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中小企業向けコラム
作成日:2025.02.18
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

キャッシュフロー計算書の見方と資金繰り表の作り方|税理士が解説

8分で読めます
キャッシュフロー計算書の見方と資金繰り表の作り方|税理士が解説

キャッシュフロー計算書とは?まず結論

キャッシュフロー計算書は「一定期間にお金(現金・預金等)がどう増減したか」を、営業・投資・財務の3区分で説明する資料です。一方、資金繰り表は「将来の入出金予定を月次・週次で並べ、資金ショートの兆候を早期に発見する」ための管理表です。黒字でも倒産が起きるのは、利益と入出金のタイミングがズレるためであり、両者をセットで運用することが資金繰り改善の近道になります。

税理士法人 辻総合会計では、30年以上にわたり中小企業・クリニックの月次監査と資金繰り支援に携わってきました。よくある相談は「決算書は読めるが、来月の資金が不安」「設備投資や借入返済が重なり、手元資金の最低ラインが見えない」というものです。本記事では、キャッシュフロー計算書の読み方と、資金繰り表の作り方を実務に落とせる形で整理します。

キャッシュフロー計算書の見方:3区分で「体質」を読む

営業・投資・財務の基本(どこで増減したか)

キャッシュフロー計算書は「営業活動」「投資活動」「財務活動」に区分して表示するルールが示されています。実務ではまず、この3区分の増減方向を見て、会社の資金体質を掴みます。

  • 営業活動によるCF:本業が生む(消費する)資金。ここが継続的にプラスかが最重要です(営業CF)。
  • 投資活動によるCF:設備投資・有価証券等による資金の増減。通常は投資でマイナスになりやすい領域です。
  • 財務活動によるCF:借入・返済・増資・配当等による資金の増減。短期的に資金を補う手段ですが、依存しすぎると返済負担が増えます。
ここがポイント
「利益が出ているのに営業CFが弱い」場合、売掛金の回収遅れや在庫増、未払の減少など、運転資金の悪化が隠れていることがあります。PL(損益)だけでは見えないズレをCFで確認してください。

読み方の鉄板パターン(よくある3つの型)

  1. 「営業CFプラス × 投資CFマイナス × 財務CFマイナス」
    本業で稼ぎ、投資し、借入返済も進む理想型。手元資金の厚みを確認しつつ、投資計画の持続性を点検します。

  2. 「営業CFプラス × 投資CFマイナス × 財務CFプラス」
    成長・拡大局面で多い型。投資資金を借入で賄っている状態です。投資後に営業CFが増える見込み(採算性)と、返済が回るかを同時に検証します。

  3. 「営業CFマイナス × 財務CFプラス」
    資金繰りの警戒サイン。本業でお金が出ていき、借入等で穴埋めしている状態です。原因を「回収条件」「仕入・在庫」「固定費」「単価・粗利」などに分解して手当てします。

重要指標:フリーキャッシュフローを簡易に掴む

意思決定で便利なのが、概念としてのフリーキャッシュフロー(営業CF+投資CF)です。ここが継続的にプラスなら、借入返済・配当・追加投資に回せる余力があると言えます。マイナスでも直ちに悪いわけではありませんが、「一時的な投資か」「本業の稼ぐ力が追いつくか」を資金繰り表で検証する必要があります。

資金繰り表とは:黒字倒産を防ぐ“未来表”

キャッシュフロー計算書との違い(過去 vs 未来)

キャッシュフロー計算書は「過去の実績」。資金繰り表は「将来の予定(見込み)」。両者は役割が異なります。

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項目キャッシュフロー計算書資金繰り表
目的実績の資金増減要因を分析未来の資金不足を予測し手当て
期間原則:会計期間(年・四半期)月次・週次・日次も可能
作り方財務諸表から組み替え入金予定・支払予定を並べる
強み会社の資金体質が見える「いつ足りないか」が見える
弱み予測には使いにくい入出金予定の精度が要

結論として、資金管理は「CFで体質を把握 → 資金繰り表で不足時期を先読み → 手当て(回収・支払・借入)」の順が最もブレません。

資金繰り表の作り方:テンプレで迷わない手順

事前準備:必要データは3つだけ

  • 期首(または当月初)の預金残高(現金同等物の範囲を揃える)
  • 入金予定(売掛金回収、保険請求入金、補助金入金、借入実行 等)
  • 支払予定(仕入・外注、給与、家賃、リース、税金、借入返済 等)
ここがポイント
資金繰り表の精度は「入金サイト」「支払サイト」「税金・賞与・保険料など季節要因」をどれだけ織り込めるかで決まります。特に消費税・法人税(予定納税含む)は見落としやすいので、別行で先に固定しておくのがお勧めです。

