
執筆者:辻 光明
代表税理士
配偶者控除 2026改正|150万・201万の壁は?

配偶者控除・配偶者特別控除の「2026年改正」で一番大事なのは、年収(給与収入)で見た壁は所得(合計所得金額)の基準から逆算されている点です。結論として、配偶者特別控除の満額が狙える「150万円の壁」は、給与所得控除の最低保障額引上げ等により「160万円の壁」として語られるケースが増えます。一方、「201万円の壁」は制度の上限(合計所得金額133万円)が残るため、見え方として残ります(計算根拠は本文で説明します)。
2026年改正で何が変わる(いつから適用?)
今回の見直しは、令和7年分以後の所得税に適用され、源泉徴収(毎月の給与天引き)は令和8年1月1日以後に支払う給与等から新しい表に切り替わります。つまり、2026年(令和8年)は実務上「改正後の世界」が通年で反映される年と捉えるのが分かりやすいです。
(基礎控除・給与所得控除の改正の適用関係)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/0025005-010.pdf
配偶者控除と配偶者特別控除の違い(2026年版の基本)
配偶者控除は、納税者(夫または妻)に「控除対象配偶者(同一生計配偶者)」がいる場合に受けられる所得控除です。配偶者特別控除は、配偶者控除の対象にならない場合でも、配偶者の所得に応じて段階的に控除できる制度です。
重要なのは、どちらも判定の基準が「配偶者の合計所得金額」だという点です。
- 配偶者控除:同一生計配偶者の所得要件(合計所得金額)を基準に判定
- 配偶者特別控除:配偶者の合計所得金額が一定範囲(58万円超〜133万円以下)で段階的に控除
(要件・控除額の表)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
「150万円の壁」「201万円の壁」はどうなる?(数字の正体)
まずは税法上の本体=合計所得金額の基準を確認
配偶者特別控除の対象となる配偶者の要件は、合計所得金額が「58万円超133万円以下」です(令和7年分以降)。また、満額(納税者本人の合計所得金額900万円以下の場合は38万円)となるゾーンは「58万円超95万円以下」です。
(要件・控除額の表)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
ここでいう「合計所得金額」は給与収入そのものではなく、給与収入から給与所得控除を引いた後の給与所得などを合算した金額です。
150万円→160万円になりやすい理由(満額ゾーンの年収換算)
給与所得控除(令和7年分以降)は、給与収入190万円まで最低保障額が65万円です。
(給与所得控除の速算表)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
配偶者特別控除が満額となる上限(配偶者の合計所得金額95万円)を、単純に「95万円+65万円」で給与収入に置き換えると 160万円 になります。
これが、いわゆる「150万円の壁が160万円へ」と説明される核です。
201万円の壁が残る理由(上限133万円を年収換算すると?)
配偶者特別控除がゼロになる境目は、配偶者の合計所得金額が133万円を超えるところです。
(要件:58万円超133万円以下)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
「133万円+65万円=198万円」なら198万円が壁に見えそうですが、実際は給与収入が190万円を超えると給与所得控除は「収入×30%+80,000円」に切り替わります。
(給与所得控除:190万円超〜360万円)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
例として給与収入201万円の場合、給与所得控除は
201万円×30%+8万円=60.3万円+8万円=68.3万円
となり、給与所得(=201万円−68.3万円)は約132.7万円で、ほぼ「133万円」に一致します。
このため、上限133万円を給与収入で言い換えると約201万円となり、「201万円の壁」という表現が残りやすいわけです。
2026年の早見表:どの年収帯でどの控除になりやすい?
実務で混乱しやすいので、給与収入(概算)ベースの見え方を整理します(他の所得がある場合は別途調整が必要です)。
| 観点 | 改正後(2026年の実務で想定) | 根拠(制度の基準) |
|---|---|---|
| 配偶者控除の対象に入りやすい上限(給与のみの概算) | 約123万円まで | 同一生計配偶者の所得要件:合計所得金額58万円以下(給与収入190万円以下なら控除65万円のため 58+65=123) |
| 配偶者特別控除が満額になりやすい上限(給与のみの概算) | 約160万円まで | 配偶者の合計所得金額が95万円以下で満額(給与収入190万円以下なら 95+65=160) |
| 配偶者特別控除がゼロになりやすい上限(給与のみの概算) | 約201万円超 | 配偶者の合計所得金額が133万円超で対象外(給与所得控除の計算で約201万円付近に対応) |
制度のベース(合計所得金額の範囲・控除額の表)は国税庁の表で必ず最終確認してください。
配偶者控除:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
配偶者特別控除:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
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年末調整・確定申告での確認手順(やり方)
夫婦の働き方が複雑化しているため、2026年は「見込み」と「確定」で2段階管理が現実的です。
Step 1: 配偶者の年間見込みを給与収入で置く
- パート・アルバイトなら、源泉徴収票の「支払金額」に近い年間見込みを立てる
- ボーナス、年末の増減、掛け持ちの合算を忘れない
Step 2: 配偶者の合計所得金額を概算する(給与のみなら給与所得でOK)
- 給与収入190万円以下:給与所得控除は65万円(改正後)
- 190万円超〜:給与所得控除は「収入×30%+8万円」などの区分で計算
(給与所得控除)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
Step 3: 配偶者控除か、配偶者特別控除かを判定する
- 合計所得金額が58万円以下 → 配偶者控除の射程
- 58万円超〜133万円以下 → 配偶者特別控除の射程(段階的に減少)
(配偶者特別控除の要件・控除額)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
Step 4: 年末調整で申告→確定額でズレが出たら確定申告で調整
- 年末調整は「見込み」で出し、確定後に修正が必要なら確定申告で精算する
- 特に副業・事業所得・雑所得がある配偶者は要注意
よくある質問
Q: 150万円の壁が160万円になったら、160万円を超えたらすぐ損ですか?
Q: 201万円の壁は撤廃されたのですか?
Q: 配偶者に給与以外の所得(副業・不動産など)がある場合、壁の金額は変わりますか?
まとめ
- 2026年の実務では、配偶者特別控除の満額ゾーンが「約160万円」と説明されやすい(合計所得金額95万円+給与所得控除65万円の換算)。
- 配偶者特別控除の上限(合計所得金額133万円)は維持され、給与収入換算で「約201万円」が境目になりやすい(控除計算が190万円超で変わるため)。
- 重要なのは「年収」ではなく「合計所得金額」で判定すること。給与以外の所得があると壁の見え方は変わる。
- 年末調整は見込みで提出し、確定後にズレが出たら確定申告で精算するのが安全。
参照ソース
- 国税庁「No.1191 配偶者控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
- 国税庁「No.1195 配偶者特別控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
- 国税庁「令和7年度税制改正の大綱(抄)PDF」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/0025005-010.pdf
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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