
執筆者:辻 勝
会長税理士
地域包括診療加算2026の算定要件見直し|かかりつけ医機能を整理

2026の結論:地域包括は「要介護×慢性疾患」と「認知症支援」が軸
地域包括診療加算2026(令和8年度改定案)では、対象患者の範囲が広がる一方で、認知症支援や服薬の適正化をより意識した要件整理が進みます。特にポイントは、(1)介護給付・予防給付を受ける要介護者等の追加、(2)認知症関連の評価体系の整理、(3)連携薬局の24時間要件の一部緩和、(4)診断後支援の「明記」です(中医協資料・改定案ベース)。
税理士法人 辻総合会計でも、クリニック顧問先から「地域包括の届出を継続すべきか」「連携薬局要件の運用をどう整えるか」といった相談が増えています。診療報酬は“届出して終わり”ではなく、運用の証跡づくりが収益安定に直結します。
地域包括診療加算2026:見直しポイントを3分で把握
見直し1:対象患者に「要介護等×主要慢性疾患(1疾患でも可)」が追加
改定案では、地域包括診療加算等(地域包括診療加算・地域包括診療料等)の対象患者に、
- 脂質異常症/高血圧症/糖尿病/慢性心不全/慢性腎臓病(透析なし)
のいずれかを有し、かつ介護給付または予防給付を受ける要介護被保険者等の患者を追加する方針が示されています。
従来の「複数慢性疾患を有する患者」を中心とした枠組みに、介護ニーズを持つ高齢者の継続管理をより明確に組み込む方向です。
見直し2:認知症地域包括(加算・診療料)の評価体系を整理(統合方向)
改定案では、簡素化の観点から「認知症地域包括診療加算/認知症地域包括診療料」を、地域包括診療加算/地域包括診療料と統合した評価体系へ見直す旨が示されています。
現場感としては、「認知症だけ別建てで理解しにくい」「届出・運用の説明が煩雑」という声が多く、制度側が整理を進めている形です。
見直し3:連携薬局の24時間対応要件が“一部緩和”
地域包括診療加算・地域包括診療料を算定する医療機関について、連携薬局の24時間対応要件は原則維持しつつ、解熱鎮痛剤等を緊急時に院内処方できる体制がある医療機関に限り、連携薬局側に24時間体制がなくてもよい、という方向性が示されています。
「地域によって24時間対応薬局の確保が難しい」ケースへの現実対応といえます。
地域包括の算定要件:2026で“落ちやすい”実務ポイント
対象疾患は「6疾病」へ(慢性心不全・慢性腎臓病・認知症を明確化)
改定案の文脈では、地域包括診療加算の対象疾病として、
- 脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病(透析なし)、認知症
の「6疾病」が示され、基本はこのうち2つ以上(疑い除く)という整理が読み取れます。加えて前述のとおり、介護給付等を受ける要介護者等は「1疾患でも対象に追加」される点が運用上の差分になり得ます。
認知症患者の“診断後支援”が「望ましい」として明記
担当医が地域包括支援センター等と連携し、ピアサポート活動や本人ミーティング等を含む診断後支援の取組について、患者または家族へ案内することが望ましい旨を明記する方針が示されています。
ここは算定の“必須要件”ではなく「望ましい」扱いでも、監査対応を考えると「何を・いつ・どう案内したか」を診療録等に残す運用が安全です。
服薬の適正化:ポリファーマシー条件は引き続き要注意
認知症地域包括系(改定案上の位置づけを含む)では、1処方あたり内服薬が5種類超、または抗うつ薬・抗精神病薬・抗不安薬・睡眠薬の合計が3種類超に該当する場合の除外等、薬剤数・向精神薬の種類数に関する考え方が示されています。
薬剤整理は医師単独では完結しないため、連携薬局・かかりつけ薬剤師との情報連携(薬歴、入退院時の処方情報など)を“仕組み”にしておくことが重要です。
| 論点 | 現行イメージ(運用上の中心) | 2026改定案の方向性 |
|---|---|---|
| 対象患者 | 複数慢性疾患の継続管理が中心 | 主要慢性疾患+要介護等を追加 |
| 認知症の扱い | 認知症地域包括(別建て)を意識 | 統合方向で整理・簡素化 |
| 連携薬局 | 24時間対応の確保が前提 | 院内緊急薬体制があれば一部緩和 |
| 支援の明記 | 医療中心の記載になりがち | 診断後支援(案内)の明記 |
かかりつけ医加算との関係:2026は“外来の役割分担”がさらに前提に
