
執筆者:辻 勝
会長税理士
調剤管理料改定2026の減収対策|税理士解説

調剤管理料改定2026で短期処方が要注意な理由
調剤管理料の再編により、短期処方(27日以下)に偏る薬局ほど収益影響が出やすい構造になります。背景は、調剤管理料が「4区分→2区分」へ整理され、さらに調剤管理加算が廃止される方向性が示されているためです。
特に、14日以下の処方が多い薬局では、1処方当たりの点数が大きく低下する可能性があります。院外処方の構成(慢性疾患の長期処方が多いか、急性期・短期が多いか)で、改定の体感は大きく変わります。
調剤管理料の見直しとは(4区分→2区分)
ポイントは「区分の統合」と「短期側の評価低下」です。提示されている方向性では、調剤管理料が次のように整理されます。
- 28日以上:60点
- 27日以下:10点
- 併せて、調剤管理加算の廃止
ここで経営上の論点は、短期処方が多い薬局は10点側に滞留しやすいことです。長期処方が多い薬局は60点側の比率が上がり、相対的に影響が小さくなります。
旧体系との違い(経営目線の整理)
旧体系が複数区分で短期側にも一定の評価があった場合、新体系で「27日以下=一律10点」に近づくと、短期側の単価下落が顕在化します。また、加算廃止が重なると、短期構成の薬局は二重で影響を受けます。
短期×高回転のモデル(駅前・面対応・急性期寄り)ほど、「件数はあるのに点数が伸びない」状態になりやすいため、早めの検証が重要です。
28点→10点の減額インパクトを点数・患者数別に試算
ここでは、ユーザー提示の「28点相当→10点」として、差分18点をベースに影響を見える化します。
- 差分:18点(= 28点 - 10点)
- 金額換算(目安):18点 × 10円 = 180円/処方(医療保険の出来高換算の目安)
影響額の早見表(1日件数別・月20営業日)
| 1日あたり短期処方件数 | 1処方あたり減(点) | 月間減(点) | 月間減(円・目安) |
|---|---|---|---|
| 30件 | 18点 | 10,800点 | 108,000円 |
| 60件 | 18点 | 21,600点 | 216,000円 |
| 100件 | 18点 | 36,000点 | 360,000円 |
| 150件 | 18点 | 54,000点 | 540,000円 |
上表は「短期処方が改定影響をそのまま受ける」と仮定した単純試算です。短期比率が高い薬局ほど、小さな点数差が月次で大きな金額差になることが分かります。
構成比で見る:短期比率が高いほど効く
短期処方の比率を変数にすると、薬局ごとの影響をより現実に近づけられます。
| 月間処方せん枚数 | 短期(27日以下)比率 | 短期枚数 | 月間減(点) | 月間減(円・目安) |
|---|---|---|---|---|
| 3,000枚 | 40% | 1,200枚 | 21,600点 | 216,000円 |
| 3,000枚 | 60% | 1,800枚 | 32,400点 | 324,000円 |
| 3,000枚 | 80% | 2,400枚 | 43,200点 | 432,000円 |
短期比率の上昇が、そのまま減収の拡大につながります。したがって、対策は「短期を無理に長期へ」ではなく、算定設計と業務設計の両輪で考えるのが実務的です。
薬局が取るべき対策:算定設計と業務設計の二段構え
減収局面でありがちな失敗は、「単に件数を追う」か「一律にコストを削る」ことです。短期処方の特性を踏まえ、収益構造の再設計を優先します。
対策1:算定の取りこぼしをゼロ化する
短期処方中心の薬局は回転が速い分、算定要件の確認漏れが起きやすい傾向があります。まずは「既に取れるはずの点数」を確実に取る設計が必要です。
- 施設基準や運用要件の棚卸し(要件を満たしているのに未算定がないか)
- 服薬フォローや指導記録の標準化(記録不足で算定できない、を防ぐ)
- 処方元・患者属性ごとの算定ルール整理(面対応はパターン化が効く)
対策2:短期でも価値が伝わる業務に寄せる(患者体験の改善)
短期処方が多い患者層は、急性症状や生活背景の変化が多く、説明の質が満足度に直結します。ここを磨くと、指名・継続・口コミに波及し、面対応の安定につながります。
- 待ち時間の見える化(受け取り導線の改善)
- 服薬説明の要点化(1回で理解できる設計)
- 再来局を前提としたフォロー動線(連絡手段・タイミングの設計)
対策3:処方元構成の偏りを可視化し、営業ではなく連携で補正する
短期処方の多さは、処方元診療科・立地・時間帯で決まりやすい要素です。個別医療機関への過度な営業ではなく、地域連携・機能分担の視点でバランスを取ります。
- 診療科別(耳鼻科・皮膚科・内科等)に短期率を算出
- 時間帯別に短期率と待ち時間を把握
- 連携先の分散(特定処方元依存のリスク低減)
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40年以上の実績。クリニック・医療法人の経営を税務・会計の両面からサポートします。
平日 9:15〜18:15(土日祝休業)
影響額の算出手順(自薬局で5分でできる)
自薬局の影響を最短で把握するには、「短期枚数 × 点数差」をベースにします。会計側(税理士・経理)と現場側(薬局長・事務)の共通言語にするのがコツです。
Step 1: 対象期間を決める(1か月が基本)
レセコンから「月間処方せん枚数」と「27日以下の枚数」を抽出します。可能なら14日以下も別集計します。
Step 2: 短期枚数を確定する
短期の定義(27日以下/14日以下)を揃え、月間短期枚数を確定します。
Step 3: 点数差(例:18点)を掛ける
短期枚数 × 18点 = 月間減点(点)
Step 4: 円換算(目安)に落とす
月間減点 × 10円 = 月間減収目安(円)
ここはあくまで目安として、患者負担割合や公費割合の影響は別途注記します。
Step 5: 対策の優先順位を付ける
- 取りこぼし(運用・記録)で回復できる範囲
- オペ改善で吸収できる範囲
- 構成比(処方元・患者層)で中期的に調整する範囲
影響額の把握→回復策の棚卸し→運用に落とすまでをワンセットにすると、改定期の混乱を抑えられます。
よくある質問
Q: 14日以下が多い薬局は、どれくらい影響が出ますか?
Q: 短期処方を長期処方に誘導すれば解決しますか?
Q: まず何から手を付ければ良いですか?
まとめ
- 調剤管理料の再編で、短期処方(27日以下)に偏る薬局ほど減収が出やすい
- 影響は「短期枚数 × 点数差(例:18点)」でまず概算する
- 対策は、算定の取りこぼし防止と記録標準化など確実に取る設計が先
- 短期×高回転の薬局は、待ち時間・説明品質など患者体験改善が効きやすい
- 処方元・時間帯・診療科別に短期率を可視化し、構成リスクを下げる
参照ソース
- 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第647回)議事次第(総-1 個別改定項目について): https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00286.html
- 別紙1-1 医科診療報酬点数表(傍線部分は改正部分): https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655178.pdf
- 総-1 個別改定項目について(改定案の考え方・要件等): https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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