税理士法人 辻総合会計グループ
無料相談
医療経営ブログに戻る
クリニック向けコラム
作成日:2026.02.22
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

診療報酬改定2026の罠|診療所が損する実態を税理士が解説

8分で読めます
診療報酬改定2026の罠|診療所が損する実態を税理士が解説

診療報酬改定2026(令和8年度)で「本体+3.09%だから増収」と期待しても、診療所(クリニック)の手取りに反映されないことは珍しくありません。問題は、改定率が平均値であり、配分・相殺・要件の壁で現場の損益が変わる点にあります。特に開業医にとっては「増収に見えて、実質は横ばい〜減収」になりやすい構造を理解しておく必要があります。

「本体3.09%増」が手取りに反映されない3つの理由

理由1:増分の多くは「賃上げ・物価対応」だが、診療所への配分は薄い

令和8年度改定は診療報酬が+3.09%(2年度平均)とされ、うち賃上げ分や物価対応分が明確に位置づけられています。一方で、物価対応の配分は施設類型別に差があり、医科診療所への配分は+0.10%と小さい設計です。

「賃上げ原資が入るなら診療所も得」と見えますが、実際には以下のように病院中心に厚く、診療所は薄くなりがちです(制度設計上の配分の話であり、個別点数の増減は別途確認が必要です)。

←横にスクロールできます→
配分項目(2年度平均)病院医科診療所歯科診療所保険薬局
物価対応の配分(特別項目で対応)+0.49%+0.10%+0.02%+0.01%
経営環境悪化を踏まえた緊急対応分+0.40%+0.02%+0.01%+0.01%

つまり、平均改定率のインパクトを、そのまま「診療所の売上増」と読み替えるのは危険です。

理由2:「薬価・材料」の引下げと、実務上の相殺が起きる

改定は診療報酬(医療行為の点数)だけでなく、薬価等にも及びます。令和8年度は薬価が▲0.86%、材料価格が▲0.01%とされ、合計で▲0.87%です。

院内処方が多い、薬剤関連の収入構造が大きい、特定材料を多用する等の診療所では、表の「本体プラス」を別の場所で相殺され、損益としては増えない(むしろ下がる)ことがあります。

ここがポイント
施行時期もズレます。薬価は令和8年4月施行、診療報酬は令和8年6月施行とされており、春先の資金繰り・粗利管理ではタイムラグが出やすい点に注意が必要です。

理由3:「効率化」名目の減算・適正化が、外来・在宅に刺さる

今回の整理では、後発医薬品の置換え進展を踏まえた対応や、在宅医療・訪問看護関係の評価の適正化、長期処方・リフィル処方の取組強化等による効率化が▲0.15%と明示されています。

制度全体で効率化するという方向性は、診療所の現場では

  • 長期処方が多い(慢性疾患外来)
  • リフィル運用が進む(再診頻度が下がる)
  • 在宅の評価が見直される(算定要件の厳格化・適正化) といった形で、売上の伸びを抑える要因になり得ます。

薬価引下げ・物価高・人件費増が「プラス」を打ち消す仕組み

診療所の損益は大雑把に「売上(保険収入)−(人件費+家賃+外注費+材料費+その他経費)」です。改定で売上が微増しても、コストの増加が同時に走れば、手残りは増えません。

  • 人件費:賃上げ圧力は強い一方、診療所に十分な上乗せが来ないと利益が圧迫される
  • 物価:医療材料・消耗品・委託費(清掃、検査、IT等)が上がると粗利が薄くなる
  • 薬価:薬剤関連のマージンが下がると、売上増より粗利減の影響が大きい場合がある

ポイントは「売上が何%増えたか」ではなく、「粗利(限界利益)がいくら増減したか」です。改定の影響を判断するなら、月次で粗利と人件費の綱引きを見える化するのが最短ルートです。

「相対的マイナス改定」になりやすい診療科別シミュレーション

ここでは、改定の方向性が診療所の実務にどう響くかを、よくある収入構造で整理します(実際の増減は、貴院の算定項目・患者構成・届出状況・個別点数で変わります)。

内科(慢性疾患・生活習慣病中心)

  • 長期処方・リフィルの推進が進むほど、受診頻度が下がりやすい
  • 1回あたりの点数が上がっても、延べ来院数が下がると売上は伸びにくい
  • 物価・人件費の増加がそのまま利益を削りやすい

「売上は横ばい、利益は減る」になりやすいのがこのタイプです。

小児科(季節変動+スタッフ確保難)

  • 需要の波が大きく、繁忙期に合わせた人員配置が必要
  • 賃上げは避けにくい一方、単価上昇が十分でないと固定費負担が重くなる
  • 感染症の流行パターン変化で患者数が読みにくいと、改定メリットが見えにくい

改定で増収を狙うより「繁忙期の稼働を落とさない運用」と「固定費の最適化」が効きます。

訪問診療(在宅医療)

  • 「適切な在宅医療の推進」と同時に、実態を踏まえた評価の適正化が進む
  • 算定要件の厳格化や、運用の見直しが入ると、件数は同じでも算定が落ちる可能性がある
  • 移動・オンコール・人員体制のコスト増を吸収しにくい

