
執筆者:辻 光明
代表税理士
離婚 住宅ローン税金の全体像|税理士が解説

離婚で住宅ローンが問題になる本質は、「家の名義」と「ローンの債務者(返済義務)」がズレやすい点です。さらに、家を渡す・売る局面では譲渡所得税や住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の扱いも絡みます。結論としては、名義変更だけで解決しようとすると行き詰まりやすく、税務と金融の両方から出口を設計する必要があります。
離婚で住宅ローンが「ややこしくなる」理由
名義変更と債務者変更は別物
不動産の名義(登記)を片方に移しても、ローン契約上の返済義務が自動で移るわけではありません。ローンの債務者を変えるには、原則として金融機関の承諾・審査が必要です。
財産分与の基本(対象と期限)
財産分与は、婚姻中に協力して形成した財産を分ける制度で、名義に関係なく対象になり得ます。離婚後に話がまとまらない場合、家庭裁判所での手続には期限がある点も重要です。法務省・裁判所の案内でも、離婚後に財産分与の申立てができる期間制限が示されています。https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00018.html 、https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_04/index.html
選択肢別:住宅ローンと税金の違い(比較表)
離婚時の典型的な選択肢は次の3つです。税金は「誰が」「いつ」「いくらで」家を動かすかで決まります。
| 選択肢 | ローンの実務 | 税金の主論点 | こんな人に向く |
|---|---|---|---|
| 1) 家を売却して清算 | 売却代金で完済・残債は別途精算 | 売却で譲渡所得。要件を満たせば3,000万円特別控除の検討 | 住み続けない/残債が重い |
| 2) 片方が住み続けて取得 | 借換え等で債務者整理が必要になりやすい | 財産分与による不動産移転で「渡す側」に譲渡所得課税が起こり得る | 子の学区を変えたくない |
| 3) 共有のまま(当面) | 返済分担・将来売却の合意が必須 | いずれ売却時に課税。分担が実質贈与と見られない設計 | すぐ決められない |
離婚で「家を渡す」と譲渡所得税が出ることがある
財産分与で家を渡すと、渡した側に譲渡所得課税
離婚に伴い、土地建物を財産分与として相手に渡した場合、渡した側に譲渡所得課税が行われることがある(時価を収入金額として扱う)と国税庁が明示しています。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3114.htm
また、譲渡所得の基本計算は「収入金額 −(取得費+譲渡費用)」で、建物の取得費は減価償却相当額を控除して算定するなど、実務上の注意点があります。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
受け取った側に贈与税は原則かからないが、例外あり
離婚で財産をもらっても通常は贈与税がかからない一方、「分与が多すぎる場合」や「租税回避目的の離婚と認められる場合」には贈与税がかかることがある、と国税庁が整理しています。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4414.htm
離婚でマイホームを売却する場合の税金(特例の使いどころ)
3,000万円特別控除の考え方
マイホーム(居住用財産)を売った場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
離婚のタイミングで「誰が住んでいたか」「いつまでに売るか」などの要件判定がズレやすいため、売却前に要件をチェックするのが鉄則です。
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離婚と住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の注意点
共有持分を財産分与で追加取得したケース
離婚による財産分与で居住用家屋の共有持分を追加取得した場合、住宅ローン控除の適用にあたり「新たに家屋を取得したものとして」扱える余地があること、また申告のやり直しが必要になり得ることを国税庁が示しています。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1237.htm
住宅ローン控除は「要件の積み上げ」
住宅ローン控除は、居住開始時期や住宅の種類等で要件が分岐します。国税庁のタックスアンサーでも制度枠組みが整理されています。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1212.htm
離婚後は「居住実態」「借入名義」「持分」「年末残高」の整合が崩れやすいので、控除を続けたい場合は、離婚協議書の文言と登記・ローン契約の並びを合わせる必要があります。
手続きの進め方(実務ステップ)
Step 1: 現状を棚卸しする(名義・残債・時価)
- 登記簿(名義・持分)
- ローン残高・連帯保証/連帯債務の有無
- 不動産の時価(査定)
ここが揃うと、財産分与の「過大」論点や譲渡所得の概算が見えてきます。
Step 2: 3つの出口から逆算する(売却/取得/共有)
- 売却なら、譲渡所得と3,000万円特別控除の要件確認
- 取得(住み続ける)なら、債務者の整理(借換え等)と譲渡所得課税の有無
- 共有なら、将来売却のルール(価格・期限・費用負担)まで合意
Step 3: 合意書に「税務で必要な事実」を書く
- 財産分与の対象財産、評価根拠、分与割合
- ローン負担の実態(どちらが返済するか、精算方法)
- 将来売却時の取り扱い
税務調査は「実態」で見ます。合意書は実態を説明できる形にしておくのが重要です。
Step 4: 確定申告(必要な人だけ)を設計する
財産分与で不動産を渡した側に譲渡所得の申告が必要になる場合があります(国税庁の整理)。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3114.htm
また、住宅ローン控除が絡む場合は申告の再提出が必要になるケースもあるため注意します。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1237.htm
よくある質問
Q: 離婚で家の名義を相手に移したら、ローン返済義務も相手に移りますか?
Q: 財産分与で家を渡したら、必ず税金(譲渡所得税)がかかりますか?
Q: 離婚で財産をもらった側に贈与税はかかりますか?
Q: 離婚後も住宅ローン控除は使えますか?
まとめ
- 離婚の住宅ローンは「名義(登記)」と「債務者(ローン契約)」を切り分けて設計する
- 財産分与で不動産を渡すと、渡した側に譲渡所得税が生じることがある
- もらう側は原則贈与税なしだが、過大分与・租税回避目的は例外になり得る
- 売却するなら3,000万円特別控除など特例要件を早期に確認する
- 住宅ローン控除は離婚で要件が崩れやすく、申告のやり直しが必要になることもある
- 税理士法人 辻総合会計では、実務上よくある「名義は移したがローンが残る」問題を前提に、税務と金融の両面から着地案を組み立てています(個別事情で結論は変わります)
参照ソース
- 国税庁「No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3114.htm
- 国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁「No.4414 離婚して財産をもらったとき」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4414.htm
- 国税庁「No.1237 離婚による財産分与で共有持分を追加取得した場合の住宅借入金等特別控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1237.htm
- 法務省「財産分与」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00018.html
- 裁判所「財産分与請求調停」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_04/index.html
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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