
執筆者:辻 勝
会長・税理士・医療経営コンサルタント
地域包括診療加算の届出チェックリスト|院内掲示・Web掲載・運用証跡

まず結論:届出前に「要件」と「運用証跡」を同時にそろえる
地域包括診療加算は、届出書類だけを整えれば安定して算定できる加算ではありません。対象患者の判定、同意取得、院内掲示・Web掲載、連携薬局や介護連携、カルテ記録、算定後の実績管理まで一体で準備しておく必要があります。
診療報酬改定の個別相談
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疑義解釈、届出期限、レセプト運用、収入見込みへの反映を税務・経営面から整理します。
2026年改定では、地域包括診療加算1が「認知症を有する患者等 38点/その他の慢性疾患等 28点」、地域包括診療加算2が「認知症を有する患者等 31点/その他の慢性疾患等 21点」と整理されました。点数だけを見るのではなく、自院がどの患者層を継続的に診ているか、どこまで記録を残せるかで判断します。
この記事で扱う範囲
この記事は、地域包括診療加算の「制度改定の概要」ではなく、届出前後の実務チェックに絞っています。
| 読者の状況 | この記事で確認できること | 詳細記事 |
|---|---|---|
| 改定内容を先に把握したい | 2026年改定の全体像、対象患者、評価体系 | 地域包括診療加算2026の算定要件見直し |
| 届出準備を始めたい | 書類、掲示、Web掲載、記録、院内運用 | 本記事 |
| 外来データ提出も検討したい | 様式7の10、試行データ、様式7の11、算定開始月 | 地域包括診療の外来データ提出 |
2026年改定で先に押さえる前提
届出チェックの前に、次の前提を更新しておきます。古い資料のまま準備すると、対象患者や掲示内容の整理がずれやすくなります。
| 項目 | 2026年5月17日時点の整理 | 届出実務で見るポイント |
|---|---|---|
| 評価体系 | 認知症地域包括診療加算・診療料は、地域包括診療加算・診療料へ統合された評価体系 | 「認知症だけ別加算」として説明資料を残さない |
| 地域包括診療加算1 | 認知症を有する患者等 38点/その他の慢性疾患等 28点 | 対象患者の区分をカルテ・算定チェック表で分ける |
| 地域包括診療加算2 | 認知症を有する患者等 31点/その他の慢性疾患等 21点 | 加算1を狙うのか、加算2で安定運用するのかを先に決める |
| 対象患者 | 6疾病のうち2以上、または一定の慢性疾患を有し介護給付・予防給付を受ける要介護被保険者等 | 疑い病名を対象に含めない運用が必要 |
| 連携薬局 | 連携薬局の24時間対応が原則。一定の院内処方体制がある場合は例外的整理あり | 自院の処方体制と連携薬局の確認書類を残す |
| 外来データ提出 | 地域包括診療加算等に外来データ提出加算10点が新設 | 算定開始時期と届出順序を別管理する |
届出前チェックリスト
地域包括診療加算の準備では、施設基準だけでなく、実際に毎月回せる証跡をセットで確認します。
| チェック項目 | 確認する内容 | 残しておきたい証跡 |
|---|---|---|
| 対象患者の抽出 | 認知症、脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病、介護給付・予防給付の有無 | 対象患者リスト、病名確認ルール、疑い病名除外の手順 |
| 患者同意 | 算定対象となる診療内容、継続管理、連携の説明 | 同意取得日、説明内容、同意書またはカルテ記載 |
| 医師配置・時間外対応 | 時間外対応体制加算の届出、または医師配置要件 | 届出控え、勤務表、常勤換算の計算資料 |
| 連携薬局 | 24時間対応の有無、院内処方体制の例外に該当するか | 連携薬局の情報、確認日、院内処方体制の説明資料 |
| 介護連携 | 主治医意見書、ケアマネジャー、地域包括支援センターとの連携 | 連絡履歴、相談記録、紹介・情報提供の控え |
| 院内掲示 | かかりつけ医機能、相談対応、紹介、服薬管理、緊急時対応等 | 掲示文、掲示場所の写真、掲示開始日 |
| Web掲載 | 院内掲示と整合する内容をホームページ等に掲載 | 掲載URL、公開日、更新履歴、スクリーンショット |
| 長期処方・リフィル | 28日以上の長期投薬やリフィル処方箋への対応方針 | 院内ルール、患者説明、処方判断の記録 |
| 残薬・服薬管理 | 残薬確認、薬剤数、他院処方、電子処方箋の活用状況 | 問診票、服薬管理メモ、薬局連携の記録 |
| 外来データ提出 | 外来データ提出加算10点を狙うか、届出期限に乗せるか | 様式7の10、試行データ、様式7の11、担当者表 |
院内掲示・Web掲載で落としやすいポイント
院内掲示とWeb掲載は、単に「掲示しているか」ではなく、患者に説明できる内容になっているかが重要です。特に、次の表現は自院の実態と合っているかを確認してください。
