税理士法人 辻総合会計グループ
無料相談
医療経営ブログに戻る
クリニック向けコラム
作成日:2026.02.22
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

診療報酬改定2026の患者負担増|税理士が解説

10分で読めます
診療報酬改定2026の患者負担増|税理士が解説

診療報酬改定2026で患者負担と保険料は「増える」のが結論

2026年度(令和8年度)診療報酬改定は、医療機関の収入(診療報酬)が増える一方で、患者の自己負担や保険料も増える方向で進んでいます。
特にポイントは、改定率がプラスであることに加え、入院時の食費・光熱水費の基準額引上げなど、患者側で体感しやすい負担増が同時に起きる点です。

税理士法人 辻総合会計では、クリニックの月次・資金繰り・収益改善の現場支援を継続してきました。現場感としては「制度の数字」よりも「患者の体感負担」と「来院行動の変化」が経営に効く局面が増えています。
本記事では、改定の全体像と、患者別の窓口負担シミュレーション、そしてクリニック経営者としての実務対策を整理します。

ここがポイント
本記事は、公開資料に基づく一般的な解説です。実際の負担増は、保険種別・所得区分・医療機関の算定状況・同月の受診内容等により変動します。個別の試算は顧問税理士・社労士・医療事務責任者と連携して確認してください。

まず押さえるべき「改定率」と、なぜ患者側の負担が増えるのか

改定率(公式に確認できる骨格)

令和8年度の診療報酬改定では、診療報酬がプラス改定となっています。
資料では、診療報酬+3.09%(令和8・9年度の2年度平均)、令和8年度は+2.41%、令和9年度は+3.77%という整理が示されています(施行時期の注記もあり)。また、薬価等はマイナス(薬価▲0.86%など)も併記されています。

この「診療報酬が上がる=医療費総額が増えやすい」構造が、最終的に次の3ルートで国民負担に跳ねます。

  • 患者の窓口負担(自己負担)
  • 健保・国保等の保険料(事業主負担も含む)
  • 公費(税)

「医療機関の収入が増えるのに、患者負担も増える」矛盾の正体

よく誤解されるのが「診療報酬が上がる=医療機関が潤う=患者は関係ない」という見方です。
実際には、医療費は保険財政で賄われるため、増えた医療費の原資をどこかで負担します。加えて、今回の改定では、食費・光熱水費の基準額引上げのように、患者が直接支払う項目が明示されています。これは「窓口で体感する負担増」になりやすい論点です。

1.1兆円/保険料5,500億円/窓口1,500億円はどう読むべきか

SNSや解説投稿で「負担増1.1兆円」「保険料5,500億円」「窓口負担1,500億円」といった内訳つきの数字が拡散することがあります。
ただし、これらは資料の切り取りや前提(医療費総額、国費の組み方、薬価等の扱い、年度跨ぎ)で変わり得るため、経営判断に使う際は「公式資料でどこまで確定しているか」を必ず分解して確認してください。

ここでの実務的な読み方は次の通りです。

  • 「総額○兆円」は、改定の方向感としては参考になるが、自院・自社への影響は別物
  • 自院は「点数改定で収入が増える項目」と「患者が負担増を感じやすい項目」が一致しないことが多い
  • 企業(健保)側は「保険料率」よりも「標準報酬月額×対象人数」で効いてくるため、総額の議論を自社の人件費に落とす必要がある

患者別の窓口負担シミュレーション(1割・2割・3割)

ここでは「患者が支払う窓口負担」がどれくらい増え得るかを、3つの代表ケースで見ます。
診療報酬点数そのものは個別診療で異なるため、まずは患者が体感しやすい「入院時の食費・光熱水費」から示し、そのうえで一般的な医療費×負担割合の計算式でイメージを固定します。

シミュレーション前提(食費・光熱水費)

公開資料では、入院時の食費基準額が40円/食引き上げ、光熱水費基準額が60円/日引き上げと整理されています(患者負担の扱いについても注記あり)。

  • 食費:40円/食(原則)
  • 光熱水費:60円/日(原則)

