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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.27
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

インボイス2割特例終了後は?3つの対応策|税理士が解説

9分で読めます
インボイス2割特例終了後は?3つの対応策|税理士が解説

インボイス2割特例は2026年9月で終了、その後は「3つの選択」

結論から言うと、インボイス制度の2割特例は「2026年9月末を含む課税期間」までで、その後は(1)原則課税(本則)で計算する、(2)簡易課税を選ぶ、(3)インボイス登録をやめて免税に戻る(戻れないケースもあり)のいずれかを選ぶことになります。特に、取引先が事業者(BtoB)中心の方は「インボイスを出せるか」が売上に直結しやすく、誰にとって何が問題かというと、免税から登録した小規模事業者ほど納税額の増加と事務負担の二重苦が起きやすい点が課題です。

本記事では「2割特例 いつまで?」の整理から、終了後の3つの選択肢、そして2026年中にやっておくべき準備を税理士の実務目線で解説します。

2割特例とは?対象者と「いつまで」を最初に整理

2割特例の概要(なぜ2割なのか)

2割特例は、インボイス制度開始に合わせた経過措置で、免税事業者だった方が適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として登録し、課税事業者になった場合に、申告計算を簡便にする目的で設けられています。イメージとしては、売上にかかる消費税額(売上税額)のうち、8割を「特別控除」として差し引き、結果として売上税額の2割を納付税額とする計算です(いわゆる2割)。

2割特例はいつまで?(2026年9月末を含む課税期間まで)

国税庁の案内(Q&A等)では、2割特例の適用可能期間が示されており、一般に「2026年9月末を含む課税期間まで」が出口になります。個人事業者・法人で決算月が異なると「最後に適用できる申告回」が変わるため、まずは自社(自分)の課税期間で「どの申告が最終か」を確認してください。

ここがポイント
2割特例が終了しても、インボイス登録が自動で外れるわけではありません。登録を続けるなら、翌期以降は原則課税または簡易課税で計算・申告することになります。

終了後の3つの選択肢:原則課税・簡易課税・登録取消(免税へ)

2割特例終了後の現実的な選択肢は、次の3つです。ポイントは「納税額」「事務負担」「取引先への影響」をセットで比べることです。

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選択肢納税額の傾向事務負担取引先(BtoB)への影響向いている人
1. 原則課税(本則)仕入控除が効けば抑えられる可能性高い(請求書・区分経理が重要)インボイス発行を継続できる仕入や外注が多い/設備投資がある
2. 簡易課税みなし仕入率次第で有利不利が分かれる中(区分は必要だが簡便化)インボイス発行を継続できる業種が明確で、みなし仕入率が高い側
3. 登録取消(免税へ)消費税の申告・納税が原則なくなる低い取引先が仕入税額控除できず、値下げ圧力の恐れBtoC中心/取引先の影響が小さい

選択肢1:原則課税(本則)で進む

原則課税は「売上税額 − 仕入税額控除」で計算する通常ルールです。インボイス(適格請求書)や帳簿保存の要件を満たして仕入税額控除を積み上げられるなら、2割特例より納税額が下がることもあります。

一方で、経理体制が弱いと「仕入税額控除を取り切れない」「区分が崩れて申告が重い」などの実務リスクが出ます。特に外注費・広告費・家賃などの支払先のインボイス対応状況の棚卸しが重要です。

選択肢2:簡易課税を選ぶ(届出期限に注意)

簡易課税は、実際の仕入税額控除を積み上げず、業種ごとの「みなし仕入率」で控除額を計算する制度です。基準期間の課税売上高が5,000万円以下などの要件があり、選択には届出が必要です。国税庁の手続案内では、原則として「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」に届出書の提出が必要とされています(例外的な経過措置の説明もあります)。届出のタイミングを逃すと、その期は原則課税で申告することになり得るため、期限管理が最重要です。

選択肢3:インボイス登録をやめる(登録取消)+免税へ戻る

「インボイスを出さない」選択肢として、適格請求書発行事業者の登録取消を行う方法があります。国税庁の手続案内では、翌課税期間の初日から登録の効力を失わせたい場合、原則として「翌課税期間の初日から起算して15日前の日まで」に届出が必要とされています。ギリギリ提出は翌々期からの取消になるなど、ここも期限がシビアです。

