作ったが、見返していない」「月次試算表はあるが、原因分析まで行っていない」という相談は非常に多いです。税理士法人 辻総合会計でも、予算と実績の比較を会計の作業で終わらせず、経営改善の会議体に落とし込む支援を行ってきました。

この記事では、予実管理と事業計画書の関係、作り方(手順)、ズレの読み解き方、そして中小企業で回る運用設計をまとめます。


予実管理と事業計画書の違い:目的と粒度を揃える

まず押さえたいのは、「事業計画書」と「予実管理」は別物だが、数字の整合性で接続されるという点です。J-Net21(中小機構)でも、計画書は言葉と数字の整合性(例:販促強化と言いながら広告費が増えていない等)が重要だと整理されています。

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項目事業計画書予実管理
主目的将来像の提示・資金調達・社内合意形成月次での軌道修正・経営改善
期間1〜3年(場合により5年)月次(最低でも四半期)
粒度事業モデル全体(市場・施策・投資)売上/粗利/固定費/人件費などの管理科目
成功の定義計画の説得力と実行可能性差異の原因が説明でき、打ち手が決まる
ありがちな失敗文章と数値が矛盾する実績集計で止まり、改善に結びつかない

中小企業の現場では、事業計画書は「年次」、予実管理は「月次」を担当します。両者をつなぐコツは、事業計画書の数値計画を月次化して、予実の会議で使える形に落とすことです。

ここがポイント
予実管理の目的は「犯人探し」ではありません。ズレの原因を再現性のある形で分解し、次月の意思決定(価格・数量・人員・広告など)に反映するのが目的です。

予実管理の作り方:中小企業でも回る最小構成

「本格的な管理会計は難しい」という場合でも、最小構成で十分に効果が出ます。ポイントは、KPIを絞り、差異分析の型を固定することです。

1)管理する指標(KPI)を3〜7個に絞る

いきなり全勘定科目を管理しようとすると運用が破綻します。まずは以下のように、経営ドライバーに直結する項目から開始します。

  • 売上高(できれば数量×単価に分解)
  • 粗利(売上総利益)または粗利率
  • 人件費(固定・変動の切り分けができると強い)
  • 販促費(広告費)
  • 営業利益(または限界利益)
  • 現預金残高/資金繰り(借入返済込み)

業種ベンチマークが欲しい場合は、日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」等を参照し、粗利率や人件費比率の違和感検知に使うと有効です(業種差が大きい点には留意)。

2)予算の作り方:トップダウンより「ドライバー型」を採用する

中小企業で回しやすいのは、売上を数量×単価、原価を仕入単価×数量のように分解するドライバー型です。これにより、差異分析が一気に楽になります。

  • 売上予算:来客数(受注数)×客単価
  • 粗利予算:売上−変動費(仕入・外注など)
  • 固定費予算:人件費・家賃・リース・通信費 等

「売上が未達」ではなく「数量が未達なのか、単価が未達なのか」が分かるだけで、打ち手(集客・単価改定・成約率改善)が決まりやすくなります。


予算と実績のズレを経営改善につなげる手順(差異分析の型)

ここからが本題です。ズレを改善に変えるには、会議のアジェンダを固定し、毎月同じ型で差異を裁く必要があります。

Step 1: 月次の締め日とデータ確定日を決める

  • 例:翌月10日までに月次試算表を確定、翌月15日に予実会議
  • 期限が曖昧だと、会議が感想戦になります

Step 2: 予算・実績・前年差を同じフォーマットで並べる

最低限、以下を並べます。

  • 当月:予算/実績/差異(前年差もあると望ましい)
  • 累計:予算/実績/差異
  • 着地見込み:当期見込み(フォーキャスト)

Step 3: 差異を「数量差」「単価差」「ミックス差」「タイミング差」に分ける

差異の代表的な分解観点です。

  • 数量差:来客数・受注数・稼働率の変動
  • 単価差:値引き、価格改定、客単価の変動
  • ミックス差:高粗利商品の比率が下がった等
  • タイミング差:売上計上月、仕入計上月のズレ

