
執筆者:辻 光明
代表税理士
会社設立 手続き届出一覧|税務署・年金・労基を税理士が解説

会社設立後にやるべき手続き一覧(結論)
会社設立後にまず押さえるべきは、「税務(税務署・地方税)」「社会保険(年金事務所)」「労働保険(労基署・ハローワーク)」の3領域です。特に、期限が短い届出(例:社会保険の新規適用=原則5日以内、労働保険=原則10日以内など)を先に処理し、税務関係は2か月以内にまとめて提出すると事故が減ります。
税理士法人 辻総合会計では、設立直後の顧問先で「届出漏れ→加算税・延滞金・保険未加入の遡及」につながる相談を数多く見てきました。この記事では、会社設立後の手続きをチェックリスト化し、提出先と期限をわかりやすく整理します。
会社設立後の手続きは「いつ・誰が・どこへ」が核心
「会社を作った直後に何をすべきかわからない」という状況は自然です。混乱の原因は、届出先が複数に分かれていて、提出期限もバラバラだからです。
- 税務:税務署(国税)+都道府県税事務所・市区町村(地方税)
- 社会保険:年金事務所(日本年金機構)
- 労働保険:労基署(労災)+ハローワーク(雇用)
ここで重要なのは、従業員を雇う予定があるかです。雇用の有無で「労務・保険」のタスク量が一気に変わります。
税務署・地方税(都道府県・市区町村)への届出
税務署(国税)に提出する主な届出(法人税・源泉所得税・消費税)
税務署に対しては、設立後の基本届出として「法人設立届出書」が中心です。国税庁の案内では、内国法人を設立した場合、設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に提出が必要とされています。あわせて必要に応じて青色申告や給与関係、消費税関係の届出を組みます。
- 法人設立届出書(原則:設立登記日から2か月以内)
- 青色申告の承認申請書(期限に注意:設立後3か月経過日と第1期終了日の「いずれか早い日」の前日まで)
- 源泉所得税関係(給与支払い開始・納期の特例など)
- 消費税関係(課税事業者選択等、事業形態により要否が変動)
設立2か月以内という「まとめて出せる猶予」がある一方、青色申告や役員報酬設計(事前確定届出給与など)は期限が独特です。初年度から税務設計をするなら、提出順を間違えないことが重要です。
都道府県税事務所・市区町村への届出(地方税)
地方税側でも、法人設立(設置)届出書が必要になる自治体がほとんどです(名称・添付書類・期限は自治体で差があります)。実務上は次の流れが定番です。
- 税務署への提出書類を確定(定款写し、登記事項証明書など)
- その写しを流用して、都道府県・市区町村へ提出
- 電子申請の可否は自治体ごとに異なるため要確認
年金(社会保険):健康保険・厚生年金の新規適用と従業員の加入
法人は原則「新規適用」の手続きが必要(提出時期:原則5日以内)
法人事業所は、厚生年金保険および健康保険の加入が法律で義務づけられる類型に該当します。日本年金機構では「新規適用届」を、適用要件を満たした事実発生から5日以内に提出する扱いが示されています。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所で、電子申請・郵送・窓口持参が可能です。
実務のポイントは「役員だけでも対象になるケースが多い」「所在地の扱い(登記住所と実地住所が異なる)」です。添付書類に登記事項証明書等が求められる場面もあるため、登記完了後すぐ動くのが安全です。
従業員を採用したら、被保険者の資格取得も連動で発生
新規適用の次に、従業員(および条件により役員)について「資格取得届」等が必要になります。設立後しばらく採用しない場合でも、採用した瞬間にタスクが増えるため、採用計画と手続き担当者(社内 or 社労士)を早めに決めておくと混乱が減ります。
労基・労働保険:労災保険と雇用保険の届出(雇用したら必須)
労災保険:まず「保険関係成立届」→「概算保険料の申告・納付」
厚生労働省の案内では、労働保険の適用事業になったときは、まず労働保険の保険関係成立届を所轄の労働基準監督署等へ提出し、その年度分の概算保険料を申告・納付する流れが示されています。つまり「雇ったらすぐ、労災の入口手続き→保険料申告」という順序です。
雇用保険:ハローワークへ「適用事業所設置届」「資格取得届」
雇用保険の適用事業となる場合は、上記に加えて、雇用保険適用事業所設置届および雇用保険被保険者資格取得届を所轄の公共職業安定所(ハローワーク)へ提出が必要とされています。労災(労基署)と雇用(ハローワーク)で窓口が分かれるため、担当者が混同しがちです。
会社設立後 手続き 一覧(提出先・期限の比較表)
| 区分 | 主な届出 | 提出先 | 目安期限 | 重要ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 税務(国税) | 法人設立届出書 | 税務署 | 設立登記日から2か月以内 | 定款写し等の添付、e-Tax可 |
