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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.27
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

飲食店の106万壁撤廃で人件費激変?シフトの組み方|税理士が解説

8分で読めます
飲食店の106万壁撤廃で人件費激変?シフトの組み方|税理士が解説

飲食店の「106万円の壁」撤廃とは、パート・アルバイトの社会保険(厚生年金・健康保険)加入に関して、いわゆる賃金要件(月額8.8万円以上)をなくす方向で制度が変わることを指します。厚労省は、企業規模要件の縮小・撤廃とあわせて、週20時間以上で働く短時間労働者の社会保険加入が広がる見通しを示しています。結果として、飲食店は「手取り」「人件費」「シフト設計」を同時に再設計する必要が出てきます。

飲食店の「106万の壁撤廃」とは(2026時点の整理)

「106万円の壁」は、短時間労働者が社会保険に加入する要件の一つとして意識されてきた「賃金要件(月額8.8万円以上)」を指す通称です。厚労省は、この賃金要件を撤廃する方針を明記しています。

何が変わるのか:ポイントは「週20時間」の重みが増す

厚労省の説明では、企業規模要件を段階的に縮小・撤廃し、賃金要件も撤廃することで、週20時間以上働けば企業規模にかかわらず社会保険加入となる方向が示されています。
飲食店はパート比率が高く、繁閑で時間数が変動しやすい業態のため、「週20時間」を跨ぐ働き方が増えるほど、加入対象者が増えやすくなります。

いつから?:断定せず「決まり方」を押さえる

賃金要件(いわゆる106万の壁)撤廃の時期は「法律の公布から3年以内」で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断するとされています。時期が確定しているというより、条件を見て決まる点が実務では重要です。

ここがポイント
「106万円が撤廃されても、別の壁(例:扶養・保険の扱い、本人の希望、店舗の繁閑)で就業調整が起きることがあります。制度だけでなく、従業員の意向確認と店舗オペレーション設計がセットです。

飲食店の人件費はどう増える?(社保適用拡大の影響)

社会保険に加入すると、従業員側は保険料負担が増える一方で、事業主側も原則として保険料を労使折半で負担します。したがって、飲食店にとっては「同じ時給・同じ時間でも、会社負担が上乗せされる」ケースが増えます。

「増えるのは誰のコストか」を分解する

  • 従業員:手取りが一時的に減る可能性(保険料控除が発生)
  • 事業主:法定福利費が増える(社会保険料の会社負担分)
  • 店舗運営:人材確保はしやすくなる一方、原価率・人件費率の再計算が必要

ざっくり影響比較(考え方の整理表)

※保険料率は加入する健康保険組合や都道府県等で異なります。ここでは「負担が発生する/しない」の構造を把握するための比較です。

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項目改正前に多かった運用(例)改正方向(106万壁撤廃・適用拡大後の世界観)
判断基準として意識されがち月8.8万円(年106万円)を超えない調整週20時間を跨がない/跨ぐで整理
店側のコスト設計時給×時間が主時給×時間+法定福利費が効く
従業員の不安「手取りが減るのでは」「加入が前提なら何時間働くか」へ

飲食店のシフトをどう組む?(パート・アルバイトの実務設計)

結論として、撤廃後は「20時間未満に抑える人」と「20時間以上で戦力化する人」を明確に分け、店舗の役割分担と教育設計まで含めて作り直すのが安定します。

飲食店 社会保険 パート:2つの雇用ポートフォリオを作る

  1. 短時間枠(例:週10〜19時間)
    • 学生、扶養内希望、Wワークで時間制約がある層
    • 繁忙ピークへの投入(ホール補助、洗い場、仕込み補助等)
  2. 中時間〜準フル枠(例:週20〜30時間)
    • 主戦力パート(開店準備〜ランチ帯、ディナー帯の固定要員など)
    • 習熟が進むと生産性が上がり、回転率・客単価改善にも寄与しやすい

