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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.27
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

不動産所得赤字の損益通算と制限ポイント2026|税理士が解説

9分で読めます
不動産所得赤字の損益通算と制限ポイント2026|税理士が解説

不動産所得が赤字の場合でも、原則として給与所得など他の黒字所得と損益通算でき、所得税・住民税の負担が軽くなる可能性があります。一方で「赤字なら何でも通算できる」わけではなく、土地取得の借入利子や国外中古建物の減価償却など、損益通算に制限がある赤字も存在します。とくに会社員の不動産投資では、節税目的が先行して申告ミスや資金繰り悪化につながる相談が少なくありません。

本記事では、税理士法人 辻総合会計が、不動産所得の赤字を給与所得と通算できる条件、通算できない代表例、確定申告の実務手順、そして「赤字=得」と思い込みやすい注意点を整理します。

不動産所得の赤字は損益通算できるのが原則

不動産所得は、家賃収入などの総収入から必要経費(管理費、修繕費、固定資産税、減価償却費など)を差し引いて計算します。結果として赤字(損失)が出た場合、その赤字は原則として給与所得など他の所得の黒字から差し引けます。これが損益通算です。

どの所得と通算できる?

一般的には、給与所得、事業所得、譲渡所得(区分による)、雑所得などの黒字と通算が論点になります。会社員の不動産投資では「給与所得との通算」が最も相談が多い部分です。

ざっくり計算イメージ(例)

  • 給与所得:600万円
  • 不動産所得:▲80万円(赤字)
  • 損益通算後の課税対象(概念):600万円 − 80万円 = 520万円

損益通算により課税所得が圧縮され、源泉徴収されていた所得税の還付が発生するケースがあります。

ここがポイント
「赤字=現金が減っている」とは限りません。減価償却費の影響で帳簿上赤字でも、手元資金は増えているケースもあります。一方で、元本返済は必要経費にならないため、帳簿上黒字でも資金繰りが苦しいケースもあります。

損益通算できない不動産の赤字(制限の代表例)

不動産所得の赤字でも、一定の赤字は「なかったもの」とされ、他の所得と損益通算できません。ここを外すと「還付が減る」「税務署からの指摘」につながりやすいです。

損益通算の対象外になりやすい3パターン

  • 別荘等(主として趣味・娯楽・保養・鑑賞目的)の貸付けに係る赤字
  • 土地等を取得するための負債の利子に相当する部分(必要経費に入れても、通算対象外となる部分がある)
  • 国外中古建物で、耐用年数を簡便法で計算した場合の減価償却費相当額(通算制限)

加えて、民法組合等の「特定組合員等」に該当する形態の不動産所得の赤字は、損益通算できない取扱いがあります(投資スキーム型で論点になりやすい部分です)。

「通算できる赤字 / できない赤字」比較表

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区分給与所得と損益通算実務上の注意点
通常の賃貸(居住用・事業用)で生じた不動産所得の赤字原則できる経費の根拠(領収書、契約書、按分根拠)を保存
別荘等(趣味・保養目的)に近い貸付けの赤字できない(対象外)「実態」が重視される。利用状況・募集状況に注意
土地取得の借入金利息を経費計上した結果の赤字の一部できない部分がある借入の使途(建物/土地)と利息の按分が論点
国外中古建物(簡便法の耐用年数)由来の減価償却で生じた赤字の一部できない(特例により対象外)国内不動産との内部通算・他所得との通算も不可になり得る
ここがポイント
「不動産投資 赤字 節税」を狙う場合、どの赤字が損益通算できる赤字か(できない赤字か)を、物件タイプ・借入内容・所在地(国内/国外)まで含めて確認するのが安全です。

不動産投資の赤字で節税するときの注意点(よくある落とし穴)

1) 減価償却で赤字でも、返済で資金が減ることがある

減価償却は現金支出を伴わない経費ですが、借入の元本返済は経費になりません。
「帳簿上赤字で還付が出たのに、預金残高は減っている」というケースは珍しくありません。

2) 経費の範囲・家事按分が甘いと否認リスク

自宅兼用、車両、通信費、出張旅費などは、事業関連性と按分根拠が重要です。按分が不自然だと、損益通算の前提となる不動産所得の赤字自体が縮みます。

3) 損益通算の「制限」に該当していないかを先に確認

ロングテールKWにもあるとおり、損益通算 不動産 制限は必ず押さえるべき論点です。
「土地取得の利息」「国外中古建物の減価償却」「スキーム型投資」などは、申告ソフト任せだと見落としやすいため注意してください。

