
執筆者:辻 光明
代表税理士
起業補助金・助成金5選【2026年版】|税理士が解説

起業に使える補助金・助成金とは(結論)
起業に使える補助金・助成金とは、国や自治体が「創業直後の投資」「販路開拓」「デジタル化」「雇用」などを支援する制度です。結論から言うと、起業フェーズで狙うべきは「設備・販路=補助金」「人の採用・処遇=助成金」の2本立てで、資金繰りを崩さずに成長投資を前倒しできる点が最大のメリットです。
一方で、補助金は審査(採択)があり、助成金は要件充足が厳密です。つまり「どれを選ぶか」だけでなく、「申請設計(事業計画・証憑・スケジュール)」が結果を左右します。税理士としての実務感覚では、最初に制度のクセを理解し、提出物を逆算して準備するだけで採択・受給の確度が上がります。
補助金と助成金の違い(起業前に押さえる)
補助金と助成金の基本的な違い
補助金は「審査に通るか(採択)」がポイント、助成金は「要件を満たせば原則受給」がポイントです。起業時はこの違いを誤解して「出してみたが通らない」「事後に要件不備で不支給」になりがちです。
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 典型的な目的 | 設備投資、販路開拓、DX、研究開発 | 雇用、処遇改善、賃上げ、人材育成 |
| 受け取り方 | 原則「採択」後に事業実施→精算 | 原則「要件充足」後に申請→支給 |
| 競争性 | 高い(採択率に左右) | 低い(要件が全て) |
| 注意点 | 交付決定前の発注・契約は原則NG | 労務管理・賃金台帳等が必須 |
起業に使える補助金・助成金5選【2026年版】
ここでは「起業時に使いやすい」「汎用性が高い」「公的情報が整備されている」制度を5つに絞ります。どれも起業1年目〜数年目で検討頻度が高いものです。
1. 小規模事業者持続化補助金(販路開拓・広告・EC)
小規模事業者が自社で作った経営計画に基づき、販路開拓等に取り組む際に使いやすい補助金です。起業直後の「集客」「Web制作」「チラシ」「展示会」などと相性が良く、投資対効果を説明しやすいのが特徴です。2026年1月に一般型・通常枠の公募要領公開の案内があります。
- こんな起業家に向く:店舗・サービス業、士業、D2C、地域密着ビジネス
- 典型的な使い道:Webサイト/LP、広告宣伝、販促物、展示会出展、EC整備
- 採択の勘所:「誰に何をどう売って、数字がどう改善するか」を一貫して書く
2. ものづくり補助金(設備投資・新製品/新サービス)
革新的な新製品・新サービス開発、または海外需要開拓などに必要な設備投資を支援する制度です。起業直後でも「既に受注見込みがある」「投資で生産性が上がる」など、ストーリーが強い場合に検討価値があります。第23次公募要領公開の案内があり、申請にはGビズIDプライムが必要と明記されています。
- こんな起業家に向く:製造業、機器導入が必要なサービス、医療・研究系、BtoB
- 典型的な使い道:機械装置、検査機器、開発設備、試作、外注
- 採択の勘所:「現状課題→投資→生産性向上→付加価値」を定量で示す(稼働率、原価、リードタイム等)
3. デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金の延長線)
2026年は「デジタル化・AI導入補助金2026」として資料公開が進んでいます(交付規程の更新が確認できます)。起業初期に多い「会計・請求・予約・CRM・勤怠」などのIT整備は、採用・売上拡大・業務効率化に直結しやすい領域です。
- こんな起業家に向く:バックオフィスが弱い小規模事業者、少人数の成長企業
- 典型的な使い道:会計・請求、顧客管理、予約、販売管理、セキュリティ対策
- 採択/通過の勘所:導入目的を「機能列挙」ではなく、「業務プロセスのどこが何%短縮されるか」で書く
4. キャリアアップ助成金(非正規→正社員化・処遇改善)
雇用面で起業家が最初にぶつかるのは「採用しても定着しない」「人件費を上げたいが根拠が弱い」です。キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員転換や賃金アップなどに取り組む際の代表格です。制度の案内・改正情報が継続的に公開されています。
- こんな起業家に向く:パート・有期契約から採用を始める事業者
- 典型的な使い道:正社員転換、処遇改善(賃金規程整備等)
- 受給の勘所:就業規則・賃金規程・労働条件通知書・賃金台帳など「労務証憑」を整える
5. トライアル雇用助成金(採用ミスマッチを減らす)
