
執筆者:辻 勝
会長税理士
特別調剤基本料Aの見直し|敷地内薬局の新規制

結論:2026改定で「同一敷地・隣接」リスクが増えます
特別調剤基本料Aは、特定の医療機関との結びつきが強い薬局等に適用され、調剤基本料の評価(点数)が変わる仕組みです。2026年度改定では、対象薬局の要件が見直され、これまで「除外」されていたケースが除外されなくなる(=Aに該当しやすくなる)方向が明確です。特に「敷地内」「同一建物」「オンライン診療受診施設の併設(隣接)」は、出店形態次第で影響を受けやすい論点です。
特別調剤基本料Aとは(ざっくり定義と対象イメージ)
特別調剤基本料Aは、調剤基本料の施設基準の一部で、典型的には次のような薬局が論点になります。
- 医療機関と不動産取引等を含む「特別な関係」がある
- ある医療機関の処方箋への依存度(集中度)が高い
- 立地や運営実態が「門前・敷地内」に近い(医療機関との一体性が強い) など
今回の改定資料では、施設基準の条文(案)として「医療機関との特別な関係」や「処方箋による調剤の割合が五割を超える」等の要件が示されています。
2026改定:特別調剤基本料Aの見直しポイント3つ
1) へき地等での例外(新設)
へき地等において、地方公共団体の所有地にある診療所の敷地内に所在し、周囲に他の保険薬局がない場合は、特別調剤基本料Aを算定せず、調剤基本料1を算定する旨の規定(案)が示されています。
「敷地内=自動的にA」という単純整理ではなく、地域事情に配慮した逃げ道を用意した形です。
2) 「同一建物内に診療所がある場合はAを算定しない」除外規定を削除
これまで実務上、同一建物内に診療所がある場合に除外として扱われていた部分について、除外規定を削除する(案)が明記されています。
つまり、同一建物に診療所があること自体が「A回避の根拠」になりにくくなる方向です。医療ビル・医療モール形態の薬局は要注意です。
3) オンライン診療受診施設を同一敷地内に設置するとA該当(新規)
保険薬局と同一敷地内で、医療法上の「オンライン診療受診施設」を設置する場合、当該保険薬局は特別調剤基本料Aを算定する旨の規定(案)が示されています。
加えて、ただし書きで「療担規則・薬担規則および療担基準に基づく厚生労働大臣が定める掲示事項等(告示)に定める要件に該当する場合を除く」といった除外も書かれており、オンライン診療受診施設なら一律Aではなく、要件で線引きする設計が読み取れます。
敷地内薬局・オンライン隣接薬局はどう影響する?(判定の考え方)
論点は大きく2つです。
- 立地・関係性の一体性:敷地・建物・賃貸借・運営主体・導線が、医療機関(またはオンライン受診施設)と一体か
- 処方箋の依存度:特定医療機関への依存が高く、「特別な関係」×「依存度(例:五割超)」などの施設基準に触れるか
特にオンライン診療受診施設は「医療機関が隣にないから門前ではない」という理屈を弱める可能性があります。出店計画やフロア設計の段階で該当しうる形を作ってしまうと、後からの修正コストが大きくなります。
比較表:今回の改定で「外れにくくなる」論点
| 論点 | 2026改定の方向性(資料ベース) | 実務上の意味合い |
|---|---|---|
| へき地・自治体所有地の診療所敷地内 | 一定条件でA算定せず(例外を新設) | 地域事情が揃えばA回避の余地 |
| 同一建物内に診療所があるケース | 「Aを算定しない」除外規定を削除 | 医療ビル・医療モールでA該当しやすく |
| オンライン診療受診施設の併設 | 同一敷地内設置でA算定(新規) | オンライン隣接モデルが制度的にマークされる |
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Step 1: 立地の事実を棚卸しする
- 「同一敷地」「同一建物」「同一フロア」「同一動線(入口・受付)」のどれに当たるか
- 医療機関(またはオンライン診療受診施設)との距離・境界(壁、区画、契約)を図面で確認
Step 2: 特別な関係の有無を資料で確認する
- 不動産取引(賃貸借、転貸、オーナー関係、保証、内装負担等)の関係
- グループ関係(資本、人事、運営受託、紹介スキーム等)
- 形式より実態(誰が意思決定し、誰がリスクを負うか)で整理
Step 3: 処方箋依存(集中)を数値化する
- 期間を切って、医療機関別の処方箋受付回数・割合を集計
- 施設基準に出てくる「割合(例:五割超)」に触れるかを確認
Step 4: オンライン診療受診施設の有無と運用を確認する
- 同一敷地内に該当施設があるか(将来設置予定も含む)
- ただし書きの除外要件に該当しうる運用か(掲示事項等の整備状況も含む)
Step 5: 該当時の経営影響を試算し、打ち手を決める
- 調剤基本料の区分変更による売上影響(点数差×月処方箋枚数)
- 出店形態(入口・区画・契約)の見直し余地
- 処方元分散、在宅・施設対応、地域連携の強化など、依存度低下の施策
経過措置:既存の同一建物内診療所ありは当面の扱いに注意
資料には、告示前日において「薬局が所在する建物内に診療所が存在している薬局」について、一定の場合に当面は施設基準の一部に該当しないものとする、といった経過措置(案)が示されています。
ただし、経過措置は永続免罪符ではありません。契約更新、医療機関の入替、運営形態の変更などで前提が崩れると、扱いが変わる可能性があります。
よくある質問
Q: 医療モール内で複数科が入っている場合も特別調剤基本料Aになりやすいですか?
Q: オンライン診療受診施設が隣にあるだけで、必ずAですか?
Q: へき地の敷地内薬局は全部A回避できますか?
Q: 最終的に何を見れば確定しますか?
まとめ
- 2026改定では、特別調剤基本料Aの対象要件が見直しされ、同一建物・同一敷地の薬局が影響を受けやすい。
- へき地等では例外(A回避)の新設が示され、地域事情に配慮した設計。
- 「同一建物内診療所がある場合の除外」が削除され、医療ビル・医療モール薬局は判定再点検が必要。
- オンライン診療受診施設の同一敷地内設置はA該当(案)。隣接モデルは施設要件と運用要件をセットで設計する。
- 経過措置(案)もあるが、契約変更や運営実態の変化で前提が崩れるリスクがある。
参照ソース
- 厚生労働省:中央社会保険医療協議会 総会(第647回)議事次第(資料リンク含む) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70414.html
- 厚生労働省:総-1 個別改定項目について(PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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