Step 4: 打ち手を数字に落として担当と期限を決める

差異分析のゴールは、改善アクションです。

  • 例:来月の来店数+50件を狙う → 広告予算+10万円/LP改善/紹介施策
  • 例:単価を+3% → 値上げ告知、セット販売、オプション導入

Step 5: 次月の予算(または見込み)へ反映してループを回す

差異を放置すると、予算は当初計画のままで形骸化します。少なくとも四半期ごとに、着地見込みを更新しましょう。これが予実管理を「経営改善のPDCA」にする最後の一手です。

ここがポイント
差異分析の会議では「説明できる差異」と「説明できない差異」を切り分けましょう。説明できない差異は、科目の粒度、集計ルール、現場データ(数量・単価)の不足が原因であることが多いです。

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予実管理を数字が回る会社にする運用設計(中小企業向け)

月次会議の型(60分で終える)

中小企業で継続するには、会議を短く、論点を固定します。

  • 10分:当月の結論(着地見込みと資金残高の見通し)
  • 20分:売上・粗利の差異(数量×単価で説明)
  • 15分:人件費・販促費など固定費の差異
  • 15分:アクション決定(担当・期限・数値)

資金繰りまで繋ぐ:PLだけで終わらせない

利益が出ているのに資金が足りない、という事態は珍しくありません。日本政策金融公庫が公開する「資金繰り表(簡易版)」などの様式を使い、月次で「現金の増減」を見える化すると、予実管理が一段強くなります。

  • 売上(請求)と入金のズレ
  • 仕入(計上)と支払のズレ
  • 借入返済の固定支出
  • 消費税・法人税などの納税資金

「利益」ではなく「現金」が尽きると経営は止まるため、資金繰りの予実(予定と実績)もセットで運用するのが安全です。

よくある失敗と対策(現場で多いパターン)

  • 失敗:予算が気合いで作られており、ズレても原因が説明できない
    • 対策:数量×単価、稼働率×単価などドライバーに戻す
  • 失敗:実績集計が遅く、打ち手が翌々月になる
    • 対策:締め日・確定日・会議日を固定する
  • 失敗:差異が多すぎて議論が散らかる
    • 対策:重要科目(売上・粗利・人件費・販促費)に絞る
  • 失敗:会議が反省会になり、行動が決まらない
    • 対策:アクションに必ず「担当・期限・数値」を付ける

よくある質問

Q: 予実管理は月次と四半期、どちらが良いですか? ▼
原則は月次です。ズレの修正が遅れるほど損失が拡大しやすいためです。ただし、事務負担が大きい場合は「月次は重要KPIだけ、四半期で科目を細かく見る」のように二層構造にすると継続しやすいです。
Q: 事業計画書の数字をそのまま予算にしても問題ありませんか? ▼
そのままだと運用で崩れやすいです。事業計画書は年次・戦略寄りのため、予実管理では月次化し、数量×単価などのドライバーに分解して差異説明できる形に直すのが実務的です(計画の一貫性・整合性が重要という点は公的支援サイトでも整理されています)。
Q: 資金繰りまで予実管理に入れるべきですか? ▼
入れることを推奨します。黒字でも資金ショートは起こり得るためです。資金繰り表(簡易版)などのテンプレートを使い、入出金予定と実績を月次で管理すると、借入返済や納税資金の見落としが減ります。

まとめ

  • 予実管理は、予算と実績のズレを分析し、打ち手に変える仕組み
  • 事業計画書は年次、予実管理は月次。数字を月次化して接続すると機能する
  • 差異は「数量差・単価差・ミックス差・タイミング差」で分解すると改善が決まる
  • 会議は型を固定し、アクションに担当・期限・数値を付ける
  • PLだけで終わらせず、資金繰りの予実も併用すると安全性が上がる

参照ソース

  • J-Net21(中小機構)「事業計画書の作成手順」: https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list5/5-1-2.html
  • 日本政策金融公庫「資金繰り表(簡易版)作成手順及び記載例(XLS)」: https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/data3_170501.xls
  • 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」: https://www.jfc.go.jp/n/findings/shihyou_kekka_m_index.html

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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