
執筆者:辻 光明
代表税理士
起業1年目の確定申告と青色申告手続き|税理士が解説

起業1年目の確定申告は「青色申告の期限」と「帳簿の整備」が勝負です
起業1年目の確定申告で一番つまずきやすいのは、「青色申告にしたいのに、手続き期限を過ぎていた」「領収書はあるのに、帳簿(記帳)が追いつかない」という2点です。結論として、青色申告は提出期限を守り、日々の記帳ルールを先に決めると、申告作業も税負担も安定します。
当法人(税理士法人 辻総合会計)では、起業家・フリーランスの申告支援を継続して行ってきましたが、初年度ほど「制度を知っているかどうか」で差が出ます。この記事では、起業1年目の個人事業主が押さえるべき青色申告の手続きと、現実的に効く節税ポイントを、順番に解説します。
青色申告とは何か(白色との違い)
青色申告は、一定の帳簿を備え付けて正しく記帳し、期限内に申請・申告することで、税制上の特典(控除など)を受けられる制度です。特典の代表が青色申告特別控除(10万円・55万円・65万円)です。国税庁も、青色申告には「種々の特典」があることを明示しています。
(青色申告特別控除の概要:国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
白色申告と青色申告の比較(起業1年目の結論)
起業1年目は、売上がまだ安定しない一方で、開業費・設備・広告費など先行投資が出やすい時期です。だからこそ、青色のメリット(控除・赤字の取り扱い等)を活かしやすい局面でもあります。
| 比較項目 | 白色申告 | 青色申告 |
|---|---|---|
| 事前手続き | 原則不要 | 青色申告承認申請書が必要 |
| 記帳の負荷 | 比較的軽い(簡易な帳簿中心) | 55万/65万控除は複式簿記が前提 |
| 代表的メリット | 手間が少ない | 青色申告特別控除(最大65万円)など |
| 初年度のおすすめ | 規模が小さく帳簿が作れない場合 | 帳簿を整えられるなら有利になりやすい |
青色申告の手続き(承認申請)の期限と出し方
青色申告をするには、事前に「青色申告承認申請書」を所轄税務署へ提出します。提出時期は国税庁の案内で明確です。
(青色申告承認申請手続:国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
提出期限(起業1年目で重要な2パターン)
国税庁の手続案内では、次のルールです。
- 原則:青色申告をしようとする年の3月15日まで
- その年の1月16日以後に新規開業した場合:開業日から2か月以内
(根拠:国税庁「所得税の青色申告承認申請手続」)https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
この「開業日から2か月以内」を落としがちです。起業直後は忙しく、届出が後回しになりやすいからです。
提出方法(e-Taxか書面)
国税庁は、e-Tax(e-TaxソフトWEB版等)での申請も案内しています。デジタルで完結できると、控除要件や提出管理がラクになります。
(青色申告承認申請の作成・提出方法:国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
また、e-Taxを利用するには事前準備(利用者識別番号取得、マイナンバーカード等)が必要です。
(e-Tax 事前準備:e-Tax)https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qaindex/yokuaru_02.htm
起業1年目の節税ポイント(青色申告で効く順)
節税は「使える制度を知っている」だけでなく、「要件を満たす運用ができている」ことが重要です。ここでは、起業1年目で現実的に効果が出やすい順に並べます。
1) 青色申告特別控除(10万・55万・65万)の取りにいき方
国税庁によると、青色申告特別控除は55万円(一定要件で65万円)または10万円の控除があります。55万円控除の要件として、複式簿記での記帳や、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内申告などが挙げられています。
(青色申告特別控除:国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
実務的には、まずは55万円控除を確実に取る設計が堅いです。65万円を狙う場合は、電子申告や電子帳簿保存など追加の要件管理が必要になり、初年度は運用負荷が上がることがあります(事業規模やツール環境によります)。
2) 小規模企業共済等掛金控除(将来の退職金づくり+所得控除)
起業1年目の節税で「今すぐ効果が出る」代表格が所得控除です。国税庁は、小規模企業共済法に基づく掛金等を支払った場合に所得控除(小規模企業共済等掛金控除)を認めています。
(小規模企業共済等掛金控除:国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
売上が伸びて所得税・住民税の負担感が出てきたタイミングで、掛金設定を見直す設計が有効です(資金繰りを最優先に)。
3) 家族へ給与を払う場合は「青色事業専従者給与」の届出を忘れない
配偶者や親族に実態のある業務をしてもらう場合、青色事業専従者給与として必要経費にできる可能性があります。ただし、届出が必要で、提出期限も決まっています。
(青色事業専従者給与に関する届出手続:国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/12.htm
国税庁の案内では、「必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(新規開業等は2か月以内)」とされています。
(同上)https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/12.htm
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起業1年目の確定申告:準備〜提出までの手順(これだけは外さない)
ここからは「何を、どの順でやるか」を手順化します。初年度はここをテンプレ化できると、2年目以降が劇的にラクになります。
Step 1: 申告の全体像(いつ・何を出すか)を把握する
国税庁の「確定申告」ページで、申告・納税の期限や作成・提出方法の案内にアクセスできます。まずは公式導線を確認してください。
(所得税の確定申告:国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei.htm
Step 2: 青色申告にするなら、承認申請の期限をチェックする
開業日が1/16以後なら「開業日から2か月以内」が原則です。間に合わないと、その年は青色の特典が使えない可能性があります。
(青色申告承認申請手続:国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
Step 3: 記帳ルールを決めて、月次で締める(領収書の山を作らない)
起業1年目の失敗パターンは「年明けにまとめて入力して間に合わない」です。最低限、月次で以下を締める運用にしましょう。
- 売上(入金ベースではなく、売上計上ルールを統一)
- 経費(事業関連性・科目ルール・レシート保管)
- クレカ・口座の明細突合
- 10万円超の資産(パソコン等)の購入有無の確認
Step 4: 決算整理→申告書作成(控除を落とさない)
- 青色特別控除を取るための書類(貸借対照表・損益計算書等)の整合
- 各種控除(小規模企業共済等掛金控除など)の証明書確認
(小規模企業共済等掛金控除:国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
Step 5: e-Taxで提出(再現性を上げる)
e-Tax利用には事前準備があります。早めに環境を整えると、提出直前に詰まりにくいです。
(e-Tax 事前準備:e-Tax)https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qaindex/yokuaru_02.htm
よくある質問
Q: 起業1年目でも青色申告の65万円控除を狙うべきですか?
Q: 青色申告の申請期限を過ぎたらどうなりますか?
Q: 配偶者に手伝ってもらっています。給与にして経費にできますか?
まとめ
- 起業1年目は「青色申告の申請期限」と「記帳体制づくり」が最優先
- 青色申告特別控除は、まず55万円控除を確実に取りにいく設計が現実的
- 小規模企業共済等掛金控除は、資金繰りを見ながら所得控除として有効
- 専従者給与を使うなら、届出期限と業務実態・適正額の説明が重要
- 申告直前に詰まらないよう、e-Taxの事前準備と月次締めを習慣化する
参照ソース
- 国税庁「所得税の青色申告承認申請手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
- 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- 国税庁「所得税の確定申告」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei.htm
- 国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
- 国税庁「青色事業専従者給与に関する届出手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/12.htm
- e-Tax「利用に当たっての事前準備」: https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qaindex/yokuaru_02.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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