| 税務(国税) | 青色申告の承認申請書 | 税務署 | 期限が特殊(早い方の前日) | 初年度から青色にするなら最優先 |
| 税務(地方税) | 法人設立(設置)届出 | 都道府県・市区町村 | 自治体により異なる | 添付・期限が自治体差 |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金 新規適用届 | 年金事務所等 | 事実発生から5日以内 | 法人は原則対象、添付書類に注意 |
| 労災保険 | 保険関係成立届・概算保険料申告 | 労基署等 | 雇用開始後速やかに | 労働保険料の申告・納付が連動 |
| 雇用保険 | 適用事業所設置届・資格取得届 | ハローワーク | 雇用開始後速やかに | 労基署と提出先が別 |
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会社設立後の進め方(手順で迷わないステップ)
Step 1: 設立情報を確定する(登記・定款・所在地)
まず、登記完了日(設立日)と、定款、登記事項証明書、印鑑証明など「どの届出でも使い回す基礎書類」を揃えます。ここが曖昧だと、全ての提出が止まります。
Step 2: 社会保険(年金)を最優先で処理する
期限が短いのが社会保険です。役員のみでも対象になり得るため、年金事務所等へ新規適用の要否を確認し、必要なら提出します。5日以内が目安になるため、設立直後に着手します。
Step 3: 採用予定があるなら労働保険の準備を先回りする
採用日が決まると、労災・雇用が連動します。労基署(労災)とハローワーク(雇用)で提出先が分かれるため、社内担当を固定し、提出用の情報(賃金、所定労働時間、雇用形態)を整理しておきます。
Step 4: 税務署・地方税へまとめて提出(2か月以内が目安)
税務署へ法人設立届出書を提出し、必要に応じて青色、源泉、消費税を同梱します。地方税も並行して提出し、自治体の期限・添付差分を吸収します。ここで会計の初期設定(勘定科目・会計ソフト・証憑ルール)まで固めると、初年度決算が楽になります。
Step 5: 電子申請(e-Gov等)を使うか、紙でまとめるか決める
e-Gov電子申請は、行政手続きをオンラインで行う基盤です。社内の体制(電子証明書、担当者、外部専門家の関与)によって、電子申請の方が速い場合と、紙で一括提出の方が確実な場合があります。無理に統一せず、期限が短いものから「確実に通す」ことが優先です。
よくある失敗と注意点(税理士実務で多いパターン)
- 青色申告の期限を逃し、初年度が白色扱いになった
- 社会保険の新規適用が遅れ、遡及で保険料負担が重くなった
- 労災と雇用の提出先を混同し、採用後の手続きが詰まった
- 地方税の届出を失念し、自治体から照会が来て対応が後手になった
当法人の現場では、設立直後は「売上づくり・採用・オフィス整備」に意識が向き、届出は後回しになりがちです。だからこそ、期限の短い保険から順に潰す設計が効きます。
よくある質問
Q: 会社設立後、税務署への届出は何が必須ですか?
Q: 社会保険は役員だけの会社でも加入が必要ですか?
Q: 従業員を採用するのは数か月後ですが、労基署やハローワークの手続きは今やるべきですか?
まとめ
- 会社設立後の手続きは「税務」「社会保険」「労働保険」の3領域に分けて整理する
- 社会保険は期限が短く、法人は原則対象になりやすいので最優先で着手する
- 税務署への法人設立届出書は設立登記日から2か月以内が目安だが、青色申告など期限が特殊なものに注意する
- 労災(労基署)と雇用(ハローワーク)は提出先が分かれるため、採用前に段取りを決めておく
- 電子申請と紙提出は、期限と社内体制を見て「確実に通す」方法を選ぶ
参照ソース
- 国税庁「No.5100 新設法人の届出書類」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5100.htm
- 日本年金機構「新規適用の手続き」: https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150311.html
- 厚生労働省「労働保険の成立手続」: https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/daijin/hoken/980916_2.htm
- e-Gov電子申請「トップ」: https://shinsei.e-gov.go.jp/
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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