ケースA:7日入院・1日3食の患者(食費+光熱水費)

  • 食費増:40円×3食×7日=840円
  • 光熱水費増:60円×7日=420円
  • 合計:1,260円(原則の増分イメージ)

※所得区分・指定難病等で扱いが異なる可能性があります。

受診の自己負担(外来・検査・処置等)の基本計算

自己負担は、原則として「保険診療の総額×自己負担割合」で概算できます。

  • 1割負担:総額×10%
  • 2割負担:総額×20%
  • 3割負担:総額×30%

ケースB:月の保険診療総額が10,000円相当増えた場合(仮)

改定や算定変更の影響で、仮に月あたりの保険診療が10,000円増えたとすると、

←横にスクロールできます→
自己負担割合月の追加負担(概算)年換算(概算)
1割1,000円12,000円
2割2,000円24,000円
3割3,000円36,000円

この表が示す通り、同じ改定でも「患者属性(負担割合)」で体感が変わります。クリニック経営の視点では、3割負担の現役世代が受診控えに反応しやすい点に注意が必要です。

ここがポイント
「高額療養費の適用」「月内の複数医療機関受診」「薬剤費比率」「公費併用」などで、実際の窓口負担は上下します。シミュレーションは第一近似として使い、実データで補正してください。

医療機関専門の税理士にご相談ください

40年以上の実績。クリニック・医療法人の経営を税務・会計の両面からサポートします。

無料相談を申込む 📞 050-1808-9643

平日 9:15〜18:15(土日祝休業)

クリニック経営者が直面する「患者が来なくなるリスク」と対策

患者負担が増える局面では、単に価格弾力性(受診控え)が起きるだけでなく、患者の行動が次のように変わります。

  • 症状が軽い段階で受診しない(受診の後ろ倒し)
  • 処方日数が長い医療機関へ流れる(通院回数を減らしたい)
  • 予約が取りやすい・待ち時間が短い医療機関へ移る(負担増の中で時間価値が上がる)

ここから先は、経営側の打ち手です。重要なのは「値上げ環境でも選ばれる理由」を作ることです。

対策の基本フレーム(集患・DX・単価改善)

以下の3本柱で設計すると、実務に落ちやすくなります。

←横にスクロールできます→
論点患者の不満クリニック側の打ち手
価格(負担増)「支払いが増えた」受診頻度を最適化する説明、重症化予防の価値訴求
時間「待つのが嫌」予約導線の改善、問診DX、院内オペ短縮
不確実性「結局いくら?」概算提示、次回来院目安の提示、薬・検査の目的説明

実務で効く「対策の手順(ステップ形式)」

Step 1: 影響の見える化(院内データで分解)

  • 改定で増える点数:初再診・入院基本料・加算等(自院の算定状況で抽出)
  • 患者が不満を言いやすい負担:食費・光熱、頻回受診、薬剤費比率
  • 属性別:1割/2割/3割の患者構成(年齢・保険種別)

Step 2: 受診導線と待ち時間のボトルネックを潰す

  • Web予約・事前問診・自動精算など、患者が体感するDXを優先
  • 受付〜診察〜会計の滞留時間を測定し、院内KPIに落とす

Step 3: 単価改善は「説明」と「同意」をセットにする

  • 検査・指導・在宅等の算定は、患者理解がないと離脱要因になる
  • 「何のために必要か」「次にどう良くなるか」を短く定型化する

Step 4: 保険者・企業対応(健保・総務)も同時に動かす

  • 企業側は「保険料=人件費の一部」です。改定の論点を社内共有し、健康経営・受診勧奨・重症化予防とセットで設計します。

2年に1回から「毎年改定」議論が出ると何が起きるか(将来展望)

診療報酬は原則2年に1回の改定ですが、物価・賃金の変動が大きい局面では「頻度の見直し」論点が浮上しやすくなります。
仮に毎年改定に近づくと、経営側の実務は次のように変わります。