不動産所得が赤字のときの確定申告手順(実務ステップ)

会社員の方が「不動産所得 赤字 損益通算」で申告する場合の、実務的な流れです(e-Tax利用を前提に整理します)。

Step 1: 収入・経費資料を整理する

  • 家賃入金明細、賃貸借契約書、管理委託契約書
  • 修繕見積・請求書、管理費・修繕積立金、固定資産税納付書
  • 借入返済予定表(利息部分の把握)
  • 減価償却の計算に必要な資料(売買契約書、固定資産税評価、建物内訳など)

Step 2: 収支内訳書(不動産所得用)または青色申告決算書を作成する 白色なら収支内訳書、青色なら青色申告決算書が基本です。ここで不動産所得の黒字/赤字が確定します。

Step 3: 確定申告書に損益通算後の所得を反映する 不動産所得の赤字が通算対象なら、給与所得などと合算した所得金額・課税所得が減り、還付が発生することがあります。

Step 4: 制限対象の赤字が含まれていないか最終確認する

  • 別荘等に該当しないか
  • 土地取得の借入利子部分の取扱い
  • 国外中古建物(簡便法耐用年数)由来の減価償却部分
  • 組合スキーム等の該当性

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青色申告なら「控除しきれない赤字」の繰越も検討

損益通算しても控除しきれず、なお赤字(純損失)が残る場合、青色申告の要件を満たせば、翌年以後に繰り越して控除できる制度があります。初年度だけ節税できても、翌年以降の黒字で回収できる設計にすることが重要です。

また、青色申告には損失繰戻し還付(一定の要件下で前年税額の還付を受ける手続)もあります。対象になるかは所得構成・手続要件で変わるため、投資初年度や大きな修繕をした年は早めに確認しましょう。

よくある質問

Q: 不動産所得が赤字なら、必ず給与から税金が戻りますか? ▼
必ずではありません。赤字が損益通算の対象外(別荘、土地取得利子の一部、国外中古建物の減価償却部分など)に該当する場合、給与所得と通算できないことがあります。また、通算できても源泉徴収額や他の控除状況により還付が出ないケースもあります。
Q: 不動産投資の赤字は「節税になるからOK」と考えてよいですか? ▼
赤字の内容次第です。減価償却で帳簿上赤字でも、元本返済で資金が減ることがあります。節税は副次的効果と捉え、キャッシュフロー(家賃−運営費−返済)と、損益通算の可否・制限をセットで確認してください。
Q: 国外不動産の赤字も給与と損益通算できますか? ▼
制度上の制限があり得ます。国外中古建物で耐用年数を簡便法で計算した場合の減価償却費相当額は、損益通算できない取扱いがあります。国内不動産と同じ感覚で申告するとズレが出やすいので注意が必要です。
Q: 申告ソフトに入力すれば損益通算の制限も自動で判定されますか? ▼
一部は判定されますが、借入の使途(建物/土地)や、別荘該当性、スキームの実態などは入力情報次第で結果が変わります。迷う場合は、申告前に論点整理(資料の揃え方・按分根拠の作り方)をするのが安全です。

まとめ

  • 不動産所得が赤字でも、原則として給与所得などと損益通算できる
  • ただし、別荘等、土地取得の借入利子部分、国外中古建物の減価償却などは損益通算の制限がある
  • 「赤字=得」ではなく、減価償却と元本返済のズレで資金繰りが悪化することがある
  • 申告は、収支内訳書(または青色決算書)→確定申告書→制限対象の最終確認の順で進める
  • 青色申告なら、控除しきれない赤字の繰越や繰戻しの論点も検討する

参照ソース

  • 国税庁「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm
  • 国税庁「No.2070 青色申告制度」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
  • 国税庁「確定申告書等の作成|令和7年分 確定申告特集」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/kakushin-sakusei/
  • 国税庁「確定申告書等作成コーナー(収支内訳書:不動産所得用)」: https://www.keisan.nta.go.jp/r5yokuaru/ocat2/ocat25/cid013.html
  • 国税庁「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/23200002.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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