さらに注意点として、登録をやめたからといって必ず免税に戻れるとは限りません。国税庁のパンフレットでは、登録に係る経過措置の適用を受けて登録した場合などに、一定期間は免税になれない旨(いわゆる2年の制限に触れた説明)が示されています。ここを誤解すると「取消したのに課税のまま」という事故が起きます。

ここがポイント
BtoB中心の方は、登録取消により取引先が仕入税額控除を取りにくくなり、価格交渉や取引継続に影響が出ることがあります。数字だけでなく、取引先構成も必ず確認してください。

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2026年中にやるべき準備(失敗しない判断手順)

ここからは、当法人(税理士法人 辻総合会計)で実務上よく行う「判断の型」を、できるだけ再現してご紹介します。2割特例終了後は、思いつきで選ぶと手戻りが大きいので、次の順で整理してください。

Step 1: 取引先構成(BtoB/BtoC)を棚卸しする

・売上のうち、事業者向けが何%か
・主要取引先がインボイス必須か(契約条件・発注条件)
・値上げ・値下げ交渉の余地があるか

BtoB比率が高いほど「インボイス発行を継続する前提」で、原則課税か簡易課税の比較に寄ります。

Step 2: 直近1年の粗利構造から仕入控除の効きを推計する

・課税仕入(外注費、材料費、広告費等)が売上に対してどの程度か
・支払先がインボイス発行事業者か(控除要件を満たせるか)
・設備投資・高額仕入の予定があるか

仕入・外注が厚いなら原則課税が有利になりやすい一方、みなし仕入率が高い業種は簡易課税が有利になり得ます。

Step 3: 期限から逆算して、届出・取消の締切を確定する

・簡易課税を選ぶなら「いつの課税期間から適用したいか」
・登録取消をするなら「いつから効力を失わせたいか」
・それぞれの提出期限をカレンダーに落とす

ここが曖昧だと、選択肢が実質1つに絞られてしまいます。届出の提出期限が勝敗を分けます。

よくある質問

Q: 2割特例が終わったら、自動的に簡易課税になりますか? ▼
いいえ、自動では切り替わりません。簡易課税は届出が必要で、提出期限も定められています。届出がなければ原則課税で申告することになります。
Q: インボイス登録を取り消せば、必ず免税事業者に戻れますか? ▼
必ずではありません。登録取消の手続期限があるほか、登録の経緯や要件により一定期間は免税になれないケースがあります。国税庁の案内(パンフレット)も確認しつつ、基準期間・特定期間の売上判定まで含めて判断してください。
Q: 2026年9月で2割特例が終わるなら、2026年中に何を優先して決めるべきですか? ▼
(1)取引先がインボイスを求めるか、(2)原則課税と簡易課税のどちらが納税額・事務負担の面で合理的か、(3)届出や登録取消の期限に間に合うか、の3点です。特に届出期限は取り返しがつきにくいので、早めの試算が有効です。

まとめ

  • 2割特例は2026年9月末を含む課税期間までで、その後は通常ルールでの申告が前提になる
  • 終了後の現実的な選択肢は「原則課税」「簡易課税」「登録取消(免税へ)」の3つ
  • 簡易課税は届出が必要で、提出期限を過ぎると原則課税になる可能性がある
  • 登録取消も提出期限があり、取消=即免税とは限らない点に注意
  • 納税額の試算と取引先への影響をセットで比較し、2026年中に方針を固めるのが安全

参照ソース

  • 国税庁「2割特例 特設ページ」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_2tokurei.htm
  • 国税庁「(小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置〈2割特例〉) Q&A(PDF)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/114.pdf
  • 国税庁「消費税簡易課税制度選択届出手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_13.htm
  • 国税庁「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/invoice_07.htm
  • 国税庁「インボイス発行事業者の登録をやめよう(PDF)」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/todokedesho/pdf/0023001-085-22.pdf

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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