
執筆者:辻 光明
代表税理士
確定申告が必要な人の基準|会社員の5ケースを税理士が解説

確定申告が必要かどうかの結論(会社員向け)
確定申告が必要かどうかは、「年末調整で完結しているか」と「給与以外(または年末調整されない給与)の所得が一定額を超えているか」で決まります。会社員の多くは年末調整で完了しますが、副業所得20万円超など条件に当てはまると申告が必要です。自分が対象か迷う方に向けて、不要な人の基本形と、会社員でも申告が必要な5ケースを整理します。
確定申告が不要な人の基本パターン
会社員で申告が不要になりやすいのは、次の条件を満たす場合です。
- 給与が1か所のみで、年末調整を受けている
- 給与以外の所得(副業・不動産・配当など)が原則として20万円以下
- 医療費控除・住宅ローン控除(初年度)など、申告しないと受けられない控除を使わない
- 追加納税(不足)が発生しない
ただし、「不要=してはいけない」ではありません。例えば医療費控除や寄附金控除等で還付(払い過ぎの税金の返金)を受けたい場合は、申告することで税金が戻ることがあります。
会社員でも確定申告が必要な5つのケース
国税庁の整理(給与所得者で確定申告が必要な人)に沿って、実務上よく遭遇する5ケースを取り上げます。
ケース1:給与収入が2,000万円を超える
会社員でも、年収2,000万円超の場合は確定申告が必要です。年末調整だけでは完結しません。
- 例:役員報酬を含む高額給与、外資系の高報酬など
- 注意:年末調整がされていても、確定申告が別途必要になります
ケース2:給与1か所でも「給与以外の所得」が20万円を超える(副業等)
給与が1か所で年末調整済みでも、副業(事業・雑所得)、不動産、暗号資産の利益など、給与・退職所得以外の所得合計が20万円を超えると申告が必要です。
- 例:副業の利益が25万円、駐車場収入の所得が30万円
- ポイント:「収入」ではなく「所得(収入-必要経費)」で判定するのが実務の要点です
ケース3:給与が2か所以上ある(年末調整されない給与がある)
給与を2か所以上から受けている場合、年末調整されなかった給与と、給与以外の所得の合計が一定額を超えると申告が必要です(典型は副業アルバイト+本業)。
- 例:本業は年末調整済み、副業バイトは未調整で、未調整給与+副業所得の合計が20万円超
- 実務:2か所給与は源泉徴収票の取りまとめ漏れが起きやすく、申告漏れの相談が多い類型です
ケース4:同族会社の役員等で、その会社から賃貸料や貸付利子などを受け取っている
同族会社(親族等で支配する会社)の役員などで、その会社に不動産を貸して賃料を受け取っている、会社にお金を貸して利子を受け取っている、といった場合は申告要件に該当し得ます。
- 例:自宅兼事務所を会社に賃貸し、賃料収入がある
- 注意:形式は「給与所得者」でも、実態としては不動産所得・利子所得等が発生します
ケース5:申告しないと税額が合わない(源泉徴収されない給与・退職所得の不足など)
次のように、源泉徴収・年末調整の仕組みだけでは税額が確定しない(または不足になる)ケースは申告が必要になることがあります。
- 源泉徴収義務のない者から給与等の支払いを受けている
- 退職所得で、正規計算の税額が源泉徴収額より多くなる など
現場では「海外絡み」「個人からの支払い」「退職金の取り扱い」がきっかけで発覚することが多い類型です。
会社員の判断を早くする比較表(必要・不要の目安)
| 典型パターン | 確定申告 | 判断ポイント |
|---|---|---|
| 給与1か所・年末調整済み・副業なし | 不要が多い | 年末調整で精算完了 |
| 給与1か所・副業の所得が20万円超 | 必要 | 所得(利益)で判定 |
| 給与2か所(年末調整されない給与あり) | 必要になりやすい | 未調整給与+他所得の合計を確認 |
| 年収が2,000万円超 | 必要 | 年末調整だけでは不可 |
| 医療費控除・寄附金控除で還付を受けたい | 任意(やると得) | 還付目的の申告は可能 |
中小企業の税務・経営相談
創業から成長期まで、企業のフェーズに合わせた税務・経営サポートを提供しています。
平日 9:15〜18:15(土日祝休業)
迷ったときの確認手順(3分チェック)
「自分は確定申告が必要か」を最短で判断するための流れです。
Step 1: 源泉徴収票を用意する(給与が何か所か確認)
- 給与が1か所か、2か所以上か