  • 収益予測の期間が短くなる(投資回収計画が難しくなる)
  • 算定要件の変更への追随コストが増える(医事・事務負荷)
  • 収入の増減が施設基準・運用により左右されやすくなる

したがって、月次試算表でのモニタリングと、算定・オペレーションの標準化(DX)が、従来より重要になります。

よくある質問

Q: 2026年度改定で、患者の窓口負担は必ず増えますか? ▼
一律に必ず増えるとは言い切れませんが、診療報酬がプラス改定であることに加え、入院時の食費・光熱水費の基準額引上げのように、患者が直接支払う要素も示されています。個別の負担は、所得区分・公費併用・受診内容で変動します。
Q: 1割負担の高齢者でも影響は大きいですか? ▼
医療費の増分そのものは自己負担割合で圧縮されますが、入院時の食費・光熱水費のように「固定的に体感しやすい負担」は影響が出ます。加えて、受診頻度が高い方ほど年換算で効いてきます。
Q: クリニックは収入が増えるなら、経営は楽になりますか? ▼
点数改定で増える項目がある一方で、人件費・物価上昇、算定要件対応、患者の受診行動変化などで、利益が自動的に増えるとは限りません。月次での採算管理と、予約・問診・会計など患者体験に直結するDXが重要です。
Q: 企業の社会保険担当者は何を準備すべきですか? ▼
保険料率の変動だけでなく、標準報酬月額×被保険者数で人件費に効くため、影響の試算と社内共有が有効です。受診勧奨・重症化予防・健康経営の施策と一体で進めると、負担増局面でも説明が通りやすくなります。

まとめ

  • 診療報酬改定2026はプラス改定で、医療費総額が増えやすい構造にある
  • 患者の体感負担として、入院時の食費40円/食、光熱水費60円/日の引上げは影響が読みやすい
  • 窓口負担は「医療費増分×1割/2割/3割」で概算でき、現役世代ほど受診控えが起きやすい
  • クリニック経営は「負担増で来院が減るリスク」を前提に、集患・DX・単価改善をセットで設計する
  • 将来、改定頻度が上がる議論が進むほど、月次モニタリングと運用の標準化が重要になる

参照ソース

  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  • 厚生労働省「診療報酬改定について(令和7年12月24日)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf
  • 財務省「令和8年度予算のポイント」: https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2026/seifuan2026/01.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

シェア:
医療経営ブログに戻る

お電話でのご相談

050-1808-9643

受付時間 9:15〜18:15(土日祝休業)

Webお問い合わせ

おすすめコラム

訪問介護 介護報酬2026改定の要点

訪問介護 介護報酬2026改定の要点

介護報酬改定2026の全体像|+2.03%内訳を税理士解説

介護報酬改定2026の全体像|+2.03%内訳を税理士解説

クリニック医療機器節税2026|40万円特例と投資税制

クリニック医療機器節税2026|40万円特例と投資税制

人気コラムランキング

1
【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

2
内科の訪問診療戦略|収益設計と集患・運用の実務を税理士が解説

内科の訪問診療戦略|収益設計と集患・運用の実務を税理士が解説

3
出資持分あり医療法人と持分なし医療法人の違いと承継・税務ポイント

出資持分あり医療法人と持分なし医療法人の違いと承継・税務ポイント

4
医師の講演料は確定申告必要?経費と手順|税理士が解説

医師の講演料は確定申告必要?経費と手順|税理士が解説

5
医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

CONTACT

無料相談のご案内

開業・法人化・承継・経営改善など、どんなご相談でもお気軽にどうぞ。初回相談は無料です。

ご相談だけでも歓迎です。お気軽にお問い合わせください。

050-1808-9643
平日 9:15〜18:15

© 2026 税理士法人 辻総合会計グループ. All rights reserved.

プライバシーポリシー

お電話はこちら

050-1808-9643

050-1808-9643

無料相談する

平日 9:15〜18:15