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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.27
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

物流効率化法2026年4月施行のCLO選任義務|税理士が解説

10分で読めます
物流効率化法2026年4月施行のCLO選任義務|税理士が解説

物流効率化法の第二段階とは(2026年4月施行の要点)

物流効率化法(正式名称:物資の流通の効率化に関する法律)は、トラックドライバー不足や荷待ち時間などの構造課題を背景に、荷主・物流事業者に物流効率化の取組を求める枠組みです。2026年4月1日からは「第二段階」として、一定規模以上の事業者が「特定荷主」等に指定されると、CLO選任義務を含む法定義務が発生します。

ポイントは、「努力義務としての取組」から「指定事業者に対する義務(届出・体制・計画・報告)」へと実務が一段重くなることです。対象になり得る企業(特に荷主側)は、2026年4月直前では間に合いにくいため、指定の見込み判定と社内体制の設計を先行して進める必要があります。


CLO(物流統括管理者)選任義務とは:誰を、何のために置くのか

CLO選任義務がかかる主体(特定荷主・特定連鎖化事業者)

CLO(物流統括管理者)は、特定事業者のうち「特定荷主」および「特定連鎖化事業者(例:フランチャイズ本部等)」に選任が義務付けられます。CLOは、物流現場の改善担当というより、調達・生産・販売・在庫・物流など部門横断で意思決定を動かすための経営に近い統括者として位置付けられています。

CLOに求められる要件(経営意思決定に参画できる人)

CLOは「重要な経営判断を行う役員等の経営幹部から選任する必要がある」と整理されており、名目上の担当者を置くだけでは運用が回りません。社内の決裁権限・会議体・KPI設計とセットで整備するのが現実的です。

CLOの主な業務:計画と報告の責任の所在を明確にする

CLOには、中長期計画や定期報告の作成統括、部門間連携の構築、設備投資・デジタル化・標準化の推進、社内研修、取引先や物流事業者との調整など、広い範囲の統括管理が求められます。つまり「物流に関する社内ガバナンスの責任者」を明確化する制度です。

ここがポイント
CLO選任は「人事」だけで完結しません。実務上は、(1)権限(誰が何を決められるか)、(2)データ(荷待ち・荷役・積載の実態が見えるか)、(3)取引先との協議の場(交渉のテーブルがあるか)を同時に整えるほど、形骸化を防げます。

2025年(第一段階)との違い:第二段階で増える義務を整理

第二段階で誤解が多いのは、「すべての会社がいきなりCLO必須」ではない一方、指定を受ける規模の荷主では義務が複数セットで発生する点です。全体像を表で押さえましょう。

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区分2025年4月以降(第一段階)2026年4月以降(第二段階)
対象荷主・物流事業者等の広い範囲一定規模以上で「特定」指定を受ける事業者
要求水準判断基準に沿った取組(努力義務が中心)届出・体制整備・計画・報告が義務
代表的な義務取組の推進(荷待ち/荷役短縮、積載向上等)CLO選任(特定荷主等)、中長期計画、定期報告 等
リスク指導・助言、状況により勧告等罰則・過料の対象になり得る(不履行・虚偽等)
必要な準備現場改善と社内周知役員関与、データ収集、社内規程、報告体制、取引先協議

税理士としては、ここを「法務・物流」だけの話にせず、社内統制(規程・承認・記録)と外部説明責任(報告・監査対応)に落とし込むことが、結果的にコストを抑える近道だと考えています。


物流効率化法 第二段階の対応ポイント:中長期計画・定期報告で詰まりやすい所

第二段階の実務で詰まりやすいのは、「書類を作ること」ではなく「書けるだけのデータと合意形成がないこと」です。特に以下は早期に手当てが必要です。

1) 指定(特定荷主等)に該当するかの一次判定

特定荷主の指定は、前年度の取扱貨物重量など一定の基準に基づきます。荷主側では、そもそも重量データが社内に整備されていないケースも多く、物流部門だけでは拾えません。購買・販売・SCM・経理のデータを突合し、推計ルールを決めるのが実務の第一歩です。

2) 荷待ち時間・荷役等時間の計測(「測り方」の標準化)

定期報告を見据えると、荷待ち時間等の計測ルール(起算点・終点、例外、サンプリング等)を社内で統一しないと、拠点ごとに数字が比較不能になります。ここは現場の反発も起きやすいので、「責めるための数値」ではなく「改善のための数値」という設計思想を共有することが重要です。

3) 取引先との協議の場づくり(荷主単独で完結しない)

積載効率の向上やリードタイム確保、発注・出荷量の平準化などは、取引先や物流事業者との協働が前提です。CLOの役割は、ここをお願いベースから合意形成のプロセスに引き上げることにあります。

ここがポイント
現場では「倉庫が狭い」「人がいない」「納品先が厳しい」など制約が必ずあります。重要なのは、制約を理由に止まるのではなく、制約を報告可能な形に整理し、優先順位と代替策(例:予約受付、パレット化、ASN活用等)を明文化することです。

