
執筆者:辻 勝
会長税理士
ベースアップ評価料 歯科・薬局2026点数比較|税理士が解説

結論:業態ごとに「単位」と「伸び方」が違う
ベースアップ評価料は、同じ賃上げ原資でも業態ごとに設計が異なります。歯科は「初・再診や訪問で上乗せ(点数)」、薬局は「処方箋受付1回あたり(点数)」、訪問看護は「利用者あたり(月1回の円評価)」という構造です。さらに各業態で令和9年6月以降に200%(倍増)となるフェーズ制が示されています。
一方で、中医協資料では一部が「案段階(●●表記)」の箇所もあり、最終点数は告示・点数表での確定確認が必須です。
ベースアップ評価料とは?医科・歯科・薬局・訪問看護で何が違う
制度の狙い:賃上げの実行性を診療報酬で担保する
ベースアップ評価料は、医療機関・薬局・訪問看護ステーションが行う賃金改善の取組を、報酬上の評価で後押しする枠組みです。届出(施設基準)と賃金改善の実施がセットで運用されます(特設ページも参照)。
「点数・円」の単位が違うことが経営インパクトの差になる
- 医科:外来・在宅、入院などで区分設定(点数)
- 歯科:歯科外来・在宅(点数)
- 薬局:調剤(処方箋受付1回につき点数)
- 訪問看護:訪問看護(利用者あたり月1回の円評価)
ここを取り違えると、「点数が上がったのに収益が伸びない(算定回数が少ない)」が起きます。自院(自局)の算定ボリュームに合う単位かを先に見てください。
【比較表】2026改定の点数(単位)とフェーズ制を横並びで確認
下表は「業態別に何に対して、いくら(点数・円)付くのか」と「倍増タイミング」を整理したものです。歯科は公表情報として示されている点数例を併記し、その他は中医協資料の算定単位・倍増を軸に整理しています(最終点数は告示で確定確認)。
| 業態 | 評価料の名称(代表) | 算定単位 | 2026改定のポイント(例) | 令和9年6月以降 |
|---|---|---|---|---|
| 医科 | 外来・在宅ベースアップ評価料 等 | 初診・再診・訪問等(区分) | 区分制で段階評価(詳細は点数表で確定) | 所定点数の200%(フェーズ) |
| 歯科 | 歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ) | 初診・再診・歯科訪問診療等 | 初診21点、再診4点、(訪問)66点/11点 | 倍増(フェーズ) |
| 薬局 | 調剤ベースアップ評価料 | 処方箋の受付1回につき | 新設・段階評価(点数は確定資料で確認) | 所定点数の200% |
| 訪問看護 | 訪問看護ベースアップ評価料 | 利用者1人につき(月1回) | 見直し・段階評価(円は確定資料で確認) | 倍増(フェーズ) |
収益インパクトの考え方:歯科・薬局で試算の型を作る
ここでは、顧問先でよく使う「増収額の型」を示します。ベースアップ評価料は算定回数×点数×10円が基本(薬局も点数評価なら同様)で、訪問看護は算定回数×円です。
歯科:外来中心か、訪問があるかで効き方が変わる
歯科は初診・再診に加え、訪問診療の有無で伸び方が変わります。
Step 1: 算定対象の回数を出す
- 月の初診回数、再診回数、訪問診療回数を把握(レセ統計でOK)
Step 2: 点数を掛ける(初診21点、再診4点など)
- 例:初診300回、再診2,000回
- 初診:300×21点=6,300点
- 再診:2,000×4点=8,000点
- 合計:14,300点
Step 3: 円換算して月次・年次に落とす
- 14,300点×10円=143,000円/月
- 年間(単純化):約171.6万円
訪問が多い医院は、訪問点数の寄与が大きくなり、外来中心とインパクトが逆転することがあります。
薬局:処方箋枚数(受付回数)にほぼ比例する
調剤は「処方箋の受付1回につき」算定であるため、基本的に処方箋枚数(受付回数)がドライバーになります。
Step 1: 月間の処方箋受付回数を確定
- 例:月7,000枚
Step 2: 点数(確定値)×10円で月次増収を算定
- 月増収=7,000×(点数)×10円
点数が確定したら即座に試算できるよう、先に受付回数だけは整備しておくのが実務的です。
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届出の注意点:失点しやすいのは「施設基準の読み違い」と「賃上げの証跡」
1) 届出は算定開始の前提。月途中の扱いも要確認
ベースアップ評価料は、施設基準に適合し地方厚生局長等へ届出をした上で算定する建付けです。新設・見直しのタイミングでは、算定開始月の取り扱い(いつから算定できるか)を必ず確認してください。
2) 「賃金改善の対象範囲」と「原資の使途」を先に決める
現場で混乱しやすいのが「誰に、どう配分するか」です。医療機関では職種間バランス、薬局では薬剤師・事務の配分、訪問看護では看護職以外を含む配分など、説明責任が残ります。給与規程・手当設計まで含めて証跡を残す運用が安全です。
3) フェーズ(倍増)対応は「追加の届出・要件確認」が発生しうる
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)等では、追加届出の手引きが別途示されています。歯科・薬局でも、フェーズ移行時に実務手続(届出様式・要件確認)が発生する可能性があるため、令和9年6月前後の運用変更を年間計画に織り込むのが無難です。
よくある質問
Q: 歯科と薬局で、どちらが増収インパクトが大きいですか?
Q: 令和9年6月以降に倍増するなら、今は届出しなくても良いですか?
Q: 賃上げに使わなかった分はどうなりますか?
まとめ
- ベースアップ評価料は、歯科・薬局・訪問看護で「算定単位」が異なり、増収は回数構造で決まる
- 令和9年6月以降は200%(倍増)のフェーズ制が示されており、賃上げ計画は二段階設計が有効
- 歯科は初診・再診・訪問の回数を先に整備すると、点数変更への対応が速い
- 薬局は処方箋受付回数がドライバー。点数確定後すぐ試算できるよう回数管理を整える
- 届出と賃金改善の証跡(配分ルール・規程・支給実績)を残すことが、実務上の失点防止になる
参照ソース
- 厚生労働省(中医協 総会 第646回)「個別改定項目について(その3)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001646857.pdf
- 厚生労働省「ベースアップ評価料等について(特設ページ)」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
- 厚生労働省「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の追加届出の手引き」: https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001397655.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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