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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.22
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

創業計画書の書き方と数値設計|融資を通す税理士解説

10分で読めます
創業計画書の書き方と数値設計|融資を通す税理士解説

創業計画書は、融資審査において「この事業は返済できるか」を判断するための資料です。結論から言うと、通りやすい計画書は数字の根拠が説明でき、かつ「やること・いつやるか・誰がやるか」が具体的です。逆に、売上がなんとなく右肩上がりの計画は、面談で一瞬で崩れます。

本記事では、創業融資に向けて事業計画書を書きたい方(個人事業・法人いずれも)を想定し、テンプレ構成と通りやすい数値設定、融資審査の実務ポイントを税理士の視点で解説します。

創業計画書とは?融資審査で見られる3点

創業計画書(事業計画書)は、事業の魅力を語るパンフレットではなく、審査側が「事業の再現性」と「返済可能性」を確認するための設計図です。特に見られるのは次の3点です。

  • 需要の根拠:誰のどんな課題を、どの価格で解決するか(市場・競合・差別化)
  • 実行体制:経営者の経験、協力者、外注先、販路、運用体制
  • 数値の整合性:売上・原価・人件費・家賃・広告費などが現実的で、資金繰りが破綻しないか

中小企業庁や支援機関の制度としても、地域の創業支援(ワンストップ窓口、セミナー等)を活用できる枠組みが整備されています。まずは地域の支援を使い、計画書のたたき台を固めるのが近道です。
(参考:中小企業庁「創業支援等事業計画」)https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/sougyo_keikaku.html

創業計画書の書き方テンプレート(まずはこの順で埋める)

テンプレートは自由形式に見えて、審査で読みたい順番は概ね決まっています。最初から完璧に文章を作るより、空欄を埋めていく方が速いです。

  • 事業の概要(何を・誰に・いくらで・どう売る)
  • 創業動機と背景(なぜ今この事業か)
  • 経営者の経験・強み(実績、資格、業界経験、人脈)
  • 市場・顧客・競合(需要の根拠、競合比較、差別化)
  • 販売計画(獲得チャネル、単価、客数、リピート)
  • 仕入・外注・原価の考え方(粗利構造)
  • 人員計画(採用時期、給与、外注の使い分け)
  • 設備・店舗計画(投資内容、見積、減価償却の考え方)
  • 資金計画(必要資金、自己資金、借入、使途)
  • 収支計画と資金繰り(利益だけでなくキャッシュ)

補助金向けの計画書解説ですが、「計画は具体的・実行可能・資金計画に無理がないか」という評価観点は融資でも共通します。計画書の自己点検に使えます。
(参考:ミラサポplus「補助事業計画書の作成」)https://mirasapo-plus.go.jp/hint/25626/

数値設定のコツ:売上は「積み上げ」、経費は「先に固定費」

融資審査で最も差が出るのが数値の作り方です。ここでは「通りやすい数値」の作法を、売上→原価→固定費→利益の順で整理します。

売上計画は「客数×単価×稼働」で作る

売上は1行の金額で書くと弱くなります。審査側が知りたいのは再現性なので、必ず分解します。

例(店舗型のサービス業)

  • 客数:1日12人
  • 営業日:月22日
  • 客単価:8,000円
  • 月商:12×22×8,000=2,112,000円

客数の根拠は、最低でも次のいずれかを用意します。

  • 立地の通行量・商圏(簡易でもよい)
  • 既存の見込み客(SNS、紹介、前職顧客の移行見込み)
  • 広告の想定(広告費○円で獲得単価○円、成約率○%など)

原価・粗利は「商品別(またはサービス別)」に分ける

原価率を一律で置くと、計画が薄く見えます。できれば商品カテゴリ別に粗利を分けましょう。

  • 高粗利メニュー:単価は低いがリピートが高い
  • 低粗利メニュー:集客用、ついで買いを狙う

粗利の説明ができると、価格戦略(値上げ余地、キャンペーンの打ち手)も説明でき、面談が有利になります。

固定費は「現実の見積」で先に固める

固定費は、甘く置くと一気に信用が落ちます。特に以下は見積・契約予定情報で固めます。

  • 家賃(共益費含む)、保証金、更新料
  • 人件費(社会保険の負担見込みも含めて考える)
  • 通信費、決済手数料、システム利用料
  • 広告費(オープン初期は厚めに置くのが自然)
ここがポイント
数値の根拠資料は、計画書本文に全部入れる必要はありません。面談用に別紙で「見積書」「価格表」「採用計画」「広告シミュレーション」を束ね、質問されたら即提示できる形にしておくと、審査の安心感が上がります。

融資審査で落ちやすいポイント:利益より「資金繰り」と使途

「黒字計画なのに否決」というケースの多くは、資金繰りと借入の使途が弱いことが原因です。利益は会計上の概念ですが、返済は現金で行うため、審査側はキャッシュの動きを重視します。

使途は「何に・いくら・いつ」が一致しているか

審査で特に確認されるのは、借入金の使い道が具体的かどうかです。

  • 設備資金:内装、機械、PC、什器、保証金など(見積と一致)
  • 運転資金:家賃、人件費、広告費、仕入など(何か月分か)