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実務の進め方(CLO選任から提出まで)をステップで解説

第二段階への対応は、制度対応プロジェクトとして段取り化するのが安全です。おすすめの流れは以下です。

Step 1: 対象判定(特定荷主等の該当可能性を洗い出す)

  • 前年度の取扱貨物重量・拠点数・委託形態を棚卸
  • データの所在(販売管理、WMS、TMS、請求書等)を特定
  • 推計のルールを決め、翌年度も再現できる形にする

Step 2: CLO候補の選定と権限設計(名目化を防ぐ)

  • 役員・執行役員等、重要決定に参画できる人材から選任
  • 物流だけでなく購買・生産・販売・在庫を含む会議体を設置
  • 社内規程(責任範囲、報告ライン、KPI)を整備

Step 3: 現状把握(荷待ち・荷役・積載の見える化)

  • 拠点別に、荷待ち時間・荷役等時間・積載の実態を測定
  • 計測ルールを統一(起算点、例外処理、サンプリング条件)
  • 改善余地の大きい拠点・取引から優先順位付け

Step 4: 中長期計画の策定(目標・施策・時期を一体で作る)

  • 判断基準の取組事項に沿って、施策を体系化
  • いつまでに何をどこまでを数値目標で設定
  • 設備投資・デジタル化・標準化の投資対効果も整理

Step 5: 定期報告に耐える運用(証憑・ログ・議事録の整備)

  • 実績データの収集フロー(誰が、いつ、何を)を固定化
  • 取引先協議の記録(議事録、合意書、メール等)を保全
  • 虚偽・未提出リスクを避けるため、ダブルチェック体制を置く

税理士の関与ポイントは、Step2(権限・規程)とStep5(証憑・内部統制)です。物流KPIの算定根拠が残っていないと、後から説明不能になり、結果として現場と経営の摩擦コストが増えます。


罰則・過料と税務リスクの関係:ガバナンス不備は他の領域にも波及する

物流効率化法の第二段階では、CLO未選任、届出の不備、計画・報告の未提出や虚偽等がリスクになります。これらは物流法令の話に見えますが、実務では次のように税務・会計にも波及し得ます。

  • 設備投資やDX投資の意思決定が曖昧なまま進む(稟議・契約・資産計上の根拠が弱い)
  • 取引条件の変更(リードタイム、納品頻度、付帯作業)が増えるのに、契約・請求の整理が追いつかない
  • 外注費・運賃・荷役費の区分が不明確で、原価管理や税務調査時の説明が難しくなる

つまり、物流効率化の体制整備は、内部統制の整備そのものです。税理士としては、法令対応を単なる提出物作成で終わらせず、会計・契約・社内規程まで含めて一貫させることを推奨します。


よくある質問

Q: CLOは物流部長を置けば足りますか? ▼
形式的に物流部門の管理職を置くだけでは足りない可能性があります。CLOには「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位」が求められ、調達・生産・販売・在庫などを横断して意思決定を動かす役割が想定されています。社内の決裁権限と会議体をセットで整備するのが現実的です。
Q: 物流効率化法 第二段階は、すべての企業が2026年4月から義務化ですか? ▼
一律ではありません。第二段階で義務が強くかかるのは、一定規模以上で「特定荷主」等に指定される事業者です。一方、指定を受けない企業でも判断基準に沿った取組(努力義務)が求められるため、取引先から改善要請が来る可能性はあります。
Q: 中長期計画と定期報告は、何をどこまで書けばよいですか? ▼
中長期計画は、判断基準の取組事項を踏まえつつ、「実施する措置」「具体的内容・目標」「実施時期」等を整理します。定期報告は、取組状況や荷待ち時間等の状況把握を前提に、説明可能な根拠(ログや記録)と一体で運用することが重要です。自社の業態・拠点制約に応じて設計が変わるため、早めに社内のデータ収集方法を固めてください。
Q: 税理士に相談するメリットはどこですか? ▼
物流効率化法対応は、設備投資・外注契約・コスト配賦・証憑管理など会計実務と接続します。税理士は、(1)社内規程・承認フローの整備、(2)投資判断の根拠整理、(3)契約・請求の整流化、(4)税務調査でも説明できる記録設計、といったガバナンスの実装を支援できます。

まとめ

  • 物流効率化法の第二段階は2026年4月1日から本格化し、特定荷主等ではCLO選任義務が重要になる
  • CLOは現場改善担当ではなく、部門横断で意思決定を動かす統括者として権限設計が必要
  • 中長期計画・定期報告は「書類作成」より「データ収集と合意形成」が難所になりやすい
  • 取引先との協議、計測ルールの標準化、証憑・ログの整備が実務の成否を分ける
  • ガバナンス不備は会計・契約・税務にも波及し得るため、内部統制として設計するのが有効

参照ソース

  • 国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト(CLO選任): https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/clo/
  • 国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト(中長期的な計画の作成): https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/planning/
  • 経済産業省「特定荷主の物流効率化法への対応の手引き(PDF)」: https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/specified-sippers_ver.1.0.pdf
  • e-Gov法令検索「物資の流通の効率化に関する法律」: https://laws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=417AC0000000085
  • 国土交通省 審議会資料(基本方針・判断基準等): https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001760825.pdf

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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