| 掲示・掲載するテーマ | よくあるミス | 修正の方向性 |
|---|---|---|
| 受診中の医療機関・処方薬の把握 | 「必要に応じて確認します」だけで、誰が確認するか不明 | 受付、看護師、医師の確認タイミングを院内フローに落とす |
| 専門医療機関への紹介 | 紹介先リストが古い | 診療科別に候補を更新し、紹介実績を残す |
| 健康管理・保健福祉サービス相談 | 掲示文はあるが、相談内容の記録欄がない | 問診票やカルテテンプレートに記録欄を作る |
| 緊急時の対応方法 | 電話番号だけで、時間外の対応範囲が曖昧 | 対応可能時間、連絡先、救急受診の案内を明確にする |
| 長期処方・リフィル | 「可能です」とだけ書いて、患者状態による判断が抜ける | 医師が患者状態に応じて判断する表現にする |
院内掲示とWeb掲載の内容は、レセプト担当者だけで完結させず、院長、受付、看護師、Web更新担当者で同じ版を確認するのが安全です。
算定開始後に残すべき運用証跡
届出後は、毎月の算定で同じレベルの記録を残せるかが問題になります。次の5つは、院内チェック表にしておくと確認漏れを減らせます。
-
対象患者の区分
認知症を有する患者等か、その他の慢性疾患等か、要介護被保険者等かを記録します。 -
同意と説明
初回説明日、説明者、説明内容、患者または家族の理解状況を残します。 -
服薬管理
他院処方、残薬、薬剤数、薬局連携、電子処方箋の活用状況を確認します。 -
介護・福祉との連携
ケアマネジャー、地域包括支援センター、主治医意見書、認知症診断後支援の案内を記録します。 -
掲示・Web掲載の更新履歴
掲示文やWebページを変更した日、変更理由、旧版の保存場所を残します。
加算1と加算2の選び方
加算1の方が点数は高くなりますが、体制を満たせないまま無理に狙うと、届出・運用・説明の負担が大きくなります。
| 判断軸 | 加算1を検討しやすいケース | 加算2で整えた方がよいケース |
|---|---|---|
| 医師体制 | 複数医師体制や時間外対応を安定して回せる | 院長1名中心で、まずは記録体制を固めたい |
| 患者層 | 認知症、要介護、慢性疾患の継続患者が多い | 対象患者はいるが件数がまだ読みにくい |
| 連携先 | 薬局、介護、専門医療機関との連携が日常的にある | 連携先の整理から始める必要がある |
| 事務体制 | 届出、掲示、Web、レセプト確認を分担できる | レセプト担当者に負荷が集中している |
| 経営判断 | 月次で加算収入と運用コストを比較できる | まずは算定漏れ・返戻リスクを減らしたい |
外来データ提出加算は別プロジェクトとして管理する
地域包括診療加算等では、外来データ提出加算として月1回10点の評価が新設されています。ただし、通常の施設基準届出と同じ感覚で進めると、様式7の10、試行データ、様式7の11、算定開始月の管理が混ざりやすくなります。
外来データ提出を検討する場合は、地域包括診療加算そのものの届出とは別に、次の担当を決めておきます。
| 担当 | 役割 |
|---|---|
| 院長 | 算定方針、対象患者、診療内容の確認 |
| 事務長・レセプト担当 | 届出期限、様式、算定開始月、請求確認 |
| システム担当・ベンダー | データ抽出、試行データ、エラーチェック |
| 会計・経営管理 | 加算収入見込み、作業時間、費用対効果 |
詳しい届出順序は、地域包括診療の外来データ提出で整理しています。
相談前に準備しておく資料
専門家に相談する場合でも、次の資料があると判断が早くなります。
| 資料 | 用途 |
|---|---|
| 直近3か月の再診患者数・対象患者候補数 | 算定インパクトの試算 |
| 対象疾患別の患者リスト | 患者要件の確認 |
| 介護保険・主治医意見書・認知症患者の状況 | 認知症を有する患者等の整理 |
| 現在の施設基準届出一覧 | 追加届出・要件変更の確認 |
| 院内掲示・Web掲載の現物 | 表現と実態の整合性確認 |
| レセプトチェック手順 | 算定漏れ・返戻リスクの確認 |
| 外来データ提出の対応状況 | 追加加算の準備可否 |
よくある質問
Q: 2026年改定後の地域包括診療加算の点数はいくつですか?
Q: 古い改定時のチェックリストをそのまま使えますか?
Q: 院内掲示だけ整えれば足りますか?
Q: 地域包括診療加算は、診療報酬だけで判断してよいですか?
Q: 外来データ提出加算10点はすぐ算定できますか?
参考にした公的資料
この記事を書いた人

辻 勝
会長・税理士・医療経営コンサルタント
公認会計士 / 税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。税理士として、医療法人・クリニックの税務、会計、経営管理、承継支援に長年携わっている。
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