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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.27
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

リモートワーク手当の税金は?課税・非課税の境界|税理士が解説

7分で読めます
リモートワーク手当の税金は?課税・非課税の境界|税理士が解説

結論:リモートワーク手当は原則課税、実費精算なら非課税になり得る

リモートワーク手当(在宅勤務手当)は、原則として給与として課税されます。一方で、在宅勤務に通常必要な費用を「実費相当額で精算」する仕組み(使わなかった分は返す、領収証等で精算する等)であれば、一定の範囲で給与課税を要しない取扱いが示されています。
企業側は「渡切り(定額)で払うか」「実費精算にするか」で源泉徴収・年末調整・社会保険の取扱いまで変わるため、制度設計が重要です。

在宅勤務手当(定額・渡切り)が課税される理由

在宅勤務手当を毎月一定額(例:5,000円)で支給し、実際に使わなかったとしても返還不要にする形は、従業員にとって実質的に可処分所得が増えるため、税務上は給与(課税)として整理されます。
この場合、企業は通常の給与と同様に源泉徴収の対象として扱い、年末調整や住民税の計算にも反映されます。

ここがポイント
税金だけでなく、在宅勤務手当を「給与課税」とする運用では、一般に社会保険の標準報酬月額(算定基礎・月変)にも影響し得ます。手当を拡充する場合は、税・社保の両面で影響を確認しましょう。

非課税にできる「実費精算」方式とは(通信費・電気代・備品)

非課税になり得るのは、在宅勤務に通常必要な費用について、実費相当額を精算する方式を採るケースです。ポイントは「業務のために負担した費用」を「領収証等で確認し、過不足を精算する」ことです。

通信費(スマホ・ネット)を精算する場合

通信費は私用と業務用が混在しやすいため、会社として「業務使用部分の算定ルール」を定め、合理的な按分で精算することが実務上の肝になります。
例として、勤務日数・在宅勤務日数、業務利用時間など、説明可能な基準を社内規程に落とし込み、毎月の精算資料を保存します。

電気料金を精算する場合

電気料金も同様に、業務使用部分を合理的に計算し、精算する運用が求められます。算定式を固定し、対象期間・在宅勤務日数・業務時間等の根拠を残すと、運用が安定します。

備品(PC・椅子・机など)は「貸与」か「支給」かで扱いが変わる

在宅勤務のための備品は、会社が所有したまま従業員に「貸与」するなら、原則として給与課税の問題が出にくい一方、従業員に「支給」して所有権が移ると、現物給与として課税関係が生じ得ます。
実務では「会社資産として貸与し、不要になったら返却」といった運用が管理しやすい設計です。

企業側の税務・経理処理:給与課税と実費精算でここが違う

在宅勤務に関連する支出は、会社の損金(費用)になり得ますが、処理区分と証憑管理が重要です。

←横にスクロールできます→
項目定額手当(渡切り)実費精算(領収証等で精算)会社資産の貸与
従業員の税金原則課税(給与)一定要件で非課税扱いが可能原則課税なし(貸与)
会社の源泉徴収必要(給与に上乗せ)原則不要(要件充足前提)不要
証憑・根拠資料少なめでも回るが課税領収証・精算書・按分根拠が必須貸与台帳・返却ルールが重要
運用の難易度低い中〜高い(ルール設計が必要)中(資産管理が必要)

「経費精算にしたのに実態は定額手当」にならないように

実費精算を掲げつつ、実態が「毎月定額で、使わなくても返さない」「領収証確認がない」だと、税務上は定額手当(給与課税)と評価されやすくなります。
制度名よりも実態が見られるため、規程・申請書式・証憑保存まで一貫させましょう。

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従業員側:在宅勤務の費用は「自分の経費」にできる?

給与所得者の場合、在宅勤務の電気代やネット代を「必要経費」として自由に差し引けるわけではありません。一般には、会社が実費精算してくれる設計にしておく方が、従業員側の手続負担も税務リスクも小さくなります。
一方で、会社からの支給が定額手当(課税)であれば、その分は給与収入に含まれ、年末調整・住民税にも反映されます。

ここがポイント
テレワークと出社が混在する場合、通勤手当は一定限度まで非課税のルールがあります。例えば、マイカー・自転車通勤者は通勤距離に応じた月額限度(片道55km以上で月38,700円など)が示されています。通勤手当の設計を見直す際は、非課税限度との整合も確認しましょう。

企業が失敗しないための制度設計ステップ(実務)

Step 1: 支給方針を決める(課税の定額手当か、非課税を狙う実費精算か)
「簡便さ」重視なら定額手当(課税)、「従業員の手取り最適化」重視なら実費精算(非課税余地)を検討します。

Step 2: 対象費目と上限を定義する
通信費・電気代・消耗品・レンタルオフィス代など、対象としない費目も含めて明文化します。

Step 3: 按分ルールと必要書類を整備する
業務使用部分の計算方法、領収証・請求書の提出、精算書式、締日などを規程化します。

Step 4: 給与計算・源泉徴収フローに落とし込む
定額手当なら給与課税として源泉計算へ、実費精算なら経費精算フローへ。給与と経費の混在が起きないようにします。

Step 5: 保存(監査耐性)を作る
規程、申請、証憑、按分根拠をセットで保存します。税務調査対応は「再現性」が鍵です。

よくある質問

Q: 毎月5,000円の在宅勤務手当は全部課税ですか? ▼
使わなかった分の返還が不要な「渡切り」の定額手当であれば、原則として給与として課税されます。非課税を狙うなら、実費相当額の精算(領収証等で過不足を精算する仕組み)が必要です。
Q: 領収書が出せない通信費・電気代はどうしたらいいですか? ▼
通信費や電気代は請求書(明細)をもとに、業務使用部分を合理的に按分して精算する設計が考えられます。按分基準(在宅勤務日数、業務利用時間等)を社内規程で定め、根拠を残すことが重要です。
Q: 会社が椅子や机を買って従業員に渡したら課税ですか? ▼
会社が所有する物品を「貸与」するなら給与課税の問題が出にくい一方、従業員に「支給」して所有権が移ると現物給与として課税関係が生じ得ます。運用としては会社資産として貸与し、返却ルールを設ける設計が管理しやすいです。
Q: テレワークで通勤が減ったら通勤手当はどうなりますか? ▼
通勤手当は一定限度まで非課税ですが、実態として通勤しない期間の支給が合理的か、社内規程・支給基準との整合が問われます。勤務形態の変更時は、通勤手当と在宅勤務関連の精算をセットで見直すのが安全です。

まとめ

  • リモートワーク手当(定額・渡切り)は原則課税(給与)
  • 非課税を狙うなら、在宅勤務に通常必要な費用を実費相当額で精算する仕組みが重要
  • 通信費・電気代は「業務使用部分」の合理的按分と証憑保存がカギ
  • 備品は「支給」より「会社資産の貸与」にすると設計しやすい
  • 税金だけでなく、給与課税にすると社会保険など周辺影響も確認する

参照ソース

  • 国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
  • 国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2585.htm
  • 国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて(資料)」: https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/pdf/01.pdf

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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