- 年末調整済みか(源泉徴収票の「控除後の金額」等で把握)
Step 2: 給与以外の所得を洗い出す
- 副業(事業・雑所得)、不動産、配当、株の売却益、暗号資産など
- 収入ではなく、利益=所得(収入-経費)で集計
Step 3: 「20万円」「2,000万円」のラインで一次判定
- 年収2,000万円超なら原則申告
- 給与以外の所得が20万円超なら原則申告
- 給与2か所なら未調整給与も含めて判定
Step 4: 還付の可能性(やった方がよい申告)を確認
- 医療費控除、住宅ローン控除(初年度)、寄附金控除(ふるさと納税)、雑損控除など
- 「必要ではないが、申告すると戻る」ケースは珍しくありません
当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、年末調整済みの会社員の方から「確定申告が必要か」相談を多数受けますが、結局はStep 2の洗い出しが勝負どころです。副業・投資・不動産のどれか一つでもある場合は、早めに整理すると安全です。
確定申告をしないとどうなる(ペナルティと実務対応)
申告が必要なのに申告しない場合、納付すべき本税に加えて、状況により加算税・延滞税が発生します。特に注意したいのが無申告加算税と延滞税です。
- 無申告加算税:期限後申告や決定があった場合に課されることがある(自主的に期限後申告した場合でも一定割合がかかることがあります)
- 延滞税:期限までに納付されない期間に応じて発生(利息相当)
実務上は「税務署から連絡が来てから」よりも、「気付いた時点で速やかに期限後申告・納付」を行う方が、負担が軽くなりやすい傾向があります。
よくある質問
Q: 副業の「20万円」は売上ですか、利益ですか?
A:
原則として「所得(利益)」です。副業収入から必要経費を差し引いた所得の合計が20万円を超えるかで判断します(給与・退職所得以外の所得が対象)。Q: ふるさと納税は確定申告が必要ですか?
A:
給与所得者等で、寄附先が5団体以内などの要件を満たす場合は、ワンストップ特例により確定申告をせずに控除を受けられる制度があります。一方、医療費控除などで確定申告をする場合は、ワンストップ特例は使えず、確定申告で寄附金控除を行う整理になります。Q: 申告が必要なのにしなかった場合、どうすればよいですか?
A:
気付いた時点で期限後申告と納付を行うのが基本です。ケースにより無申告加算税・延滞税が発生し得るため、資料(源泉徴収票、収支、控除証明等)を揃え、早期に申告手続へ進めてください。まとめ
- 会社員でも、年末調整で完結しない条件に当てはまると確定申告が必要
- 代表例は「年収2,000万円超」「給与以外の所得20万円超」「2か所給与」
- 不要に見えても、医療費控除・寄附金控除等で還付を受けるために申告する価値がある
- 申告が必要なのに放置すると、無申告加算税・延滞税などの負担が生じ得る
- 迷ったら源泉徴収票と副業等の所得を整理し、早めに一次判定する
参照ソース
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
- 国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm
- 国税庁「No.9205 延滞税について」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
- 国税庁「ふるさと納税をされた方へ|令和7年分 確定申告特集」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/furusato.htm
- 国税庁「医療費控除を受ける方へ|令和7年分 確定申告特集」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/iryou-koujo.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
ご注意事項
本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。
税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。
記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。
