
執筆者:辻 勝
会長税理士
バイオ後続品調剤体制加算50点の要件と設備投資|専門家解説

バイオ後続品調剤体制加算50点とは
バイオ後続品調剤体制加算(以下、本加算)とは、薬局がバイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進に資する体制を整えた上で調剤した場合に、所定点数を加算できる新設の評価です。2026年度改定の「後発医薬品・バイオ後続品の使用促進」の一環として位置づけられています。
ポイントは「単に取り扱う」ではなく、適切な保管と患者への説明を含む体制を施設基準(通知)として整備する点です。
何点つく?いつ、どの調剤で算定?
- 原則:バイオ後続品を調剤した場合に「50点」を加算。
- 例外:特別調剤基本料Aを算定する保険薬局で調剤した場合は、加算点数が「50点の10%相当(=5点相当)」とされます。
- ただし、インスリン製剤は除外(本加算の対象外)と明記されています。
算定要件・施設基準の全体像(どこが審査ポイントか)
本加算は「届出している保険薬局」であることを前提に、施設基準(通知)で示される体制整備が中核です。
実務では、次の3点が審査・指導で問われやすい論点になります。
- 体制整備の実態(保管・在庫・説明の運用が回っているか)
- 取り扱い実績(バイオ後続品を一定程度、安定的に提供できているか)
- 患者説明の品質(「同意」「不安」「供給状況」を含めた説明ができるか)
施設基準(通知)で押さえるべき要件(要旨)
公表資料では、施設基準(通知)の例として、少なくとも次が示されています。
-
調剤した「先発バイオ医薬品+バイオ後続品」の規格単位数量に占める、バイオ後続品の規格単位数量の割合が 80%以上 となる成分について、その成分数が、当該薬局の調剤実績のあるバイオ医薬品成分数の 60%以上 であることが望ましい。
-
バイオ後続品の調剤を積極的に行っている旨を、薬局の内側および外側の見えやすい場所に掲示すること。
加えて、「バイオ医薬品の適切な保管」および「患者への適切な説明が可能」であることが施設基準の中核として記載されています。
薬局が対応すべき設備投資(最低限〜推奨)とコスト観
本加算の投資ポイントは、実務的には「保管(温度管理)」「在庫(供給)」「説明(資材・教育)」の3領域です。ここを押さえると、算定だけでなくクレーム・監査リスクも下がります。
| 投資領域 | 最低限(算定ライン) | 推奨(監査・継続運用ライン) | 代表的なコスト感(目安) |
|---|---|---|---|
| 保管(温度管理) | 医薬品保管用冷蔵庫、温度計の設置 | 温度ロガー(自動記録)、アラート、点検記録の標準化 | 数万円〜数十万円 |
| 在庫(供給) | 主要BSの在庫方針、発注ルール | 需要予測・代替提案(欠品時)ルール、在庫回転の可視化 | システム次第(運用工数が主) |
| 説明(患者対応) | 説明用リーフレット、標準トーク | FAQ集、同意・理解の記録様式、スタッフ研修 | 印刷は軽微、研修工数が主 |
| 記録(根拠化) | 算定根拠メモ | 「説明実施」「選択理由」「供給状況」のテンプレ記録 | システム改修/運用設計 |
※金額は機器・システム形態で大きく異なります。実際は「機器購入」よりも「運用ルールの設計」がコスト(工数)として支配的です。
設備投資の優先順位(失敗しない順番)
現場でよくある失敗は「冷蔵庫は買ったが、温度記録と説明記録が残らない」パターンです。優先順位は次の通りが合理的です。
- 温度管理の記録が残る仕組み(ロガー or 点検表の固定化)
- 主要BSの採用品目・在庫水準(患者数と処方元の傾向で決める)
- 患者説明(標準トーク+リーフ+記録様式)
- 掲示(内外掲示、文言テンプレ化)
算定開始までの実務手順(チェックリスト付き)
税理士法人 辻総合会計では、医療・薬局領域の顧問先支援で「届出は通るが運用が続かない」ケースを数多く見てきました。制度対応は、届出・算定・監査の3点セットで設計するのが現実的です。
Step 1: 対象処方(バイオ医薬品)の現状把握
- 過去3〜6か月の処方内容から、バイオ医薬品(先発/BS)をリスト化
- 成分別に「BS比率(規格単位数量ベース)」の現状を把握
- インスリン製剤が混在する場合は、本加算の対象外である点を切り分け
Step 2: 採用・在庫方針を決める(供給途絶も想定)
- 主要成分ごとに「常備」「都度手配」「近隣薬局連携」を分類
- 欠品時の代替提案(先発への戻し、別規格等)を手順書に明記
Step 3: 保管(温度管理)と記録様式を整備
- 冷蔵保管が必要な品目の棚割り、誤出庫防止(ラベル等)
- 温度記録:自動ロガー or 毎日点検のどちらで回すか決定
- 監査で提示できる形で「点検表」「逸脱時の対応記録」を用意
Step 4: 患者説明の標準化(トーク+資材+記録)
- 「品質・有効性・安全性」「選択肢」「供給状況」を説明軸に固定
- 説明した事実が残るように、薬歴/指導記録にテンプレ項目を設定
- 特定薬剤管理指導加算3ロの対象拡大(バイオ後続品の説明評価)も併せて運用設計
Step 5: 掲示(内外)と届出の最終確認
- 施設基準(通知)で求められる掲示を、店内・店外に掲出
- 算定要件に照らし、運用が毎回再現できる状態かをチェック
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「設備投資しても取れない」を避ける:要件未達の典型パターン
- BSの在庫が安定せず、患者都合で先発に戻り続けて比率が上がらない
- 温度管理はしているが、記録が欠けている(やっていたを証明できない)
- 掲示はあるが、患者説明が属人化しており、薬歴に残らない
- 供給不足時の説明が不十分で、トラブルが増える(結果的にBS提案が萎縮)
この加算は、在庫・温度・説明のどれかが欠けると継続算定が難しくなります。最初から「手順書+記録」の運用を小さく回し、段階的に拡張するのが安全です。
よくある質問
Q: 50点は毎回算定できますか?
Q: インスリンのバイオ後続品も対象ですか?
Q: 設備投資は冷蔵庫を買えば足りますか?
Q: 特定薬剤管理指導加算3ロとの関係は?
まとめ
- バイオ後続品調剤体制加算は、薬局の体制整備を評価する2026年新設の加算(原則50点)
- 特別調剤基本料Aの薬局は、50点の10%相当点数になる扱い
- 施設基準(通知)の要旨は「保管」「説明」「掲示」と、BS比率等の目標(80%・60%)
- 設備投資は機器より運用(記録・手順書)が勝負。温度記録と説明記録を最優先に整える
- 特定薬剤管理指導加算3ロの拡大も含め、説明資材と記録テンプレを統合すると現場負荷が下がる
参照ソース
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 議事次第」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70414.html
- 厚生労働省「総-1 個別改定項目について(令和8年2月13日)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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