起業初期は採用の失敗が致命傷になりやすい一方で、即戦力採用は難しい現実があります。トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、無期雇用移行を前提に一定期間の試行雇用を行う場合に助成される制度で、採用ミスマッチのコストを下げる設計ができます。
- こんな起業家に向く:初採用、採用要件が固まり切っていない事業者
- 典型的な使い道:ハローワーク等紹介による試行雇用
- 受給の勘所:対象労働者要件・紹介経路・所定労働時間など要件が細かいので、採用前に要件照合を行う
申請の基本手順(起業家がつまずくポイントも含めて)
起業時の補助金・助成金は「締切」「交付決定前の支出禁止」「証憑の形式」など、運用ルールで落ちやすいです。実務では次の順番が最も事故が少ないです。
Step 1: 目的を1行に圧縮する(投資の狙いを固定)
例:販路開拓で月商を伸ばす、設備投資で原価を下げる、採用で提供能力を上げる。ここが曖昧だと計画書が散ります。
Step 2: 制度を1つに絞り、要件と対象経費をチェックする
「使えそう」ではなく「要件を満たしているか」を確認します。補助金は対象経費・対象外経費の線引きが明確です。
Step 3: 申請前にGビズID等の前提を片付ける
補助金は電子申請が前提のものが多く、GビズIDプライムが必要になるケースがあります。取得に時間がかかるため、早めに着手します。
Step 4: 事業計画は審査項目の順で書く
経験上、計画の出来は「文章力」より「審査観点の漏れ」で決まります。課題→解決策→実施体制→資金計画→効果測定の順に揃えます。
Step 5: 採択後の実務(発注・契約・支払・検収)まで設計する
交付決定前の発注がNGなど、補助金は実行段階で事故が起きがちです。見積・発注書・請求書・振込記録・納品書まで一気通貫で残せる運用にします。
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採択率(通過率)を上げるコツ:税理士の実務視点
補助金の採択率は公募回ごとに揺れますが、改善余地が大きいのは「書き方」ではなく「設計の甘さ」です。よくある不採択・不支給は次のパターンです。
- やりたいことの羅列で、売上・利益・生産性の改善が定量で書かれていない
- 市場・競合・顧客の説明が薄く、なぜ今この投資なのかが弱い
- 見積が1社のみ、単価根拠がなく妥当性が説明できない
- 交付決定前に契約・発注してしまい、経費が対象外になる
- 助成金で労務書類(就業規則、賃金台帳等)が未整備
よくある質問
Q: 起業したばかりでも補助金・助成金は使えますか?
Q: 補助金はいつ入金されますか?資金繰りが不安です。
Q: 採択されやすい事業計画の特徴は何ですか?
Q: 助成金は申請すれば必ずもらえますか?
まとめ
- 起業時は「設備・販路=補助金」「採用・処遇=助成金」で設計すると効果が出やすい
- 2026年は持続化補助金、ものづくり補助金、デジタル化・AI導入補助金2026の情報公開が進んでいる
- 補助金は採択後の運用(発注・証憑・精算)まで含めて準備しないと失敗しやすい
- 助成金は要件充足と労務書類が核心で、採用前のチェックが重要
- 採択率を上げるには、投資効果をKPIで定量化し、審査観点に沿って書く
参照ソース
- 中小企業庁「小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>(第19回)公募要領公開」: https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260128002.html
- 中小企業庁「ものづくり補助金(第23次)公募要領公開」: https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260206001.html
- デジタル化・AI導入補助金2026(SMRJ)資料ダウンロード: https://it-shien.smrj.go.jp/download
- 厚生労働省「キャリアアップ助成金」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
- 厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/newpage_16286.html
- gBizID(GビズID): https://gbiz-id.go.jp/
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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