
執筆者:辻 勝
会長税理士
調剤報酬簡素化2026|算定漏れ・返戻リスクの対策

調剤報酬の「簡素化」で現場が一番困るのは何か
2026年改定では、調剤報酬について「簡素化(類似項目の統合・一部廃止)」が進みました。狙いは分かりやすさですが、実務では次のような事故が起きやすくなります。
- 旧ルールのまま算定してしまう(廃止項目を付け続ける)
- 区分が減ったことで、分岐条件の見落としが逆に増える(長期処方/それ以外の判定ミス)
- 旧項目で評価していた業務が別項目に「吸収」され、算定ロジックの再設計が必要
税理士の立場では、これらは「売上の取りこぼし」だけでなく、返戻・過誤調整による資金繰り悪化、点検コストの増大、監査対応の負担増につながる点が重要です。
2026年改定:簡素化の中核は「統合」と「廃止」
「調剤報酬体系の簡素化に向けた見直し」では、類似する算定項目を統合する方針が明示されています。具体例として、在宅領域のオンライン系が廃止対象になります(後述)。
また、同じ章立てで、算定構造に直撃する見直しが並んでいます。点検上のインパクトが大きいのは次の3点です。
- 調剤管理料:内服薬の区分が4区分→2区分(28日以上/27日以下)
- 調剤管理加算:廃止
- 調剤管理料の重複投薬・相互作用等防止加算:廃止
これらは「算定の枝(分岐)」と「加算の乗せ方」が変わるため、レセコン設定・薬歴運用・点検表をまとめて更新しないと事故が出ます。
重点改定① 調剤管理料:4区分→2区分でミスが増える理由
調剤管理料(内服薬)は、調剤日数による4区分から、長期処方(28日分以上)とそれ以外(27日分以下)の2区分に整理されます。あわせて点数全体も見直し対象です。
ここでの実務リスクは「単純になったはずなのに、判定ミスが増える」ことです。理由は2つあります。
- 旧運用では「7日以下」「14日以下」などの感覚で処方日数を見ていた現場が、27日/28日の境界を意識し直す必要がある
- 同一患者・同一月でも、処方日数が月内で揺れやすい診療科(生活習慣病の調整期など)で、区分が入れ替わる
レセプト点検で見るべきチェック項目(調剤管理料)
| チェック観点 | 具体的な確認 | 事故パターン |
|---|---|---|
| 日数境界 | 27日以下/28日以上の判定 | 28日を27日扱い、または逆 |
| 内服薬の範囲 | 対象外(内服用滴剤・浸煎薬・湯薬・屯服薬等)との混在 | 対象外を含めて判定が崩れる |
| 月内の複数処方 | 同月内の処方日数が変動 | 片方だけ旧区分のまま |
「27/28」だけを独立して機械的にチェックするのが、点検効率が高いです。税理士法人の月次点検では、ここを「赤字フラグ」にして上位レビューに回す運用が有効です。
重点改定② 廃止項目:付け続けると返戻・過誤の温床になる
調剤管理加算の廃止
調剤管理料に上乗せしていた「調剤管理加算」が廃止されます。事故は、レセコン側で旧マスタが残り、条件を満たした時に自動付与されてしまうケースです。
- 返戻・査定よりも、過誤調整の連鎖で手間が膨らむ
- 月次の売上推移が歪み、経営判断にノイズが入る
「廃止項目はゼロであること」を監査観点で証明できるよう、月次で「算定回数0」のエビデンスを残すのが安全です。
重複投薬・相互作用等防止加算の廃止(調剤管理料)
調剤管理料に付随していた重複投薬・相互作用等防止加算も廃止されます。ここも「旧ロジックで算定してしまう」典型領域です。
実務上は、疑義照会や残薬調整の実施自体が不要になるわけではありません。評価の付け方が変わるだけなので、現場が「算定できない=やらなくてよい」と誤解しないよう、業務手順書の文言も更新してください。
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重点改定③ 調剤報酬体系の簡素化:在宅オンライン系の廃止を見落とさない
簡素化の具体例として、在宅領域のオンライン系が廃止されます。
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料の注に規定する「在宅患者オンライン薬剤管理指導料」の廃止
- 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の注に規定する「在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料」の廃止
在宅は算定項目が多く、担当者も限られるため、「当月はたまたま該当が少なくて気づくのが遅れる」が頻発します。翌月にまとめて見つかると、過誤調整が月をまたぎ、現場負担が跳ね上がります。
点検の実装例(在宅)
- 月次で「オンライン系コードの算定回数」を抽出し、0であることを確認
- もし算定が残っていれば、薬歴・実施記録・算定理由を確認し、マスタ設定の問題か運用の問題かを切り分け
この領域は「加算の付け忘れ」よりも「廃止項目が残る」方が事故単価が高いです。
返戻・算定漏れを減らすための実務設計(税理士目線)
最後に、薬局の内部統制として効果が高い手当を、点検プロセスに落とします。
1) ルール変更を「マスタ」「手順」「点検」に分解する
- マスタ:廃止項目の停止、区分ロジックの更新(27/28境界)
- 手順:薬歴記載の要点を改定後の評価構造に寄せる
- 点検:廃止項目が0であること、境界判定の誤りがないことを定例化
「制度理解」より「実装の再現性」を優先すると、返戻は減ります。
2) 月次KPIに「点検しやすい数字」を混ぜる
税理士側の月次レビューで有効なKPI例です。
- 調剤管理料:27日以下/28日以上の比率推移(急変があれば要調査)
- 廃止項目:算定回数(常に0が正常)
- 在宅:オンライン系算定回数(常に0が正常)
3) よくある相談ケース(匿名)
- 旧マスタが残り、調剤管理加算が少数だけ自動算定されていた
- 28日処方が増えた月に、27/28の判定が逆転して月次の粗利率がブレた
- 在宅の緊急対応で、緊急オンライン系を慣性で算定してしまった
いずれも「制度を知らない」より、「更新が一部だけ」起因が多いです。改定対応は一度で終わらせず、翌月・翌々月に再点検枠を設けると事故が減ります。
参考資料(公的ソース)
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第646回) 議事次第」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69690.html
- 厚生労働省「総-3 個別改定項目について(その3)」https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001646857.pdf
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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