入出金の粒度:月次か週次かを決める

  • 月次:安定期の基本形。まずは12か月分を作り、資金の山谷を掴む
  • 週次:資金ショート懸念がある、または入金が偏る業態(医療・建設等)に有効
  • 日次:資金が厳しい局面の短期管理。担当者の運用負荷に注意

作成手順(エクセルでそのまま再現)

Step 1: 列(期間)と行(項目)を固定する
列:当月〜12か月(週次なら週番号)
行:前月繰越、入金(内訳)、支払(内訳)、差引、翌月繰越

Step 2: 「前月繰越(期首残高)」を入力する
ここがズレると全て崩れます。銀行残高(複数口座は合算)を基準にします。

Step 3: 入金予定を「確度順」に積む
売掛金は請求書ベースで回収月に配置します。融資実行や補助金は「予定日が確定したもの」から入れます。

Step 4: 支払予定を「固定費→変動費→臨時」の順に積む
給与・家賃・リース・返済など毎月の固定支出を先に。次に仕入・外注等の変動費。最後に税金・設備投資など臨時支出を別行で明示します。

Step 5: 月末(週末)残高を計算し、最低残高ラインを設定する
差引=入金合計−支払合計、翌月繰越=前月繰越+差引。
ここで最低資金残高(例:1〜2か月分の固定費、または借入返済3か月分など)を社内ルール化すると、意思決定が速くなります。

Step 6: 不足が出た月の「打ち手」を同じ表にメモする
不足月が見えたら、(1)回収前倒し、(2)支払条件交渉、(3)投資延期、(4)短期借入・当座貸越、(5)資本性資金の検討、の順で優先度を付けます。資金繰り表は「作って終わり」ではなく、打ち手の管理表として使うのがポイントです。

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失敗しやすい注意点:資金繰りが崩れる原因トップ3

1) 売上が増えたのに資金が減る(運転資金の罠)

売上増で売掛金・在庫が増えると、入金より先に支払が増え、手元資金が細ります。成長期ほど資金繰り表を週次で更新し、回収条件の見直しを検討します。

2) 設備投資と返済が重なる(投資CFの山)

投資は将来の収益源ですが、支出は先行します。「投資額」「投資時期」「返済開始時期」を資金繰り表上で重ねて確認し、資金ショートを未然に防ぎます。

3) 税金・賞与・社会保険料を後回しにする

資金繰りが厳しい局面ほど、納税や社会保険料が遅れ、信用不安につながります。資金繰り表の時点で「確定支出」として先に確保してください。

よくある質問

Q: キャッシュフロー計算書がなくても資金繰り表だけで十分ですか? ▼

A:

短期の資金管理だけなら資金繰り表で回りますが、原因分析(体質改善)にはキャッシュフロー計算書が有効です。営業CFが弱い理由を分解し、回収・在庫・固定費などの改善策に落とし込めます。
Q: 資金繰り表は何か月先まで作るべきですか? ▼

A:

まずは12か月を推奨します。税金・賞与・更新料など年1回の支出が見える化され、資金の山谷が読みやすくなります。資金が厳しい場合は、直近8〜12週間を週次で併用すると実務的です。
Q: 最低いくら手元資金を残すべきですか? ▼

A:

一律の正解はありませんが、「固定費の1〜2か月分」または「借入返済+人件費の3か月分」など、事業継続に必要な安全域を基準にします。業種・入金サイト・借入条件で変わるため、個別に設計してください。

まとめ

  • キャッシュフロー計算書は実績を営業・投資・財務に分け、資金体質を把握する資料
  • 資金繰り表は将来の入出金予定を並べ、資金ショート時期と打ち手を見える化する管理表
  • 読み方の要は「営業CFが継続的にプラスか」「投資と返済が回るか」
  • 作り方の要は「期首残高の正確性」「税金・賞与など季節要因の先入れ」「最低資金残高のルール化」
  • 不足が見えたら、回収前倒し→支払調整→投資延期→資金調達の順で対策を組み立てる

参照ソース

  • 金融庁「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」: https://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a909b2.htm
  • 中小企業庁「資金繰り表の様式例(会計ツール集)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/tools/2009/52.html
  • J-Net21(中小機構)「キャッシュフロー計算書の見方と活用方法」: https://j-net21.smrj.go.jp/qa/financial/Q0238.html

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

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