地域包括診療加算は、外来の機能分化(いわゆる「かかりつけ医機能」)の文脈に置かれており、2026改定案でも同じ章立てで「機能強化加算の見直し」等と並列に議論されています。
つまり、地域包括を選ぶなら「慢性疾患の継続管理」「服薬の適正化」「地域連携」を、算定要件の文章以上に“日常診療のプロセス”として説明できる状態が求められます。
また、医療法に基づく「かかりつけ医機能報告制度」は令和7年(2025)に関係通知・ガイドライン等が整理されており、医療機関側には“自院が担う機能の見える化”が求められています。診療報酬(加算)と制度(報告)の双方で、説明責任のレベルが上がっていく点は押さえておきたいところです。
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2026改定に向けた準備:届出・運用・記録を整えるステップ
Step 1: 対象患者の棚卸し(要介護等の把握を含む)
慢性疾患の主病・併存症だけでなく、介護給付・予防給付を受けているか(要介護被保険者等)を把握できる運用を整理します。患者同意や情報取得の導線も合わせて確認します。
Step 2: 連携薬局と“24時間対応の実態”を再確認
連携薬局の24時間体制がある場合も、緊急時の連絡先、対応可能時間、処方箋の受け渡し手順まで落とし込みます。
院内処方で要件緩和を狙う場合は、緊急薬(解熱鎮痛剤等)の在庫・処方フローを院内規程化します。
Step 3: 認知症の診断後支援の案内フローを作る
地域包括支援センター、認知症地域支援推進員、若年性認知症支援コーディネーター等の連絡先と紹介手順を整備し、「案内した記録」を残せるテンプレートを作ります。
Step 4: 服薬適正化の“共同作業”を仕組みにする
薬歴・入退院時の処方情報のやりとり、減薬提案の取り扱い、向精神薬の種類数の確認などを、薬局と共通言語で運用します。
Step 5: 監査・指導対策として証跡を整える
算定要件の充足は、最終的に記録で説明できるかが勝負です。診療録、連携記録、患者説明文書、院内掲示・同意取得の運用を一式で点検します。
よくある質問
Q: 地域包括診療加算2026は、いつから適用されますか?
A:
令和8年度(2026)診療報酬改定として議論が進んでいます。適用日や最終要件は告示・通知で確定します。改定案の段階では、内容が微修正されることがあるため、直近の厚労省公表資料を確認してください。Q: 「連携薬局の24時間対応」が難しい地域でも算定できますか?
A:
改定案では、緊急時に解熱鎮痛剤等を院内処方できる体制がある医療機関に限り、連携薬局側の24時間体制がなくてもよい方向性が示されています。実装時は「院内処方体制」の定義・範囲を通知で確認し、院内規程と運用記録を整えるのが安全です。Q: かかりつけ医機能報告制度と、地域包括診療加算はセットですか?
A:
制度としては別枠ですが、どちらも「地域で担う機能を明確にし、継続的・全人的な医療を提供する」方向性は共通です。地域包括を継続・新規届出する場合、連携体制・説明・記録の水準を、報告制度の流れも踏まえて底上げしておくと整合が取りやすいです。まとめ
要点を整理すると次のとおりです。
- 地域包括診療加算2026は、要介護等×主要慢性疾患の対象追加が大きな変更点
- 認知症地域包括(加算・診療料)は、統合方向で整理される見込み
- 連携薬局の24時間要件は、院内緊急薬体制があれば一部緩和の方向
- 認知症の診断後支援(案内)の明記により、運用記録の重要性が上がる
- 最終要件は告示・通知で確定するため、改定直前に最新資料で再点検が必須
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度 診療報酬改定(中医協 会議資料:個別改定項目について)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001639439.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「かかりつけ医機能報告制度」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000123022_00007.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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