曖昧な「運転資金一式」は弱いので、最低でも「固定費○か月分+仕入立替○か月分」のように内訳化します。

資金繰りは「売上の入金タイミング」を反映する

BtoB、請求書払い、在庫型の業態は特に注意です。売上が立っても入金が遅いと、支払いが先に来て資金ショートします。月次で「入金」「支払」「借入返済」を並べ、最低残高がマイナスにならない計画にします。

中小企業庁は、資金繰り表やキャッシュフロー計算書などのツール集(Excel)を公開しています。資金繰りのたたき台作成に活用できます。
(参考:中小企業庁「『中小企業の会計』ツール集」)https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/tools/2008.html

通りやすい計画書 vs 通りにくい計画書(比較表)

「良い・悪い」は文章の上手さではなく、論点の押さえ方で決まります。

←横にスクロールできます→
項目通りやすい計画書通りにくい計画書
売上の作り方客数×単価×稼働で積み上げ、根拠がある月商だけ提示、根拠が曖昧
競合比較価格・提供価値・導線が整理されている「競合は少ない」など主観的
固定費見積・相場に基づき現実的低く置いて黒字化を演出
資金使途設備・運転の内訳が明確「運転資金一式」など曖昧
資金繰り入金サイトを反映し最低残高を管理利益計画のみで資金繰り不明

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提出までの手順(この順で作ると早い)

計画書は、文章から書くと手戻りが増えます。おすすめは「事実→数字→文章」の順です。

Step 1: 事実(見積・条件)を集める
家賃、内装、設備、仕入条件、広告単価、採用条件など、外部の数字を先に固定します。

Step 2: 売上を積み上げる
客数・単価・稼働の前提を置き、達成のための販路(紹介、広告、SNS等)をセットで書きます。

Step 3: 月次の収支と資金繰りを作る
損益(利益)だけでなく、入金・支払・返済を月次で並べます。最低残高が耐えられるか確認します。

Step 4: 文章に落とし込む
数字で固めた前提を、事業の強み・実行体制・リスク対応(代替案)として文章化します。

事業計画の自己点検用として、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が公開する「事業計画書作成の参考ガイド」も役立ちます。評価観点がチェックリスト形式で整理されています。
(参考:中小機構「事業計画書作成の参考ガイド」)https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/business_plan_creation_guidelines_ippan.pdf

ここがポイント
よくある相談として「売上を強気にしないと借りられないのでは?」という声があります。しかし実務では、強気よりも説明可能が重要です。強気にするなら、その分だけ広告投資・人員・設備などの実行プランもセットで整合させてください。

税理士が現場で見た「審査が進む」小さな工夫(ケース)

税理士法人 辻総合会計では、創業前後の資金調達や月次の数字づくりを支援する中で、同じ業種でも「通る計画」と「止まる計画」の差を多く見てきました。

例えば、サービス業の創業で、月商だけが先行していたケースでは、

  • 客数の獲得導線(広告・紹介・提携)
  • 客単価の内訳(メニュー構成)
  • 初月〜3か月の立ち上がり(稼働が上がるまでの現実)
    を分解して計画を作り直し、面談での質問が「本当に集客できるの?」から「どのチャネルを優先する?」へ変わりました。

この質問の質が変わることが、融資審査を前に進めるサインです。計画書は提出物であると同時に、面談の台本でもあります。

よくある質問

Q: 創業計画書のテンプレートはどれを使えばいいですか? ▼
テンプレート自体より「審査で読みたい順に論点が揃っているか」が重要です。事業概要→市場/競合→販売計画→原価/固定費→資金計画→収支/資金繰り、の順で説明できる形に整えると読みやすくなります。
Q: 売上が弱いと融資額が出ませんか? ▼
売上の強さより、返済可能性と実行計画の整合性が重視されます。売上を上げるなら、そのための広告費・人員・設備・稼働計画も同時に厚くして、数字の一貫性を保つことが大切です。
Q: どこまで細かい数値を入れるべきですか? ▼
最低限、売上は「客数×単価×稼働」で説明できる粒度、経費は固定費(家賃・人件費・広告費等)の根拠が示せる粒度が必要です。BtoBや請求書払いの場合は、入金サイトを反映した資金繰り(月次)があると安心感が上がります。

まとめ

  • 創業計画書は「事業の再現性」と「返済可能性」を示す資料
  • 売上は月商1行ではなく、客数×単価×稼働で積み上げる
  • 固定費は見積・相場で先に固め、黒字演出のために過小計上しない
  • 利益計画だけでなく、入金タイミングを反映した資金繰りが重要
  • 提出前に根拠資料(見積、価格表、採用・広告計画)を別紙で準備すると面談が強くなる

参照ソース

  • 中小企業庁「創業支援等事業計画について」: https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/sougyo_keikaku.html
  • 中小企業庁「『中小企業の会計』ツール集」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/tools/2008.html
  • ミラサポplus「補助金入門 STEP2:補助事業計画書の作成」: https://mirasapo-plus.go.jp/hint/25626/
  • 中小機構(中小企業基盤整備機構)「事業計画書作成の参考ガイド(PDF)」: https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/business_plan_creation_guidelines_ippan.pdf

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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