SNSで「点数が大きく減った」などの話が出るのは、この領域で個別項目の増減が損益に直結しやすいからです。

ここがポイント
「3.09%増」やSNSで語られる点数の増減は、平均改定率・個別点数・算定要件が混在して伝わりがちです。最終判断は、告示・通知に基づく点数表と、自院の算定実績(レセプト集計)で行ってください。

改定に負けないクリニック経営の数字管理(月次損益の見方)

改定の影響を最短で掴むには、年1回の決算より「月次の粗利と人件費」を見ます。税理士法人 辻総合会計でも、改定局面では翌月に答えが出る指標に絞ります。

Step 1: 売上を「外来・在宅・健診・自費」に分解する

改定影響は、部門別に出ます。合算売上だけ見ても原因が分かりません。

Step 2: 粗利を把握し、薬剤・材料の比率を固定で追う

薬価や材料の変動がある年は、「材料費率」「外注費率」を月次で固定チェックします。

Step 3: 人件費を総額ではなく売上比と1人あたり生産性で見る

賃上げ分が制度上示されても、診療所で実現するには生産性の裏付けが必要です。

  • 人件費率(人件費÷売上)
  • 1日患者数あたりの人件費
  • 受付・看護の稼働バランス(残業含む)

Step 4: 改定月(4月/6月)の前後で「前年差分」を見る

改定の影響は前年差分が最も分かりやすいです。前年同月比で、売上・粗利・人件費の3点セットを並べます。

医療機関専門の税理士にご相談ください

40年以上の実績。クリニック・医療法人の経営を税務・会計の両面からサポートします。

無料相談を申込む 📞 050-1808-9643

平日 9:15〜18:15(土日祝休業)

今すぐ税理士に確認すべき3つのポイント

  • 点数改定の影響試算:自院の算定実績(レセプト)をベースに、主要算定の前年差分を試算する
  • 人件費計画:ベースアップ・賞与・採用の見込みを置き、人件費率がどこまで耐えられるかを見る
  • 資金繰り:薬価(4月)と診療報酬(6月)のタイムラグを踏まえ、春〜夏の運転資金ラインを再設定する

よくある質問

Q: 「本体+3.09%」なら、診療所の売上も3.09%増えるのですか? ▼
増えません。改定率は平均であり、配分(施設類型別)や薬価等の同時改定、算定要件の変更で実際の増減は変わります。診療所は物価対応・緊急対応の配分が相対的に小さく、コスト増に負けて手取りが増えないケースがあります。
Q: 改定で損するか得するか、最短で判断する方法は? ▼
自院のレセプト集計を使い、改定前後で「外来・在宅」など部門別の売上前年差分と、材料費率・人件費率の前年差分を並べることです。売上よりも粗利と人件費の関係で判断するとブレません。
Q: 2026改定で特に注意すべき時期はいつですか? ▼
薬価は4月施行、診療報酬は6月施行とされ、春先にタイムラグが出やすい点が重要です。資金繰り表は最低でも3か月先まで更新し、改定月の入金・支出のズレを織り込むことを勧めます。

まとめ

  • 「本体+3.09%」は平均値で、診療所の手取りに直結しない
  • 物価対応・緊急対応は施設類型で配分差があり、医科診療所は薄くなりやすい
  • 薬価等の引下げや効率化が、外来・在宅の伸びを相殺し得る
  • 判断軸は売上ではなく、粗利と人件費率の前年差分
  • 改定月のタイムラグ(4月/6月)を踏まえ、月次と資金繰りで早期に手当てする

参照ソース

  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  • 厚生労働省「診療報酬改定について(令和7年12月24日)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の基本方針」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001610161.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

シェア:
医療経営ブログに戻る

お電話でのご相談

050-1808-9643

受付時間 9:15〜18:15(土日祝休業)

Webお問い合わせ

おすすめコラム

訪問介護 介護報酬2026改定の要点

訪問介護 介護報酬2026改定の要点

介護報酬改定2026の全体像|+2.03%内訳を税理士解説

介護報酬改定2026の全体像|+2.03%内訳を税理士解説

クリニック医療機器節税2026|40万円特例と投資税制

クリニック医療機器節税2026|40万円特例と投資税制

人気コラムランキング

1
【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

2
内科の訪問診療戦略|収益設計と集患・運用の実務を税理士が解説

内科の訪問診療戦略|収益設計と集患・運用の実務を税理士が解説

3
出資持分あり医療法人と持分なし医療法人の違いと承継・税務ポイント

出資持分あり医療法人と持分なし医療法人の違いと承継・税務ポイント

4
医師の講演料は確定申告必要?経費と手順|税理士が解説

医師の講演料は確定申告必要?経費と手順|税理士が解説

5
医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

CONTACT

無料相談のご案内

開業・法人化・承継・経営改善など、どんなご相談でもお気軽にどうぞ。初回相談は無料です。

ご相談だけでも歓迎です。お気軽にお問い合わせください。

050-1808-9643
平日 9:15〜18:15

© 2026 税理士法人 辻総合会計グループ. All rights reserved.

プライバシーポリシー

お電話はこちら

050-1808-9643

050-1808-9643

無料相談する

平日 9:15〜18:15