「短時間枠を増やす」だけでは、教育コストと欠勤リスクで逆に不安定になりやすいのが飲食店の現場です。一定割合で「20時間以上の核」を置く方が、結果的に人件費率が読めることも多いです。

飲食店 人件費 2026:時間数の波を前提に「月次で平準化」する

飲食は週単位で見ると20時間を超えやすい店舗があります。月間の繁閑(イベント、天候、連休)を見越し、次のように設計します。

  • 固定シフト(核):週20時間以上のメンバーに、定例のコマを先に割り当て
  • 変動シフト(波):短時間枠に、前日〜週次で増減できるコマを割り当て
  • 代替要員:欠勤・急な増客に備え、スポット対応可能な人材プールを作る(OB、姉妹店ヘルプ等)

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飲食業の社保適用拡大に備える手順(シフト再設計のStep)

Step 1: 現状棚卸し(週20時間を跨ぐ人を抽出)
直近3か月分の勤怠から、週あたり労働時間が20時間付近の従業員をリスト化します。繁忙期だけ跨ぐ人、恒常的に跨ぐ人を分けます。

Step 2: 従業員の意向確認(手取りより希望の働き方を聞く)
「扶養内にこだわりたい」「社保に入って安定したい」「Wワーク優先」など、希望が分かれます。本人希望と店舗都合の落としどころを先に作ると、後のトラブルが減ります。

Step 3: コスト試算(時給+法定福利費でシミュレーション)
加入が増える前提で、店舗別に「人件費率(売上比)」を再計算します。価格改定・メニュー構成・営業時間の見直しも同時に検討します。

Step 4: シフトの型を決める(核+波+代替)
核となる20時間以上層を先に固定し、短時間層は繁閑対応に寄せます。教育担当を核の中に置くと、採用回転が速い店舗でも品質が落ちにくいです。

Step 5: 処遇改善・支援策の検討(助成制度も含めて)
厚労省は「年収の壁」対応として助成金等の支援策を案内しています。該当しうる場合は、採用戦略とセットで検討します。

ここがポイント
「週20時間未満に全員を寄せる」設計は、ピーク帯の人手不足・教育負荷・サービス品質低下を招きやすいです。店舗の売上構造(ランチ偏重・ディナー偏重・週末型)ごとに最適解は変わります。

よくある質問

Q: 106万円の壁が撤廃されたら、飲食店のパートは全員社会保険に入るのですか? ▼
一律に全員ではありません。厚労省の整理では、企業規模要件の縮小・撤廃と賃金要件撤廃を進め、週20時間以上を満たす短時間労働者の加入が広がる方向です。具体の適用は段階的で、時期や条件は制度の枠組みに従って判断されます。
Q: 週20時間ギリギリのシフトは危険ですか? ▼
実務上は注意が必要です。繁忙期の延長や欠員対応で20時間を超えやすく、本人の意向とズレると不満が出ます。ギリギリ運用にするより、「短時間枠は19時間上限で固定」「20時間以上枠は戦力化して固定」など、制度と運用を揃える方がトラブルが減ります。
Q: 人件費が上がるなら、時給を下げるしかありませんか? ▼
時給だけで調整すると採用競争に負けやすくなります。先に「核人材の定着(教育・役割・時給設計)」「ピーク帯の配置最適化」「メニュー・営業時間の見直し」で生産性を上げ、最後に賃金テーブルを再設計する順が現実的です。助成制度の活用余地も確認します。

まとめ

  • 106万円の壁撤廃は、賃金要件(月8.8万円)をなくす方向で、週20時間の重要性が増します。
  • 飲食店は「時給×時間」だけでなく、法定福利費を含めた人件費設計が必要になります。
  • シフトは「短時間枠」と「20時間以上の核」を分け、核+波+代替の型で安定化させます。
  • まず勤怠棚卸し→意向確認→コスト試算→シフト型決定の順で進めると失敗しにくいです。
  • 支援策(助成制度等)も含め、制度と運用をセットで整えるのがポイントです。

参照ソース

  • 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html
  • 厚生労働省「『年収の壁』への対応」: https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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